「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

02« 2017 / 03 »03
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

#検察なう (548) 「第9回公判傍聴記「検察側重要証人の証言」~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(6)」 9/5/2016  

#検察なう (548) 「第9回公判傍聴記「検察側重要証人の証言」~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(6)」 9/5/2016

先週大阪入りして、一審継続中の「国循サザン事件」の公判を傍聴してきました。

まず事件のおさらいです。

大阪府吹田市にある国立循環器病研究センター(通称「国循」)は、現在全国に6つある国立高度専門医療研究センターの一つです。先端医療に従事しながら、彼らの情報・管理システムは相当旧態然としたものでした。2011年の電子カルテの導入にあたり、医療情報・管理システムのスペシャリストとしてヘッドハントされたのが桑田成規さんでした。彼は、大学卒業後、カナダのヴィクトリア大学に研究員として赴任し最先端の医療情報学を習得した後、大阪大学、鳥取大学といった大学病院で実績を挙げました。彼が国循移籍以降、彼を中心としたメンバーの懸命の努力により、ほぼ不可能と言われていた短期間での電子カルテ導入が成し遂げられました。

彼の国循移籍以前、15年以上に亘り情報・管理システムの導入・保守を一手に引き受けていたのがNECでした。しかし、桑田さん移籍後の競争入札で、NECは競り負け、より価格競争力のあるダンテック社が国循の情報・管理システムの導入・保守を請け負うことになりました。

そして2014年2月、桑田さんは突然逮捕されてしまいます。彼に掛けられた嫌疑は、官製談合防止法違反(正式名称は「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」)でした。競争入札に際し、入札に係る情報をダンテック社に有利になるよう漏洩したというものです。桑田さんと同時に逮捕されたのが、ダンテック社の社長高橋徹さんと、ダンテック社から国循に常駐していたスタッフのWさんでした。

桑田さんと高橋さんは嫌疑を否認し、その後起訴されました。今回私が傍聴した公判で、検察側証人として証言をしたのは、逮捕されていながら起訴されなかったWさんでした。Wさんが起訴をされなかったのは、検察のストーリーに沿う供述調書を取られたからであると容易に想像されます。

この事件では、官製談合を裏付ける情報漏洩を直接的に示す客観証拠は一切ありません。そして情報を漏らしたとされる桑田さんと、受けたとされるダンテック社の二人のうち高橋社長は否認をしています。客観証拠が全くない以上、検察は、関係者の証言を築き上げて二人の有罪立証をしようとしており、その予定人数は30人に上ると聞いています。その中で、情報漏洩を受けたとされるダンテック社の「落ちた」検察側証人のWさんは最重要証人と言っても過言ではありません。

これまでの経緯から、検察の有罪立証は相当無理筋であると感じていますが、検察側証人の中でも最重要と考えられる証言がいかなるものか、検察のお手並み拝見とばかり、興味を持って傍聴しました。

これまでも数人の検察側証人の証言が公判で行われ、あまりの内容のなさ、核心をはずした証言が続いていることは聞いていましたが、実際に傍聴して、検察尋問のあまりのお粗末さに驚きました。これが証人テスト(注)をした検察側証人の証言なのだろうかと。

検察主尋問は、Wさんと桑田さんの間で交わされたメールを元に進められましたが、そのメールの内容は、業務上の通常のコミュニケーションを越えるものではなく、到底、彼らの間で違法行為が行われたという痕跡が伺えるものではありませんでした。

例えば、桑田さんがWさんに送ったメールに添付した入札の仕様書が修正済みであったことをもって、躍起になってその修正を行ったのが桑田さんであるという証言を引き出したがっている検察官の尋問に対し、「(検察は)桑田先生が修正したと考えていらっしゃるんですよね。(しかし私には)それは分かりません」と答える一幕もありました。仕様書の修正をすることが、いかなる不正行為につながるのか、私には不明ですが、そうした細かなところにばかりこだわればこだわるほど、全く核心的な証拠がないことが浮き彫りになるように感じました。

