「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (44) 

「#検察なう T-shirt ボホール島の夕日をバックに」 (by Y.K ♀)

ボホール

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/29 Wed. 23:07 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (43) 

「余の辞書に不可能の文字はない! Impossible n’est pas francais!」 in #検察なう T-shirt (by 「正義と将棋を愛する男」) 

napoleon.jpg

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2012/02/29 Wed. 23:02 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (42) 

ゆるキャラ全国一位が#検察なうTシャツを着るとこうなる! (by 「正義と将棋を愛する男」)

くまモン
)

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/24 Fri. 06:08 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (107) 「初公判の一日後」 2/23/2012 

#検察なう (107) 「初公判の一日後」 2/23/2012

一昨日、裁判の前の夜は全く問題なく眠れたのですが、昨晩はランナーズ・ハイ状態が続き、ほとんど眠れませんでした。

まず、昨日の公判の模様は、傍聴の方々の公判開始直前までそして終了直後からの疑似ライブ中継がツイッター上で展開されていました。私の友人のブログです。

ここをクリック→第一回公判 マニラからのまとめ

また、傍聴して下さったフェイスブックつながりの友人の書き込みです。

「今日、クレディスイス(以下CS)元営業部長の脱税『嫌疑』に関する裁判を傍聴しての感想。いわゆる被告人の八田さんと面識は無いが、共通の知人が彼の冤罪を訴えていたのがきっかけ。#検察なう のタグでメディアの耳目も。

この件を端的に言えば、CSが社員に報奨としてストックオプションを提供したが、税務申告の有効且つ適切なアドバイスをしなかったが為に、約300人の...受益者の内、100人ほどが無申告、残りも正しく税務申告できなかった。それを重視した国税が、一罰百戒の意味でか受益者の中で最も得た額が多かった八田さんを脱税の嫌疑で調査し、検察に告発。その事に感してご本人のブログ 『蟷螂の斧となろうとも』を一通り読んだ後に思ったのは、CSの遵法意識の低さ。それにも増して、社員の功績に報いる為に提供したはずの善意が、おざなりな対応に依って、その意図とは真逆の結果を産んでしまったという事。

弁護士が述べた、『クレディスイスの過失と、従業員の(税務申告への?)無知』が本件を招いたという指摘が、的を得ていると思う。

裁判に戻る。法廷の扉が開いて間もなく入廷した弁護側は、被告人の八田さんも含め3人とも表情が明るいが、後から入ってきた検察官2人は『どうしたの?』と心配になるくらい憮然とした表情。やらされてるのか、釈然としないのかと勘ぐってしまう。人に依るのだろうが、裁判官は誰の顔も見ず開廷を宣言し終始下か横に目線でびっくり。検察官は早口で公訴理由を棒読みし、聞くだけの傍聴人が理解しているかどうか、気にする素振りもなし。弁護人だけが人間味の有る目配りと話し方。同じく傍聴していた江川紹子さんもツイッターで指摘されていた『野口佳子裁判長、被告人の認否についての意見陳述を遮って止めさせる。』この時に、唯一裁判官の存在というか、権力の強さを強く感じた。

一気に今日の公判の個人的結論に飛ぶが、検察が長々と挙げた公訴事由からは、予想通り脱税が有罪である事を思わせる根拠を全く無いと思った。検察の主張を自分なりに意訳すると、被告人は脱税を否認しているが、数百円の薬代を確定申告の際に控除対象として申告したり、海外に保有する口座預金の利子を僅かな額と言いながら課税免除にするなど節税意識が高いが、このような大胆な脱税に関しては、会社が源泉徴収しているものだと思い込んでいたと言い逃れしている。ということだと思う。被告はまるで、守銭奴で意図的な脱税だと言わんばかりの稚拙さで、唖然とした。」

そして報道でも一通り取り上げられましたが、独自取材のフジテレビ以外は似通った内容です。それらをまとめたのが、私の知り合いの間で絶大な人気を誇るVictoriaさん(@Victoria007com)のブログです。

ここをクリック→クレディスイス集団申告漏れ事件 初公判のまとめ

そして再登場の私の友人のブログ。

ここをクリック→初公判終了

私の周りでも急速に検察・冤罪関係の知識・理解がぐんぐんと増しています。これからは裁判関連のそれがパワーアップしていくのだと思います。

報道を受けて、ツイッター上で誤解と思われる若干批判的なコメントがあったので、弁明させて頂きましたが、その際ツイートした私のコメントが以下です。

「昨日の記者会見でも、またこれまで何度もブログ等で主張してきたことですが、無罪の獲得が私の最終目標ではありません。当事者の立場から(素人ですが)日本の司法の後進性、特に検察・国税局の捜査権力の問題を指摘、情報拡散していきたいと思っています」

今後も引き続きご支援お願いします。

2/23/2012

P.S.
昨日、傍聴に来て下さいました江川紹子氏の愛猫タレが今日、天に召されました。19歳の大往生でした。
彼は、20年前の長崎雲仙普賢岳の噴火の取材中に出会って以来、江川さんと共に歩んできました。
皆さんもご一緒にご冥福をお祈り下さい。

ここをクリック→タレとチビ

ここをクリック→ありし日のタレ


category: 刑事裁判公判報告

2012/02/23 Thu. 05:02 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (106) 「初公判報告」 2/22/2012 

#検察なう (106) 「初公判報告」 2/22/2012

疲れた―!ってのが正直なコメントです(まあ、そりゃそうだ)。でも今日は沢山の友人・知人の方に傍聴に来て頂き、本当にうれしかったです。フェイスブック・ツイッターつながりで、初めてお会いする方もいたり。

私は朝からテレビの取材を受けて、比較的ぎりぎりに弁護士と入廷したのですが、東京地裁前でツイートした時には、江川さんのツイートを読んでいた友人からは「余裕の到着?」の揶揄も入りました。

ここをクリック→江川さんツイート

傍聴に来てくれた方々の実況ツイートを後から読んで、「おー、すげーっ」と感動していました。ツイッターで状況をフォローしていた海外の友人の「東京地裁からのツイートが止む......いよいよ始まるというサイン」。やはりソーシャル・ネットワーキング・サービスの即時性には感動しました。

傍聴席はほぼ満席。遅れて入ってきた傍聴マニアの方が、あまりの満席さに気押されて出て行ったくらいでした。

今日、傍聴に来られた方は、私が座っている位置が、普通の被告人席と違っていることに気付きました?(って、裁判の傍聴をしたことがなければ分からないですよね)。映画でアメリカの法廷シーンでは被告人(今回の私)は弁護人と並んで座っています。ところが日本の法廷では、通常、被告人は弁護士席の前にぽつんと(逮捕されている場合は、両側を刑務官にはさまれて)座っています。これは差別的だと、日本でもようやく弁護人と並んで座らせるという運動が弁護士の世界で始まっています。これは「SBM(Sit By Me)運動」と言われます。私の弁護人があらかじめ裁判所の許可を得ることで、私は弁護人と並んで座ることができたものです。

そして開廷。

私の人定質問、検察の起訴状朗読があり、その後、私の罪状認否、そして続いて意見陳述を行おうとしましたが、そこで「事件」勃発!

私の意見陳述が途中で裁判長に遮られてしまいました。うーん、気合い入れ過ぎたかなあ。終わってから、友人に「気合い十分だったね」と言われたくらいだったので、その気合いに裁判官もビビったのでしょうか。通常は、一言、二言で終わる罪状認否に続き、私の思いのたけをぶつけようとした私が悪かったんですけど。失礼しました!って感じです(不完全燃焼は、記者会見で思う存分解消させて頂きました)。

その後、検察の冒頭陳述(「冒陳」って言うと、ちょっと分かった風です)。多分、傍聴されてる方の半分以上が脳死してたと思います。まず数字の羅列。そして、会社は何度も注意喚起していたということを印象付けたいのでしょうが、訳分かんない英文の隅っこにあるような文言を拾って、公判検事がぐだぐだ繰り返します。「そんなもん、仕事が忙しくて、読んでる奴いるわけねーじゃん!」というような内容です。こっちは生き馬の目を抜くような相場の世界で勝負してるんですから、会社のそんな書類をちまちま読んでるようなちんけな奴は給料もらえませんって、とあきれて聞いていました。多分、実社会で働いたことがないセンスのなさなんでしょうね。あ、もしかしたら彼らは保険の契約をする際も、約款をひっくり返して読むような人たちなのかもしれません。30分近くこちらが驚く内容も全くない冒陳が展開されました。国が人を無実の罪に陥れようとするんなら、こっちがぎゃふんと言うくらいのもっとまともな証拠出してみろよ、って感じです。

その後は、検察側請求の証拠に対して弁護側の同意・不同意の意見を述べ、採用決定された証拠に対して検察の「要旨の告知」が行われました。今回、検察が証拠調べ請求をした証拠は約150件。それに対し現時点で同意したものは約30件。残りの120件に関してはまだ読み込みが不十分なため、同意・不同意は留保しました。この150件というのは、全て私に不利益なものと彼らがこじつけるもので、そのほか検察が収集した証拠の少なからず私に有利なものは提出されません。

検察というところは強大な権力をもって捜査して、いろいろな証拠を集めることができるのですが、そこでなぜ被告に不利な証拠のみを抽出して裁判に提出して、それでよしとするのか素人考えでは全く理解できません。郵便不正事件では証拠の捏造が強烈な批判を浴びましたが、証拠の全面開示をしないのも五十歩百歩だと思います。

最後に弁護側の冒陳でした。これは普通は行われないのですが、せっかく傍聴に来てくれた大勢の私の支援者が検察の言い分だけ聞いて帰るのも気分が悪かろうと、弁護士が配慮してくれたものです。簡潔にまとめられた弁護側主張は、私がこれまで散々言ってきたことと全く同じ主張だと言うことは聞いた方はご理解頂けたと思います。

そして更にその弁護側の冒陳で付け加えられた新たな論点が「公訴権の濫用」です。

国税局も検察も私の無実は理解していたと思います。彼らは私の無実が分からない程無能ではありません。しかし、告発・起訴するのが彼らの正義だという誤った使命感で私を告発・起訴したと私も弁護士も感じています。これは公権力の恣意的な発動、濫用です。

これまでの報道では、それに触れられていないのですが、私の無実の主張と並んで意義のある重要な論点だと思っています。

また、私の株式報酬のうち、非常に大きな部分が退職時の未払い分の株式を前倒しでもらったものです。これは税務署的には給与扱いで税務処理されていますが、私たちはこれは退職金として税務処理すべきだと主張しています。

給与と退職金では税率が違うため、検察が主張するほ脱税額(免れたとする税金の金額)とは異なってくるのですが、私は別にそのお金を取り返そうとして主張しているわけではありません。それは次のようなことがあったからです。

修正申告の際、税理士と一緒に国税局に出向いたのですが、税理士はこれは退職金として税務処理すべきだと考えていました。しかし、修正申告の金額を国税局に提示され、その金額が税理士の計算とは大きく異なるため、計算根拠を求めたところ、「それは提示できません。この数字に従った方が、八田さんのためですよ」と言われました。「黙って修正申告に応じれば告発はしない」ということだと私たちは理解し、敢えてその場で争うことなく彼らの言うなりの数字で修正申告の納税をしたものです。結局のところ、数字に従おうが従わなかろうが告発されてしまいました。彼らの人の弱みに付け込む卑劣なやり口を糾弾するために付け加えた論点です。公訴権の濫用の延長線上のものです。

公判の後、記者会見を行いました。その状況はこんな感じでした。

ここをクリック→記者会見風景

そしてお土産を持って帰ってもらいました。

ここをクリック→お土産

(吉見さん、写真ありがとうございます)


私は公判の後、弁護士とミーティングがありましたが、上京して傍聴した私の両親はその後、御記帳に行ったようです。「隆の分も頼んどくさけえ」と言われても、天皇はそんなこと聞いてくれないだろうな、とは思いましたが。ま、田舎の年寄りは好きにさせときましょう。

第2回目公判は4/11(水)10:30より同じ東京地裁7階718号法廷です。

でも次回は傍聴の必要は全くないものらしいです。検察が証拠調請求をしたもの(残りの120件の証拠)に対し、次回公判までにこちらが同意・不同意の意見を述べ、それを採用決定したものに対して、検察が要旨の告知をすることに延々時間がつぶれるそうです。単なる手続きというか儀式みたいなもので、その内容を聞いた時弁護士に「先生、それって私が出なくてもいいんじゃないですか。代わりにやっといて下さい」と言ったくらいです。勿論、「それはダメです」と言われましたが。残りまだ公判は何度も続きます。傍聴して面白いライブ感がある回には事前に告知しますので、その時は奮ってご参加下さい。

引き続き応援のほど、よろしくお願いします。

2/22/2012


category: 刑事裁判公判報告

2012/02/22 Wed. 07:33 [edit]   TB: 1 | CM: 0

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#検察なう (105) 「ホリエモンのメルマガに『国税記者』書評掲載」 2/20/2012 

#検察なう (105) 「ホリエモンのメルマガに『国税記者』書評掲載」 2/20/2012

本日配信のホリエモンのメルマガに田中周紀著「国税記者 実録マルサの世界」の書評が掲載されました。以下、引用です。

『国税記者』(田中周紀)
★★★★☆
取調べ(任意)の最中に「特捜部なう」とTwitterで書き有名になった元クレディスイスの社員だった人から献本を受けた。何故か作者のサイン入り。その人のことも書かれているので、その関係であろう。脱税で捕まった人々のケーススタディを作者がテレビ朝日の記者として取材した立場で書かれている。
私が知っている人の名前も何人か出てきて面白かったが、脱税した人のことを人間のクズみたいに書いている割には、作者自身も共同通信の記者時代に住民税の追徴を受けている。額が小さいだけで脱税には変わりないと思う。
この本には私のことも書かれている。クレディスイスのところで『堀江のマネーロンダリング疑惑』と出てくる。まるで、私がマネロンしているような書き方だ。ライブドア事件のときにクレディスイスの私の口座はスイス司法当局の許可までもらって、日本の司法当局が調べたが税法上も外為法上の問題はなんらなく、もちろん立件もされていない。
作者は「外銀=犯罪の温床」、株式市場は銭ゲバがうごめいているとでも思っているのだろう。こういうマスコミの決めつけ方が司法にも悪い影響を与えていることがわかってないのだろう。社会部の記者特有の歪みだ。正義感が本書の至るところから、感じられた。
ちなみに私は毎年しっかり申告して納税している。税務調査に入られて修正申告をしたことはあるが、追徴されたことはない。払い過ぎが後から判明したことがあるくらいである。税率に不満はあるが、納税は国民の義務である。

若干、自身が「マネーロンダリング疑惑」で言及されたことに関してお怒りモードですが、田中氏が脱税したというのは彼の認識に誤りがあると思います。また「外銀=犯罪の温床」という決めつけは、田中氏のものではなく、捜査当局のものであるということは言っておきたいと思います。

著者の田中氏は、最終章で住民税を追徴された自らの経験を語っています。実際起こったことは、会社からの給与のほかに原稿料収入があり、その支払いが所得税源泉徴収済みで支払われたため税金は払っていたつもりだったのですが、確定申告義務を知らず、結果住民税の支払いがされていなかったというものです。当然、彼はわざとやったわけではありません。

よく私も言われます。「でも税金払っていなかったのは事実なんだから、結局それって脱税ってことでしょ」と。

人を殺してしまった場合、どういった状況であれ「人が死んでんだから、結局それって殺人ってことでしょ」というのと同じ論理です。そしてそれが違うのは皆さんご理解頂けると思います。殺意がない場合、過失で人を殺してしまった場合には、殺人罪ではなく、過失致死罪という罪になります。

