「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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嘆願書 (31/146) 氏川真理 

嘆願書 (31/146) 氏川真理

犯罪の契機は、結局動機と人品に関わると思っています。その人品に関して、私の友人・知人に「あなたの知っている八田隆を文章にして下さい」と依頼しました。そして集まったのが146通の「嘆願書」です。検察特捜部に提出したものですが、本人の了承を得て実名公開します。

31通目の嘆願書はワインつながりの友人、最近は最強のゴル友です。

私は、外資系証券で債券トレーディングという比較的特殊な業務に従事していました。仕事をしていた当時、時々人に、「八田さんの仕事ではどういった能力が必要とされるんですか?」と聞かれました。お客さんにも、「モーゲージ証券は複雑ですから、さぞかし数学的な才能が必要なんでしょうね」と言われました。

確かに、複雑な構造をもつ債券の理論価格算出のためには最新の金融テクノロジーが必要とされます。しかし実際の業務上、必要なのは四則計算くらいなものでした。但し、米国の債券の価格は32進法を用いて表示されるため、若干の慣れが必要です。そしてその四則計算をする状況というのが、とてつもないプレッシャーの中です。電話口でNYのトレーダーと話しながら、目の前にはお客さんの電話を握る営業がいて、「八田さん、早くお願いします!」と叫んでいて、その中で絶対間違えることができない何百億円という金額の「単純な四則計算」をするものです。私はストレスに強い方とは思いませんが、こと仕事のプレッシャーは全然プレッシャーと感じていませんでした。戦争の最前線で、銃弾が飛び交う中、公文の算数のペーパードリルを制限時間ぎりぎりで間違えることなくできる人には向いているかもしれません。

あと、ご自分でFXや株を取引なさっている方は是非参考にして頂きたいのですが、投資行動で絶対的に必要な資質は「自分の過ちを自ら正す勇気」です。ある商品を「買う」場合には、その商品が値上がりすると思っているからこそ買うわけですが、そのポジションの損益がマイナス(=損をしている)という状態は、「買う」=「値上がりする」という最初の判断が間違っていたということです。勿論、その後値上がりするということも可能性としてありますが、「そうなればいいなあ」という「希望」は正しい投資戦略とは言えません。市場はあなたの希望など知らないし、もし万が一知っていたとしてもそれをかなえる必要はありません。自分が間違っていたのであれば、淡々とそれを認めて正し(=損切り)、また次のアクションを最初から取る方が結果的によいということは私が保証します。

そういう状況下に長くいた影響なのか、物事にこだわらないのはよいのですが、物忘れが極端にひどくなったような気がします。というか最初から覚えていないという感じです。クリストファー・ノーラン監督の映画「メメント」のガイ・ピアースとまでは言わないものの、記憶のネットの網目がすごく粗くて、それに引っかからないと何も覚えていないという感じです。

ここをクリック→ #検察なう (82) 「アスペルガー」

今回嘆願書を紹介する彼女と一緒にいて、いつも「すげーっ」と思うことは、その観察力と記憶力です。卓越した観察力は嘆願書をお読み頂けるとお分かりになると思います。

記憶に関して、私の場合は非常に文系的な記憶構造になっています。つまりストーリーと必然性が記憶の定着に必要です。私は、東大の二次試験を日本史・世界史で受けた超文系指向なのですが、歴史はストーリーと必然性があるため記憶できても、同じ社会の地理は全く苦手です。例えば北欧のスカンディナビア半島にある二国は北がノルウェーで南がスウェーデンですが(さっきWikipediaで調べました)、なぜ逆に北がスウェーデンで南がノルウェーだといけないのか、その必然性が理解できないため、記憶に全く定着しません。彼女の記憶の定着の仕方は、実に理系的な感じです。脈絡のない断片的な記憶が、脳のどこかに整理されてるんでしょう。この3年間の取調べの過程でも、彼女の記憶に助けられることはよくありました。

不思議なもので、彼女はそこまでベーシックな知的能力が高いのに、外国語が全くだめらしいです。仕事で時々海外出張があるようですが、「どうしてんの?」と聞くと「全部、日本語で無理やり押し通す」だそうで、それも一種の才能なのかもしれません。よく英語の手紙の代筆を頼まれます。