核心から遠い、全くメリハリのない検察の尋問に、傍聴人の多くが寝落ちしていました。私も休憩時間に、思わず地下の売店でレッド・ブル・チャージをしたほどです。

redbull.jpg

これまで検察側証人尋問による内容の薄い公判が続いていると聞いていますが、弁護側の反対尋問で明らかにされた事実もあります。桑田さんの無実性とは直接関係はないものの、事件の重要な背景の一つだと考えられるものです。

それは桑田さんの国循移籍以前の「落札率」です。競争入札において、国循は「予定価格」を内々に設定しています。「予定価格」とは、それ以上の金額で入札した業者をはじくためのいわゆる足切りラインです。競争原理がある以上、高い入札金額で入札した業者はただ単に負けるだけですが、無茶苦茶な低価格入札(例えば「1円入札」)を除外するためにも、「予定価格」は設定しておく必要があります(低価格入札の足切りラインは60%)。

実際に落札された価格を予定価格で割ったものが「落札率」になります。競争が厳しくなればなるほど、低価格で受注しようとするため、落札率は100%を下回ってきます(上回ることがないのは、予定価格以上での入札は除外されるため)。

ダンテック社が競争入札で落札する以前、NECの落札での落札率はなんと99.9%でした。これは入札する業者間に競争が全くなく、かつ、いくらで入札すれば落札することができるということを知らなければあり得ない数字です。つまりNECは、国循内部の情報である「予定価格」を知っていたということです。

それを報道したのが添付の記事です。
ここをクリック→ 産経ニュース「国立循環器病研究センターが不明朗入札公判で実態が明らかに」

ちなみに、ダンテック社が落札した競争入札の落札率は87.4%でした。

この事件の私の見立ては、国循の情報・管理システムの導入・保守に関して「官製談合はあった」。しかし、それは桑田さんが国循に移籍する以前のことであり、桑田さんはそれを正そうとした結果、大阪特捜の誤った見立てによりターゲットとされたというものです。

国循サザン事件は、大阪特捜による郵便不正事件以来、初めての独自捜査事件です。検察の体質が全く変わっていないことを如実に表した事件として、これからも注目していきたいと思っています。

Kuwata 8-25-16

国循サザン事件に関するこれまでのブログ。

ここをクリック→ #検察なう (535) 「特捜に正義はあるのか~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(1)」

ここをクリック→ #検察なう (536) 「初公判傍聴記 巨悪を眠らせる特捜~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(2)」

ここをクリック→ #検察なう (537) 「報道に見る特捜の思惑(弁論の併合)~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」 (3)」

ここをクリック→ #検察なう (538) 「訴因変更に見る特捜の弱気~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(4)」

ここをクリック→ #検察なう (539) 「桑田氏自身による経緯説明~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(5)」

(注)
ここをクリック→ #検察なう (362) 「検察「証人テスト」の問題点と対抗策」

ここをクリック→ #検察なう (533) 「美濃加茂市長事件控訴審で異例の展開~「証人テスト」とはどういったものか」

9/5/2016









ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 国循サザン事件

2016/09/05 Mon. 19:04 [edit]   TB: 0 | CM: 1

go page top

#検察なう (539) 「桑田氏自身による経緯説明~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(5)」 5/24/2016  

#検察なう (539) 「桑田氏自身による経緯説明~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(5)」 5/24/2016

これまで4回に亘り、冤罪現在進行形の「国循サザン事件」について論じてきました。

ここをクリック→ #検察なう (535) 「特捜に正義はあるのか~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(1)」

ここをクリック→ #検察なう (536) 「初公判傍聴記 巨悪を眠らせる特捜~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(2)」

ここをクリック→ #検察なう (537) 「報道に見る特捜の思惑(弁論の併合)~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」 (3)」

ここをクリック→ #検察なう (538) 「訴因変更に見る特捜の弱気~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(4)」

