「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (551) 「『日本大百科全書(ニッポニカ)』に冤罪問題掲載」 12/11/2016 

#検察なう (551) 「『日本大百科全書(ニッポニカ)』に冤罪問題掲載」 12/12/2016

かつてはどの家庭にもあった百科事典。私の家にも『ジャポニカ』(小学館、1967年)がありました。

『日本大百科全書(ニッポニカ)』は小学館を代表する百科事典。1984年から5年をかけて刊行されました。現在は、その電子版が随時増補され、小学館の関連会社が運営する知識活用支援サイト「ジャパンナレッジ」において、ニッポニカは「キラーコンテンツ」として現在もその中核的役割を果たしています。

nipponica.jpg

そのニッポニカ電子版の最新増補に、冤罪問題として「足利事件」と「氷見事件」が掲載されました。とかく関心の低い冤罪問題が、権威ある百科事典に掲載されたことは、画期的なことです。

この経緯は「#検察なう」コミュニティに編集者自らの投稿によって明らかにされています。実はこの編集者、私の高校時代の同級生です。

ここをクリック→ 「#検察なう」コミュニティ 吉田兼一氏投稿

今回取り上げられた冤罪二事件の原稿の寄稿は江川紹子氏によるものです。

ここをクリック→ 『日本大百科全書』「足利事件」

ここをクリック→ 『日本大百科全書』「氷見事件」

編集者の吉田兼一氏には、「#検察なう」コミュニティの管理者として参画してもらいました。今後もアップデートを期待しています。皆様も是非、ご注目下さい。

12/12/2016










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2016/12/12 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (546) 「豊川市男児連れ去り殺害事件で再審請求」 7/18/2016 

#検察なう (546) 「豊川市男児連れ去り殺害事件で再審請求」 7/18/2016

先週、「豊川市男児連れ去り殺害事件」で再審請求がされたことが報じられました。

ここをクリック→ NHK 「豊川男児殺害事件で再審請求」

14年前に起こったこの事件では、一審無罪判決が控訴審で逆転有罪、そして2008年に17年の懲役が確定したものです。

夜中の駐車場に停められていた車の中から、何者かが1歳10ヵ月の男児を連れ去り、近くの海に投げ捨てて殺害したという事件です。赤ん坊が車から出て数km離れた海に短時間の間に一人で行くことは不可能であるため、殺人事件であることは確かな事件(世の中には、実際に事件性がない事故にもかかわらず事件とされている冤罪も少なくない)です。

自白以外に客観的な証拠は皆無で、唯一有罪を補強する証拠は、目撃者の証言で、犯人とされた田辺雅樹さんと同型の車が、連れ去られた男児の乗っていた車の近くにあった(そして事件をまたいだ時間に、駐車場内のほかの場所で確認された)というものです。

私は、一審無罪判決の判決文と控訴審有罪判決の判決文を比較し、あまりの有罪認定の杜撰さに驚きました。

私は、田辺さんが嘘をついている可能性(目撃者の証言通りの場所に車を停めていたが、その後移動した)も多分にあると考えますが、その理由を、控訴審裁判体が認定したような「殺人を犯したから」などという荒唐無稽なものではないと考えます。しかし、単に車の駐車位置を変えたことが殺人の証拠とされるのも(勿論、そのことに関し嘘をついていると裁判官が考え、心証を悪くしたということですが)、ものすごいことのように感じます。

是非、添付のブログをお読み頂き、ご一緒にお考え頂ければと思います。真犯人でなくとも、犯人らしき人を罪に問うことができれば、それで事件は解決とする捜査権力の論理が透けて見えます。

ここをクリック→ 冤罪ファイル その15 「豊川市男児連れ去り殺害事件」

先日の松橋(まつばせ)事件(注)のように再審開始となり、田辺さんの雪冤が叶うよう祈っています。

(注)
ここをクリック→ #検察なう (545) 「松橋(まつばせ)事件に驚くこと」

7/18/2016
















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2016/07/18 Mon. 07:43 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (545) 「松橋(まつばせ)事件に驚くこと」 7/4/2016 

