「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (548) 「第9回公判傍聴記「検察側重要証人の証言」~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(6)」 9/5/2016  

#検察なう (548) 「第9回公判傍聴記「検察側重要証人の証言」~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(6)」 9/5/2016

先週大阪入りして、一審継続中の「国循サザン事件」の公判を傍聴してきました。

まず事件のおさらいです。

大阪府吹田市にある国立循環器病研究センター(通称「国循」)は、現在全国に6つある国立高度専門医療研究センターの一つです。先端医療に従事しながら、彼らの情報・管理システムは相当旧態然としたものでした。2011年の電子カルテの導入にあたり、医療情報・管理システムのスペシャリストとしてヘッドハントされたのが桑田成規さんでした。彼は、大学卒業後、カナダのヴィクトリア大学に研究員として赴任し最先端の医療情報学を習得した後、大阪大学、鳥取大学といった大学病院で実績を挙げました。彼が国循移籍以降、彼を中心としたメンバーの懸命の努力により、ほぼ不可能と言われていた短期間での電子カルテ導入が成し遂げられました。

彼の国循移籍以前、15年以上に亘り情報・管理システムの導入・保守を一手に引き受けていたのがNECでした。しかし、桑田さん移籍後の競争入札で、NECは競り負け、より価格競争力のあるダンテック社が国循の情報・管理システムの導入・保守を請け負うことになりました。

そして2014年2月、桑田さんは突然逮捕されてしまいます。彼に掛けられた嫌疑は、官製談合防止法違反(正式名称は「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」)でした。競争入札に際し、入札に係る情報をダンテック社に有利になるよう漏洩したというものです。桑田さんと同時に逮捕されたのが、ダンテック社の社長高橋徹さんと、ダンテック社から国循に常駐していたスタッフのWさんでした。

桑田さんと高橋さんは嫌疑を否認し、その後起訴されました。今回私が傍聴した公判で、検察側証人として証言をしたのは、逮捕されていながら起訴されなかったWさんでした。Wさんが起訴をされなかったのは、検察のストーリーに沿う供述調書を取られたからであると容易に想像されます。

この事件では、官製談合を裏付ける情報漏洩を直接的に示す客観証拠は一切ありません。そして情報を漏らしたとされる桑田さんと、受けたとされるダンテック社の二人のうち高橋社長は否認をしています。客観証拠が全くない以上、検察は、関係者の証言を築き上げて二人の有罪立証をしようとしており、その予定人数は30人に上ると聞いています。その中で、情報漏洩を受けたとされるダンテック社の「落ちた」検察側証人のWさんは最重要証人と言っても過言ではありません。

これまでの経緯から、検察の有罪立証は相当無理筋であると感じていますが、検察側証人の中でも最重要と考えられる証言がいかなるものか、検察のお手並み拝見とばかり、興味を持って傍聴しました。

これまでも数人の検察側証人の証言が公判で行われ、あまりの内容のなさ、核心をはずした証言が続いていることは聞いていましたが、実際に傍聴して、検察尋問のあまりのお粗末さに驚きました。これが証人テスト(注)をした検察側証人の証言なのだろうかと。

検察主尋問は、Wさんと桑田さんの間で交わされたメールを元に進められましたが、そのメールの内容は、業務上の通常のコミュニケーションを越えるものではなく、到底、彼らの間で違法行為が行われたという痕跡が伺えるものではありませんでした。

例えば、桑田さんがWさんに送ったメールに添付した入札の仕様書が修正済みであったことをもって、躍起になってその修正を行ったのが桑田さんであるという証言を引き出したがっている検察官の尋問に対し、「(検察は)桑田先生が修正したと考えていらっしゃるんですよね。(しかし私には)それは分かりません」と答える一幕もありました。仕様書の修正をすることが、いかなる不正行為につながるのか、私には不明ですが、そうした細かなところにばかりこだわればこだわるほど、全く核心的な証拠がないことが浮き彫りになるように感じました。