ここで、刑事被告人という立場に置かれた冤罪被害者の桑田さん自身による経緯説明を紹介させて頂きます。やはり当事者の声を聞くことで見えてくるものもあるはずです。

「おわりに」と書かれた文から抜粋します。

「最後に申し上げたいことがあります。

私が国循に着任してから,国循の情報システムは,電子カルテも含めて大きく進歩しました。職員の方々からも,数多くの感謝の言葉をいただいてきました。ただ単に,情報システムの質が向上しただけでなく,企業に価格競争をさせることで,国循では,以前よりはるかに安価な金額で情報システムが調達できるようになりました。

これまで,国循は十数年にわたり,ほぼすべての情報システム関連委託業務をNECが受注してきました。情報システム機器も,ほぼすべてがNECから購入されているものでした。たとえば,入札1の保守対象機器やソフトウェアは,そのすべてが過去にNECから購入したものであったうえ,実際には使われていない不要な機器や,NECからしか購入できないようなものまで含まれていました。さらに,国循のサーバ室は,NEC製の不要な機器であふれかえり,ネットワークも整理されず,セキュリティ対策も不十分なまま放置されていた状態でした。

これは,当時のNECに実力がなかった,といえばそれまでですが,別の見方をすれば,NECはこのような「天国」にあぐらをかき,漫然と高額な受注を繰り返していたともいえます。いわば,国循はNECの「カモ」にされていたのです。

このような状況は,まさに国のいう「一者応札」の弊害そのものです。国循の情報システムは,私の着任によって,「NEC地獄」から抜けだし,大変貌を遂げました。しかし,今回の私の逮捕・起訴によって,国循は,また振り出し,あるいはマイナス状態に戻ってしまいました。また,かつてのように税金の無駄遣いが始まっていることでしょう。」

この事件が、桑田さん個人の問題だけではなく、納税者である我々国民全ての問題であると私が感じているポイントです。そして郵便不正事件を初めとする一連の不祥事で、その傲慢なやり方が白日の下にさらされ、猛省すべき検察、しかも一連の不祥事の発端である大阪特捜自身が全く反省がないということを我々は十分に理解する必要があります。

そして桑田さんは、以下のように結んでいます。

「この裁判での戦いを通じて,より多くの方々と知り合いになり,また,既知の方々とはより深く知り合い,それらがこれからの私の新しい人生を踏み出していくための端緒となることを希望しています。

今後ともご支援のほど,よろしくお願い申し上げます。」

経験した者でなければ分からない心からの叫びを私は受け止め、引き続き支援したいと思っています。

是非、以下のリンクから全文をお読み下さい。

ここをクリック→ 経緯説明 公判後公開版

次回公判は、来週水曜6/1に予定されています。ご注目下さい。

ここをクリック→ 桑田成規氏ブログ「誰か知る松柏後凋の心」

ここをクリック→ 支援者のフェイスブック・グループ「国循サザン事件ー0.1%の真実ー」

ここをクリック→ Wikipedia 「国循官製談合事件」

5/24/2016














ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 国循サザン事件

2016/05/24 Tue. 15:44 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

#検察なう (538) 「訴因変更に見る特捜の弱気~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(4)」 5/9/2016 

#検察なう (538) 「訴因変更に見る特捜の弱気~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(4)」 5/9/2016

先日、大阪で桑田成規さんにお会いした時に、私は彼に、ダンテックにいかなる情報を渡したのかを尋ねました。

彼は、持っていたラップトップコンピューターを開き、「この資料をメールに添付してダンテックに送りました」と言いました。私は、その資料を見て少なからず驚きました。なぜなら、競争入札を有利にする情報を渡したと特捜が主張している以上、私は、その情報とは入札価格に関する見積書といった計算書や、少なくとも「数字」を想定していたからです。