#検察なう (545) 「松橋(まつばせ)事件に驚くこと」 7/4/2016

先週、1985年1月に熊本県で起こった殺人事件(1990年に懲役13年の有罪確定)の再審開始が決定されました。

ここをクリック→ NHKニュース 「31年前の殺人事件 再審開始が決定 熊本地裁」

「針の穴にラクダを通す」より難しいとされる再審の扉をこじ開けた弁護団の努力には、心から敬意を表します。

この事件のこれまでの経緯を知って、驚くことがあります。

その一つが、今更ながらですが、再審の扉の重さです。再審開始の決め手となったと思われる、自白と矛盾する決定的な証拠は、凶器の小刀に巻き付けたとされたシャツの一片です。自白では、布を犯行後燃やしたとしていました。しかし再審請求を準備する弁護団が、この証拠を検察の任意開示証拠の中から偶然見つけたのは1997年のことでした。当時、冤罪被害者の宮田浩喜さんは服役中でした。2012年に始まった再審請求審で、弁護団はこのほか証拠100点を提出しましたが、それほどまでに確実を期さなければ再審開始はままならないということでは、冤罪被害者救済の負担が重すぎると感じます。特に今回のケースでは、服役中の刑の停止がかなえば宮田さんは早くに釈放されたはずです。それから更に20年というとてつもない時間が経過しているだけに、冤罪被害者の救済のためにある再審である以上、その請求審手続きのハードルを下げるべきだと思います。

そしてもう一つ驚くことが、弁護団が検察任意の証拠開示でこの証拠を見つけた偶然です。検察が隠していた証拠をうっかり出してしまった検察事務官のミス(注1)という偶然がなければ、この事件はいまだに未解決冤罪事件であった可能性が高いと言えます。

上に添付のNHKニュースで、門野博氏も指摘しているように、証拠の事前一括開示の義務化は、再審請求審も含めて不可欠です。東電OL殺害事件における被害者乳房に付着した唾液の血液型鑑定(注2)や、袴田事件におけるズボンのタグの記号がサイズではなく色を示す報告書(注3)といった、公判時に提出されていれば、無罪の可能性が高い証拠を隠してでも有罪を得ようとする検察のやり方は、法律で縛らなければこれからも変わることはないと感じます。

特に今回のケースは、検察は「無罪を示す検察にとって不利な証拠を隠した」というより、「警察捏造の証拠を隠した」のではないかと強く疑われます。あたかも犯行に使われたように切り刻まれたシャツ(宮田さんの自白に基づき、自白通りの色・柄のシャツが押収)に血痕がついていないのは、いかにも不自然であり、それを検察が隠したのは、警察捏造の事実を検察が知りそれを隠すためだったと思われます。

犯行に使われたとされる小刀に指紋も血痕もなく、「犯行後、研ぎ直した」「犯行時に布を巻き付けた」と嘘を嘘で固める虚偽の自白を取ったことがそもそもの問題ではありますが。

警察の証拠捏造は、袴田事件の味噌樽の中の血染めの着衣や、高知白バイ事件のスリップ痕の例を見ても、驚くことには当たらないのかもしれません。再審には冤罪の原因究明の機能はないため(冤罪の原因究明がなされることはないということが、冤罪がなくならない一大要因です)、宮田さんが無罪になったとしても、この件は闇の中ということになるでしょう(よほど意識の高いメディアが追求しない限り。検察広報のほとんどのメディアでは無理でしょうが)。

そして検察が、破廉恥にも即時抗告をして自分たちの非を認めようとしない態度も、これまた驚くことには当たりません。郵便不正事件~「検察の理念」(注4)を経ても、旧態然とした「有罪ありきの検察」というのは彼らにとってもイメージを損ねるだけだと残念に思います。

琉球新報の「(検察は)自省して真実に向き合う姿勢のかけらも感じられない」と書かれた社説も合わせてお読み下さい。

ここをクリック→ 「松橋事件再審決定 全証拠開示の法制化急げ」

(注1)
個人的には、再審開始なった今、この事務官がどのように感じているか非常に興味のあるところです。

先日、証拠金の現金を盗んだ元横浜地検事務官の公判があり、彼の被告人陳述では、国民に謝るのではなく、「検察の皆さんに謝罪したい」とする一幕がありました。

ここをクリック→ 証拠品の現金盗んだ元横浜地検事務官「ギャンブルに使った」

松橋事件で証拠開示をした事務官が、この元横浜地検事務官のように公僕であることの意識の全く欠如した方ではなく、「自分は悪に加担することなく正義を貫いたのだ」と思ってほしいと思います。

(注2)
ここをクリック→ #検察なう (294) 「犯人血液型当てクイズ」

(注3)
ここをクリック→ #検察なう (385) 「犯行着衣が捏造でないことと袴田氏が犯人であることは両立しない」

(注4)
郵便不正事件を受け検察は「検察の理念」を発表しましたが、理念はあくまで理念であると言わんばかりのその後の所業は、「検察の理念」が、その場の風当たりをかわすためだけのポーズであったことを物語っています。そして彼らの実態は、私の記した「新・検察の理念」そのままだと言えます。