ゴルフは私のマイ・ブームですが、彼女は女だてらに特注マッスル・バック・アイアンをぶん回すアスリート系ゴルファーで、一緒にラウンドする我ら男性陣はいつもやられてます。私は師と仰いでるので、楽しくラウンドさせてもらってますが。

<嘆願書>

八田隆の友人の氏川真理と申します。

私たちは7年前ワイン会で知り合い、それ以来親しくしております。
共通の友人も多く、当時からの仲間とは今でも月に1~2度集まっています。
今回の告発に対し、私から見た八田隆という人物像を嘆願書という形で提出させていただきます。

八田隆は、仕事と趣味には没頭するのですが、その反面一般常識にはやや欠けた、浮世離れした人物です。

六本木ヒルズなどの豪邸に住まず、駅から10分歩くワンルームのマンション暮らし。タクシーもほとんど乗らず、電車移動。
家にテレビが無く、話題のアイドルや流行りのお笑い等俗世間には全く興味なし。あまりに質素で、当初はとても億稼いでいる人の生活とは思えませんでした。
でも松屋の豚丼の夕食の後、家での晩酌が1本数万円のワインだったり、定食屋のポイントカードを忘れて悔しがり、わざわざお店を変えた先で何万も使ったり、ワイン会で偶然行ったレストランで好きなワインがあったら何十万円分も買い占めたり。
ケチなのではなく、金銭感覚が普通の人とは違うようです。
一時期はスノーボード教室とワインバーを開くのが夢で、儲からなくても自分の好きなことを仕事にしたいなどと子供のようなことを言い、ワインバーの在庫用にワインを12本単位で買っていたこともありました。
子供と過ごす休日のためだけに鎌倉に一軒家を買ったり(しかもキャッシュで)、年に数回の家族旅行が海外だったり、子供に関して使うお金も桁外れです。

前の税理士さんが確定申告をし忘れていても気付かず、時効で還付がもらえなかったことは笑い話になっていました。
飲み会の幹事で自分のカードで精算したことを忘れていて、口座引き落としに間に合わない、とお金を貸したこともあります。
「金貸してくれ。300万円。明後日引き落としだった。」と、OLの年収にあたる金額を平気で言うのです。
貸した直後に「やっぱりお金あった。」と返されたこともあります。通帳記帳をずっとしていなかったそうです。
普通の人の理解の範疇を超えた、お金に無頓着な人なのです。

また、ストレスに弱く病気恐怖症でもあります。
クレディスイスの後半は上司と合わなかったようで胃を悪くし「きっと胃癌だ」と大騒ぎしましたが、結局胃潰瘍にもなっていない軽い胃炎で、退職した途端に治りました。
国税局の取調べが始まってからは下痢が続き、どう考えても原因はストレスなのですが大腸癌だと心配し、昨年夏に無保険なのに虎の門病院で大腸内視鏡を受けたほどです。
そんな人が、たかが1億ちょっとのために、ベアースターンズで1年働けば稼げてしまう額のために、時効まで毎日胃に穴のあくような生活を送ることになる脱税を選ぶでしょうか?

病院好きなので「毎月の保険料の元は十分取ってるね」と言ったところ「会社だけじゃなくて俺も払ってるの?」と。
ベアースターンズをやめる時には「外資系なのに失業手当もらえるらしい」と本気で驚いていたことも。
毎月の給与明細書は封を開けるだけで見ていないらしく、税金どころか保険や年金を支払っている感覚も知識もなかった人です。

今回の脱税騒動も、見知らぬ第三者の話なら「億もらい過ぎてて気づかないものなのかな?」と思うかもしれませんが、八田隆を知っている人なら「八田さんなら気付かないでしょ」「八田さんらしいミス」と受け取っているはずです。

払うべき税金は払わないといけないと思います。
税金のことを会社に任せきっていて自分で調べようとしなかったことも、注意が足りなかったと思います。
でも、八田隆が知っていながらわざと税金を払わなかったとは思いません。
他の100人の人達と同じように、気付かなかった、抜けていただけだと思います。

どうか、八田隆という人間を理解していただき、寛大な処分をしていただけるようお願いいたします。

氏川真理

<以上>

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category: 嘆願書

2012/02/09 Thu. 15:02 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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