「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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経過報告 (7)  「郵便不正事件で一審無罪」  9/12/2010 

経過報告 (7) 「郵便不正事件で一審無罪」 9/12/2010

村木元厚生労働省局長の郵便不正事件で無罪判決が出たことに関し、少なからぬ数の方から励ましのメールを頂きありがとうございました。これまでの常識で言えば、地裁(第一審)レベルで刑事裁判に無罪判決がでることはほぼありえなかったため、私も個人的に司法の英断を高く評価しています。

今回の裁判は裁判員裁判ではありませんでしたが、この制度が開始した影響も大きかったのではと想像します。この制度はアメリカの陪審員制度に範を置きますが、そのアメリカにおいては否認事件に置いて被疑者の有罪率は60%とも70%とも言われています。即ち30-40%が無罪になっています。それはむしろ一般的な感覚に近いのではないでしょうか。日本の刑事裁判において、一審の有罪率が99.99%という実情は何かおかしいと感じています。構造的に冤罪が作り出されるひずみがあると思っています。

今回の事件で、調書裁判が批判されていますが、調書というのは恐ろしいものです。私も今回それを自分で実感しました。調書は取調べの供述を基に作成されますが、「私は」で始まる内容を一人称で記載されます。それを捜査側(私の場合、国税局査察部の捜査官)が私になりかわって作成します。私でない人間があたかも私であるかのように書いているわけです。そこでは勿論、事実から大きな相違はないにしろ、ニュアンスが随分かけ離れていることは往々にしてあります。典型的な例が「繰り返しパターン」です。

「あなたは~をしませんでしたか」「していません」「もう一度聞きます。あなたは~をしませんでしたか」「していません」

1回の取調べは7時間から8時間に亘ります。私の場合、朝10時スタートで、45分程度の昼食休憩をはさんで夜6時ないし7時までというのが典型的なパターンでした。この長時間の取調べの最後に調書が作成されますが、当然それは要約です。そこで情報が全く同質なのにも関わらず敢えて上のように繰り返す記述がされると、「疑っているんだ」というニュアンスが強く出てきます。また否定の際に実際には「何度聞かれても、していないものはしていません。私にはする動機もなければ、もししたのであれば~であるのはむしろおかしいのではないですか」と答えたとしても、調書では「していません」としか書かれません。事実と異なることはないにしろ、ニュアンスが異なるというのはこういうことです。

また調書はワープロで作成されますが、訂正は必ず手書きでされ、オリジナルの文章はそのまま残っています。つまり調書は完成したものでも、取調べ側のオリジナルのストーリーと訂正された被疑者の主張とが併存したものになっています。国税局が作成した調書を検察が見て、どちらのストーリーにバイアスをかけて読むかは明らかです。

捜査機関が立てたストーリーは「筋」と呼ばれます。ストーリーを立てた上で捜査に臨むのは至極当然のことですが、事実がそれと異なった場合(「筋の読み違い」)彼らの取る行動が、村木氏の事件で実際に起こったことです。そこではストーリーを事実に合わせるのではなく、事実をストーリーに合わせようとしてしまうわけです。

私の場合も、マル査の内定段階で彼らは私の海外口座の存在は把握しており、私の過去の確定申告を調べてその口座の取引が全く申告されてなければ、少なくとも余罪ありと見込んだことでしょう。しかし彼らは海外の金融機関への捜査権がないため、私の取引状況を強制捜査開始前に把握することは不可能でした。それまで私はその海外口座で売却履歴が全くないため(それまで何年も商品を買い持ちしていただけ)、譲渡益が一切なかったゆえに申告もしていなかったということは彼らも知り得なかった事実でした。

結局、本丸の株式の取得時の申告も何ら証拠が出ないまま15ヶ月もずるずると引き延ばした結果、当初のストーリー通り告発となってしまいました。しかし告発に当たっても彼らが何をもって私が故意に脱税したかという判断根拠は全く明らかにされていません。ただ告発と言う事実があるだけです。

人権を蹂躙しても自分たちのプライド、エゴを守り通そうとする体質は彼らの文化であり、日本の捜査機関のもつ悪弊です。今回の郵便不正事件で、そこにスポットライトが当たり、国民の認識レベルが引き上げられ監視姿勢が強まればいいと思っています。カナダにいると報道はインターネット経由でしか目にしませんが、かなりメディアの関心も高いように聞いており、勇気づけられています。

しかし被疑者が否認をすれば拘置される(村木氏は164日拘留されていました)という人質司法が即日変わる保証はありません。私としては心を強くしてただ待つのみです。

バンクーバーはもうかなり涼しく、日中の最高気温も15度程度です。日本はまだまだ暑いように聞いております。お体にはお気を付け下さい。また連絡します。

9/12/2010



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2011/09/24 Sat. 17:56 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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