「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (542) 「恵庭OL殺人事件で再審請求棄却が確定」 6/16/2016 

#検察なう (542) 「恵庭OL殺人事件で再審請求棄却が確定」 6/16/2016

昨日6月15日の報道で、まことに残念なことに、恵庭OL殺人事件の再審請求棄却が確定したことが伝えられました。

2012年10月に再審開始を請求して以来争われてきた再審請求審でしたが、2014年4月に地裁レベルで棄却。以降、高裁へ即時抗告(棄却)、最高裁へと特別抗告が行われ、この13日付で最高裁第1小法廷(山浦善樹裁判長)が棄却決定したものです。

ここをクリック→ 産経ニュース「北海道・恵庭OL殺人事件、元同僚の再審請求棄却が決定」

この事件は、科学的事実を裁判所が完全に無視した冤罪です。わずか10Lの灯油で、人の遺体の内臓まで炭化するほど燃焼できるとする裁判所の判断は、ほとんど、電線の下を通る時に有害だからと扇子をかざした明治の人レベルのものだと感じます。

また、冤罪被害者である大越美奈子さんにはアリバイがありましたが、そのアリバイをかろうじて成立しなくするために、関係者の供述は捜査権力により次々変遷させられています。

裁判所の「受刑者を犯人と示す複数の間接事実がこれだけ偶然に重なることは考えがたい」とする「複数の間接事実」とは、具体的に何を指すのかは記事からは不明ですが、私の検証する限り、大越さんの犯行でないとするならば矛盾する事実は一切なく、逆に彼女の犯行であるとするならば矛盾する事実は多々あります。そうした消極証拠には目を向けず、「結論=有罪ありき」で、大越さんの犯行であっても矛盾がない積極証拠のみを拾い上げて裁判所が判断したことは明らかです。

大越さんと弁護団には、これからも心を強くして、真実を明らかにする努力を続けてほしいと強く思います。

ここをクリック→ 冤罪ファイル その13 「恵庭OL殺人事件」

ここをクリック→ #検察なう (486) 「恵庭OL殺人事件再検証(1)~再審請求で原告側即時抗告を棄却」

ここをクリック→ #検察なう (487) 「恵庭OL殺人事件再検証(2)~燃焼実験」

ここをクリック→ #検察なう (488) 「恵庭OL殺人事件再検証(3)~燃焼実験 その2」

ここをクリック→ #検察なう (489) 「恵庭OL殺人事件再検証 (4) ~アリバイ」

ここをクリック→ #検察なう (490) 「恵庭OL殺人事件再検証 (5) ~プロファイリングにより真犯人像に迫る」

6/16/2016














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2016/06/16 Thu. 07:39 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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#検察なう (490) 「恵庭OL殺人事件再検証 (5) ~プロファイリングにより真犯人像に迫る」 8/17/2015  

#検察なう (490) 「恵庭OL殺人事件再検証 (5) ~プロファイリングにより真犯人像に迫る」 8/17/2015

恵庭OL殺人事件には重要な証拠が数々あります。それらの証拠を元に事件を俯瞰し、再検証の最後として、プロファイリングにより真犯人像に迫ることを試みたいと思います。

まず、この事件は突発的に起こったものでしょうか、それとも計画的に行われたものでしょうか。

殺害から遺体焼損まで短時間(約1時間半)になされ、燃焼に使われた燃料がガソリンまたはジェット燃料であるということから、計画的に行われたと考えることが合理的だと思われます。

ガソリンをガス欠対応のために予備タンクに保管している人はいるでしょうが(違法行為ですが)、その場合でも、その量は次のガソリンスタンドに辿り着くに十分な少量だと考えられ、やはり遺体を焼損するための分量となれば、それを事前に準備していたと考えられます。

燃料は、アイスバーンの地面にこぼれ落ちたものが引火したことから、引火温度が40度以上という灯油ではなく、マイナス40度程度のガソリンか、マイナス20度程度のジェット燃料(ワイドカット系)と考えられますが、可能性としては、やはり入手が容易なガソリンの可能性が高いと思われます。しかし、ジェット燃料の可能性があるということは非常に重要です。「ジェット燃料の入手が可能な人物」が犯人像として浮かんでくるからです。

