FC2ブログ

「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

09« 2019 / 10 »11
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

#検察なう (560) 「美濃加茂市長事件で上告棄却~虚構の治安維持こそが司法の暗黒の闇」 12/14/2017 

#検察なう (560) 「美濃加茂市長事件で上告棄却~虚構の治安維持こそが司法の暗黒の闇」 12/14/2017

美濃加茂市長事件で刑事被告人とされていた藤井浩人氏の上告が棄却され、彼の有罪が確定するという、社会正義の観点からはあってはならないことが起きてしまいました。

冤罪被害者の端くれとして当事者感覚は持ち合わせていても、やはり当人の悔しさは想像を絶するものであろうとしか言いようがありません。知人からフェイスブックのメッセンジャーで第一報を知らされた時には、「言葉がありません」としか答えられませんでした。そしてその直後に、ニュースを添付してツイートした私の言葉は、以下のようなものでした。

「日本の刑事司法の闇は奥深いとしか言いようがない」

しかし、なぜこのような真実に反する選択を最高裁が選んだかの構図は容易に想像できます。

藤井浩人氏の一審無罪が維持された場合、どういうことが起こるかを考えてみます。彼の掛けられた嫌疑は収賄罪でした。収賄罪には対向犯として贈賄罪があります。彼の一審無罪判決(2015年3月5日)に先立ち、贈賄犯に有罪判決が言い渡されています(2015年1月16日)。その贈賄犯は控訴することなく、有罪が確定しました。もし藤井氏が無罪となれば、贈収賄という本来セットの事案で、片方は有罪、片方は無罪、つまりどちらかの判決が間違っている、即ちいずれの判決が間違っているにせよ裁判所が間違いを犯したということになります。

藤井氏の収賄罪の一審無罪判決は、手元の証拠を精査した上で一審裁判体が判断したものであり、単独の判決で言えば、それに先立つ贈賄罪の有罪判決はむしろ判断の材料とはされるべきものではないという至極正当な判断の結果でした。刑事訴訟法第317条で定める「事実の認定は、証拠による。」という証拠裁判主義に忠実に即したものだと言えます。

しかし、裁判所全体の論理としてはそうはいかなかったということです。

それでは、真実通り「贈賄罪も無罪、収賄罪も無罪(贈収賄の事実がなければその通りになります)」でいいかと言えば、その場合は捜査権力である警察・検察が間違いを犯したということになります。

つまり、国民の大多数が冤罪に興味も関心もなく、また(メディアの怠慢により)真実を知り得ることがないとすれば、治安維持の観点からは、いかに真実とはかけ離れていたとしても、また藤井浩人氏個人や彼の身近にいる人々を不幸に陥れようとも、公権力が取る小賢しいけれども彼らが考える「最良」の選択肢が現実となったものです。

そもそもボタンの掛け違いは、贈賄者の有罪判決にあるのですが、それは如何ともし難いものがあります。それは贈賄側の被告人本人も弁護人も一切弁護を放棄しているからです。いかに裁判体が「この被告人は虚偽の自白により自分のありもしない罪を認めている」と理解していても、本人が「私はやりました」と言い、弁護人が全く無罪主張の証拠を提出しなければ、有罪としかしようがありません。刑事司法においては、遠山の金さんが自ら現場にふらりと現われて自分で証拠を探す「職権主義」は認められておらず、あくまで公判に提出された証拠においてのみ判断しなければいけないという「当事者主義」があるからです。

藤井浩人氏の上告棄却=有罪確定は、「公権力は間違いを犯さない」という虚構の治安維持による要請が背景にあることを我々は理解する必要があります。

そしてこの結果は、藤井浩人氏個人の悲劇だけではなく、国民我々全体にとっての悲劇であることは強調してし過ぎることはありません。

冤罪が看過されることは、いずれはその冤罪が自分や周りの自分の愛する人に降りかかるリスクを高めます。そしてこの事件の結果は、司法取引という最近捜査権力が手に入れた強力な武器が猛威を振るった結果であり、それは今後冤罪を増やすことが確実視されているからです。

贈賄者がなぜ自分の無実を争わなかったか。それは彼にとって贈賄罪で有罪になっても、それ以上のメリットがあったからです。彼は3億7800万円にも上る融資詐欺を行っていました。その事実がありながら、検察が起訴したのは2000万円にしか過ぎません。そして贈賄の供述はその融資詐欺の取調べの最中になされたものです。「バッジを挙げる」ことに血道を上げる捜査権力が、億単位の融資詐欺を不問に付しても「たかだか」30万円の贈賄事件を捏造することに躍起になったというのは私の荒唐無稽な想像ではないと思っています。2000万円の詐欺であれば、多少の弁済をすることにより執行猶予がつく事案です。その捜査権力と贈賄者の(「阿吽の呼吸」によると想像される)目論見は、藤井弁護団による4100万円の詐欺告発により追加起訴となることで実刑となり潰えました。

しかし、私は(藤井氏の深い悲しみは理解しながらも)悲観ばかりしているわけではありません。そしてこの事件が、歴史のターニングポイントになることすら期待しています。個人的には数度しかお会いしていない藤井浩人氏ですが、彼の清廉なイメージは、いかに捜査権力が貶めようとしてもダメージを与え切れなかったものであり、執行猶予明けの3年後に被選挙権を回復して政治の世界にカムバックすることは私が保証するまでもないことです。

郵便不正事件の村木厚子氏の例を取るまでもなく、社会的認知度の高い者が冤罪被害者として発言力を高めることは、刑事司法が正しくあれと望む者にとっては願ったり叶ったりという状況が必ずや来ることを期待しています。刑事司法が正しくあることを心から望み、藤井浩人氏を応援し続けようと思っています。

ここをクリック→ #検察なう (418) 「美濃加茂市長事件、藤井浩人氏今週初公判!」

ここをクリック→ #検察なう (422) 「美濃加茂市長事件、第2回、第3回公判で贈賄供述者の証人尋問」

ここをクリック→ #検察なう (428) 「美濃加茂市長事件藤井氏被告人質問傍聴記」

ここをクリック→ #検察なう (438) 「美濃加茂市長事件アップデート~贈賄供述者の判決の重要性」

ここをクリック→ #検察なう (441) 「美濃加茂市長事件~藤井浩人氏公判結審」

ここをクリック→ #検察なう (442) 「美濃加茂市長事件の構図」

ここをクリック→ #検察なう (443) 「美濃加茂市長事件 弁論を読み解く Part1 『贈賄供述の信用性』」

ここをクリック→ #検察なう (444) 「美濃加茂市長事件 弁論を読み解く Part2 『藤井氏の無罪性』」

ここをクリック→ #検察なう (456) 「美濃加茂市長事件藤井氏無罪判決公判傍聴記」

ここをクリック→ #検察なう (459) 「検察に引き返す勇気はないのか~検察、美濃加茂市長事件で藤井市長無罪判決を控訴」

12/14/2017













ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 美濃加茂市長事件

2017/12/14 Thu. 16:27 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/1076-b4c876cd
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top