税金の申告漏れでも、それ自体は過少申告というものです。その過少申告を故意でやった、わざとやったという場合に脱税という罪に問われます。

脱税をした場合、その故意の認定に非常に重要な意味をもってくるのが、「仮装・隠蔽」というものです。つまり悪いことをしている場合、通常それを隠そうと工作するということが人間の性です。行政罰の重加算税(本税の35%で、私は既に払わされています)の要件は、この「仮装・隠蔽を伴った悪質な脱税」というものです。

私の場合、全く仮装・隠蔽をしていないのですが(そりゃそうですよね、脱税していないんですから)、国税局が重加算税を科している理由は「殊更に過少額の申告をした」ということです。つまり確定申告の金額が過少申告であった、その事実そのものをもってして「仮装・隠蔽」というかなり苦しいものです。この重加算税に関しては、昨年6月に不服申立をしていますが、目黒税務署は8ヵ月経った今でも何ら決定(却下)をしていません。あくまで検察頼みということのようです。

あくまで私がファイティングポーズを取っているのは、この故意を要件とする脱税に関してで、過少申告に関しては、国税局から知らされ、それを理解した時点から認めているものです。過少申告加算税(本税の10%)及び相当な金額の延滞税を払っています。それで原状回復以上(殺人なら生き返らせて、更にガンがあればそれを完全治癒してやったくらいのもの)でありながら、下らない役所のメンツ問題に巻き込まれてしまったようです。「振り上げたこぶしを下ろすに下ろせなくなったんだろう」とはよく言われました。この国税局・検察の尻ぬぐいをさせられる裁判所も大変だと思います。

明後日の初公判以降、また新たなステージに突入ですが、引き続きご支援のほどよろしくお願いします。

2/20/2012


category: 支援者の方へ、支援者の方から

2012/02/20 Mon. 02:02 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (41) 

透明バレリーナ in #検察なう T-shirt (by K.W ♀)

バレリーナ

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/18 Sat. 23:22 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (104) 「『狭山事件』ほか」 2/18/2012 

#検察なう (104) 「『狭山事件』ほか」 2/18/2012

受験勉強をされた方の共通経験として、勉強しなければいけないのに、なぜか部屋の片づけを始めて「プチ現実逃避」をなさったことがあるのではないでしょうか。私は、今まさにそんな気分です。初公判を4日後に控え、第5の弁護人として、検察資料を読みこまなければいけないのに、どうも資料を開く気になれません。

そして現実逃避が冤罪関係の読書です。「過去に冤罪と戦ってきた人の生き様を知って勇気をもらおう」作戦というわけです。この忙しい時に関わらず、鎌田慧著「狭山事件―石川一雄、四十一年目の真実」というハードカバー450ページの大作を読み切ってしまいました。

私が生まれた1963年に起こった女子高生強姦殺人事件の狭山事件も、冤罪事件の一つとして有名なもので、被害者の石川一雄さんは無期懲役の確定の後、31年間服役を経て仮釈放され、今日現在も再審を求めて戦っています。

狭山事件が有名なことの理由の一つに、この事件が部落問題と非常に密接していることが挙げられます。石川一雄さんは部落出身であるがゆえに犯人とされたと言ってもいいものです。

皆さんはあまり差別を意識したことはないかもしれません。私が外資系企業に勤めてよかったと思うことの一つが差別(人種差別)を意識し、自分ではそれを人に対して感じないと自信を持って言えることです。そして差別について考えることができるのは、やはり差別される「被差別」の経験がないと難しいのではないかと思います。社会人になったばかりのニューヨーク研修時代、衆目の中で「黄色いサル」と罵られたり、12/7(真珠湾攻撃の日)にバーでビールを浴びせかけられたりした経験があれば、いやでも差別と向き合うことになります。

また、高校時代の思い出にも、心に残ることがあります。仲のいい友人の一人に身体障害者がいたのですが、彼とはよく文学の話をしました。彼の家に遊びに行った時に、私に負けない程の蔵書を見て、いろいろ語りあったのですが、一番好きな作品は何かという問いに、彼は島崎藤村の「破戒」を挙げました(私は芥川龍之介の「舞踏会」を挙げたと思います)。その時点では、私も既に「破戒」を読んでいましたが、やはり健常者の私より、多分感じ方がディープなんだろうな、と思った記憶があります。

狭山事件の発端は、女子高生が誘拐され、脅迫状が家に届いたことから始まります。そして身代金の受け渡しに失敗し、警察の大失策が非難される中、女子高生が遺体で発見されるという最悪な状況を迎えます。功を焦る警察が、別件逮捕で検挙したのが、部落出身の石川一雄さん(当時24歳)でした。

ところが文房具すら買えない極貧であった石川さんは、小学校も行っていなかったため、実は文盲で漢字交じりの脅迫状など書けるはずもありませんでした。それを、その脅迫状を手本に何度も書き写しをさせられ、その結果、筆跡鑑定で同じ筆跡とされたものが証拠となりました。

また、狭山事件での有力な物証の一つ「鴨居の万年筆」は、数ある冤罪事件の中でも、袴田事件の「味噌樽の中の血染め着衣」と並ぶほど有名な「捏造証拠」です。2度の徹底した家宅捜査で、出てこなかったものが、事件から2ヶ月近くたって、忽然と目につく鴨居に置かれていたというものです。それが女性用の万年筆で、検察は被害者女子高生のものだと主張し、有力証拠となりました。ところが、被害者の女子高生が(事件当日も)使っていたインクはライトブルーであることが分かっていますが、万年筆の中のインクはブルーブラック。そして万年筆には石川さんの指紋はついていません。文盲の石川さんが、筆記用具に特段の関心を示すとも思えません。

結局、決め手は自白でした。それもやはり警察・検察の画策にはめられたものです。犯人の足跡が、石川さんの兄のものであると信じさせられ、一家の大黒柱である兄の身代わりとして、取調べを担当した刑事との「自白したら、10年で出してやる。男の約束だ」という口約束を信じて、否認を自白に転じ、一審では罪を認めたものです。そして、その兄にアリバイがあるということを知ったのは、彼の死刑の判決が下された後でした。

私が、本を読んで勇気づけられたことは、石川さんは獄中で文字を学び、裁判所に上申書を出したり、公判でも弁護士と一緒になって証人喚問で質問をしたり、能動的に自らの弁護活動を行ったことです。

著者はあとがきで述べています。
「貧困と無知、そして非識字が、冤罪を押しつけさせた。その恨みを、石川一雄は、奪われた文字を獲得し、刑事や検事や判事の論理を批判することによって果たした。それをわたしは、学ぶことの勝利と考えている」

私もそうありたいと思っています。

狭山事件に関しては、これら画像をご覧になるとよいかと思います。

ここをクリック→狭山事件 (1)

ここをクリック→狭山事件 (2)


私の公判の行方を弁護士と議論する際、彼らが強調する公判の鍵は、いかに検察に手持ちの証拠を出させるかということです。私は、素人感覚で、被告に不利な証拠しか提出しない検察の態度に非常に違和感を感じます。「それでいいんかい?」と素朴に感じます。そして実際に、検察が自分にとって有利な証拠しか出さないというのは、先進国の中では唯一日本だけです。他の国では、倫理規定として、検察には全ての証拠開示が義務付けられています(あくまで検察の良心に頼る倫理規定ではありますが)。

捜査は国民の税金を使ってなされている以上、証拠は彼ら捜査当局の私有財産ではなく、国民の共有財産であるにも関わらず、こうした理不尽なことがまかり通っています。

クレディ・スイスの現職員・元職員の取調べは相当数行われたと想像しますが、検察が現時点で証拠調請求予定の関係者供述調書は、給与プログラム等を説明する人事や経理の人間を除けば、わずか3人の調書のみで、いずれも私のことを悪し様に言っているものだけです。

私は、取調べ可視化にはそれほど積極的に同意する立場を取っていませんが、関係者の取調べだけは絶対に可視化すべきだと思います。調書は一人称で、検察がなり変わって書きますが、その「検察の作文」の訂正を根気よくやる関係者はいないと思います。少々(あるいは大幅に)ニュアンスが違っていても、「間違いではないだろ」と押し切られて、それまでだからです。

村木氏の郵便不正事件では、証拠の改竄が問題とされました。しかし、それも上に挙げた、被告に不利な証拠のみを開示するであるとか、恣意的に調書を被告に不利に作文するといったことの延長線上でしかありません。

フロッピーディスクを改竄した前田元検事は次のように言っています。
「検察官は裁判の一方当事者。10枚カードがあったとして、3枚が自分に有利、7枚が不利だとしたら、相手にいいカードは出さない。そういうことをずっとやっていて、感覚がずれてしまった」

検察は、郵便不正事件を、「証拠の改竄」という特異な事象が、個人(+2人の上司)によって起こされたものと矮小化して、まったく検察のカルチャー、組織そのものが問題であるということを認めようとしていません。

そのような機関が、何の監査も受けず、強大な権力を与えられているという状況を国民はきちんと理解すべきだと思います。そしてその責任をマスコミに期待するのは若干酷であると言わざるを得ません。彼らもビジネスですから、商売において「仕入れをストップされたら売るものがない」という状況に陥るリスクがあるからです。やはり国民一人一人が関心をもって、現実を理解するしか手立てはなさそうです。

私は、当事者として、これからも情報を発信し続けるつもりです。情報の拡散が支援につながります。よろしくお願いします。

2/18/2012


category: 冤罪事件に関して

2012/02/18 Sat. 05:27 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (40) 

#検察なうバレンタイン・チョコ (#(ハッシュタグ)は前につけなきゃ。「検察うな丼」みたい)

うな丼

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/18 Sat. 01:49 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (103) 「初公判予定」 2/16/2012 

#検察なう (103) 「初公判予定」 2/16/2012

今朝、早朝に友人からの電話で起こされた時に夢を見ていました。

大きなスクランブル交差点を、私はなぜか両手に一杯CDを抱えて、なおかつ大きなトランクを引いて渡っているところでした。人がぎゅうぎゅう詰めに立ち往生して止まってしまったので、私は一旦両手に一杯のCDを地面に置いたのですが、人が動き出したため、慌ててそれを拾おうとしていました。それを見かねて人が助けようとしてくれ、私も「あ、すいません」とか「そのトランクお願いします」と言ったところで電話で起こされました。

夢の続きを二度寝で見ようとしたのですが、続きは見れず、その後見た夢はこんなでした。

私はスパークリング・ワイン(なぜかオーストラリアのモエ・エ・シャンドン・ブリュット)を開けてボトルを持っているのですが、注ぐグラスが見つからず、どうしたものかと思っていました。すると小沢一郎氏が現れ、「言いたいことも一杯あるんだろうけど、頑張んな」と私に言いました。

何か深層心理が影響しているのでしょうが、それぞれ不思議な夢でした。

昨日は、内幸町にある弁護士事務所で、4時間半みっちりとミーティングを行い初公判の準備をしました。

そのミーティングの前に、日比谷公園をはさんである東京地裁に傍聴に行き、若干のイメージトレーニングをしました。

最初に傍聴したケースは大麻所持の刑事事件。証人尋問として呼ばれたのが、逮捕にたずさわったかなりランクが上の警察官(肩書は警部だったかな)の方でした。逮捕の時に、被告が「俺はベジタリアンだ!大麻を食って健康でいられるんだ!」とか「どひゃーっ」な証言もありましたが、あごひげ15cmくらいはあろうかというロンゲの被告は終始余裕綽々の表情でした。公判検事が実にかったるい質問を繰り返し、証人の警官の方はなぜか異様に緊張していて、事前の打ち合わせをしているのでしょうが、あまり話しがかみ合いません。その様子に、裁判長が業を煮やして切れまくっていました。私も、「あー、それ全く答えになってないよ―」とか「検事ももっと空気読めよー」と思って傍聴していました。

次に、私の公判が行われる718号法廷に入ろうとしたところ、開廷前からすでに満席で入れず。強姦致傷のケースでした。傍聴マニアには人気の題材なのかもしれません。

それで、次に傍聴したのは、中国人のおばさんが被告人の傷害事件。丁度、被害者のおじさんの証言が行われていました。こちらの裁判は、先程の大麻のケースとは打って変わって、ものすごい緊張感。それは被害者証言の最中、被告人の中国人のおばさんが、手に持った書類を叩いたり、「嘘つくな!」とか叫ぶので、その都度、裁判長が「被告人!これ以上証言を妨げる場合退廷してもらいます!」と言っていた状況だからです。また公判検事も女性の方でしたが、すごく切れ者系のさっそうとした感じで、また書記官席に座っていた通訳の方が、証言の都度、非常に流暢な中国語で訳しており、「おー、インターナショナルぅ」という感じでした。

確かに一階に置いてある公判予定表を見ると、「~(日本名)こと~(外国名)」という被告人名が少なからずあり、犯罪も国際化している様子が伺えました。

さて、来週水曜日22日の私の初公判ですが、そこで何が行われるかをお知らせしておきます。私も初めての経験なので、逐一弁護士と確認したものです。

まず開廷後、最初に私の人定質問が行われます。私が被告本人であることを確認するため、氏名、本籍、住所、年齢、職業が質問され、私がそれに答えるものです。

それから検察官が起訴状を朗読。これは起訴状に記載された、簡潔な公訴事実と罪名および罪状が朗読されるだけです。

その後、裁判官が被告人に黙秘権の告知をした後、起訴状の公訴事実に対して被告人(私です!)の意見を述べます。「罪状認否」と言われるものです。きっちり否認させて頂きますので、お越しの方はしっかりと聞いて下さい。

そして弁護士の意見。ここでは争点の設定というだけで、非常にシンプルなものです。

それから、検察官の冒頭陳述となります。私も弁護士も、検察が一体どんなストーリーを作って故意の捏造をしてくるのか見当がつかないので、ここで検察の主張が明らかにされてから勝負の開始という感じです。今回は、敢えて公判前整理手続きを取らなかったので、検察に対して、冒頭陳述で立証予定事実の開示を十分にするよう請求しています。これが15分から20分くらいなものでしょうか。

それが終わると、「証拠調請求」といって、検察が「以上の事実を立証するため、証拠等関係カード記載の各証拠の取調べを請求します」と述べます。つまり検察が、集めた証拠の提出する旨申し出るわけです。

証拠には、2種類あり、「物証」と「書証」があります。「物証」はそのまま証拠として裁判に提出されますが、「書証」は「伝聞法則」により本来証拠能力がないため、弁護人の同意がないと提出できない(刑訴法326条)ということになります。今回の私のケースでは「物証」はなく、私の供述調書、関係者の供述調書、及び会社契約書等の書類の膨大な量の証拠は全て書証となっています。

書証に関し、弁護士が同意・不同意の意見を述べ、同意したもののみが証拠として裁判に提出されます。供述調書が不同意とされた場合には、検察は供述者を法定に証人召喚して、証言を再現することで、同じ証拠を提出することを試みるということになります。

郵便不正事件で、村木氏に不利な証言を供述調書として検察は取っていましたが、弁護側はこれを不同意。検察は、証人尋問で同じ供述内容を法廷の証言で再現しようとしたのですが、供述者が軒並みそれを翻したため、検察のストーリーが崩れたというのは、記憶に新しいところです。