犯行が計画的であったとすれば、犯人は男性であると断じてもいいと思います。それは殺害方法が絞殺だからです。殺害を意図し(遺体焼却の準備までしているわけですから、最初から殺意をもっていたと考えていいと思います)、それを確実に遂行するために、絞殺を選ぶという場合は、体力が相手より十分に優っているということが条件です。

つまり、「体重47kgでどんぶりも持てないほどの握力しかない女性が、自分より体力的に勝る体重60kgの女性を殺害する方法として、絞殺を選ぶことは考えられない」ということです。もし犯人が被害者より体力的に劣る女性であれば、当然、体力をカバーする凶器(毒薬や刃物)を用意して凶行に及ぶということがより合理的です。

弁護団の推理は、被害者が強姦された可能性があり、だから犯人は男性(つまり大越美奈子さんは犯人ではない)という主張をしていますが、私にはすっきりしないところがあります

それは性犯罪と計画的犯行による殺害が結び付きにくいからです。性犯罪の被害者が殺害されるのは、「騒いだため突発的に」という可能性が高いのではないでしょうか。勿論、最初から殺害することを前提で強姦のターゲットを選ぶということもありえますが、犯人は正業に就いている者であると考えられ、やはり殺害が主たる目的だと考えるべきだと思います(遺体焼損においては陰部の炭化が著しいということから、性犯罪の要素は排除するものではなく、ただそれが主目的ではないということです)。

犯人が通りすがりの異常者ではないことは、被害者の携帯が、犯行後会社の社員控室の被害者制服ポケットに返されていたことから伺われるものです。そうした被害者の携帯電話の状況により、警察は、犯人を会社内の人間であり、しかも女性であると見定めました。しかし、関係者の供述から、社員控室は男性も出入りでき、取引業者であれば、その場所は知っていたということが分かっています。見知らぬ者の犯行ではないという見立てはよかったのですが、対象を絞り過ぎたということです。つまり犯人は、取引業者も含めた会社関係者だと考えられます。

犯人は、なぜ被害者の携帯を被害者の元に返したのでしょうか。犯行時間以降に、発信履歴があることから、被害者が生存していた時間を工作し、自分のアリバイの助けにしようとしたとしか私には考えられませんが、それでもこの事件のミステリーの一つです。

犯人は捜査が進んでいき、容疑の対象が大越さんに絞られていく中で、彼女に罪を着せるべくいくつかの偽装工作(被害者の遺留品を大越さん自宅近くで焼却しその痕跡を残す、被害者のロッカーキーを大越さんの車のグローブボックスに入れる)をしますが、この携帯電話を返した犯行当日深夜ないし早朝の段階では、大越さんに罪を着せるつもりだったかは疑問です。

私には、いたずら電話を200回以上掛けた着信側の携帯電話を、いたずら電話を掛けた本人が犯人であればわざわざ返却するとは到底考えられません。どうせ通信記録を調べれば、いたずら電話の件は発覚するはずですから、もし初めから大越さんに罪を着せるつもりなら、携帯電話を隠した方がむしろ犯人らしい行動だと言えます。

大越さんは、当初の警察の取り調べでは、被害者の電話番号を知らなかったと嘘をついていましたが、どうして携帯電話を返した犯人がそのような嘘をつくことがありえるのでしょうか。この携帯電話が返されていたことは、私には大越さんの無実の証拠としか考えられませんが、一般常識にはかからない常軌を逸した主張・判断がなされるのが刑事司法の現実です。

犯人は被害者の顔見知りであり、被害者の近況(事件5日前に新しい交際を承諾)を好ましく思っていなかったことが動機となったという警察の見立ては正しいと思います。しかし、事件の3日後頃には既に大越さんに捜査の対象を絞ったということが間違いだったと思われます。警察は、被害者の会社関連の男性知人との関係、特にストーカー被害にあっていなかったかどうかといった捜査をすべきだったと思います。