核心から遠い、全くメリハリのない検察の尋問に、傍聴人の多くが寝落ちしていました。私も休憩時間に、思わず地下の売店でレッド・ブル・チャージをしたほどです。

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これまで検察側証人尋問による内容の薄い公判が続いていると聞いていますが、弁護側の反対尋問で明らかにされた事実もあります。桑田さんの無実性とは直接関係はないものの、事件の重要な背景の一つだと考えられるものです。

それは桑田さんの国循移籍以前の「落札率」です。競争入札において、国循は「予定価格」を内々に設定しています。「予定価格」とは、それ以上の金額で入札した業者をはじくためのいわゆる足切りラインです。競争原理がある以上、高い入札金額で入札した業者はただ単に負けるだけですが、無茶苦茶な低価格入札(例えば「1円入札」)を除外するためにも、「予定価格」は設定しておく必要があります(低価格入札の足切りラインは60%)。

実際に落札された価格を予定価格で割ったものが「落札率」になります。競争が厳しくなればなるほど、低価格で受注しようとするため、落札率は100%を下回ってきます(上回ることがないのは、予定価格以上での入札は除外されるため)。

ダンテック社が競争入札で落札する以前、NECの落札での落札率はなんと99.9%でした。これは入札する業者間に競争が全くなく、かつ、いくらで入札すれば落札することができるということを知らなければあり得ない数字です。つまりNECは、国循内部の情報である「予定価格」を知っていたということです。

それを報道したのが添付の記事です。
ここをクリック→ 産経ニュース「国立循環器病研究センターが不明朗入札公判で実態が明らかに」

ちなみに、ダンテック社が落札した競争入札の落札率は87.4%でした。

この事件の私の見立ては、国循の情報・管理システムの導入・保守に関して「官製談合はあった」。しかし、それは桑田さんが国循に移籍する以前のことであり、桑田さんはそれを正そうとした結果、大阪特捜の誤った見立てによりターゲットとされたというものです。

国循サザン事件は、大阪特捜による郵便不正事件以来、初めての独自捜査事件です。検察の体質が全く変わっていないことを如実に表した事件として、これからも注目していきたいと思っています。

Kuwata 8-25-16

国循サザン事件に関するこれまでのブログ。

ここをクリック→ #検察なう (535) 「特捜に正義はあるのか~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(1)」

ここをクリック→ #検察なう (536) 「初公判傍聴記 巨悪を眠らせる特捜~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(2)」

ここをクリック→ #検察なう (537) 「報道に見る特捜の思惑(弁論の併合)~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」 (3)」

ここをクリック→ #検察なう (538) 「訴因変更に見る特捜の弱気~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(4)」

ここをクリック→ #検察なう (539) 「桑田氏自身による経緯説明~国循官製談合事件、いわゆる「国循サザン事件」(5)」

(注)
ここをクリック→ #検察なう (362) 「検察「証人テスト」の問題点と対抗策」

ここをクリック→ #検察なう (533) 「美濃加茂市長事件控訴審で異例の展開~「証人テスト」とはどういったものか」

9/5/2016









ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

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ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

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category: 国循サザン事件

2016/09/05 Mon. 19:04 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

事件背景

http://www.ncvc.go.jp/topics/files/20151201_tyosahokoku.pdf の国循第三者委員会調査報告書を見ると、国循側が旧来のシステムと現場間の不整合に危機感を抱いていたこと、そのことが、入札に関する疑念を抱かせる原因を作ったこと、国循サイドのプライオリティは現場に対する整合性あるシステム構築に重点が置かれ、その意思を最も強く影響を受けていた桑田氏が、その使命を忠実に果たしていたこと、の事情・背景がよく理解出来ます。さらに、第三者委員会報告書における事件の「キーワード」は、NECと関係性の深い「システムスクエア」の関与であると考えます。システムスクエアは「独立系」を謳っていますが(システムスクエアのHPでは現在「沿革」が削除されている)その実、NECと関係性の深い会社で有る事は明らか。本件事件は、公共入札の「当事者」である発注者の「事情」と、公共入札を巡る利権、制度の機能不全との狭間に桑田氏が足を掬われたと言っても過言では無いように思う。

拓建代表清算人 #mQop/nM. | URL | 2016/09/08 Thu. 02:18 * edit *

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