どの証拠を同意するか、不同意するかは非常に重要なところです。検察は、基本的に私に不利な証拠だけを集めて提出の請求をしているのですが、全てを不同意にするのも裁判所に対して心証を悪くするだけです。現時点で、膨大な資料の読み込みを弁護士はしているところですが、初公判までには間に合いそうもなく、同意・不同意の判断を「留保」するということがかなりの部分出てきそうです。しかし、我々弁護側の基本方針は、何も包み隠すこともないので、基本、同意でいいのですが、検察の悪意に満ちた部分だけは排除したいと精査しているものです(検察は、英文の資料には必ず和訳をつけますが、これが「意訳」ならぬ「超訳」になっているようなことがままあります。また関係者の供述調書は一人称で書かれていますが、見事なことに検察の作文の努力が伺えます。「これはやり過ぎだろー」と結構センスのない供述調書が多いというのが、率直な感想です)。

弁護側同意となると裁判所の権限で採用決定となりますが、その採用決定された証拠に関して、検察が要旨の告知を行います。それら証拠がどういうものかをざっくり説明するわけです。

そしてその後、通常の裁判では行われない弁護側の冒頭陳述を弁護士が行うことを予定しています。

これは先の検察の冒頭陳述に対抗する、被告人側の主張(アナザ―・ストーリー)の積極的主張を行うものです。法律用語では「ケース・セオリー」と呼ばれるもので、言ってみれば弁護側の「勝利の方程式」ですが、これを早い段階で明らかにすることで、争点をより明確にしようとするものです。

ここまでで一回目の公判は終了です。

残念ながら、初公判で私が話す機会はあまりなさそうです。被告人質問は、公判の流れでも最後の最後になるので、それまでは、証人喚問がされた場合など、私も積極的に質問したいと思っています。

公判は11時開始ですが、混み合うことも予想されます。開廷中の途中入場・退出は自由ですので、11時前に来て、718号法廷に入り、前の法廷を傍聴して待つことをお勧めします。せっかく来てもらって入れないと残念ですから。あと、くれぐれも録音・録画はご法度ですので、その点よろしくお願いします。

それでは法廷でお会いしましょう。

2/16/2012

category: 刑事裁判公判報告

2012/02/15 Wed. 20:12 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (39)  

#検察なう T-shirt on アクセス特急 (羽田空港 ⇔ 成田空港) (by Y.I ♂)

アクセス特急

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/15 Wed. 17:50 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (37&38 連作) 

#検察なう T-shirt with 親子丼「いただきまーす」 (by N.Y ♂)

親子丼1

#検察なう T-shirt with 親子丼「ごちそうさまでした」 (by N.Y ♂)

親子丼2

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/14 Tue. 17:49 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (102) 「マネージング・ディレクター」 2/14/2012 

#検察なう (102) 「マネージング・ディレクター」 2/14/2012

私は日本の企業で働いたことがないので、外人感覚で日本の企業文化を見ると、奇異に感じると共に、かなりうまくできてるなと思います。特に年次で横並びの給与報酬は、運動会で手をつないでゴールするゆとり教育的な印象を持ちます。優秀な人材をそれでも納得させるのが、日本の企業文化の特質性・優位性です。社会主義的な企業文化は、純粋な外人には(特に優秀な外人には)理解しずらいものかもしれません。

やる気を喚起するために構築されたシステムが幾層にも作られた役職だと思います。それを一段一段上がっていく達成度をその都度確認することが「やりがい」となっているのではないかと想像します。

「昇進」に対する思い入れは、サラリーマンにとって個人の哲学の問題で、美学・主義といってもいいものかもしれません。ただ、経済的な報酬をインセンティブとできない日本の会社において、もし昇進の欲がなければ、なかなか自己の達成度を確認する手段がないのも事実ではないでしょうか。

それと比較して外資系証券においては、経済的な報酬をインセンティブとすることができます。つまり会社での昇進はあまり興味がない、と言う人間もいるのかもしれません。「お金さえもらえばいい。会社でのポジションは関心がない」という人です。多分、日本の会社から移籍してきた人のメンタリティーは往々にしてそうである可能性があります。

ところが、外資系証券に新卒で入ってきて、外資系企業が終のすみかというような人間は(私もそうですが)、実は強烈に昇進を意識しています。外資系証券のカルチャーとして「MDになってナンボ」というのがあります。それを今回はご説明しようと思います。

日本の民間企業の役職は何段階なのでしょうか。部長、次長、課長、係長、主任に「上席」「補佐」「代理」「副」などがつき、部長の更に上にも延々と階層があるようです。外資系の場合は、非常にシンプル。一般的には、肩書なし、バイス・プレジデント(VP)、ディレクター(D)、マネージング・ディレクター(MD)の4階層です。

この「マネージング・ディレクター」、「MD(『エム・ディー』と読みます)」という響きは、外資系証券にどっぷりつかった人間であれば、夢のポジションであり、金は二の次です。それは間違いありません。私がそうでしたから。勿論、なりたくてもなれないという場合に、お金で自分を納得させるという人もいるかもしれません。そしてなりたいと思えば思うほど、なかなかなれないというのが人生のトリッキーなところです。

マネージング・ディレクターは全社員の約5%から7%くらいだと思います。私が在籍していた当時、クレディ・スイスの債券部は100人程度の規模でしたから、その中では6-7人というのがマネージング・ディレクターの割合です。

日本の企業の昇進がどのようなシステムで決定されるのかは、よく分かりませんが、外資系証券の場合は非常に明確です。それをご説明しようと思いますので、外資系証券で昇進したいという方は参考になさって下さい。

もし皆さんが、外資系証券で昇進するためには何が必要かと考えた場合、「パフォーマンス」「収益」と思われるかもしれません。しかしそれは必要条件ではありますが、決して十分条件ではありません。

私のソロモン・ブラザーズ時代の営業で、2年続けて全世界の営業の中で第2位の営業成績を上げた方がいました。全世界で2位というのが、どれくらいすごいかはぴんとこられないかもしれませんが、とにかくすごいことです。彼は文字通りスーパー・スター。NY本社でも彼に商品を売ってもらっているデスクではとにかく彼の評価はずば抜けて高かったものです。その彼でも結局、マネージング・ディレクターにはなれませんでした。その当時私には理解できませんでしたが、自分がマネージング・ディレクターになって、なぜ彼がなれなかったか、その理由がよく分かります。パフォーマンスだけを評価するのであれば、給料を上げればいいだけのことです。タイトル(役職)をその人間に与えるには、タイトルを与えることで会社にプラスがあるということがなければいけません。

例えば相撲の横綱を例にとるとこうなります。相撲は実力の世界ですから、例えば幕内全勝優勝を6場所続けて敵なしとなれば、横綱になることにあまり異論はないのではないでしょう。しかし、もし相撲界が外資系証券であったとしたら、彼を横綱=マネージング・ディレクターとするためには、彼が横綱としていかに相撲界に貢献できるか、彼が横綱としてどのようなポジティブな影響を後進に与えるかということが問われます。

例えば、具体的にはこのようなことが必要とされるでしょう。若手の練習には積極的に付き合い、ちゃんこも一緒に作る。新弟子試験の試験官を買って出る。部屋の若い者を引き連れて東北震災のボランティアに行く。私財を投げ打って海外興業を企画し相撲の国際的認知度アップを図る。相撲の文化を研究し本を出版して相撲の伝統を維持し、また世に知らしめる。このようなことをすれば、「ふーむ、彼は他の力士の規範になるな。よし横綱に推挙しよう」となるわけです。

クレディ・スイス証券で私がマネージング・ディレクター(MD)になった実際のプロセスをご説明します。

まず1年の半ばを過ぎた頃、昇進の話が各部署のマネージャーの重要裁定事項として彼らの意識に上ります。まず彼らの部下の誰を今年推挙するかということが、プロセスの第一歩です。クレディ・スイス証券の大きな部署の分け方は債券部、株式部、投資銀行部、そして総務関連となりますが、債券部だけでも部署は10以上になります。そしてその各部署ごとに、MDの推挙をします。毎年各部署から一人ないし三人程度の推挙です。当然この時点ではパフォーマンスが非常に重要なファクターとなります。やはり収益度で貢献した者を昇進させたいと思うのはどのマネージャーも考えることだと思います。

そして候補となった者は、早くに候補となったことをマネージャーから知らされますが、そこから非常に重要な作業にかかります。それが「推薦状」の起草です。最終的にはマネージャーの名前で出される推薦状ですが、これは本人が書きます。この推薦状が非常に重要な参考資料となります。この推薦状はレポート用紙に何枚も書くことになりますが、パフォーマンスの部分で書くことはそれ程ありません。収益をどれだけ挙げたかというのはレポートの分量としてはそれほど稼げないからです。そして重要になるのが、どれだけ企業人・社会人として優れているかのアピールです。

どの会社でも倫理規定というものを制定していると思います。アメリカの会社でのそれは、Code of Conductと呼ばれますが、やはりアメリカらしく、非常に全人的な資質が問われます。そしてこのCode of Conduct に沿って推薦状を書くことがパターンとなっています。つまりその倫理規定に挙げられた項目を全てクリアしている人間だということのアピールをする必要があります。

例えば、「Inclusiveness & Diversification」という項目があります。日本語にすると難解なコンセプトなのですが、「人に疎外感を与えることなく、多様性を受け入れる人格である」ということでしょうか。私の場合、部下にアイルランド人や中国人がいました。彼らと人種を越えて密接な仕事をできるというのが一つのセールス・ポイントです。また私のビジネスの顧客は半分以上がアジアの投資家でしたから、彼らとのコミュニケーションがうまくいっていたからこそ成功していたということもポイントとして挙げられます。部下や他部署の人間との接し方も非常に重要になります。

そのほか多岐にわたる全人的な資質を網羅した推薦状を書き、それがMD審査委員会に提出されます。MD審査委員は現場のシニアのMDで、毎年入れ替わります。あくまで現場主義の人事であり、裁判でいう陪審員制度のようなものですが、審査委員の負担が非常に大きく、日常の業務をある程度犠牲にしなければならないため、毎年入れ替わるものです。

全推挙者が出そろった段階で、審査委員のそれぞれに、担当が振り当てられます。審査委員は討議をするだけではなく、自ら推挙者の代理人となって、審査委員会でプレゼンテーションをします。つまりMD候補の推薦プレゼンテーションを、委員会の場で実際に行うのは、その候補を良く知っている上司ではなく、全く見ず知らずの者がプレゼンテーションをするということになり、そこで大部分の恣意性が排除できるというしくみになっています(いわゆるオフィス内ポリティクスで昇進が決まらないようなシステムが取られているわけです)。

私は、担当となったMD審査委員2人と香港でインタビューをしました。彼らにすれば、私をまず推薦できるかどうかの見極めをし、そしてどのように推薦プレゼンテーションをするかという題材集めとなるインタビューです。先の推薦状の補強を、実際に候補者と話してするわけです。私は香港ベースの仕事もあったので、自分の仕事も入れましたが、多くのアジアのMD候補は、そのインタビューのためだけに香港に出張に行くものです。アメリカの候補者はNYに、ヨーロッパの候補者はロンドンに飛んで、そのインタビューを受けます。

そして私を担当する審査委員は、プレゼンテーションの期日までに、いろいろな聞き取りを行います。人の評判のチェックです。実はこれが影響度が大きく、私は候補一年目の時は、この聞き取りでネガティブな意見を言う者がいたため、MDとなることができませんでした。私はあまりの多忙さで、ある商品のデスクに、「人手が全く足りないから、あなた方の商品に注力することはできない。人手を増やす以外にアジアであなたたちの商品をマーケティングすることはかなわないから、その件はマネージャーと話してくれ」とはっきり伝えていたのですが、それをもって、「自分の好き勝手でビジネスを選んでいる」というように評価されたためです。私も適当にごまかして、やった振りをしていればよかったのですが、それでは全く解決にならないと思い、そう正直に言っていたことが仇となったものです。その理由を聞いた二年目は、どの商品もまんべんなくアジアでマーケティングすることを心がけ、なるべく敵を作らないようにしました。

幅広くサウンディングして人の評判をベースに人事を図るということは、絶対的なファンを作ることも必要ですが、それ以上に誰一人ネガティブなことを言う者を作ってはいけないということになります。

そうしたプロセスを経て、審査委員会がニューヨーク本社で開かれ、推薦状を叩き台として、数日かけて全員のプレゼンテーションが行われた後、投票となります。投票は4段階、1「絶対にMDとすべき」、2「MDとするのは問題がない」、3「今回は保留」、4「MDにはできない」です。そしてMD当選のボーダーラインは、毎年、1.6ないし1.7と言われています。そして審査委員会でMDに昇進させるべしという候補のリストができると、それを役員会にかけて最終採決という手順をとります。

このようにマネージング・ディレクターの審査には大変な手間と時間がかけられ、毎年新しいマネージング・ディレクターが選ばれるということになります。

やはりマネージング・ディレクターになった時はうれしかったですね。まさにプライスレスです。なかなか外資系証券に働いていないとマネージング・ディレクターの価値ってのは分かってもらえないんですけどね。

2/14/2012


category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2012/02/13 Mon. 23:03 [edit]   TB: 0 | CM: 3

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (36) 

#検察なう on Valentine's Day (by H.P ♀)

バレンタイン

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/13 Mon. 07:22 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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嘆願書 (33/146) 米村望 

嘆願書 (33/146) 米村望

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

33通目の嘆願書は、私のワインつながりの友人、米ちゃんからのものです。

説明よりまず彼のスパイスの効いた嘆願書をお読み下さい。

<嘆願書>

私は、資産運用というものをまったくしない人間であることもあって、八田隆さんが従事していた職業に関しては、ネガティヴに捉えておりますし、また私と同じ年齢である八田さんが得てきた報酬が、私個人とは比べようもないくらい巨額であることには、正直申し上げて、妬みや僻みを感じてしまいます。

しかし、今回の「脱税」というものの経緯を、八田さんから教えてもらった情報に則して、また八田さんという人間を知る友人としての観点から申し上げると、そこに「故意」や「悪徳」が介在するとは、考えにくいと思っております(もちろん今後新たに、「自白」以外の「物的証拠」や「状況証拠」が出現しない、という前提ではありますが・・・)。

われわれ一般人も「地検特捜部の国策捜査」というものの一端を知ることになった現在、もしこの裁判が、「外資金融業界で大儲けした金持ち」を、「有罪という結論を導くためのストーリー」に沿って行われるとしたら、「特捜部」「国策捜査」というものに対する疑念はいよいよ増し、「日本の正義というものは、恣意的なものだ」という認識が、広がっていくような気がします。

八田隆さんは、いい加減なところも多々ある人物ですが、不正なことを意図的にするには、モラルが邪魔をしてしまう性格であると、私は思っております。

検察におかれましては、八田さんのことばに、真摯に耳を傾けていただきますよう、お願い申し上げます。

米村望

<以上>

この米ちゃんの嘆願書が弁護士の元に届けられたのが、2010年の3月。村木氏が郵便不正事件で無罪判決を受ける6カ月前のことです。

勿論、彼の普段からの政治的関心や知識というものが人より長けていたということもあるのでしょうが、あの時点でこのように物事を俯瞰的に見ることができたというのは大したもんだな、と思います。

実は、私は「国策捜査」という言葉を知りませんでした。ある機会に別の者(彼はベアー・スターンズの同僚だったのですが)と話をしている際にも、「えー、八田さん、それって国策捜査じゃないですか」と言われても、それが何か聞き返すのが恥ずかしかったので、知ったかぶりをして「そうなんだよ。よく分かってんじゃん」と答えたものです。