遺体焼損に際しては、顔に(目隠し様に)布が掛けられ、顔部の焼損状況も頸部・陰部に比較するとさほどでもなかったということは、焼損が単なる証拠隠滅のためだけではなく「弔い」の要素を含む複雑なものを感じさせます。その事実も私が、犯人は女性ではなく、被害者女性に(一方的な)思慕を寄せる男性だと考える根拠の一つです。

被害者女性及びその家族にとっては、言葉では尽くせない不幸な事件ですが、真犯人が野放しとなっている冤罪は、冤罪被害者の大越さんだけではなく、被害者、被害者家族も冤罪の被害者であるという二重の不幸を生みます。誰かを犯人に仕立て上げて有罪にすれば一件落着という感覚では、冤罪を繰り返すだけだと考えます。

しかし、その背景には犯人を見つけなければならないという捜査機関のプレッシャーがあると考えられます。犯人が見つけられない場合、捜査機関への批判は相当なものがあると思われますが、それが冤罪の遠因となっていることは非常に難しい問題です。

8/17/2015













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2015/08/17 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (489) 「恵庭OL殺人事件再検証 (4) ~アリバイ」 8/13/2015 

#検察なう (489) 「恵庭OL殺人事件再検証 (4) ~アリバイ」 8/13/2015

恵庭OL殺人事件の冤罪被害者大越美奈子さんのアリバイは、完全に成立しています。

争いのない事実は、大越さんが事件当日午後11時30分43秒にガソリンスタンド(ガソリンキング恵庭店)に入店した様子がビデオに写っていたことです。

そして犯人はこの午後11時30分の時点では、まだ遺体の焼却現場に立ち止まっていたと考えられます。それは目撃者の証言から、遺体の焼却は11時15分頃から開始され、燃料が追加投入され大きくなった炎が数度、最後は午前0時5分頃目撃されているからです。

ガソリンスタンドに立ち寄る前に大型書店で立ち読みや文具を見ていた大越さんを、遺体の焼却されていた時間にガソリンスタンドから約13.8km離れた遺体の焼却現場にいたとする検察の主張と裁判所の判断は無理に無理を重ねるものでした。

まず遺体の焼却開始時間の目撃証言を10分早めて11時5分頃に変えさせ、犯人は「殺人及び死体損壊の嫌疑が自分に迫ることを免れるため可及的速やかに現場から離れたい」という心理状態であったため、遺体焼却開始後ただちに現場を離れたとし、遺体焼却開始時間後に目撃された2台の車は、犯人ではなく「ゴミを燃やしているのだろう」とする見物人であり、3月の夜中の北海道であっても道路は全行程乾燥しており、街灯の少ないあるいは全くない無舗装の道であっても事故を起こすリスクなど考えもせず法定速度を大きく越える速度で走行してガソリンスタンドに辿り着いたというものです。そして、現場不在証明を不成立とする最も重要な主張が、前回までのブログで紹介した、遺体の脂肪が独立燃焼することにより燃焼の途中でも炎が大きくなりえるというものです。

検察の主張通り、もし犯人が現場を11時10分頃に立ち去ったとしても、弁護側鑑定人中辻隆氏(北海道大学教授、土木・交通工学、注)の走行実験では、20分を越える時間が必要であり、アリバイは成立すると弁護団はその鑑定書を再審請求の新証拠として提出しています。ところが裁判官は、燃焼実験の結果同様、この科学鑑定も「ぶっ飛ばせば20分以内で到達することは可能」と、「素人の常識」で一蹴しています。

事件翌日の現場付近の捜索の様子(2000年3月17日撮影)

現場付近 2000年3月17日撮影

(路面が凍結している様子が伺えます)

そもそも、遺体を焼却した犯人がその直後に現場近くでのんきにガソリンを給油するという発想自体常軌を逸していると感じますが、法廷というところは我々の一般常識を大きく逸脱した主張や判断が平然となされることは、私も自分の経験から知っていることなので、さして驚くことではありません。

アリバイに関して最も需要な二つの証拠は、大越さんがガソリンスタンドに入店した模様を録画したビデオと、散歩の前後及び途中で炎の様子を目撃した目撃証言です。そしてその両方の証拠とも検察により公判に提出されることなく一旦は隠蔽され、前者は第一審有罪判決後の控訴審で開示され、後者は有罪確定後の再審請求審になって初めて開示されたものです。