ここをクリック→ #検察なう (248) 「新・検察の理念」

7/4/2016












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2016/07/04 Mon. 00:03 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (529) 「鹿児島強姦事件で逆転無罪判決が確定~捜査権力により作られる冤罪の実相」 1/28/2016 

#検察なう (529) 「鹿児島強姦事件で逆転無罪判決が確定~捜査権力により作られる冤罪の実相」 1/28/2016

性的犯罪事案で、一審有罪が控訴審で逆転無罪となるケースは本当に稀有です。平成24年2月13日の最高裁判例(注1)以降、そもそも控訴審で一審判決が逆転することが抑制的になっている上に、性的犯罪事案の場合、どうしても被害者女性に肩入れするケースが多いからです。

2012年10月に起こった事件に関し、14年2月の一審判決は懲役4年の実刑、それが今月12日の控訴審判決で逆転無罪となり、26日の上告期限に福岡高検が上告を断念して無罪が確定したものです。

事件の概要は以下の通り。

鹿児島市で2012年、当時17歳だった女性に暴行したとして強姦罪に問われた当時23歳の男性の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部(岡田信裁判長)は12日、懲役4年の実刑判決とした一審鹿児島地裁判決(14年2月)を破棄し、逆転無罪を言い渡した。

控訴審で新たに行われたDNA型鑑定で、女性の体内に残された精液から被告人とは別人の型が検出されたことが判明。高裁宮崎支部は昨年3月に被告を保釈しており、判決が注目されていた。

被告人は12年10月7日午前2時過ぎ、鹿児島市内の繁華街で女性に声をかけ、近くの路地に連れ込んで暴行したとして、逮捕・起訴された。

捜査段階から一貫して「酒に酔っていて記憶がない」と無罪を主張して、弁護側も「『暴行された』とする女性の証言に信用性がない」と訴えていた。

最大の焦点は、女性の体内に残された精液のDNA型鑑定の結果だった。

捜査段階で行われた鹿児島県警の鑑定は「精液は確認されたが抽出されたDNAが微量で型の鑑定はできなかった」との結果で、一審判決はこれを事実上、被告人の精液と位置づけて有罪判決を導いた。

ところが、控訴審で行われた日本大学の押田茂實名誉教授(法医学)による再鑑定では、「簡単に」(押田名誉教授)DNAが抽出され、被告人と異なる第三者の型と判明。しかも、女性が当日はいていたショートパンツから検出された第三者の型とも一致した。

これを受け、高裁宮崎支部は昨年3月、被告人を保釈した。弁護側はこの再鑑定を踏まえ「一審の誤りは明らかだ」と主張。

さらに(1)女性の証言通りなら、アスファルトの上で服を脱がせて暴行したことになるが、女性はけがを全くしておらず常識的に考えて不可能(2)被告人は酩酊状態で「自転車に乗りながら女性の腕をつかみ、強引に約200メートル離れた現場まで連れて行った」とする女性の証言も不自然などと訴えていた。

控訴審では、検察側も新たに別の大学教授にDNA型鑑定を依頼し、「被告の関与を裏付ける結果が出た」として証拠採用を求めたが、高裁宮崎支部が退けた。

さらに、捜査段階の鑑定を担当した県警技術職員が数値などを書き留めたメモを廃棄したことが明らかになっている。

検察側は女性の胸の唾液のような付着物から被告人のDNA型が検出されていることから「女性の証言に信用性はある」と反論していた。

事件を解説したテレビ報道の動画はこちらです。

ここをクリック→ 辛抱さんが解説 これはひどい!「強姦罪 逆転無罪 DNA再鑑定で別人」記憶がない人を警察が犯人に仕立て上げる 朝刊早読みニュース

有罪ありきの捜査権力の違法捜査を断罪した高裁裁判体の判示は賞賛に値するものだと思いますが、これが高裁裁判体も一審裁判体のように、捜査権力の判断を追認するだけの「木偶の坊」であったとしたら(そしてその可能性は決して低くない)、実に恐ろしいことです。

この事件の最大の問題点は、科学鑑定の危険性にあります。

女性の乳房に唾液、膣内に精液の存在が確認され、その唾液(想像するに相当少量)から被告人のDNA型を検出できた科捜研(科学捜査研究所)が、膣内の精液からは「抽出したDNAが微量であったため型が判定できない」と主張するのはそもそも不合理です。そして、鑑定できていたことを検察も知っていたことは、控訴審で検察が再鑑定を実施し、その鑑定結果を証拠調請求した(裁判所は採用せず)事実からも明らかです。