彼が、ダンテックに渡したとする資料のイメージを再現してみました。
ここをクリック→ 資料のイメージサンプル

「何ですか、これは?これでNECの入札価格が推定できるものなのですか?」
「これは私が、当時、「現行の保守・運用体制表だと思って」送付した資料です。この網掛け(注:黄色部分)は私がしたものですが、保守・運用の「現行の」常駐の人員数を示しています」

桑田さんは、慎重に言葉を選んでいるように見えました。

「人件費には常駐の者だけではなく、非常駐の人員数もカウントされます。しかし、この表での常駐以外の人員数全てが非常駐というわけではなく、非常駐の人員数を何人としているのかは分かりません。また、人件費はコストの約1/3です。つまり、常駐の人員数だけでは、入札価格の概算すら困難だと思います」

桑田さんは、ダンテックからNECの現行の保守・運用の人員数を聞かれ、競争入札を公正に行うために、彼らにそれを示す資料を渡そうとしました。現行の保守・運用の人員数は、既得権業者であるNECは当然知っていますが、競争入札に参加するほかの業者は知りようがないからです。

この「現行の保守・運用体制を、既得権業者以外の競争入札参加業者に知らせる」行為が、競争入札の「公正を害する」即ち官製談合防止法に抵触するものでないことは、むしろ公正を期するために行われた行為であり、かつ、その情報では入札価格の推定が困難であることから、明らかなように思えます。

官製談合は、発注する行政官が、通常は金品の見返り(あるいは天下りの就職先提供という場合もありますが)を得ることを動機として、競争入札に関わる情報を漏洩するものです。つまり、官製談合は贈収賄とセットであることが通常のパターンです。

国循サザン事件においても、特捜の当初の見立てはそうであったに違いありません。しかし、現金授受の事実がないことが分かったため、贈収賄罪の立件がなされることはありませんでした。当然、官製談合そのものも実際にあったかどうかを疑うべきところ、振り上げた拳を収めることができない特捜は、官製談合防止法違反のみの立件を狙ったものです。

しかし、桑田さんがダンテックに渡した情報は、入札価格を推定させるためには不十分であると理解した特捜は、官製談合防止法違反の立証すら危ういと考えたに違いありません。

桑田さんの起訴は、2014年12月8日にされました。主な罰条は、「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反」(いわゆる官製談合防止法)第8条(注1)でした。

そしてその起訴から1年3ヵ月も経た、今年2月29日に、特捜は突然、訴因変更(注2)をして、罰条に「高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律違反」第11条を追加しました。

「高度専門医療に関する研究等を行う国立研究開発法人に関する法律違反」第11条の条文は以下の通りです。

「国立高度専門医療研究センターの役員及び職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用してはならない」

この訴因変更は、どのような意味を持つのでしょうか。

ダンテックから現行の保守・運用体制を尋ねられた桑田さんは、国循で入札実務を担当する事務方にその資料の用意を依頼しました。その後、彼のデスクの上に、ある資料が置かれていました。彼はその資料を見て、現行の保守・運用体制表だと思って、pdf化し網掛けの処理をした後、メールに添付してダンテックに送付しました。2012年の3月のことでした。

もう一度、上に添付した体制表のサンプルをご覧下さい。桑田さんは、右肩の「2012年3月時点」という記載を見て、「現行の保守・運用体制表」だと思ったものです。

しかし実のところ、この資料は、NECが翌年の競争入札のために用意した資料の一部でした。表題の「2012年度」が翌年の保守・運用体制表であることを示しています。

つまり彼は、事務方の用意した資料が、入札に関わる資料の一部であることに気付かず、それをダンテックに渡してしまいました。そのことが、競争入札の公正を害するとまで言えなくとも、入札に関わる資料は「職務上知ることのできた秘密」であるという主張を特捜がするであろうと思われます。それが訴因変更の意味です。