なぜ検察は、これらの証拠を公判に提出することなく隠蔽したのでしょうか。それは、これらの証拠を提出すればアリバイが成立し、大越さんの無罪が立証されるということを彼らが十分に理解していたからにほかなりません。

つまり、これら証拠の内容を精査するまでもなく、検察がそれらを隠蔽していたということだけをもってして、大越さんのアリバイは成立していると考えていいと言えます。

以下は、特別抗告申立書のアリバイに関する部分の冒頭に書かれた文章です。

「請求人に関するアリバイの成否は、確定第一審以来激しく争われてきた、本件における最大の争点の一つである。そして、現段階で明らかになった全ての証拠を総合して考察すれば、請求人のアリバイが成立することは明らかである。弁護人は、現段階で裁判所に提出されている証拠が確定審段階で全て取り調べられていれば、あの確定審裁判官であったとしても、請求人に有罪判決を言い渡すことはなかったであろうと考え、無念の思いに駆られている。」

郵便不正事件では、検察による証拠捏造が大問題となり、世間の批判が集中したことは記憶に新しいところですが、無実を示す証拠の存在を知りながら、有罪立証の妨げになるからと証拠を隠蔽する行為は、証拠捏造と何ら変わらない犯罪行為です。そしてそれが現在日本の刑事司法では当然のように行われているという実情を、我々は周知する必要があると思います。

ここでは、再審請求審の段階で明らかになった目撃証言に関する内容を特別抗告申立書から引用します。

「Hは、本件死体焼損現場から約558メートルの南方にある自宅から、飼い犬を散歩させるため外出した際、本件死体焼損現場方向に燃え上がる大きな炎を目撃した重要証人であった。しかし、先に述べたとおり、画定審では、捜査段階で作成された調書のごく一部(捜査の最終段階で作成された検察官調書だけ)しか開示されていなかった。

ところが、原原審(引用者注:再審請求審)裁判長の訴訟指揮に基づいて開示された同人の初期供述の結果、次の諸事実が明らかになった。すなわち、

①  同人は、事件翌日の事情聴取の段階で、「午後11時15分頃に納屋の間口と同じくらいの大きさと形の大きな炎を見たとして、それは「太陽が地平線に落ちるときのようなオレンジ色」であった旨、極めて印象的な目撃供述をしていたこと、

②  その後警察官が目撃位置の特定をするための引き当たりをした際には、その約8分後である午後11時23分頃、最初の炎の3分の1くらいの大きさの炎を見た旨供述していたこと、

③  また、午後11時42分頃、最初に見た時と同じくらいの大きさの炎を、さらに、翌17日午前零時5分頃、自宅から最初の炎の3分の1くらいの炎を見た旨供述していたこと

が明らかになった。

このように、Hは、最初に炎を目撃した午後11時15分ころだけでなく、その後約1時間にもわたって、大きな炎を何度も目撃した旨具体的に供述していた事実が明らかになったのである。これは、犯人が、死体に着火した後も現場に止まり続け、燃料を補給しながら念入りに死体を焼損した事実をきわめて有力に示唆するものである。そして、その想定は、本件死体が完全焼損に近い状態であった事実ともよく符合する。これらの事実によって、午後11時30分頃にガソリンキングにいたことが確実な請求人に完全・完璧なアリバイが成立する筈である。」

新証拠によってアリバイが成立することが立証されても、「疑わしきは確定判決の利益に」という裁判所の論理で再審請求は棄却され、冤罪被害者の救済がなされることはないというのが日本の刑事司法の厳しい現実です。

次回以降のブログで、この事件の再検証の最後として、プロファイリングにより真犯人像に迫ってみたいと思います。

(注)
中辻隆氏
研究に「凍結路面状態における交通渋滞と旅行時間の動的予測手法に関する研究」等あり。
ここをクリック→ 中辻研究室

8/13/2015

















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2015/08/13 Thu. 07:03 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (488) 「恵庭OL殺人事件再検証(3)~燃焼実験 その2」 8/10/2015  

