「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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嘆願書 (7/146) 井上将 

嘆願書 (7/146) 井上将

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、それを本人の了承を得て実名公開します。

7通目の嘆願書は私の敬愛する叔父のものです。親族の中ではきっての理性派、人情家です。

祖父母の葬式が相次いだ時、裏方を仕切った私を精神的にも実務的にも本当によくサポートしてくれました。今回の嘆願書を頼む際も、親族で真っ先に頼んだのが彼です。

こうして親族が近くいられるのも、死んだ祖父母が残してくれた大きな遺産だと思っています。愛情というのは時間を越えてつながるものなんですね。

<嘆願書>

私の甥、八田隆に高額の所得漏れがあり、これが脱税行為として告発されたと聞き私は総身が凍りつく思いがしました。こんな恥辱的行為をするはずがない、とんでもない間違いではないかと、彼を知る身内の一人として気も狂わんばかりでした。

八田隆は幼少時より読書好きで、近くの古本屋の主人の好意で、その店の蔵に座り込んで好きなほど読書をさせて貰うほどで、勉強好きな子でした。

両親は家業に追われる毎日でしたが、彼は長男として弟妹の面倒をよく見る優しい子で、友達にも親切な子供でした。

小学生の頃でした、弟が道路で100円硬貨を1枚拾ったことを聞き、交番に届けるように諭しました。その趣旨は、子供ながらに落とし主を気の毒に思い、不法に得たお金で欲望を満たすことを戒めるものだったようです。

成人して東大で学んだ高度な専門知識と語学力で、社会人として実力に見合う活躍の場を与えられました。

10年ほど前、彼の祖母が脳梗塞で意識の戻らぬまま3年間入院していました。彼は遠路見舞いを重ね、両親に代わって医療費の全額を負担しました。こうすることが可能になった自分に喜びを持っての行為であったと思います。その後、この祖母と祖父の葬儀を相次いで迎えましたが、彼は請われるまでもなく、その費用の大半を負担したようでした。

それは可愛がってくれた祖父母や、息子の資力を当てにすることなく苦労してくれた両親への限りない感謝の一念であるとともに、自分の恵まれた経済力からの清らかな使い方だと意識し望んだことだったに他ありません。

彼は帰郷してもある意味でのエリートでありながら、奢ることなく故郷の方言で誰にでも親しく話しかける気のよい、どこにでもいる普通の男です。

彼が小学校の頃、お金を拾ってきた弟を諭した時のように、お金にまつわる忌むべき行為を嫌う潔癖さは、その後も彼の人生に脈々と生き続けていたと思います。

その彼に突如降りかかった高額な脱税容疑は、まさに青天の霹靂であったことでしょう。さらに両親や亡き祖父母に顔向けできない不孝の極みを重く思い、耐えがたい恥辱感に打ちひしがれたことでしょう。

確定申告に際し、会社や税理士を過信しまた過度に依存し、関係の証憑資料を精査することなく取り扱ったようですが、この点で実に無謀粗暴との誹りを免れないと言わざるを得ません。仮に不埒にも脱税の意図があるならば、かくも愚かに慎重さを欠く者はいないと思われます。

八田隆はこの事件で実名で広く報道され、新たな就職口は採用を取り消され、今後の追徴等を控え、本人に対する社会的制裁は既に十分に課されているのではないでしょうか。

ともあれ八田隆は永く厳しい取り調べを受ける身となっている今は、自分の人生を反省し、この辛い体験を自分を育ててくれた社会に今後少しでも役たてることを決心する転機にしたいと後悔し誓うと申しております。

何卒八田隆に格別のご高配を賜り、穏便の情を願わく嘆願申し上げます。

井上将

<以上>
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category: 嘆願書

2012/01/15 Sun. 06:06 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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