法定刑の上限が7年である受託収賄罪に問えなかった特捜は、法定刑の上限が5年である官製談合防止法違反を狙ったと思われます。しかし、それも厳しそうだと見ると、法定刑上限が1年の国立研究開発法人に関する法律違反を「つっかえ棒」として加えました。しかも起訴から1年3ヵ月も経過した後に、です。この訴因変更から、本丸(といっても受託収賄罪に比較するとはるかにインパクトは小さいものですが)の官製談合防止法違反の立証には、特捜が相当弱気であるということが読めます。

桑田さんが資料の準備を事務方に頼み、その資料を事務方が用意したということを桑田さんは供述していますが、それを裏付ける事務方の証言はありません。事務方がなぜそのことを記憶していないと言ったかに関しては、次の4つの可能性が考えられます。

① 本当に記憶になかった
② 事件に巻き込まれたくなかったため、「記憶にない」と言ってしまった
③ 頼まれたことは記憶していたものの、特捜の取調べにより、彼らの都合のよい証言に誘導された
④ 桑田さんを陥れる悪意をもって、虚偽の証言をした
(一応、考えられる可能性の高い順に並べました)

実際のところ、事務方の記憶がなかったとしても、何ら不思議はありません。2年前に業務で頼まれた資料のコピーをしたことの記憶のある方がおかしいとも言えます。また、検察の取調べにおいて、彼らに不利な「記憶にありません」は執拗に取調べがされる(そして往々にして彼らの意向に沿った調書となる)のに対し、彼らに有利な「記憶にありません」は、「そうでしょう、そうでしょう。それでは、その旨記述されたこの調書に署名して下さい」と特捜は、易々と受け入れるに相違ないからです。

桑田さんの公判においては、多くの検察側「敵性証人」の証言が予定されています。競争入札の実務を担当する事務方もそのうちの何人かだと思われます。彼らの「桑田さんに資料の準備を頼まれた記憶はない」という証言をもって、桑田さんが、自分で資料を用意しダンテックに渡したという立証を、特捜は狙ってくるものと思われます。

桑田さんが資料をダンテックに渡したことは、争いのない事実です。しかし、その事実をもって、競争入札の公正を害したとする官製談合防止法違反の特捜の主張を裁判所が受け入れるのか。また、その資料が入札に関する資料だとは気付かず、あくまで過誤で渡したという桑田さんの主張を虚偽だとして、国立研究開発法人に関する法律違反という立証が通るのか。

くもの糸のような証拠と立証にすがる特捜を、裁判所が救うのかどうか、今後の展開に注目です。

(注1)
「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律違反」第8条

職員が,その所属する国等が入札等により行う売買,貸借,請負その他の契約の締結に関し,その職務に反し,事業者その他の者に談合を唆すこと,事業者その他の者に予定価格その他の入札等に関する秘密を教示すること又はその他の方法により,当該入札等の公正を害すべき行為を行ったときは,5年以下の懲役又は250万円以下の罰金に処する。

(注2)
訴因変更
検察官が公判の途中で、起訴状に記載した事実の範囲内で該当する罪名を変更したり追加したりすること。

5/9/2016












ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 国循サザン事件

2016/05/09 Mon. 22:46 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

#検察なう (537) 「報道に見る特捜の思惑(弁論の併合)~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」 (3)」 5/2/2016 

#検察なう (537) 「報道に見る特捜の思惑(弁論の併合)~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」 (3)」 5/2/2016

前回ブログ(注1)で記したように、先週初公判が行われたこの事件の公判の一つの大きなポイントは、競争入札において情報を漏洩したとされる国循情報統括部元部長の桑田成規さんと、その情報を得たとされるダンテック社長の高橋徹さんの弁論が併合されていることです。

弁論の併合に関しては、刑事訴訟法第313条に規定があります(注2)。刑事裁判では、一被告人、一公訴事実ごとに審理されるのが原則ですが、複数の被告人や複数の公訴事実が同じ公判で審理されることもあります。