それを、捜査機関の証拠捏造とせず、「鑑定技術が未熟」としたのは、裁判所の捜査権力に対する最大限の配慮だったと感じます。

防御権の観点から、科学鑑定は無罪立証には積極的に活用されるべきものですが(アメリカのイノセンス・プロジェクト=DNA型鑑定によって冤罪証明を行う非営利活動機関の例を挙げるまでもなく)、有罪立証には抑制的であるべきだと考えます。

そして科学鑑定は、再鑑定を担保しなければ、有罪立証に用いることはできないという法的なしばりが必要だとも考えます。

「DNA型鑑定をした結果、被告人の型が検出された。ちなみに資料は全量消費して、再鑑定はできない」とされてしまったら、弁護のしようがないからです。

DNA型鑑定は、ファジーな事実認定と異なり、裁判官にはシロクロはっきりとした証拠として受けがよいように感じますが、今回のケースのように、捜査権力の恣意的な活用によって、逆手に取ることもできるということは肝に銘じておくべきだと思います。

捜査権力もこの武器を最大限利用するために、現在は大学研究所に外部委託しているDNA型鑑定を今後は科捜研で独占的にする方向であることが報じられていますが(2014年11月6日朝日新聞、注2)、とんでもないことだと思います。

科学鑑定は、公平な立場の第三者が行うべきであり、有罪立証の証拠作りとしてされるものでないのは言うまでもないことです。

この事件に関する江川紹子氏の論稿も合わせてお読み下さい。
ここをクリック→ [鹿児島・強姦事件、逆転無罪] またも繰り返された冤罪 裁判所・捜査当局の「罪」

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (318) 「「チョコレート缶事件」と論理則・経験則違背」

(注2)
ここをクリック→ 「「詭弁なんだが」 DNA検査の委託中止へ 警察庁「経費減」、独占懸念も」

1/28/2016












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2016/01/28 Thu. 10:07 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (510) 「東住吉放火殺人事件に思うこと Part2」 10/26/2015 

#検察なう (510) 「東住吉放火殺人事件に思うこと Part2」 10/26/2015

東住吉放火殺人事件について思うことを書いてみます。Part2の前篇であるブログを書いたのは2012年3月のことですから、それから既に3年半が経過しています。

ここをクリック→ #検察なう (112) 「東住吉放火殺人事件に思うこと」

実に長い時間(勿論、事件からは更に長い長い時間)が経過していますが、その間、実の娘を殺したとされた青木惠子氏や、その出自から依然罵詈雑言を浴びせられている朴龍ひろ氏、そして更に彼ら家族はさぞかし辛く悔しかったことだろうと思います。

事件は火の気のない場所での火災がきっかけになっています。そして入浴中の小6女児が、不幸にもその火災で命を落としました。

火災そのものには事件性(=放火)の可能性があると、捜査機関が推定したことは当然のことだと思います。実際に起こったであろう、駐車中の車のガソリンキャップからガソリンが漏れ出したことなど、誰が想像し得たでしょうか。

女児の死とその火災に関連があるのかどうか、それが事件と事故の見極めの分かれ目でした。

火の気のないところでの火災と女児の死を結び付ける想像力は、時には、犯罪を見出すことにもつながる捜査機関の重要な能力だと思います。そうした「嗅覚」を私は個人的には高く評価します。

そしてその見極め、筋立ての元に被疑者に自白を求めるというのは「残念ながら」今日の事件捜査では、至極当然のことです。

「残念ながら」と敢えて述べたのは、それが間違いであったと後講釈で批難することは簡単ですが、自白偏重主義の日本の刑事司法においては、それが最も有効な捜査手段と認められているからです。

今後、この事件が冤罪と明らかにされた時の議論として、なぜ虚偽自白が起こったかが問題とされるでしょうが、問題にすべきは、なぜ虚偽自白がなされたかではなく、もう一歩進んで、虚偽自白は回避できないという前提で、自白を偏重することの問題意識を持つ必要があります。

この事件の捜査においては、青木氏と朴氏の自白が取れた時点で、警察は大手柄だったと思われます。それは事故を偽装した保険金殺人という憎むべき犯罪を見出すことができたと思われたからです。いかに暴力的、高圧的な取調べがあったにせよ、あるいはなかったかにせよ(取調べ可視化がなされていない以上、それは永遠に闇の中です)、取調官は、冤罪と分かっていながら、シロと分かっていながら虚偽自白を強要したという可能性はゼロであるということを理解すべきです(注)。