国策捜査という言葉は、先日日経ビジネス掲載の記事のタイトル「クレディ・スイス『国策捜査』の真実」にも使われています。

ここをクリック→ 日経ビジネス「クレディ・スイス『国策捜査』の真実」

Wikipediaで「国策捜査」を検索してみました。

ここをクリック→ Wikipedia 「国策捜査」

「国策捜査(こくさくそうさ)とは、捜査方針をきめる際に、政治的意図や世論の動向にそって検察(おもに特捜検察)が(適切な根拠を欠いたまま)『まず訴追ありき』という方針で捜査を進めることをいう。」

「政治的意図」に「役所のメンツを保つため」とか「国税局に押し切られたため」といったものを含ませるならば、私が巻き込まれたクレディ・スイス証券集団申告漏れ事件における捜査も、文字通りの国策捜査です。本事案は笠間検事総長も了承の(彼が起訴を後押ししたということではありません。彼のこれまでの言動を見る限り、彼は、検察庁の中で孤軍奮闘改革を進めようとしている人物だと私は思っています)、高度に政治的判断を巻き込んだものであると思っています。

国策捜査における権力の行使者を検察と限定した用語に「検察ファッショ」という言葉もあります。同じ意味です。

検察には、効果的に捜査を行い、正義を遂行してもらうために強大な権力が与えられています。同時に、彼らを監視する組織・機関はありません。彼らを律するものは彼らが身につけるバッジ「秋霜烈日」が表象する、自らに厳しくあれという精神だけです。そして国民の誰もが(多分、裁判官も含め)、彼らの無謬性を信じて疑わないというのが、これまでの状況でした。

ところが国策捜査という言葉があること自体、一部の人間はその無謬性に疑いを持っているということを表しています。そして私も、実体験を通して、検察が公権力を濫用して、真実を捻じ曲げるということを知ったものです。

これをお読みの方の中で、「彼らが、無実の者を罪に陥れるなんて、そんな悪いことをするのだろうか」と思われた方がいらっしゃったとしたら、まだ認識は不十分だと思って下さい。私は、彼らはそれが悪いことだとは思っていないと思います。だからこそできることです。彼らも人間ですから、(性善説信奉派の私は強く信じていますが)、それが悪いことだと思ったら、彼らもそんなことはできないはずです。国家権力の権益と個人の人権の間でのプライオリティーの問題です。彼らが信ずる正義と一般的に信じられている正義との定義の違いと言ってもいいかもしれません(田原総一朗氏はそのように説明しています)。

ちょっと概念的過ぎるかもしれませんね。それではこういう説明はどうでしょうか。彼らの仕事だと彼らが思い込んでいるものが「法と証拠に基づいて起訴できるものは起訴する」ことだということはご理解頂けるでしょうか。

私は、検察の取調べで、検事に何度も何度も「検察は真実の追求をすべきだ。起訴をするということがあなたたちの仕事ではない」と訴えてきました。そして彼らに私の訴えが届くことはありませんでした。

確実に言えることは、検察官としての任務遂行の上には、「人間としての良心は必要ない」ということです。むしろそれを殺してこそ恣意的でない捜査が行えるとすら彼らは思い込んでいると思います。

検察が、私たちの知っている「正義」を遂行しないということは、国民全体の脅威だと思います。そのためにも「冤罪はこうして作られる」という現場中継的情報発信をこれからも継続していこうと思っています。

引き続きご支援の程、よろしくお願いします。


ここをクリック→ 米村望嘆願書


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category: 嘆願書

2012/02/11 Sat. 15:52 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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嘆願書 (32/146) 松本直久 

嘆願書 (32/146) 松本直久

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

32通目の嘆願書は元クレディ・スイス証券の同僚からのものです。

彼の嘆願書には重要なインフォメーションがありますので、是非じっくりお読み下さい。

クレディ・スイス証券で税務調査対象者は約300人。その大部分が申告漏れ、そして実に約100人が私と同じく株式報酬の無申告であったことは既に報道されています。

正しいとされる申告は、株式取得時に給与所得として総合課税申告というものです。

これを、取得時ではなく売却時に申告であるとか、退職時にもらったものを税率の低い退職金として申告とか(ことこれに関してはかなりの議論がありますが)、全額ではなく譲渡益分だけ総合課税で申告とか、給与所得ではなく一時所得として特別控除額(50万円)を引いた残りの1/2を総合課税で申告とか、あるいはそれらの組み合わせといったように、間違った申告のパターンは様々だったようです。

これは会社の指導が周知徹底していたとは程遠い状況だったということの証左です。

私は今までも、あるいは今後も、会社に責任転嫁して事なきを得ようというつもりはありません。あくまで「過少申告は100%私の責任。そして脱税は犯罪そのものが存在しないから、誰も悪くない」というスタンスは変えないものです。

むしろ犯罪を作り出しているのは、国税局であり検察です。彼らは、犯罪の対立項としてしか自分を定義できないため、このようないびつな状況を引き起こしているのだと思います。

国税局・検察は、給与プログラムや雇用契約書や株式受渡時の通知といった大部の英文書類の隅々を探して、「会社は源泉徴収する義務はない」といった文言をいたるところで拾って、私がそれを意図的に看過したという状況証拠を固める作戦でしょうが、社員の申告状況という事実は、何よりも雄弁に真実を語るものだと言えます。

給与プログラムの書類など、極端な話、社員が何万人いてもそれを書いた人間しか読まないのではないかと私は思ってしまいます。別にその内容の隅々を理解したところで給料が上がるわけでもなし、もし私の部下がそのような書類を読んでいたら、「そんな暇があれば仕事しろ!」と怒鳴ったものだと思います。

外資系証券で働く人間は、報酬金額にこだわる人間は多いと思います。私も、勿論、その中の一人です。しかし、そのこだわりとは、経済的価値ではなく、それが会社の自分に対する評価、通信簿の成績のようなものだからです。

私は21年間外資系証券に働いて、一度たりとも報酬金額に文句を言ったことはありません。それはナンセンスだからです。通信簿の成績が悪いからといって、その点数をつけた先生に文句を言うものなのでしょうか。少なくとも私はそう考えていました。

勿論、私がマネージャーであった時、報酬金額に文句を言う部下もいました。彼らには、「俺は交渉には応じないよ。もっとパフォーマンスを上げれば、希望する金額は喜んで払うから、もっと頑張んな」と言ったものです。

もし会社の評価が自分の実力より低いと考えているのであれば、会社を辞めればいいだけの話です。それだけの自信があるのであれば、自分を高く売ることに何ら不安はないはずです。

私は、報酬金額の点で、会社を辞めようと思ったことは一度もありません。実際のところ、ソロモン・ブラザーズに14年間、あるいはクレディ・スイスに6年もいるよりは、早く転職した方が、よっぽど金銭的には恵まれていたはずだと思います。

他社からの誘いは、14年間の間に数えきれないほどありましたが、結局行くことはありませんでした。それらは、私の心を動かすものではありませんでした。なぜなら、私はソロモンの仲間が好きだったからです。ソロモンでの成功、それは昇進ということですが、それが夢だったからです。

刑事告発の報道後、私が元クレディ・スイスの者に株式の税務処理の件を尋ねたのは20人あまりですが、彼らのほぼ全員が無申告でした。

彼らはフロント・オフィス(日本の企業でいう総合職)に属していますが、そこで無申告が多いのは、彼らの納税意識が低いからではありません。業務の多忙さにかまけて、税務をおろそかにしていたことは確かですが、税金を逃れようという意識はなかったものだと思います。

その中で正しく申告をしていたのはわずか2人でした。

その正しい申告をしていた数少ない者の一人が今回、嘆願書を公開する松本直久氏です。

私は、彼に直接嘆願書を依願していません。私の元部下が口を利いてくれ、彼自身申し出てくれたものです。彼自身は正しい申告をしているわけですから、何ら自己弁護する必要もなく、また私を弁護するメリットもありません。むしろ、間違った者たちを嘲笑ってもいいようなものです。彼の正義心が嘆願書という形になって現れたものだと思います。

検察は執拗に関係者の取調べをしていますが、その選択は恣意的なものです。会社に在籍する正しい申告をした数少ない者を探し出して、彼らに「八田は悪い」と言わせたところで、何の説得力もないということを理解できていないようです。

彼らは、会社に在籍しておりかつ申告漏れであった人間から「なぜ申告漏れであったか」ということを聞くべきです。あるいは、逆に会社を辞めかつ正しく申告していた人間から「どうして正しく申告できたか」ということを聞くべきです。

もしかしたら、そんなことは分かっているのかもしれませんが、彼らの仕事が、真実の追求ではなく犯罪を捏造することである以上、そうした合理的な行動も取れないのかもしれません。

<嘆願書>

松本直久と申します。クレディ・スイスで1998年から2006年まで勤務しました。八田さんは外債で私はデリバティブ担当でしたが、同じ債券部門で近くに席があり、部門のミーティングでは一緒になることも多くありました。彼は、仕事の結果だけでなく、その内容に真剣に取り組むタイプでした。

外資系の金融機関では上に行けば行くほど収益さえあげればよしとする者が多いのですが、彼は単純に外債が好きなのか彼なりの美学なのか、自分にも他人にも合理的で美しい仕事を求めていました。当然、お客さんのことを考えた提案になるので評判は良かったようですが、怠慢やつじつまの合わない行動には厳しく、部下の中にはついていけないと感じていた者もいるようです。

今回のクレディ・スイス社員の申告漏れ報道には、驚くと同時に「やっぱり」とも思いました。私自身も非常に面倒に感じていましたが、そもそも株式を支給された場合の納税のルールや仕組みの理解が難解なのにもかかわらず、会社からは積極的な説明はなく、個人の納税は個人の責任でというだけでしたので。今回100人を超える申告漏れがあったという報道でしたが、クレディ・スイスが納税意識の低い人間を選んで採用したとも考えられないので、やはり会社の説明不足だったのだと思います。

給与所得になるのか、いつの時点で収入があったとみなすのか、いつ申告するのか、など会社は何にも教えてくれませんので個人で必死に調べないとわかりません。しかも、外資系金融はどこでもそうだと思いますが、社員の間でも申告や納税の話題はつっこんでしづらい雰囲気があり(結局金額を類推できてしまうので)、納税に詳しい人がいても口コミで広まりません。

クレディ・スイス株の受け取りにあたって、日本の証券会社ではなく米国の証券会社を指定したのも会社側です。すべての社員はいやおうなく米国の証券会社で株を受け取らざるをえませんでした。脱税目的であえて海外に口座を作るわけではありません。社員の側は、ボーナスは全額現金で欲しいと思っていますし、やむをえず一部を株式にするのであれば、支給時に自動的に売却して現金化して振り込んで欲しい、とにかく、納税とかそういう面倒な手間から解放してほしいと考えています。

外資系金融の社員は、世間との比較でいえば高い給料をもらっていますので、脱税というリスクをとるのは割に合いませんし、日本で外資系に勤務するような人間は、社長になる夢を放棄した「小物」ですので、脱税なんて大それたことをする度胸もありません。

八田さんの場合は金額が大きいだけ目を引いてしまいますが、他の単純な理解不足の人と同じで、理解が不足していただけだろうと思います。一方、知りませんでしただけで済むような金額でないのも事実です。非常に不運なのは、もっと早く申告漏れを指摘されていれば、金額も大きくならなかっただろうし、その後はきちんと納税しただろうと思うことです。

もし、それでも同じことを繰り返したのであれば、それは故意または重大な過失ということになるのでしょうが、誰からも何も教えてもらえず、指摘も受けず、いきなり重罪では厳しすぎるのではないでしょうか。ひとつの会社に長く勤めるという真面目であったことが仇になるのではやりきれません。

すでに加算税なども支払い、実名で報道されてしまったり、もう社会的な制裁は十分に受けていると思います。これ以上の処分がないことを望んでいます。

松本直久

<以上>


ここをクリック→松本直久嘆願書


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category: 嘆願書

2012/02/10 Fri. 21:31 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (35)  

マダム・ゴルファー in #検察なう T-shirt (in マニラ) その1 (by Y.J ♀)

マニラ1

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/09 Thu. 21:50 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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嘆願書 (31/146) 氏川真理 

嘆願書 (31/146) 氏川真理

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

31通目の嘆願書はワインつながりの友人、最近は最強のゴル友です。

私は、外資系証券で債券トレーディングという比較的特殊な業務に従事していました。仕事をしていた当時、時々人に、「八田さんの仕事ではどういった能力が必要とされるんですか?」と聞かれました。お客さんにも、「モーゲージ証券は複雑ですから、さぞかし数学的な才能が必要なんでしょうね」と言われました。

確かに、複雑な構造をもつ債券の理論価格算出のためには最新の金融テクノロジーが必要とされます。しかし実際の業務上、必要なのは四則計算くらいなものでした。但し、米国の債券の価格は32進法を用いて表示されるため、若干の慣れが必要です。そしてその四則計算をする状況というのが、とてつもないプレッシャーの中です。電話口でNYのトレーダーと話しながら、目の前にはお客さんの電話を握る営業がいて、「八田さん、早くお願いします!」と叫んでいて、その中で絶対間違えることができない何百億円という金額の「単純な四則計算」をするものです。私はストレスに強い方とは思いませんが、こと仕事のプレッシャーは全然プレッシャーと感じていませんでした。戦争の最前線で、銃弾が飛び交う中、公文の算数のペーパードリルを制限時間ぎりぎりで間違えることなくできる人には向いているかもしれません。

あと、ご自分でFXや株を取引なさっている方は是非参考にして頂きたいのですが、投資行動で絶対的に必要な資質は「自分の過ちを自ら正す勇気」です。ある商品を「買う」場合には、その商品が値上がりすると思っているからこそ買うわけですが、そのポジションの損益がマイナス(=損をしている)という状態は、「買う」=「値上がりする」という最初の判断が間違っていたということです。勿論、その後値上がりするということも可能性としてありますが、「そうなればいいなあ」という「希望」は正しい投資戦略とは言えません。市場はあなたの希望など知らないし、もし万が一知っていたとしてもそれをかなえる必要はありません。自分が間違っていたのであれば、淡々とそれを認めて正し(=損切り)、また次のアクションを最初から取る方が結果的によいということは私が保証します。

そういう状況下に長くいた影響なのか、物事にこだわらないのはよいのですが、物忘れが極端にひどくなったような気がします。というか最初から覚えていないという感じです。クリストファー・ノーラン監督の映画「メメント」のガイ・ピアースとまでは言わないものの、記憶のネットの網目がすごく粗くて、それに引っかからないと何も覚えていないという感じです。

ここをクリック→ #検察なう (82) 「アスペルガー」

今回嘆願書を紹介する彼女と一緒にいて、いつも「すげーっ」と思うことは、その観察力と記憶力です。卓越した観察力は嘆願書をお読み頂けるとお分かりになると思います。

記憶に関して、私の場合は非常に文系的な記憶構造になっています。つまりストーリーと必然性が記憶の定着に必要です。私は、東大の二次試験を日本史・世界史で受けた超文系指向なのですが、歴史はストーリーと必然性があるため記憶できても、同じ社会の地理は全く苦手です。例えば北欧のスカンディナビア半島にある二国は北がノルウェーで南がスウェーデンですが(さっきWikipediaで調べました)、なぜ逆に北がスウェーデンで南がノルウェーだといけないのか、その必然性が理解できないため、記憶に全く定着しません。彼女の記憶の定着の仕方は、実に理系的な感じです。脈絡のない断片的な記憶が、脳のどこかに整理されてるんでしょう。この3年間の取調べの過程でも、彼女の記憶に助けられることはよくありました。