なぜ大阪特捜部が弁論の併合を選択したのか、その意図は次の記事を読んで頂ければよく分かります。

ここをクリック→ 2015年2月12日朝日新聞「国循と徳島大病院 便宜供与事件」

実は、ダンテック社長高橋さんは、徳島大病院の医療情報システムの導入を巡って、贈賄罪に問われています。徳島大病院の情報センター部長森川被告は、既に収賄の罪を認めて、有罪(懲役2年6月、執行猶予4年)が確定しています。

朝日新聞の記事は、国循と徳島大病院の事件が、一方当事者が同じであることから、全く同列に扱い、国循官製談合事件の桑田さんを有罪視した記事となっています。朝日新聞記者は当然、大阪特捜部のレクを受けてこの記事を書いたと思われますが、まさに特捜の意向を反映した典型的な御用記事です。

この記事が公平でないことは、当事者の主張が全く書かれていないことです。桑田さんが否認していることは勿論のことですが、ここで重要なことは、高橋さんが徳島大病院事件では贈賄を認めていながら、国循官製談合事件では贈賄どころか情報を得たことすら否認していることです。

朝日新聞記事と同日の他紙の記事を見てみると、森川被告がどういう人物であったかが伺えます。

ここをクリック→ 2015年2月12日産経新聞「“花形”慶応大准教授の裏の顔」

受注業者が発注者にリベートを求められた場合、それをはねつけることは容易ではないのかもしれません。高橋さんは、そんな誘惑に負けてしまったことを後悔し、徳島大病院事件では罪を認めています。その同じ人が、なぜ国循官製談合事件では嘘をつく必要があるのでしょうか。贈賄というより重い罪を認めていながら、一方で、官製談合防止法違反という軽微な罪において虚偽の否認をするということは、全く不合理です。

それが、桑田さんの弁護人が、弁論の併合に関して異議を唱えなかった理由だと理解します。

マスコミに風を吹かせて押し切ろうとした特捜と、二つの事件をじっくり比較すれば真実は明らかになると見切った弁護人。どちらに軍配が上がるのか。今後の展開に注目です。第二回公判は5月10日に予定されています。

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (536) 「初公判傍聴記 巨悪を眠らせる特捜~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」 (2)」

(注2)刑事訴訟法第313条第1項
「裁判所は、適当と認めるときは、検察官、被告人若しくは弁護人の請求により又は職権で、決定を以て弁論を分離し若しくは併合し、又は終結した弁論を再開することができる」 

ここをクリック→ Wikipedia「国循官製談合事件」

桑田さんを支援する会フェイスブック・グループページ
ここをクリック→ 国循サザン事件ー0,1%の真実ー

5/2/2016











ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 国循サザン事件

2016/05/02 Mon. 00:47 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

#検察なう (536) 「初公判傍聴記 巨悪を眠らせる特捜~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(2)」 4/28/2016 

#検察なう (536) 「初公判傍聴記 巨悪を眠らせる特捜~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(2)」 4/28/2016

私が支援する桑田成規さんの初公判が昨日4月27日にあり、その傍聴のため大阪入りしました。事件概要に関しては、前回ブログをご参照下さい。

ここをクリック→ #検察なう (535) 「特捜に正義はあるのか~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(1)」

サザン1-1

初めて入った大阪地裁の印象は、まず法廷が広い!傍聴席の数は東京地裁と変わらないのに、法廷が広々としています。また法廷前の廊下は広い窓に面しているので、陰鬱な東京地裁と比較し、明るくほっとしました。

桑田さんの初公判開廷。私の公判では、検察官は終始仏頂面でピリピリしていましたが、大阪地検公判部の検察官は、かなりのリラックスムード。土地柄なのでしょうか。

公判が始まると、人定質問、検察官の起訴状朗読と続きます。その後、被告人による認否に入るのですが、桑田さんの公判の一つの大きな特徴が、官製談合で情報漏洩を受けたとされるダンテック社長の高橋徹さんの弁論と併合されていることです。つまり被告人が法廷に二人いることになります。