彼らは、(物的裏付けがなかったにせよ)真正、彼ら二人を保険金殺人の犯人だと思って、「正義」のために取調べを行ったのだと私は信じています。憎むべき犯罪を摘発すべく、誠意と熱意を持って取調べを行った結果、虚偽自白が生まれたということは重要視されるべき事実です。

そしてこの冤罪が裁判所によって明らかにされたのは、科学実験によってアナザ―ストーリーが認められたからではないことも重要です。

科学実験は、火災が自然発火である可能性を示しましたが、それだけでは裁判所は動かなかったであろうと思われます。それが、日本の刑事司法の限界です。つまり、「疑わしきは罰せず」では無罪はありえないということです。科学実験により、朴氏の自白通りの犯行様態は不可能であるという、無罪の立証責任が依然弁護側には課されているということが、日本の刑事司法の問題点として依然挙げられるものです。

もう一度言います。この事件では、「自然発火という可能性がある」という疑わしきは罰せずという刑事司法の大原則に基づいてのみでは無罪とは成りえず、「自白通りの犯行様態は科学的に不可能である」という無罪立証がなされたことにより、ようやく再審開始(=事実上、無罪判決)が実現したということです。

この事件に関する私の以前のブログにも、冤罪説を否定するコメントは多く書き込まれています。それに対するリアクションとして、この「Yahoo!知恵袋」の回答は相当イカしています。

「貴方のお部屋で再現実験したら如何でしょうか」

ここをクリック→ Yahoo!知恵袋 「東住吉放火殺害事件、なんで冤罪にされたのですか」

この事件が冤罪であることが立証できたのは、幸運にも警察・検察の捜査官がガソリン燃焼に関する知識がなかったためです。もし捜査官にガソリン燃焼に関する科学的知識(密閉された車庫でガソリンを撒けば、車庫そのものが爆弾となる)があり、「朴氏は、(7.3リットルではなく)1リットル程度の少量のガソリンに着火して放火を図った」という自供を取ったなら、この冤罪は発覚しない完全犯罪ならぬ「完全冤罪」であったということは銘記すべき点です。

この事件の経緯を見ても、明らかにされた冤罪は氷山の一角であり、解明されていない冤罪の暗数は相当なものであると思われます。冤罪が国家の犯す絶対悪であることは、議論の余地がないことです。そしてその「国家の絶対悪」を減らすために、我々国民ができることは何かを日々意識する必要があるのではないでしょうか。日々とは言わないまでも、こうした事件が注目されたこの時だけでも。一緒に冤罪のない社会を目指しましょう。是非お願いします。

弁護団の再現実験に関しては、『季刊 刑事弁護 第71号』に詳説記事が掲載されています。
ここをクリック→ 『季刊 刑事弁護 第71号』特集「使おう!科学的証拠」事例報告 燃焼再現実験 東住吉事件

百聞は一見にしかず。テレ朝『ザ・スクープ』による再現実験を見て、あなたが裁判員だとして有罪を言い渡すことができますでしょうか。また、少なからずの人が疑問を持った「なぜ子供にそれだけの生命保険を掛けていたか」にも、担当保険外交員が直接取材に答えています。
ここをクリック→ 『ザ・スクープ』「「ママは犯人じゃない~火災実験が語る“放火殺人”の真相~」

(注)
その点では、捜査の早い段階からゴビンダさんが犯人ではないという証拠(遺体の乳房に付着していたゴビンダさんの血液型=B型とは違う血液型=O型の唾液)がありながら、それを隠して冤罪を作った東電OL殺人事件や、やはり捜査の早い段階で大越美奈子さんのアリバイが成立することが分かっていながら、それを示す証拠を隠して冤罪を作った恵庭OL殺人事件とは異なると言えます。

但し、この時点では検察も青木さんや朴さんが犯人ではない、そして事件そのものがないことは重々知っているはずで、この期に及んでの刑の執行停止に対する異議申立、再審開始決定に対する異議申立は犯罪行為以外の何物でもないものです。

東電OL殺人事件→ 
ここをクリック→ #検察なう (294) 「犯人血液型当てクイズ」

恵庭OL殺人事件→
ここをクリック→ #検察なう (489) 「恵庭OL殺人事件再検証 (4) ~アリバイ」

10/26/2015


















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2015/10/26 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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