#検察なう (488) 「恵庭OL殺人事件再検証(3)~燃焼実験 その2」 8/10/2015

前回ブログでは、この事件の真実を探るための非常に大きな鍵である遺体の焼損状況と、弁護側が行った燃焼実験について述べました。

ここをクリック→ #検察なう (487) 「恵庭OL事件再検証 (2) ~燃焼実験」

ブログを読んでくれた熱流体工学の専門家である石田博樹氏(注)からメッセージを頂き、弁護側証拠として提出された彼の意見書を目にする機会がありました。

ここをクリック→ 石田再意見書(2015年4月27日)

その意見書は、私が一般的な感覚で感じたことが、科学的に立証されることを示すものでした。そして私が驚いたことは、再審請求に提出されたこの意見書を読みながら、裁判官はその科学的事実を無視して、人一人を冤罪に陥れたという事実です。こうなると、日本の刑事司法は、科学的事実を無視して天動説を是としたガリレオ・ガリレイの異端審問と何ら変わらないとさえ感じてしまいます。

検察の主張に基づき裁判官が認定したことは、「脂肪の独立燃焼」(10Lの灯油散布による焼損でも、遺体の脂肪が燃え続けるため、遺体の内臓が炭化するまで燃焼し続け、約9kg=15%の重量減をもたらすほどの焼損が可能)でした。

以下の質問にあなたはどのように答えるでしょうか。

「肉の脂身2.3kg(「23kg」ではありません、その1/10の「2.3kg」です)と灯油29リットル(一斗缶1個半)を燃焼させた場合、どちらの方が発生する熱量は多いでしょうか」

それらを同じとするのが大越美奈子さんを有罪とする判決です。

また、10Lの灯油を一度に散布した場合、相当量が地面にこぼれることが想定されますが、検察もそれを認識していたことが意見書から伺えます。そして「弁護団の実験によれば衣服を着せたマネキンに灯油10リットルをかけた場合、実際に着衣に灯油が滲み込む量は4リットル程度であり、他の6リットルは地面に落ちて滲み込んだ」とされます。雪で覆われた地面に落ちた灯油が引火しないことは、前回のブログで述べた通りです。10Lでも無理なことは、4Lならなおさらというものです。

また私が重要視している遺体焼損現場付近の地面の露出状況に関しても、石田氏の意見書では明快に解説がされています。

「雪に覆われた地面に置かれた遺体に燃料をかけて焼損するという状況下において、周囲に特定方向への強い風が吹いている場合でなければ、通常、火炎はその周囲に誘起される対流(上昇気流)により遺体の上方に伸びる。そのため、火炎からの熱により遺体周囲の雪が融解したことによる地面の露出部分は、遺体の直下、ないしはごく周辺に限られる。」

「遺体の手前部分(道路側)では燃焼物がないにもかかわらず黒い地面が広く露出しているという事実は、焼損中に遺体が動かされたことや、燃料が灯油ではなくガソリンないしジェット燃料であったことを示唆している。」

無実の証拠をこれでもかと提出しながら一顧だにされない日本の刑事裁判の実態が放置されているのは、看過している我々の責任かもしれません。まず知ることからだと思います。

(注)
ここをクリック→ 石田博樹氏(長岡工業高等専門学校名誉教授)

8/10/2015














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2015/08/10 Mon. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (487) 「恵庭OL殺人事件再検証(2)~燃焼実験」 8/6/2015 

#検察なう (487) 「恵庭OL殺人事件再検証(2)~燃焼実験」 8/6/2015

前回ブログに引き続き、恵庭OL殺人事件を再検証します。
ここをクリック→ #検察なう (486) 「恵庭OL殺人事件再検証(1)~再審請求で原告側即時抗告を棄却」

この事件で最大の鍵を握る証拠の一つが、遺体の焼損状態でした。被害者橋向香さんの遺体は殺害後、何らかの理由で(その理由も重要だと考えますが、ここでは敢えてそれを推認することは保留します)、犯人により焼かれていました。