二人の弁論を分離しなかったのは、検察の戦略だと思われますが、それに対し弁護側も異議を申し立てていません。彼らの相反する思惑は、今後の流れに非常に重要な意味を持つと考えていますので、それは次回以降のブログで論じたいと思います。

罪状認否というのは「私はやっていません」とか「検察官主張は事実に反します」とか一言二言で終わるものですが、その後、7分に亘る桑田さんの意見陳述がありました。本公判では、公判前整理手続が取られていますが、そうすると訴訟指揮も随分と違うのだなと感じました。

通常の刑事裁判では、裁判官の心証は真っ黒からスタートしますから、そう易々と被告人の言い分など聞いてもらえるものではないという印象があります。じんわりと裁判官が温まるのを、公判を重ねて待たなければならないのですが、公判前整理手続を経ていると、最初からアクセルベタ踏みという展開です。

以下に、桑田さんの気合の入った意見陳述全文を掲載します。

ここをクリック→ 桑田成規初公判意見陳述

そして検察冒頭陳述が始まりました。クルーカットの爽やかな検察官の冒陳朗読は、なかなか聞き易いものでした。その冒陳の中で、「被告人桑田と高橋の癒着」という部分が読み上げられると、私の中にざわざわと不安が湧き上がりました。

前回ブログでも書きましたように、本公判の大きなポイントの一つは、官製談合があったとすれば、何がその見返りであったかというものです。検察官は、具体的な金額を上げ、桑田さんと高橋さんが飲食を共にしたであるとか、海外旅行に行った等々を述べます。彼らは金銭の見返りがあったという証拠を握っているのか?そうした私の不安をよそに検察官の冒陳は続きました。

情報の漏洩があったとすれば、具体的にはそれはどのような情報であったかということも重要なポイントです。35分間の冒陳で検察が強調した桑田さんによる情報漏洩とは、「現行業務体制表」をメールにて送信し、保守・運用管理の人員数を教えたことだというものでした。それが「競争入札の公正さを害する」という検察の主張です。曰く、人件費は業界の相場があるので、人数さえ分かれば入札価格は推察できるというものでした。果たしてそうなのでしょうか。

検察冒陳が終わると、弁護人の冒頭陳述です。大半の刑事裁判では、弁護人の冒頭陳述が行われることはないのですが、弁護人冒頭陳述が必ず行われる裁判員裁判の影響でしょうか、ここでも弁護人冒陳が行われました。桑田弁護人の我妻路人弁護士による、原稿なし、パワーポイント活用の冒陳は、まさに裁判員裁判時代の弁護人弁論戦術だと思わせました。

今回の事件では、公的企業の情報システム競争入札という、素人(含む裁判官)には分かりにくい出来事が背景となっています。我妻弁護士が、間を取りながら静かな口調で語ったことは、まさにその競争入札がどのように行われているかの解説であり、それを理解することが事件を読み解く鍵になると思いました。

我妻弁護士冒陳のキーワードは、桑田さんの行為は「不公平な情報格差を是正する」ものである、でした。

同じ行為が、検察の主張では「公正さを害する」ものであり、弁護側の主張では「不公平な情報格差を是正する」ものだということです。

少し考えてみましょう。いくつかの業者の値段を比較するということは、企業でなくても、我々個人もやっています。例えば、引越し業者に引越しを依頼するような時です。その時に、ただ単に値段の比較をするのは正しくないということを、我々は経験で知っています。例えば、ある業者が「スタッフ3人、2トンロング」で来ると言う場合、それよりも安い値段の業者に頼んでみたところ、「スタッフ2人、軽トラ」で来てしまったということもありえます。

そこで、「ほかの業者は、スタッフ3人、2トンロングで効率よく作業ができると言っており、私もそう考えるので、その内容で見積もりを頂けませんか」と依頼することは、価格の比較(=競争入札)の公正さを害する行為とは言えないことは明らかです。