不思議なもので、彼女はそこまでベーシックな知的能力が高いのに、外国語が全くだめらしいです。仕事で時々海外出張があるようですが、「どうしてんの?」と聞くと「全部、日本語で無理やり押し通す」だそうで、それも一種の才能なのかもしれません。よく英語の手紙の代筆を頼まれます。

ゴルフは私のマイ・ブームですが、彼女は女だてらに特注マッスル・バック・アイアンをぶん回すアスリート系ゴルファーで、一緒にラウンドする我ら男性陣はいつもやられてます。私は師と仰いでるので、楽しくラウンドさせてもらってますが。

<嘆願書>

八田隆の友人の氏川真理と申します。

私たちは7年前ワイン会で知り合い、それ以来親しくしております。
共通の友人も多く、当時からの仲間とは今でも月に1~2度集まっています。
今回の告発に対し、私から見た八田隆という人物像を嘆願書という形で提出させていただきます。

八田隆は、仕事と趣味には没頭するのですが、その反面一般常識にはやや欠けた、浮世離れした人物です。

六本木ヒルズなどの豪邸に住まず、駅から10分歩くワンルームのマンション暮らし。タクシーもほとんど乗らず、電車移動。
家にテレビが無く、話題のアイドルや流行りのお笑い等俗世間には全く興味なし。あまりに質素で、当初はとても億稼いでいる人の生活とは思えませんでした。
でも松屋の豚丼の夕食の後、家での晩酌が1本数万円のワインだったり、定食屋のポイントカードを忘れて悔しがり、わざわざお店を変えた先で何万も使ったり、ワイン会で偶然行ったレストランで好きなワインがあったら何十万円分も買い占めたり。
ケチなのではなく、金銭感覚が普通の人とは違うようです。
一時期はスノーボード教室とワインバーを開くのが夢で、儲からなくても自分の好きなことを仕事にしたいなどと子供のようなことを言い、ワインバーの在庫用にワインを12本単位で買っていたこともありました。
子供と過ごす休日のためだけに鎌倉に一軒家を買ったり(しかもキャッシュで)、年に数回の家族旅行が海外だったり、子供に関して使うお金も桁外れです。

前の税理士さんが確定申告をし忘れていても気付かず、時効で還付がもらえなかったことは笑い話になっていました。
飲み会の幹事で自分のカードで精算したことを忘れていて、口座引き落としに間に合わない、とお金を貸したこともあります。
「金貸してくれ。300万円。明後日引き落としだった。」と、OLの年収にあたる金額を平気で言うのです。
貸した直後に「やっぱりお金あった。」と返されたこともあります。通帳記帳をずっとしていなかったそうです。
普通の人の理解の範疇を超えた、お金に無頓着な人なのです。

また、ストレスに弱く病気恐怖症でもあります。
クレディスイスの後半は上司と合わなかったようで胃を悪くし「きっと胃癌だ」と大騒ぎしましたが、結局胃潰瘍にもなっていない軽い胃炎で、退職した途端に治りました。
国税局の取調べが始まってからは下痢が続き、どう考えても原因はストレスなのですが大腸癌だと心配し、昨年夏に無保険なのに虎の門病院で大腸内視鏡を受けたほどです。
そんな人が、たかが1億ちょっとのために、ベアースターンズで1年働けば稼げてしまう額のために、時効まで毎日胃に穴のあくような生活を送ることになる脱税を選ぶでしょうか?

病院好きなので「毎月の保険料の元は十分取ってるね」と言ったところ「会社だけじゃなくて俺も払ってるの?」と。
ベアースターンズをやめる時には「外資系なのに失業手当もらえるらしい」と本気で驚いていたことも。
毎月の給与明細書は封を開けるだけで見ていないらしく、税金どころか保険や年金を支払っている感覚も知識もなかった人です。

今回の脱税騒動も、見知らぬ第三者の話なら「億もらい過ぎてて気づかないものなのかな?」と思うかもしれませんが、八田隆を知っている人なら「八田さんなら気付かないでしょ」「八田さんらしいミス」と受け取っているはずです。

払うべき税金は払わないといけないと思います。
税金のことを会社に任せきっていて自分で調べようとしなかったことも、注意が足りなかったと思います。
でも、八田隆が知っていながらわざと税金を払わなかったとは思いません。
他の100人の人達と同じように、気付かなかった、抜けていただけだと思います。

どうか、八田隆という人間を理解していただき、寛大な処分をしていただけるようお願いいたします。

氏川真理

<以上>

ここをクリック→ 氏川真理嘆願書



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2012/02/09 Thu. 15:02 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (34)  

#検察なう T-shirt with チマチョゴリ in ソウル (by A.S ♀)

チョゴリ

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2012/02/08 Wed. 22:23 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (33) 

#検察なう with 越乃寒梅 (by H.P ♀)

越乃寒梅

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2012/02/08 Wed. 12:37 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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嘆願書 (30/146) 倉永良通 

嘆願書 (30/146) 倉永良通

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

30通目の嘆願書は、ソロモン・ブラザーズでの先輩、倉さんからのものです。

アメリカでのサブプライム・ローン危機は全世界規模での経済不況を引き起こしました。勿論、日本も例外ではありません。

かつて日本においては常に右肩上がりの成長を続けていたため、国の税収は安泰でした。むしろ減税を繰り返し行うことで、自民党の長期政権が実現したものです。なんだかんだ言っても、民衆というのは生活がうるおっていれば大概文句は言わないものです。

そしていつのまにか政権維持のためには消費税増税がタブー視されるようになり、日本は先進国では突出して消費税率が低い国となりました。私の住むバンクーバー市のあるカナダ、ブリティッシュ・コロンビア州の消費税率は12%です。ヨーロッパ諸国では20%に達する国もあります。日本は5%という低率にも関わらず、これを上げようとすると、国民は一斉に文句を言います。

国が国民を養うには当然、お金がかかります。医療保障は必要です。老人やシングル・マザーの面倒も見なければなりません。橋や道路も作らなければいけません。その財源はどこから来るのでしょうか。その答えは、税金と、国債発行による借金です。

日本は既に国債発行による財源調達は限界に来ています。借金時計というのをご存知でしょうか。映画「バブルへGo!!」でも紹介されていましたね。これです。

ここをクリック→ 借金時計

日本の借金の残高は、国が生産することができる価値(GDP)の150%に達しています。つまり稼ぐ以上に借金の残高が多くなり、その利子負担だけでもどんどん借金がかさんでいる状況です。借金を返すには税収を上げて、その税金で返済すればいいのですが、税金が借金返済に回る程十分ではなく、新たな債券を発行して満期償還に充当しています。サラ金の期限が来たら、ほかのサラ金から借りて返す状況に似ています。

同じような状況はギリシアでもあり、経済破綻したことは記憶に新しいと思います。ギリシアと日本の違いは、ギリシアの場合、借金の相手(国債の買い手)が外国であったのに対し、日本はその借金のほぼ全てを日本国民が負担しています(日本国債の国内消化率=94.8%)。日本国民の誰も日本がつぶれるとは思っていないので、貯蓄の代わりに日本国債を買っています。海外に売ろうとすると当然リスク・プレミアムとしてより高い金利を要求されますから、何も知らずに買ってくれる国民にその借金を押し付ける方が、国としても有り難いということです。

消費税を上げることはできず、それでも経済が伸びているうちは会社からの法人税と一部富裕層からの個人所得税でなんとか国の税収はまかなえていました。消費税以上にフェアな税制は、必要な税額を国民全員で頭割する人頭税ですが、そうすると一人当たりの税負担は数百万という金額(大体300万円くらい)というものになります。それだけの税金を払えない人が大勢いるのは明らかなので、個人所得税は累進課税となって、収入が高い人はより多く負担するという構造になっています。国民の多くは(その300万円より負担税額の低い人は)、法人税を払う会社や一部高額納税者にパラサイトしているということです。

そこにサブプライム・ローン危機です。ブーン!

国家の財政は火の車。「何とか税金をかき集めろ。日本が沈没するぞ」と当然、徴税吏にプレッシャーがかかります。飢饉の時に鬼のように年貢を取り立てるような感じですね。ま、そうした構造は時代がいつでも変わらないということです。

そこで彼らが注目したのが、外資系企業の海外給与でした。内偵してみると、かなりの申告漏れがありそうです。「おほっ!金鉱見っけ!」とほくそ笑んだことでしょう。彼らは、「うーむ、これは問題だ。ちゃんと指導しなければならない」などとは考えなかったのでしょう。「よっしゃ、一網打尽で、税金を絞り取れるだけ絞り取ってやろう」と思ったのだと思います。ねずみ小僧を義賊だという思考回路に近いものです。金持ちから盗むのは罪じゃない。高額納税者が「じゃあ儲けるのや―めた」と言ったら国が衰退の一途だということを考えていない、行き当たりばったりの税収かき集め作戦とも言えます。

そこで一番最初にターゲットになったのが、当局から覚えの悪いクレディ・スイス証券です。

ここをクリック→ #検察なう (74) 「クレディ・スイスへの差別」

案の定、300人の税務調査対象者のほとんどが正しい申告をしておらず、修正申告の山です。そしてそのうち約100人が完全申告漏れという状況でした。

私は、国税局の取調べの際に、「ほかにも大勢の申告漏れが出ています。その状況をどうお考えですか」と査察官に尋ねました。彼は、うれしそうに「八田さん、みなさんそうおっしゃるんですよ。『みんな脱税してるのに、何で自分だけつかまるんだ』って」と言いました。私は色をなして、「私はそんな下等な考えは持ち合わせていません。彼らも私と同様に過失だと信じています。ただ300人のうち100人もの申告漏れがでるというのは、異常ではないですか。それは例えば、『道を歩いている人300人のうち100人が万引きしていた』というよりも異常なことなんですよ。おかしいと思いませんか」と言いました。査察官は全く腑に落ちないという表情でした。「納税者を見れば脱税犯と思え」という発想しか彼らは持ち合わせていないのかもしれません。

別の機会に、同じようなことを述べた時も、査察官の言葉は「それでも200人の人は、正しくないかもしれないけれど、何らかの申告はなさってるんですよね」と、あくまで完全無申告=脱税を決めてかかっている様子でした。

その「200人は申告」というのは、個人の注意力の差ということもあるでしょうが、それよりも大きいのは彼らの社歴の差だと思います。外資系証券の給与プログラムや指導のあり方は各社まちまち。クレディ・スイスで指導らしい指導が全くなかったことは明らかとしても(でなければ、300人のうち100人が無申告ということにはなっていないでしょうから)、以前に働いていた会社で、「株式による海外給与は自己申告、別途納税の義務あり」ということを知らされていたのであれば、クレディ・スイスに来ても同じ税務処理をしたということでしょう。

私は、クレディ・スイスが2社目で、それ以前はソロモン・ブラザーズにいました。私の知る限り、ソロモン・ブラザーズ→クレディ・スイスという社歴の者は私を含めて5人おり、その5人が5人とも完全無申告です。そこでは1/3どころか、100%という高い確率での無申告の状況です。

私は、クレディ・スイスで株式をもらったということは当然理解していました。そして思ったのが、「あれ、ソロモンにいた時、株もらってたっけな。なんかもらってたような気もするけど、もしかしたらあれも申告漏れだったのかな」と、税務調査の対象期間ではありませんでしたが、自分がかつても同じ過ちを犯していたかと少し不安になり、後輩に確認しました。「なあ、ソロモンってさ、社員に株って渡してたっけ?」。答えは「株そのものじゃないけど、株みたいなもん。価値が株価に連動して変動するシンセティック(=「合成」という意味です)でもらってたよ」というものでした。それは経済価値としては株と同じなのですが、形態はあくまで現金なので、税務処理は会社の源泉徴収で完結していました。先に公開したソロモンの別の後輩、中野和美の嘆願書にある「条件付株式報酬制度」というのがそれです。

ここをクリック→ 中野和美嘆願書

私は、外資系証券に長く勤めていましたが、毎年同じ税務処理をして(といっても関連書類を税理士に渡すだけのことですが)、全く問題になることはありませんでした。それが突然、脱税犯扱いです。「勘弁してくれよー。今までいくら俺が税金払ったと思ってんだよー」とくさる気持ちを少しはご理解頂ければ本当にうれしく思います。まして、私は本税以外に追徴課税として、過少申告加算税や延滞税を払っています。その時点で原状回復以上の経済効果は得られたはずです。それを3年もかけて、莫大な捜査費用をかけて、メンツを保つために個人を犯罪者としたいとする役所の経済センスのなさには辟易してしまいます。本末転倒も甚だしいものです。

倉さんは、私がソロモンにいた頃お世話になった先輩です。外資系証券では、「フロント・オフィス」「バック・オフィス」という役割分担があります。前者を「プロフィット・センター(=収益を上げる部署)」、後者を「コスト・センター(=費用を使う部署)」とも言います。フロント・オフィスは取引の際、前面に立って執行、トレーダーの私はフロント・オフィスです。バック・オフィスはその取引の後、決済処理(債券の引渡や決済金額の受渡)といった事務処理を担当します。彼らは縁の下の力持ちです。私が取り扱っていたモーゲージ証券は、商品構造が複雑で、それは事務処理も複雑であることを意味します。日本のお客さんは、とにかく事務処理の煩雑さを嫌いますので、モーゲージ証券のビジネスをやる上で、一番重要なことは、私や営業の能力ではなく、彼ら事務スタッフが間違いなく事務処理をしてくれることにかかっていたと思っていました。彼ら、バック・オフィスの方々には、本当にお世話になったものです。

倉さんの嘆願書は、私が先に述べた外資系証券各社での税務指導の違いについて、非常に正しい論点の指摘をしています。仕事でも助けられ、ここでもまた助けられました。ありがとうございました。

<嘆願書>

私、倉永良通は、平成22年2月19日のマスコミ報道により、八田隆氏(以下八田さん)がクレディ・スイス証券株式会社(以下クレディ・スイス証券)在職中に親会社株の取得及びその売却で得た利益の所得を申告していなかったことから、所得税法違反の疑いで東京国税局から貴庁に告発されていたことを知り大変驚きました。しかし、クレディ・スイス証券の100人以上の社員が集団で申告漏れを指摘されている状況の中で、八田さんが故意に所得を隠した容疑については疑義が生じます。

以下におきまして、八田さんの人物像をまじえながらに今回八田さんの申告漏れは過失であったという私の所見を述べさせていただきたく思います。検事殿には、今後の寛大なご配慮にお役に頂ければと思い嘆願いたします。

私が八田さんと知り合ったのは、平成5年のことです。当時私は、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社東京支店(以下ソロモン・ブラザーズ)に勤務しており、業務部債券事務課の課長補佐として人事異動した直後でした。八田さんは、モーゲージ債券のトレーダーとして活躍していました。私が最初に八田さんの人柄に好印象を抱いたのは、八田さんが私に対して年上の者としての敬意を払ってくれたことです。

日本人社会であれば年上の者に敬意を払うのは当然のことですが、外資系証券という組織では、収益をあげるトレーディング、セールス方のフロント・オフィスの若手社員の中には、費用をつかう事務方のバック・オフィスの社員に対して、たとえ年上の者であっても横柄な態度をとる社員がいました。そのような中でも八田さんは、私に対して、倉永さんと「さん」づけでと接してくれた数少ないフロント・オフィスの一人です。

検事殿には、ごく当たり前の話と思われるでしょうが、その当たり前のことができない社員がいた中で、八田さんはモーゲージ債券のトレーダーという優秀な立場でありながらも傲慢さが無く、私は、八田さんが社会人としての根源にある常識、礼節をわきまえている人間であることを知りました。もちろん、私はモーゲージ債券のトレーダーとしての八田さんに敬意を表していましたので、時が経つにつれて、八田さんが親しみをこめて私の名前を、倉さん、と呼んでくれることに全く気になりませんでした。