橋向さんは身長165cm、体重60kg、学生時代には陸上部に所属しており、筋肉質の体格でした。その遺体は、焼損の結果9kgも重量を失っていました。その重量減少が物語っているように、焼損状態は内臓までも炭化するほどでした。検察の主張に基づき確定判決が認定したことは、「灯油10Lを死体に散布して着火し焼損した(そして犯人は5分間だけ現場にいた)」というものでした。そして大越美奈子さんが、事件直前に灯油10Lを購入したことが、有罪立証の最重要証拠の一つとされました。

はたして灯油10Lを一度に散布して燃焼した程度で、内臓まで炭化し15%もの重量が失われるのでしょうか。被害者の遺体を扱った納棺業者は、「灯油を何回もかけ時間をかけてじっくり焼いたか、ガソリンかジェット燃料で焼いたように思われる」旨、供述しています。

弁護団は公判に提出する証拠として、豚の死体を使った燃焼実験を繰り返しましたが、確定判決では「豚と人間とでは皮膚の厚さや体毛が違うから、豚を使った実験は、被告人の無実を証明するものではない」と退けられました。裁判官の論理は、実施不能な人体実験による立証を要求するかのようです。

再審請求に際し、弁護団は更に燃焼実験を行うと同時に伊藤昭彦氏(弘前大学教授、燃焼学・混相流工学、東住吉事件で弁護側鑑定人、注1)に科学鑑定を依頼します。

弁護団が行った燃焼実験では、豚の皮を剥いだ上での実験も試みられました。その燃焼実験の模様がこちらです。

ここをクリック→ 燃焼実験の模様(『北方ジャーナル』)

弁護団の燃焼実験あるいは燃焼工学の権威による科学鑑定でも、灯油10Lによる燃焼では9Kgもの重量減少とはなり得ず、結果はそれとはかなりかけ離れた4Kg弱の重量の減少でした。

この弁護側の新証拠を退けるために裁判官が採用したのが「脂肪の独立燃焼説」です。これは、検察側証人須川修身氏(東京理科大学教授、社会システム工学・法火災科学、東住吉事件で検察側証人、注2)が供述した、実験に基づかない「灯油が燃焼し終わった後にも、体脂肪が独立に燃焼し続けるから、灯油10Lでも、本件死体のような焼損状態を惹起することはあり得る」という仮説によるものです。

「バーベキューで肉を焼いていて、燃料の炭がなくなっても肉の脂がそのまま焼け続けるから真っ黒こげになりうる」とでもいうような、一般常識からはかけ離れた仮説が、実験結果に基づいた科学的事実を否定するというのですから、裁判官の「自由心証」というのは恐ろしいものです。

特別抗告申立書で弁護団は、裁判官の姿勢を次のように激しく批難しています。
「当然のことではあるが、科学的争点について専門家の意見が大きく対立している場面において、科学に素人である裁判官が「素人の常識」によって独断的に判断することは許されない。裁判官は、その問題について専門的知識がないことを自覚した上で、謙虚に専門家の意見を聴き、その上で慎重に判断するべきである」(注3)

遺体の焼損状況は、次回以降のブログで再検証するアリバイとも深く関係してきます。大越さんの現場不在証明を成立させないためには、彼女が犯人だとすれば、遺体に火を放った後、ただちに現場を立ち去る必要があります。もしただちに現場を立ち去ったとしても、実に微妙な時間的制約の中で(ただちに立ち去ったとしても、検察が犯行時間を15分ずらすよう画策しなければアリバイが成立するくらい)、まして遺体を十分に焼損させるべく、その場に立ち止まっていたとすれば、大越さんの完璧なアリバイが成立します。

そして検察が隠していた目撃者の証言の中に、散歩の前後及び途中で数回炎を目撃し、最初に炎を見た後(最初の炎の大きさが「ビニールハウス2棟分の高さ」)、一旦納まりかけた炎が、50分後にも当初の1/3の程度に大きくなったというものがあります。