保守・運用管理を何人でやっているかという情報は、現行業者であれば、当然知っていることですが、競争入札に際して、それを他の業者に教えるということは、むしろ我妻弁護士が言うように不公平な情報の格差を埋めることだと納得しました。

そして、傍聴席にいた私は、それよりも興味深いことに気付くことになります。

国循の競争入札では、「仕様書」というものが作成され、それにより機器導入や保守・運用管理の大枠のガイドラインが定められていました。その仕様書に書かれていた保守・運用管理の人員は12人、それなのに桑田さんがダンテック社に「漏洩した」NECによる現行保守・運用管理の人員は9人。

12人と9人。最初は何気に聞き流していたその二つの数字が、何やら意味ありげに感じられました。

検察がなぜ保守・運用管理の人員にこだわったかと言えば、一人一人の人件費は業界の相場があるので、「掛ける人数」で入札価格が推察できるという主張でした。業者の入札に際し、仕様書に12人の人員と書かれていれば、業者はそのつもりで入札価格を決めるはずです。もし検察が主張するように、人員の数が入札価格の重要な決定ファクターであるならば、後発業者の入札価格が、現行9人で保守・運用管理をしているNECの入札価格に勝てるはずがありません。それがまさに15年に亘って、NECが国循の情報システムの受注を牛耳っていたからくりです。

私が、「官製談合はあった!しかし、当事者は桑田さんとダンテック社ではなく、国循前任者とNEC社だ!」と理解した瞬間でした。

優秀な検察の、その中でもエリート中のエリートの特捜部が2年も捜査をして、素人の私が初公判の2時間で気付くようなことを理解しないわけがありません。巨悪を眠らせる特捜恐るべし、です。

我妻弁護士の冒陳は、それまでよりも語気を強くして「(入札手続きについての責任者である)調達企画室・契約係の担当者の怠慢の責任こそが問われるべきである」と締めくくられましたが、事件の全体像を理解していなければ、腑に落ちないかもしれません。しかし、全体像が理解できれば、これ以上説得力のある説明はないものです。

我妻弁護士による冒陳が終わるや否や、桑田さんの主任弁護人である高見秀一弁護士が立ち上がりました。それからの3分間が初公判のハイライトでした。それは、私が不安を感じた検察冒陳の「桑田と高橋の癒着」に関するものでした。

高見弁護士の凜とした声が法廷に響きます。彼らが共にした飲食では、桑田さんはその場で割り勘で済ませている。彼らが一緒に行った海外旅行は、学会に参加するために共に行った旅行代金を建て替えただけで、それも桑田さんは自分の分を現金で支払っている。それらは高橋さんも認めているところであり、弁護人は既にその旨意見書として提出している。検察は、それらを調べて裏を取っているからこそ、贈収賄で立件していないではないか、と怒りを抑えられない様子で、滔々と述べました。

全く怪しくないことをいかにも怪しげに見せかけようとした検察の姦計が粉砕された瞬間でした。傍聴席でもそれを理解した人の安堵のざわめきがありました。

弁護人の冒陳は、ダンテック社長高橋さんの弁護人である水谷恭史弁護士によってもなされました。彼の冒陳の最後の言葉、「検察の起訴は、大手企業の独占に果敢に挑戦した中小企業の努力を踏みにじるものである」にはしびれました。まさにその通りです。

午前10時に開廷した初公判は、このように実に濃い内容の2時間でした。素人の私には、既に検察は詰んでいるように感じられました。

公判が終わり、帰京前に天満宮で無罪祈願をし、新幹線の中で、「飲めば御利益」というビリケンビールを飲んで帰りました。

サザン1-3

サザン1-4

今後もこの事件に注目し、桑田さん、高橋さんの両被告人を支援したいと思っています。

サザン1-2

ここをクリック→ Wikipedia「国循官製談合事件」

桑田さんを支援する会フェイスブック・グループページ
ここをクリック→ 国循サザン事件ー0,1%の真実ー

4/28/2016













ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 国循サザン事件

2016/04/28 Thu. 00:23 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top