当時、私は債券事務については不慣れであり、毎日が残業の連続でした。特にモーゲージ債券については理解が足りない状態で、私と部下が残業している席に八田さんが立ち寄りに来てくれて、モーゲージ債券の商品知識を説明してくれたことがしばしばありました。八田さん自身も私たちに教えることが好きだったようで、楽しんでいたと思っています。夕食を取らずに遅くまで残業をしていた私たちを、八田さんは一緒に食事に誘ってくれ、仕事以外の雑談をしたものです。私は八田さんの気配りと面倒見の良さを感じていました。当時のソロモン・ブラザーズのフロント・オフィスの中で、このような気さくな付き合い方ができたのは、八田さんだけでした。八田さんに対して同様な印象を持っていた事務方の社員は他にも多くいたと思います。

業務上においても、私は八田さんの助けを借りることがありました。モーゲージ債券の仕組み上、顧客に支払い済みの利払い金額が遡及して訂正される不測の事態が発生しました。顧客から苦情を受け事態の収拾に悩んでいる私に、八田さんは何故そのような不測の事態が発生するかを丁寧に説明してくれました。私自身の知識を理解力が未熟であったため、もし私の説明で顧客が納得しなければ八田さんも協力してくれると応援してくれました。モーゲージ債券を熟知している八田さんは、事務方、顧客、セールスのそれぞれの立場を理解しながらも、感情に流されず、事実関係に基づいて、自分が扱った商品のアフター・サービスを忘れない職人気質の冷静な論理構成で問題解決に協力してくれました。

クレディ・スイス証券は、今回の社員の集団申告漏れに関して、「社員個人に関することでコメントする立場にはないが、納税義務などについては社員に対して適切に通知している」と発表しています。しかし、私は、本当にその通知とは適切なものであったかについて疑義を抱いています。100人以上の社員が申告漏れをしていた状況下で、私が考えたことは、
1. クレディ・スイス証券には、会社の通知を無視して所得隠しを働く社員が集団で雇用されていた
2. クレディ・スイス証券が行った通知は、実は社員が親会社株の取得や売却に伴う納税義務を理解するには十分なものではなかったために集団申告漏れに発展した
ということです。

1についてですが、クレディ・スイス証券は、スイスのチューリッヒに本社を置く金融グループであるクレディ・スイスの中で、証券・投資銀行業務を展開する中核事業会社として知られています。クレディ・スイス証券は、日本で事業を展開しているトップクラスの外資系証券会社であり、社会的信用力があるクレディ・スイス証券だけにこのような社員が集中的に雇用されてきたとは考えにくいことです。

2についてですが、発表されている「適切な通知」について、私は、その通知の内容が、今回所得の申告漏れを指摘された社員たちが親会社株の取得や売却で得た利益の申告方法について十分理解するに値する内容のものであったかの事実を精査する必要があると思います。

会社が親会社株によって賞与を支給する制度を運用するのであれば、会社は十分な社内体制を確立して、例えば、親会社株の取得や売却で得た利益の課税基準について社員に説明会を開き、会社側がすること及びしないこと、社員側がすべきこと、それらの責任の所在を明確にし、社員が説明会に参加した記録を取るなど周知徹底をはかり、社員の申告漏れを事前に防止する手段を講じることが可能であると思います。

それにも拘わらず、今回のような100人以上の社員が申告漏れを指摘されるような事態が発生したのであれば、それは社員が故意に脱税を働いたと認定されるべきでしょう。しかし、クレディ・スイス証券がいう「適切な通知」というものが、もし親会社株を取得・売却した社員たちが課税基準を理解するに十分な内容のものでなかったとすれば、社員たちの間で申告方法の解釈が一様でなくなることは十分に予測されると思います。

八田さんを含めて100人以上の社員が集団で申告漏れを指摘された状況下では、「適切な通知」と呼ばれるものが実は適切なものではなかったために、このような混乱が生じたと思慮せざるを得ないかと思います。今回クレディ・スイス証券において100人以上の社員が集団申告漏れを指摘されたことは、未然に十分防止できた案件でありながらも、親会社株による賞与支給についての申告方法が社員に十分周知されていなかったために起こるべきことが起こった必然の結果であり、社員による故意の所得隠しではなく過失から発生したものであったと私は考えます。

八田さんは、優秀なモーゲージ債券のトレーダーですが、内面は礼節をわきまえた職人気質の実直な人です。外資系証券会社のフロント・オフィスで高額の報酬を得ていたと思いますが、金銭に執着した性悪な人間ではありませんでした。過失とは言え、申告漏れという事態に及んだのは八田さんの責であるものの、その過失は、クレディ・スイス証券内において親会社株の取得や売却で得た利益の課税基準について社員の間で理解の統一性が取られていなかったことに起因した集団申告漏れの一例であったと思います。

八田さんの申告漏れは、故意ではなかったと私は信じております。それは給与所得という税務調査ではガラス張りの分野で、八田さんが故意に所得を隠ぺいするとは思えないからです。八田さんは全国に脱税容疑者として実名報道されたことで、すでに社会的制裁を受けております。ご親族や友人に心配をかけていることを反省しています。しかし、私は、八田さんにはプライドがあると信じています。それは、自分を大切にしてくれる人たちを裏切らないように、いわれのないことに対して正直を貫く八田さんの職人気質のプライドです。何卒検事殿には、以上の考慮をご勘案頂き、寛大なご配慮をお願いする所存であります。

倉永良通

<以上>


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2012/02/08 Wed. 12:20 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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嘆願書 (29/146) ジョワ由紀 

嘆願書 (29/146) ジョワ由紀

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

29通目の嘆願書は古くからの友人、フェイスブックで私とつながってる方は私の漫才の相方としてご存知の者からのものです。

彼女と初めて会ったのは、私が就職活動をしている時、彼女がある企業の人事部にいたものです。それが1986年ですから、既に25年の付き合いということになります。現在は、スイス人の旦那とマニラで彼女のブログのタイトルにあるように「ゆるゆるマニラ生活」を送っているようです(ブログは主婦のたわ言を毎日書いていますが、コンスタントに4-500人のビジターがいるようです)。

しばらく音信不通であったのがフェイスブックでつながった時は、私に既に国税局の調査は入っていましたが、告発以前の状況で、彼女も私同様、私が告発されるなどとは思いもしなかったものです。告発以来、彼女も現実の理不尽さに憤り、惜しみない協力をしてくれています。主婦業は相当ひまなのか、いろんなところで検察関係、冤罪関係の記事を見つけてきて「ほれほれ、リツイート」と私を遠隔操作している、「#検察なう」の影のフィクサーでもあります。

案外しっかり者の彼女には、周りの人望もそこそこあるようで、彼女を通してフェイスブックで知った彼女の友人の方々にも今回の件に関して強力サポートしてもらっています。多分、そこは彼女のキャラクターによるところが大きいのかもしれません。学生時代はスッチ―になることに人生を賭けていたようですが、その気合が入社試験で逆噴射して、垂直飛びを前に飛んで入社試験に落っこちたという武勇伝の持ち主です。

福島原発の事故の時は、正しい情報の開示はパニックにつながらないとする私の主張に、ある程度の情報のコントロールは必要だと反論して、マニラとバンクーバー間でスカイプ・チャット上で喧嘩寸前の大激論をして一歩も引かないハードコアな部分もあります。お互い日本にいなかったもどかしさもあったのでしょうが、自分が正しいと思うところにはきちんと筋を通す性格は似ているのだと思います。

彼女のブログでは私のことも時々登場していますので、主婦の戯れ事も覗いて見てあげて下さい。

ここをクリック→ 「ゆるゆるマニラ生活」


<嘆願書>

私、ジョワ由紀は、八田隆さんが大学生時代から彼の事を良く知る友人の一人です。今回、八田さんへの告発をニュースを通じて知る事になり、驚きを隠せません。

八田さんは学生時代、社会人になってから、そして今も、自分の目標に向かって努力を惜しまない人です。
まっすぐ自分の信じた方向に走る、そのためか周囲を振り返らない事もあり、誤解をされる事もあるようですが、特に今回の告発については明らかに誤解が生じているように思えてなりません。

八田さんとは、彼が大学時代から社会人になって暫くお付き合いしていましたが、勿論、学生時代はお金もなく、電車賃だけしかない状態で食事に出たり、「なんとかなるだろう」という行き当たりばったりという面があり、何度も驚かされた事があります。これは社会人になった後も変わらず、NY駐在時代からその後、一般のサラリーマンよりも多いであろう給与を手にするようになった後も同じです。

ガソリンを入れるにしても「あっちの店の方が2円安い」、レストランの割引クーポンは必ず貰う、使う。景気がいい時代だっただけに、あくまで自分のスタイルを変えない、自分の金銭感覚を持ち続ける彼を見て、時に呆れ、時に尊敬していました。長年、八田隆さんを見てきて思うのは、彼くらい、自分が自分である事にこだわって生きている人は珍しいという事です。格好良い、悪いは自分が決める事であって、自分が良いと思えば、映画に出てくるようなNYのオフィスで目の不ぞろいな手編みのセーターを着る事も格好悪くない。お洒落な店で割引券を使う事も厭わない。

他界した私の妹が彼を見て「欲があるんだか、ないんだかわからない」と言っていましたが、その通りです。1円10円の無駄を嫌う割には、いい加減なところがある。スキーには一緒に頻繁に出かけていましたが、そういう時はかなり大雑把でした。人が組んだプランには言われた金額を払ってしまう。チェックなどしない。これも長い間、お付き合いしてわかった事ですが、彼は、信じた人には物事を隠さない、自分を出してしまう。彼の「頼んだ」には重みがあって、頼んだ以上、後は全てよろしくという意味なのです。今回の告発を知り、まず、彼に限って脱税なんてありえないと思いました。自分なりにネット、ニュースで内容を読み、きっと会社や税理士、周りに任せ過ぎてしまったんだろうなぁと、自分できちんと確認もしてなかったのだろうなぁと残念に思うばかりです。彼の「脇の甘さ」がこんな形で出てしまった事が非常に残念です。

八田さんとはこの10年ほど音信をとっていませんでしたが、久しぶりに再会して、相変わらず自分である事にこだわり、相変わらず学生時代と同じような金銭感覚を持っている彼を見て、ほっとしました。本は中古を買うし、物は捨てられない。着ていた服を見て「それ、学生時代の?」(違いましたが)と聞いてしまいましたが、彼が20年以上前の服を着ていても、驚くことではないのです。霞を食べて生きていけるとは思いませんが、彼は恐らく、本と音楽があれば無人島で生きていけるタイプなのでしょう。

この10年ほどの彼の交友関係は殆ど存じませんが、そういう彼の人となりに魅力を感じ、今回告発されるという、会社員にとってはスキャンダルが起こったとしても、恐らくは、親しい友人は私同様に、彼を信じていると思います。また、彼はその友人達を裏切る事はない、それが自分である事を貫く彼のスタイルなのだと思います。

どうぞ、私の嘆願書をもって、少しでも八田隆さんの事を理解され、判断の材料となれば幸いに存じます。

ジョワ由紀

<以上>


ここをクリック→ ジョワ由紀嘆願書


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2012/02/07 Tue. 14:35 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (32) 

#検察なう T-shirt with 仏ジュラ地方のワイン(って言われても写真じゃ分かんないっすよ)(by T.M ♂)

ジュラワイン

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2012/02/07 Tue. 08:05 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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嘆願書 (28/146) 樫山慶子 

嘆願書 (28/146) 樫山慶子

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

28通目は私の友人からのものです。

彼女は私がクレディ・スイスに働いていた時、クレディ・スイス担当で営業に来ていた「保険のおばちゃん」です。

私の妹がかつて保険会社に勤めていたこともあり、彼女と初めて会った時には既に私の保険はある程度カバーされていました。また自分でもそれなりに保険の検討をした結果、私に保険は必要ないという結論に達し、彼女にもそのように述べました。

自分も金融という究極のサービス業に従事しており、やはり気持ちのいいお客さんと、失礼なお客さんというのはいました。態度いかんということもありますが、結局ボランティアで仕事をしているのでない以上、商売をくれるかどうか、しかもその関係が長期間に亘って持続できるかどうかが重要な尺度でした。つまり、今商売ができなくても、将来できれば「よし」、どんなに態度が横柄でも、コンスタントに商売をくれれば「よし」というものです。逆に、どんなに話がはずんでも、最終的に商売をくれる気がなければ、それはあまりいいお客さんとは言えません。時間の無駄だからです。

私は、そうした意味では、彼女にとって全くいいお客さんではなく、ビジネスのルールとして、それは最初に明らかにしていたものです。

それで彼女も積極的に営業する必要がないという安心感ができたのか、時々会社に来る度に話をしたのですが、保険以外の話をすることが多かった記憶があります。保険の話をする時も、「今、どんな商品をプッシュしてんの。ちょっと営業してみ」と言って、彼女のセールス・ピッチをチェックするとか、全く見込み客としてではない話だったと思います。私もストレスの多い仕事で、私の方が彼女に癒されていたのかもしれません(あと、歯医者の診療台。#検察なう (80))。

私は無類のロック音楽好きで、それは中学生以来ずっとオーディオにはまっていたこともあって、ほとんど病気でした。大学時代は、渋谷の輸入レコード店(CDがなかった時代です)の新譜の入荷日が毎週水曜と土曜で、その日の夕方にはどうしても行かなければ我慢がならないという感覚でした。デートの途中でもレコード店に入るとなかなか出てこないので、女の子が「外で待ってるから1時間で出てきて」という状態でした。

就職の時も、音楽関係(といっても楽器を演奏したり、バンドをやっていたわけではないので、音楽関係のジャーナリストか、放送局のDJとかそっち方面ですが)に進めばいいのに、と本気で勧めてくれる友人もいました。私は、「趣味を仕事にする気はない」と言って、電通に就職を決めたものです(電通の内定を断ったため、外資しか行くところがなくなった、というのが私の人生の一つのターニング・ポイントでした)。

LP1000枚以上、CD1000枚以上、全て洋楽ロックのコレクションで、引越しの時の一番の大荷物がそれです。

なぜこの話をしたかというと、彼女は私以上に音楽が好きで、後にも先にも同じ感覚で音楽を語れるのは彼女くらいなものだったからです。「おお!同士~!」って感じですね。当時は、ベックやブラ―やレディオヘッドなど、趣味で重なる部分が多かったものです。ちなみに私が好きなアーティストとしてフェイスブックのプロフィールに挙げているのは、ジェフ・バックリィ、マニック・ストリート・プリーチャーズ、コールド・プレイ、ニルヴァーナ、ジョン・フルシアンテ(&その他大勢)です。

ただ最近フェイスブックでつながって、彼女の音楽の傾向をチェックすると、ポスト・ロックの方向を指向してるようで、私の相も変らぬオルタナティブ指向とは方向が違ってきたようです。大人になったなあ(音楽の趣味だけ?)。今、産休で実家に戻っているようですが、子供が生まれるとフジロックは行かないんだろうな。今年はストーン・ローゼズ来んのになあ。

