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「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (568) 「国賠審一審敗訴、訴訟指揮と判決文の異様な齟齬に裁判所の迷走を読む」 3/13/2018 

#検察なう (568) 「国賠審一審敗訴、訴訟指揮と判決文の異様な齟齬に裁判所の迷走を読む」 3/13/2018

「主文、原告の請求をいずれも棄却する」

思わず天を仰ぎました。「やはり、国賠審のハードルは高かったか」

国賠審で個人が勝つということは、役人である裁判官が、同じ役人の不法行為を認定し、税金を原資に個人にお金を払うことを意味します。私は、刑事裁判で有罪がディフォルトだとは思っていませんが(しかし、裁判官にとって無罪を書くことは相当大変)、国賠審では、残念ながら原告(=個人)敗訴はディフォルトになっています。

しかし、その判決を聞いても、若干の違和感がありました。

そしてその違和感が何であるかは、判決文を読んで理解しました。判決文が、被告(=国)の主張丸写しかつ相当にショボい(と言って言葉が悪ければ「相当投げやりな」)ものだったからです。

「そりゃ、国の主張を認めるんだから、国の主張丸写しで当然なんじゃないの」という声が聞こえそうですが、私の違和感は、訴訟指揮との異様な齟齬にあります。私の国賠審は、2014年7月に始まり、ここまで3年8ヶ月がかかっています。その審理の途中では現職検察官の証人尋問という異例中の異例なことが行われています(注1)。

先に述べたように、国賠審では原告敗訴がディフォルトですが、被告の主張丸写しで門前払いにするのであれば、審理の期間はせいぜい半年でいいはずです。

裁判官の人事考査は、裁判の処理件数によってなされます。つまり、てきぱきと滞りなく数多くの裁判件数をこなすことが優秀であるとされるのが、彼ら内部のものさしです(勿論、上級審でその判決がひっくり返されないということは重要ですが)。迅速な審理を心掛けるはずの裁判官が、3年8ヶ月もかけて、この結果というのは本来であれば、彼らの組織内では「訴訟指揮に問題あり」とされるはずです。

しかも、判決文には素人の私が読んでも分かる法律論的な誤りが散見されます。

例えば、「本件控訴の違法性の有無について」という今回の国賠審で最も重要な争点に関して、判決文を引用します。

「刑事訴訟法上、特に検察官からの控訴を制限する規定がなく、また、証拠の証明力が裁判官の自由な判断に委ねられているため、控訴審における証拠の信用性の評価や総合判断も第1審におけるそれらの評価や判断と同一になるとは限らないことに照らすと、より適正な刑事裁判の実現のために検察官が行使する控訴の権限が制限されるべきものではない」

刑事裁判は、「事後審」と呼ばれ、控訴審での審理の対象は、あくまで一審の判決そのものです。つまり、もう一度証拠を評価し新たな事実認定をするものではありません。しかし、判決文では「控訴審における証拠の信用性の評価や総合判断も第1審におけるそれらの評価や判断と同一になるとは限らない」と、新たな事実認定を前提にした書きぶりです。

また、もう一文引用します。

「刑事裁判における控訴審は原則としていわゆる事後審であり、第1審と同じ立場で事件そのものを審理するのではなく、当事者の訴訟活動を基礎に形成された第1審判決を対象とし、これに事後的な審査を加えるべきものであるから、新たな証拠の提出を当然の前提としているものではなく、検察官が第1審で提出した証拠について控訴審の評価や判断を求めることを制限する根拠は見いだせない」

控訴審においては「新たな証拠の提出を当然の前提としているものでは」ないというのは、明らかに刑事裁判の判例に基づく実務とはかけ離れています。だからこそ、私の刑事裁判控訴審では、検察官請求の新証拠を全て採用せず、一回結審となり、検察官控訴は棄却されたものです(注2)。

この判決文のショボさは、被告の主張のショボさそのものなのですが、どうしてこんなことが起こったかを想像するに、裁判所はこの判決に至るまで、相当迷走したことが伺われます。つまり、原告側主張に相当傾いていたが、最後の最後にやはり諦めざるをえなかったという内情があったと思われます。

イレギュラーな事象である国を負かすには、相当に「いい判決文」を書く必要があります。それをなんとか努力したけれど、最後は力及ばずというところでしょう。ディフォルトの事象である個人を負かすのに「いい判決文」は必要ないということです。

つまり「試合に勝って、勝負に負けた」というのが私の国賠審一審ですが、残念ながら結果が全てというのが裁判の世界です。

しかし、裁判後の代理人チームとのミーティングでは、彼らは既に次の目標=逆転勝訴に向けて意気を高めていました。

「先生、次は厳しいですよね」と言う私に、彼らは口をそろえて「いやいや、これで終わりにしていいはずがないじゃないですか」と彼らの方がむしろやる気満々で、私は勇気づけられました。

私の国賠審は、刑事司法の逆進を阻止するという大義のために行っている部分があります。是非、↓の過去ブログをお読み頂ければ幸いです。

ここをクリック→ #検察なう (534) 「私の国賠審は、国民全体の利益のためにあると考えています」

ご理解、今後のご支援をよろしくお願いします。

IMG_6337.jpg

敗訴後、裁判所を後にする刑事裁判一審からの盟友小松先生とのツーショット。

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (559) 「第19回口頭弁論報告~変わらぬ検察、変わりつつある裁判所」

(注2)
ここをクリック→ #検察なう (347) 「控訴審初公判報告~検察官控訴で門前払いの一回結審」

3/13/2018









ここをクリック→ 「クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件」 経緯説明 2017


ここをクリック→ Amazon 『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』 カスタマーレビュー

表紙1

ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

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category: 国家賠償請求訴訟

2018/03/13 Tue. 10:29 [edit]   TB: 0 | CM: 3

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この記事に対するコメント

ブログLink張らせていただきました

はじめまして、いつもブログ拝読させていただき、
応援しています!
守大助さんの支援をしておりまして、
八田様の説明が明瞭で感銘を受けましたので、
事後報告になってしまいますが、
当方のブログにリンクを張らせていただきました。

http://daisuke0428.hatenablog.com/

宜しくお願いいたいます。

S.Nagahama #- | URL | 2018/03/13 Tue. 14:33 * edit *

Re: ブログLink張らせていただきました

こちらこそ引用ありがとうございます。再審請求棄却は本当に残念でした。「Free大助!」のブログを#検察なうコミュニティで紹介させて頂きました。これからもよろしくお願いします。

八田

八田隆 #- | URL | 2018/03/13 Tue. 16:33 * edit *

ご紹介ありがとうございます。
宜しくお願いいたします。

S.Nagahama #- | URL | 2018/03/13 Tue. 23:17 * edit *

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