判決では、この長時間の燃焼は「脂肪の独立燃焼」によるものであり、結果、15%もの重量減少を引き起こしたとされました。

百歩、いえ十万歩譲って「脂肪の独立燃焼」によって長時間の燃焼が可能だったとしても、追加の燃料投与なしに、炎が再度大きくなることはありえません。燃焼実験では、炎の大きさは着火後短時間のうちに最大となり、「着火後3分で炎は最初の高さの半分以下(100cm)となり」、以降は「間欠的に燃えてはいたが、炎の大きさは最大でも30cmに満たない大きさであった」とされています。

これら「灯油10Lを一度に散布して燃焼させ、15%もの重量減が生じた」であるとか、「一旦小さくなった炎が、燃料の追加なしにひとりでに大きくなった」といった非科学的な「素人の常識」が判決の基礎になっていることは、もはや裁判所の信頼を著しく損なわせているとしか言い様がありません。

そして、更に私が重要視しているのが、遺体焼損現場付近の地面の露出状況です。

判決では、「被害者の遺体から燃え上がった炎が北側から吹いてきた風にあおられて、南南西に流れ出していた灯油に引火したことにより、元々厚みが小さかった南南西側の雪が北北西側の雪よりも早く溶け終り地面が露出するととも、その部分に黒いすすが付着したと認定することが出来る」とされました。

遺体が焼かれたとされるのは3月の北海道の夜の11時頃です。「地面に流れ出していた灯油に引火」は科学的にありえません。それは灯油の引火点が40度以上だからです。

ここをクリック→ Wikipedia 「灯油」

燃料が地面に漏れ落ち、それに引火したために、地面の一部が黒くすすけたとするならば、それは引火点が相当低い燃焼物でしかありえません。つまりそれはガソリン(引火点-40度以下)ないしワイドカット系のジェット燃料(引火点-20度程度)であり、遺体を処理した納棺業者の供述とも一致します。

ここをクリック→ Wikipedia 「ガソリン」

ここをクリック→ Wikipedia 「ジェット燃料」
(「ケロシン系」のジェット燃料の場合、引火点は灯油とほぼ同じです)

大越さんが事件前に灯油10Lを購入したということが有罪立証の最重要証拠の一つですが、遺体が焼かれた燃料は灯油ではないということが、遺体焼損現場付近の地面の露出状況から推認できます。

恵庭OL殺人事件は「科学裁判」であり、大越さんの無実は科学的客観証拠で立証されていながら、裁判官の結論ありきの非科学的なこじつけにより真実がねじ曲げられたものということがお分かり頂けたのではないでしょうか。

(注1)
ここをクリック→ 伊藤昭彦氏

(注2)
ここをクリック→ 須川修身氏

(注3)
特別抗告申立書より
「原決定は、「伊藤鑑定は、灯油の有無に関わりなく死体の脂肪が独立に燃焼することによる熱量を考慮せず、脂肪の燃焼による水分や脂肪等の減少を考慮していない点で、不合理と言わざるを得ない」として信用性を否定している。しかし、この判断も不当極まりないというほかない。

なぜなら、伊藤教授は、原審新弁第4号証において、きちんと上記の燃焼における体重減少量を脂肪の燃焼の点も含めて具体的数値で示しているからである。すなわち、「体重減少分9kgの脂肪の量は約2.3kgであり、脂肪は灯油の発熱量の80%であるから地面に流れた脂肪を度外視して灯油に換算した燃料の総量は9.8kgになる(灯油10L [8kg] +2.3kg x 0.8 = 9.8kg)。その結果、灯油10Lと脂肪2.3kgの燃焼による水分の蒸発分は1.38kgとなるため、脂肪の燃焼による体重の減少分2.3kgをこれに加えると、体重の減少は3.7kgになる」旨を、きちんとした計算式を用いて数値で示している。しかもこの数値は、弁護団がアイスバーン状の雪の上で皮を剥いだ52.5kgの豚を灯油10Lで焼いた燃焼実験における体重減少値3.52kgとほぼ符合しており、正確性が高い。このように伊藤教授は原審新弁第4号証と同第18号証において、灯油10Lと脂肪が燃焼した場合の体重減少量を合理的に算出しているものであって、原決定の上記判断は明らかに誤りである。」

8/6/2015















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category: 恵庭OL殺人事件

2015/08/06 Thu. 00:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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