<嘆願書>

私は昨年、八田隆さんが脱税をしたとして所得税法違反の疑いで東京地検に告発されたとの報を受け大変驚きました。即座に「納税システムに何か問題があったに違いない」と思ったほどです。八田さんは、私がかつて生命保険で営業をしている時、大変お世話になったお客様の一人です。社会人の先輩としても大変尊敬しています。その八田さんが故意に脱税をするなど到底考えられません。これは明らかに冤罪だと思います。八田さんに対し、公正かつ適切な判断が下されることを願い、八田さんのお人柄について私の知っている限りを下記に述べさせていただきます。

私は新卒で生命保険に入社してすぐに、クレディ・スイス証券(当時クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券)の担当となりました。私の任務はクレディ・スイスに勤める一人でも多くの方に保険契約をいただくことと、既に契約をいただいている方のアフターフォローをすることでした。八田さんは既契約者でしたので、私が担当者としてご挨拶に伺ったことをきっかけに知り合い、以後、私が保険会社を退職するまでの3年間、大変お世話になりました。

多くの方がご想像する通り、「生保の営業」はどこへ行っても歓迎されるということはありません。上司には「保険営業なんてもともと嫌われているのだから、恐れることなく営業活動してきなさい」と言われていたほどです。しかし、わかってはいても人に歓迎されない毎日というのは精神的になかなかこたえるものです。そのため、上司はその対処法も指導してくれました。「営業先に“止まり木”となるお客様を見つけなさい」というのです。その言葉の意味する通り、ほっと一息つけるお客様を見つけなさいと言うことです。

お客様に対して“止まり木”という表現は失礼になるかもしれませんが、正直なところ、私にとって八田さんは、クレディ・スイスにおいて“止まり木”のような存在でした。私に対して「生保の営業」だからといって見下した態度をとるようなことは決してありませんでしたし、他の多くのお客様とは違い、名前で呼んでくれました。

八田さんは正直な方ですので、初めてお会いした時から、ストレートな表現や自信に溢れた態度に圧倒されていたのも事実です。しかしその正直さ故に、かえって嘘のない、裏表のない、真っ直ぐな人だと思えて信頼できましたし、本当はとても温かい人だとわかるのにもそう長くはかかりませんでした。ノルマに追われ、お客様に冷たくされ、疲労困憊していても、八田さんにお会いすることで少し元気を取り戻すことができたのは、そんな八田さんのお人柄故だったと思います。私がめげることなく3年間、クレディ・スイスに通い続けることができたのは、八田さんのようなお客様の存在があったからだと深く感謝しています。

ここからは八田さんのプライベートについて、私が知っていることを少し述べたいと思います。私は仕事上、八田さんが大変多くの収入を得ているということを知っていましたので、プライベートではどんなに華やかで贅沢な暮しをされているのだろうと勝手に想像しておりました。しかし実際に見えてきたプライベートでの八田さんは、どこにでもあるような中華料理店や牛丼屋にも好んで食事に出かけますし、夜な夜な遊びに出るでもなく、ご自宅で熱心に大好きなワインの勉強をされていたりと、想像していたよりもずっと庶民的で親しみの持てるものでした。そして何よりも印象に残っているのは、とても子煩悩な父親としての姿です。息子さんの話をされる時の八田さんの様子を見ていると、息子さんを本当にかわいがっておられて、八田さんの生活は、息子さんの存在ありきで成り立っているように思えるほどでした。

これまで述べてきた通り、八田さんのような正直で嘘のない人が、裏で悪事に手を染めるようなことをするとは到底考えられません。八田さんはそれがどれだけ愚かなことかを知っていますし、そのようなことをするくらいなら、正面衝突をして正々堂々と戦う人です。

また、お金に対して特別に執着していると感じたことはありませんし、正しいお金の使い方を知っている人です。何より、大変子煩悩な父親である八田さんが、大切な息子さんに対して恥じるようなことをするはずがありません。八田さんの自信に溢れた言動や雰囲気は、正々堂々と正直に生きてこれたからこそ、滲み出ているものなのだと思います。そんな八田さんに対して、不適切な判断が下されるようなことは、決してあってはならないことだと思うのです。

八田隆さんに対し、公正かつ適切なご判断が下されますよう、切に願い、ここに嘆願書を提出させていただきます。

樫山慶子

<以上>

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category: 嘆願書

2012/02/06 Mon. 15:30 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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#検察なう (101) 「ホリエモンのメルマガに私のメッセージが掲載されました」 2/6/2012 

#検察なう (101) 「ホリエモンのメルマガに私のメッセージが掲載されました」 2/6/2012

本日配信のホリエモンのメルマガに私のメッセージが掲載されました。彼からも返事をもらっています。

1年以上前に彼のメルマガの読者数が1万人を突破したと報じられていましたが、今は何人ほどいるのでしょうか。有料メルマガゆえ、購読者の中で読む人の割合は高いと思われます。

どんどん情報が拡散しています。

◆◇◆ Q.15 ◇◆◇
 以前、貴兄のブログでもメンションされた元クレディスイス証券の八田隆と申します。貴兄がブログを書かれた時点では、私は国税局から告発(昨年2月告発)された段階でしたが、雪冤の戦いも虚しく、一昨日地検特捜部に起訴されることとなりました。

 貴兄の秋葉原メイドカフェでの壮行会の直前に、私は田原総一朗氏と対談しておりましたが、後からその録音を聞き返したところ、2時間の対談の間に貴兄の名前は5回言及され、ほかの誰よりも多かった(2回が江副浩正、佐藤栄佐久、村木厚子、小沢一郎、上杉隆、石原慎太郎、孫正義、三木谷浩史)ことが印象的でした。

 これから公判を迎えるに当たり、貴兄の辿ってきた道のりを振り返ることは励みになります。

 メルマガいつも楽しく拝読させて頂いております。

 検察が従前型の犯罪類型である殺人や強盗といった被疑者を取り除くことは大きな社会的損失ではないが、検察改革の大きな方針転向である経済犯の摘発を重視していくということは社会的損失を伴い、十分な説明責任があるものと思います(郷原氏の受け売りですが)。貴兄もその犠牲であり、私も同じ立ち位置だと思っています。

 仮出所の署名運動には実名で署名させて頂きました。機会があれば憂国論なりノマド観なりをシェアさせて頂ければと思います。

 これから寒さも厳しくなる折、ご自愛の程。出所後のご活躍を期待しております。

A.ありがとうございます。たぶん、世の中がどんどんクリーンになってきて、捜査機関も自分たちの組織維持のためにやりやすいターゲットが必要なのだと思います。法律も、その運用もどんどん厳格化していくので(アレルギー反応のように)、注意して法令順守に努めなければいけません。


category: 支援者の方へ、支援者の方から

2012/02/05 Sun. 17:39 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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嘆願書 (27/146) 長裕陽 

嘆願書 (27/146) 長裕陽

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

嘆願書の27通目はベアー・スターンズ証券の元部下からのものです。

以前のブログで、ベアー・スターンズ証券の半年は、私の人生において、この事件に巻き込まれるより辛い経験だったと書きました。しかし、ただ単に辛いだけではなく、私の仕事人としてのキャリアで最も充実していた半年でもありました。

ここをクリック→ #検察なう (100) 「人生の試練」

私の仕事をする上でのインセンティブは、会社からいかなる評価を受けているか(端的にはそれは給与の数字で表されますが、私にとってはその数字は経済的な意味よりは、通信簿の「5」とか「4」という評価としての意味の方が圧倒的に大きいものでした)、そしていかにハッピーにしたい上司と働いているか、というものでした。そしてベアー・スターンズ証券では東京及びニューヨークの上司の十分な信認を得、彼らと一緒に東京オフィスをほかの有力証券会社に伍することができるよう全力を尽くせたことが喜びでした。

そのベアー・スターンズ証券は、サブプライム危機の影響でJPモルガン証券に吸収合併されることになりました。

私はJPモルガン証券にはプレイヤーとして移籍を請われましたが、部下のほとんどがJPモルガン証券に再就職叶わない中、上司の私がのうのうと移籍するわけにもいかず、私と、同じく共同営業部長であったもう一人もその時点で勇退の道を選んだものです。

長は、会社が突然消滅する直前に新卒内定者として会社に来ていた者です。4月から入社という直前に会社がなくなったわけですから、相当不安だったと思います。私たち部下の中でも彼ともう一人の内定者の再雇用確保が私たち共同営業部長の最重要プライオリティーでした。それに関しては、私よりはもう一人の共同営業部長の尽力が大きく(JPモルガン証券は彼の古巣でした)、なんとか彼らの内定取り消しという最悪の状況は脱することができたものです。

彼はかなりハードコアなサーファーらしいのですが、実に真面目な奴で、これからの人生でも最初の蹉跌を糧に頑張って欲しいと思います。

<嘆願書>

八田氏は、私が2008年4月に新卒社員として入社を予定しておりましたベアー・スターンズ(ジャパン)証券会社東京支店での上司に当たる方でした。同社は2008年3月に消滅いたしますが、私は2007年5月より内定者インターンシップとして同債券本部にて業務のサポートのため勤務しておりました。

2007年9月に営業部長として同社にいらっしゃった八田氏と初めてご挨拶をいたしました。その際の印象は豪快な気質である一方自他ともに厳しい方のように思えましたが、雲の上のような存在で高く鎮座しているという部長ではありませんでした。

八田氏は、営業部長という高い職責にも関わらず、内定者という立場の私に対してもコピーのとり方から、Bloombergという情報端末システムの使い方、Microsoft Excelの関数といった社会人としての基本的な作業に至るまで、部長御自身自らご指導くださいました。そのことは、外資系の個人プレー集団を想像していた当時の私にとって非常に驚きであったと同時に、同氏に対して大変感謝したことを覚えています。

私自身、このころよりしばらくたった後に、八田氏が日本のモーゲージ債市場における第一人者であり、市場のプロが多く集まる各方面から意見を求められるような人物であることを知り、そのような方から直接ご指導いただけることに驚きと感謝を新たにしておりました。八田氏の人となりをご理解いただく上でのエピソードを以下に2点記させていただきます。

(エピソード1)
初めて、新聞記事のクリッピングの依頼をされた時のことです。新聞をそのままの印刷設定でコピーし、八田氏へお持ちしたところ早速ご指導を受けることとなってしまいました。

チーム全員が見やすいように、一度コピーをしたもので該当記事のみを切り取り日付と出所を補記したうえで再提出するようやり直しを命じられました。私は、言われた通りにやり直し、八田氏のもとへ再提出をいたしました。そうしたところ、文書・写真の別や濃度・明度等の印刷設定を工夫したかと問われました。私は言われたとおりにしか動いておらず、何も設定せずにそのままコピーした旨を伝えました。そうすると八田氏は従事されていたお仕事を一度中断され、私をコピー機の前まで導き、コピー機の設定をはじめ、チーム全員が見やすいような資料をつくるための方法を御自らご指導くださったのです。

多忙を極める部長というお立場にも関わらずこの際実に30分以上の時間を私に割いていただいたと記憶しております。

私は、八田氏に対して、立場・役職、単純作業・複雑な作業の別に関わらず、作業をきちんと処理するためには労を惜しまない方なのだろうと感じました。

(エピソード2)
在職中とその後も含め、八田氏と何度か食事会の席で同席させていただく機会がありました。八田氏は、仕事においては常に強いリーダーシップのもと、社員を率いている印象であった一方、酒宴の席では自分が中心ではなく常に聞き役に近い存在であったこともまた印象的でした。

新人・若手の宴会芸というものは多くの会社で一般的なイベントとしてあるかと思いますが、八田氏は上席者でありながら率先して滑稽な格好をして私たちを楽しませてくれたこともありました。結果、八田氏にお誘いいただく食事会ではいつも若手からベテランまで多くが参加し、全員が楽しい時間を過ごせたと口々にしておりました。

八田氏の価値観というものは、ご自身に対して以上に周りを楽しませる、喜ばせるということにあったのではないかと思います。そのスタイルこそが八田氏を業界での成功に導いたものであると感じております。

上述のとおり、私が考える八田氏という人物は、①どのような仕事・作業に対しても手を抜かず正しく処理することを重視しており、②自身の利益以上に他人の利益を優先することが全体の利益に繋がることを知っている方です。それは個人資産の取り扱いに対しても、私腹を肥やすために八田氏が故意に嘘や妥協を以て手続きを行ったとは考えにくいという小生の所感に繋がるものです。

常に正しさを求め、勤勉に生きてこられた八田氏にどうか寛大な処置をいただけますようここにお願い申し上げます。

長裕陽

<以上>


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2012/02/05 Sun. 10:57 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう (100) 「人生の試練」 2/5/2012 

#検察なう (100) 「人生の試練」 2/5/2012

「#検察なう」も100回を数えました。当初は嘆願書を書いて頂いた方々への近況報告ということで書き始めたものですが、捜査権力に正義はあるとの期待が裏切られることになると認識した時点から、「#検察なう」としてブログをツイッター、フェイスブックにて公開しだしたことは既にご案内かと思います。公開の趣旨は、「こうして冤罪は作られる」という実況中継を当事者の立場から情報発信することが、日本が真の法治国家となるためには必要であると思ったものです。

初公判まであと17日。弁護士によれば、否認事件の平均公判回数は10回程度、公判の間隔が4-5週間とのことなので、判決まで1年はたっぷりかかりそうです。また、検察というところは、旗色が悪くなると悪あがきをするそうで、そうした不当な引き延ばしで、更に時間がかかる場合もあります。通常、強制捜査から告発まで2-3ヶ月、また告発から起訴からも同じく3ヶ月程度という経験則に比較して、私の場合はそれぞれ14ヶ月、22ヶ月と異常に時間がかかっていますので、これからも検察は国家の威信をかけて、個人の人権を踏みにじりにくるものと思われます。私を含めた5人の弁護団は知力、気力、体力とも充実して、この戦いを乗り越える所存ですので、引き続き応援の程お願いします。

「願わくは、我に艱難辛苦を与えたまえ」とは講談で有名な戦国の武将、山中鹿之助の言葉ですが、なるほどよく言ったものだと思います。この三年間の辛苦は私にとって最大級のものではありますが、最大ではないため、乗り切ることに不安はありません。

まず今回の冤罪に巻き込まれたことにどう感じているかを述べてみようと思います。

昨年末、私が西武池袋線痴漢冤罪事件の市民集会に参加した際の、布川事件の被害者桜井昌司さんの言葉をご紹介したことを覚えていますでしょうか。彼は、小林さんが収監される際に面会に行かれたそうですが、その時の気持ちを「私が代わってあげたかった」と言いました。彼らしい半ば冗談交じりの口調でしたが、私はその意味するところがよく分かりました。

例えば同じ一年間監獄に入る場合でも、言われなき罪で入る場合と、自分が犯した罪を償うために入る場合と、正義という大義のために身代わりになって入る場合では、全く受け止め方が違います。桜井さんは無実の罪で29年間監獄に入っていました。彼はもう二度とその場所には戻りたくないと思うはずです。その彼をして「私が代わってあげたかった」と言わしめるのは、それほど冤罪で罰を受けるのは辛いということと、それに比べれば、自分が正義を遂行するための肉体的苦痛は問題にならない程軽いということです。

私の場合においても、私の自己防衛本能が、自分の気持ちをそのように持って行っているのだと思います。それは、私がこのような冤罪と戦うチャンスを与えられたからには、私でなければできないことをしなければいけないと思うことで、無意識のうちに苦悩を軽減しているのではないかということです。

そして、この三年間で一番辛い時はもう過ぎ去りました。一番辛かったのは強制捜査から告発されるまで、国税局の取調べを受けている14ヶ月でした。誰に相談することもなく、一人で、なんとか国税局に理解してもらおうと苦しんでいました。まさか日本の捜査権力が冤罪を作るということを信じることができなかったということもあります。

刑事告発によって、私の覚悟はできたものです。覚悟した人間というのは強いものです。また告発の記事が全国(全世界)報道されたことにより、自分から事件を話すことができるようになったことも大きいと思います。

嘆願書を頼む過程は必死でした。無視され続けると、なぜ自分から傷口を開くようなことをしなければならないのだろうと、気持ちが萎えることも一度や二度ではありませんでした。
「嘆願書なんて書いたところで何にもならない。意味がない」
「八田さんがやったかやってないかどうかは分からないから書けない」
「自分が八田さんの立場だったら、そうした人に迷惑をかけるようなことはしないから、私は書かない」
「嘆願書を書くほど八田さんのことは知らない」
そう言ってくれるのはまだましな方です。一番辛かったのは無視されることでした。嘆願書の依頼をするなり、全くメールの返信もなく、電話をかけても取ってくれずという状況は、「やはり信じてもらえないのだろうか」と思い辛かったものです。

多分この先、この事件を振り返って、一番うれしかったことは146人の方が嘆願書を書いてくれ、またそのほか多くの方が応援してくれたことであり、一番悲しかったのはこの事件で少なからずの友人を失ったことではないかと思います。

先程、この事件が私にとって最大の試練ではないと言いました。私の人生においてはもっと辛いことがそれまでにあったものです。

何と言っても一番厳しい状況だったのは、新卒でソロモン・ブラザーズに入社し、最初の配属先がニューヨークのトレーディング・デスクであったあの一年でした。そして、ベア―・スターンズに入社してから会社が吸収合併されるまでの半年もそれに次ぐ程辛かったものです。

私はこれらの経験があるため、今の状況を乗り切れているのだと思います。

ソロモン・ブラザーズでは、毎年、全世界の新入社員をニューヨーク本社に集めて研修を行います。東京のトレイニーは7月から11月の4ヶ月の研修が終わると、東京オフィスに戻って配属が決まりますが、その雇用は確保されています。状況が違うのはアメリカのトレイニーで、研修期間中、彼らは配属先を確保すべくデスクに自分を売り込みに行きます。「うかうかしてるとダラスの株のセールスに回されるぞ」(ダラスが辺境とみなされ、「ボンド(債券)・ハウス」と異名を取るソロモン・ブラザーズでは株よりも債券を志望する人が多かったことによります)というジョークがアメリカ人のトレイニーの間で言われていました。それでも普通の状況であればなんらかの仕事にありつけるはずなのですが、私たちの研修中に起こったのがブラック・マンデーでした。結局、アメリカ人のトレイニーは半分近くが職を得ることなく会社を去ることになりました。

私は、11月の研修終了後に、東京オフィスの意向で、ニューヨークのモーゲージ(住宅ローン担保債券)・トレーディング・デスクに配属となったのですが、モーゲージ・トレーディング・デスクはアメリカ人のトレイニーの間でも、トレジャリー(米国債)・トレーディング・デスクと並んで花形の人気デスクでした。トレジャリー・トレーディング・デスクを指向する人間は優等生タイプ、モーゲージ・トレーディング・デスクを指向する人間は(商品が複雑であったため)とにかく頭の良さには自信があるというタイプという違いがありました。

そしてこの年、モーゲージ・トレーディング・デスクに配属となった新人は私ともう一人のアメリカ人の二人のみ。「なんで英語もできない奴が」という他のトレイニーからのブーイングは半端なかったものです。それもそのはず、その当時、東京オフィスでは全くその商品が売れていなかったため、「なぜ東京にモーゲージのスペシャリストを置かなければならないんだ」という反発がデスクからも相当ありました。

そういう環境でスタートした私のオン・ザ・ジョブ・トレーニングも精神的に相当過酷なものでした。

全ての取引を電話で行うため、英語のブラッシュ・アップは必須でした。私は日本の英語教育しか受けていなかったため、英語がまともに話せる状況じゃなかったからです。

配属初日にボスに挨拶に行った時、ボスは「この2分間の自己紹介で、私はお前の英語が2ヶ所理解できなかった。それじゃ全く使い物にならん。会社に来なくていいから英語を勉強しろ」と言われました。悔しかったもののどうしようもなく、私はコロンビア大学に英語の勉強に行くことになりました。しかし、私にも意地があります。ビジネスを習得するためにニューヨークにいるのに、英語を勉強するとは何たる無駄と思い、朝早く会社に行き、そのままスーツで学校に行き、学校からまた会社に戻るという生活を3ヶ月続けました。その3ヶ月は会社に来なくてもいいと言われていたわけですから、私の席はありません。休暇の人のデスクを借りたり、折り畳み椅子を使って、なんとかデスクに溶け込もうと苦労していました。それでも最初は完全に無視されていました。

3ヶ月が終わって、ようやく自分のデスクがもらえたものの、誰も何も教えてくれるでもなく、私の葛藤は続きます。とにかく仕事の手伝いをしようと電話を取るのですが、これが半端なく大変。トレードの時は一刻一秒を争って、各支店の営業がニューヨークのトレーディング・デスクに電話してきます。債券の種類を特定するのは8桁の番号なのですが、数字を一気に言われて聞きとれないと電話口で怒鳴られます。また人の名前を聞きとるのも大変です。シニアの営業だと、「何で声で分からないんだ」と名前を言うのを拒む者もいる始末です。

今ほどウォール街はお上品ではない時代でしたから、人種差別ありの罵詈雑言を浴びせられることもしばしば。階下のシニアの営業の電話を取って、つなげようとしたのですが、トレーダーが手一杯で放置していたところ、その営業が上がってきて、「俺の電話を取った黄色いサルがここにいるだろう!」と怒鳴りこんでくるということもありました。

毎日が戦争でしたが、私の存在感は全くなく、あれほど不安で心細かった経験は後にも先にもなかったものです。私の外資証券での20年のキャリアの成功はあの一年の貯金で食っていたというくらい鍛えられたと思います。

ベア―・スターンズの半年間も辛かったものです。今度は先のソロモン・ブラザーズの状況とは対照的に鳴り物入りでベア―・スターンズに入ったものですが、自分の状況は、あのマイケル・ジョーダンが野球のプレイヤーに転向したのみならず、野球の監督になったようなものだと思っていました。ベア―・スターンズの役職は東京オフィスの共同債券営業部長。東京のビジネスは大部分が円のビジネスです。外国債券では「神」の私も、円の世界では全くの門外漢。クレディ・スイスを辞めた時点で、既にベア―・スターンズとは話を始めていましたが(クレディ・スイスを解雇された表面上の理由は「他社と雇用の交渉をしたから」というものでした)、その後ベア―・スターンズからは一旦断られています。それは私に円のビジネスのエキスパティーズ(専門知識)がなかったからです。その話が復活したのは、円にエキスパティーズのある、もう一人の共同部長とペアを組むことで行こうとなったからです。

彼は私と好対照で石橋を叩いて渡り、全てにそつがなく、とにかく優秀な奴でしたので、本当に助けられました。彼も嘆願書を書いてくれ、戦友からのエールが本当にうれしかったものです。

この半年間が辛かったのは、仕事が純粋なマネージメントとなり、自分でやる仕事の責任感とは違ってとてつもなく大きく、またニューヨークからのプレッシャーも大きかったことが一番ですが、人事の問題も負担となりました。

ベア―・スターンズは、アメリカ本国ではゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、メリル・リンチ、リーマン・ブラザースに次ぐ5番目に大きな独立系証券会社でした。ところが東京でのプレゼンスは今イチ。そのテコ入れとして、私ともう一人で営業のヘッドの刷新が行われたものです。

入社して驚いたのは、営業の質の高さでした。とにかく何もない環境で生き延びて来た彼らだったので、ビジネスの勘所は、東京の投資家から認知度の高い看板のある会社でやってる人間とは一味も二味も違うというのが印象でした。ところが、彼らのチームワークの無さというのはひどいものでした。東京の投資家と大きなビジネスを展開する上では、会社のブランド・イメージを上げることは必須です。そのためには個々の能力もさることながら、組織力で営業をしないと駄目だというのが私のポリシーでした。

そこで親交を深めようと私が自らの歓迎会として企画したのが仮装パーティー。これが彼らの一部に大顰蹙を買ってしまうこととなったものです。私は、「仮装しない権利」をオプションとして売ることで、仮装したくない人はカンパすべしとしたのですが、仮装もしたくない、カンパもしたくないと声高に反抗する者が一部にいました。新しいマネージメントへの明らかな抵抗というわけです。ちなみに私はシルバーのかつらにセーラー服で全て私のポケットマネーで私の歓迎会を行いました。

ニューヨークのマネージメントは東京の営業の首のすげ替えを計っていました。それに異議を唱えたのが、私たち新しい営業部長の二人でした。そして、一番ニューヨークのマネージメントが首を切りたがった人間をかばった私が逆にその者からパワハラで訴えられる事態となりました。新体制のマネージメントへの反抗ですが、直接の理由は先の「仮装の強要」でした。そして、会社の方はそのパワハラの訴えをもって、「上司への不服従」として、その者に退職勧告をするという緊張感満点の状況でした。

人事面では一触即発の爆弾を抱えながら、ベア―・スターンズは中国の大手証券と合弁会社設立の合意に達し、東京オフィスもその証券会社との合弁会社に転換する中で、人員増強で人を増やし、顧客にも新体制を強力にアピールする毎日でした。間違いなく私の20年の外資証券のキャリアで一番忙しい半年でした。朝から晩まで仕事、仕事、仕事と突っ走っていました。

ベア―・スターンズがJPモルガンに吸収合併されることを発表する直前、私はロンドンに出張に行っていましたが、その間に確定申告の期限を迎えています。プライベートに全く時間を割けない中、確定申告は税理士にお願いしていたのですが、よく彼に依頼をする余裕があったものだと思います。私も茂木健一郎のように、「忙しいから」と確定申告を全くしなければ、国税局・検察のいうところの「殊更に過少申告する」ということもなかったのに、と全く皮肉なものだと思います。

このソロモン・ブラザーズでのニューヨークのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)とベア―・スターンズでの半年があったからこそ、今のこの試練もなんのそのという気分でいられるのだと思っています。

大きな問題に直面した場合には、それに背を向けて逃げようとした瞬間、後ろから襲いかかってくるものです。とにかく前向きにぶつかってなんとか突破しようとする姿勢が必要だと思っています。それ以外のことはできない性分でもあるので。

すいません、長くなりました。引き続きご支援のほどお願いします。そして再び、ここまでの応援ありがとうございました。

2/5/2012

category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2012/02/05 Sun. 02:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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#検察なう Tシャツ・プロジェクト (31) 

#検察なう T-shirt with Cup Noodleズ (by T.M ♂)

カップヌードル

category: #検察なう Tシャツ・プロジェクト

2012/02/04 Sat. 21:37 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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嘆願書 (26/146) 永井恵子 

嘆願書 (26/146) 永井恵子

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

26通目の嘆願書は小学校の同級生のものです。私はなぜか小学校、それに中学校のクラス同窓会幹事なのですが、彼女は私と一緒に小学校の同窓会幹事です。

同窓会というと恩師を呼んで、ということになるのでしょうが、私は親に反抗する反抗期が全くなかった反動なのか、とにかく先生というのは嫌いでした。高校の亀田先生は例外中の例外で、「先生といっても文字通り先に生まれただけのことで何を威張ることがあるんだ」と子供の頃からずっと反発していました。今でも、「先生」と呼ばれてふんぞり返っている人に対して、そう呼ぶことで人間関係を円滑にすればいい、という処世訓はあるのでしょうが、私はそれに従うことが全くできません。プロフェッショナルな関係で、資格試験を通った医師、弁護士、会計士の方を先生と呼ぶことには勿論抵抗はありませんが、ことプライベートな関係でも、そうした職業にある人を「先生」と呼ぶ感覚が私には理解できません。多分、小学生の頃が一番、先生とバトルしたかなあ。向こうもこちらをガキだと思って高圧的な態度を取ることが多かったですから。

彼女は嘆願書に、紙相撲大会の思い出として「彼は力学を駆使した素晴らしい紙力士を作り上げ、勝ち進んでいった」と書いていますが、よく覚えていたなあと思います。自分でもこの嘆願書を目にするまで忘れていました。紙で作った力士を戦わせ、といってもただ周りをとんとん叩いて倒れた方が負け、という昔ながらの単純な遊びでした。そこで私が参考にしたのは1972年(昭和47年)初場所の北の富士vs初代貴乃花戦です。とりあえずその対戦をビデオで観て下さい。

ここをクリック→ 昭和47年初場所 北の富士vs貴乃花戦

結果は行司差し違えで、先に手をついた北の富士の勝ちというものです。これは投げを打つ貴乃花に北の富士が浴びせ倒して対抗しますが、北の富士は先に手をついています。しかし、それは下になった貴乃花をかばうためであったという物言いの結果の判定でした。「かばい手」というものです。

私が作った紙力士は腕が異様に大きく相手に寄りかからせないと立たないものでした。そして、勝負が始まるとそのまま相手を押し倒しますが、自分の手が先に着きます。それを「かばい手!」と言って、勝ちを宣言したものです。今思えば、それでよく相手が文句を言わなかったな、と思いますが、あまりの奇策と私の勢いに押されたんでしょう。とにかくそれが彼女の記憶に残っていたほどだったということです。

ちなみに私の祖父母が大の相撲好きだったので、私も自然と好きになり、「相撲」や「大相撲」といった月刊相撲専門雑誌を買うほどでした。郷土力士の輪島が全盛の頃で、今でも金沢の自分の部屋の鴨居の上には、輪島と初代貴乃花の手形を額装して飾っています。

私の彼女の当時の印象といえば、色白で細くて、ほかの女の子のようにがさつではなくて、とにかくかわいいという感じでした。遠足の日の朝、髪をばっさり切って現れた時は、6年2組のクラス男子全員が恋に落ちたものです。私はその時彼女が背負っていたてんとう虫のリュックを今でも覚えています。

<嘆願書>

私は八田君と小・中学校で同級生だった者です。中学卒業後は、小学校のクラスの同窓会役員同士というご縁のためか、電話で数回話したことのあるお付き合いです。

先日八田君からの電話で今回の話を知ったのですが、ニュースで時々耳にする申告漏れと同様に、追加納税で解決する問題だと思っていました。しかし現状が厳しいことを知り、少しでもお力になれればと思い、八田君について書かせていただきます。

少年時代の彼は、スポーツマンで話術があり、がり勉ではない明るい天才というイメージです。

ある日突然電話がかかってきた時も、金沢弁が抜けていた以外は昔と変わらず、小学校時代の様に会話がはずみました。東大を卒業し外資系企業で難しい仕事をしているということでしたが、特に自慢話をするわけでなく、今回の話を聞くまでこんなに大きな仕事で高収入を得ていたとは知りませんでした。

人生を楽しんでいる様な話はありましたが、家族をおいてサーフィンを楽しんで帰宅した時家事が残されていて、それは自分のすべき仕事と察してしていた、という話もありました。

また、今回の話を聞いて思ったのは、もし仮に彼に脱税の意思があったとしても、今回の様な調べてすぐわかる方法をとるだろうか?ということです。

小学校で紙相撲大会があった時も、各自好きなキャラクター等それぞれの思いで紙力士を作った中、彼は力学を駆使した素晴らしい紙力士を作り上げ、勝ち進んでいったと記憶しています。

最後に、八田隆という人間を少しでも理解していただき、公正な判断をしていただけることを願っております。

永井恵子

<以上>


ここをクリック→永井恵子嘆願書


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