「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (115) 「氷山の一角」 3/25/2012 

#検察なう (115) 「氷山の一角」 3/25/2012

いつも多くの方に励まして頂いており、ありがとうございます。最近では、直接知らない方からも応援メッセージを頂くこともあり、勇気をもらっています。

私は、基本的にはポジティブ人間なので、どんな困難でも前向きでぶつかるという姿勢なのですが、時にはネガティブ・スパイラルに囚われる時もないわけではありません。それは多分、病に見舞われている者が、その病に肉体だけではなく、精神的にもさいなまれ「どうせ俺の痛み・苦しみなんか分からないんだ」というものに似ていると思います。

罰は罪を犯した者に、その罪相応に設定されています。それは、その罪を犯していない者にとっては、非常に過酷です。同じ罰でも、むしろ罪を犯していない者に対しては一層厳しいものです。

冤罪というのはそういうものです。そしてそれはやはり被害者でなければ分からないという部分があります。

先日、ある方からメールをもらいました。

「はじめまして。
突然のお手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。
八田さんのツイッター&ブログ拝読させていただいており、私自身励みにさせていただいています。
皆さんの嘆願書にこめられた思いなどを見て、なんとなく兄貴分のように身近に感じ、私がずっと誰かに聞いて欲しかった話を、八田さんに聞いてもらいたいと思い、手紙を書いた次第です。」

長文のメールを読ませて頂いた後、メール交換をしました。その彼女は、話を聞けば普通のOLです。それが冤罪事件に巻き込まれてしまったというものです。

事件の概略をかいつまんで説明すると、
「彼女の働く会社は、事務機器の販売・リース会社。市の出資する施設にパソコンをリースする契約で、彼女がその営業担当であった。以前からのリース契約を更改延長したのだが、その納入パソコン6台(255万円)のうち4台(158万円)を市の担当職員が横領。それが発覚した際、その市職員は贈収賄のストーリーをでっち上げ、彼女とその上司が贈賄側として嫌疑を受ける。彼女は、警察による連日の長時間の取調べの中で自白調書を取られ逮捕。その後、弁護士がついて否認に転ずる。逮捕後7カ月もの間、接見禁止付きで勾留された。」
というものです。

贈賄というのは、公務員個人に何らかの便宜を図ってもらうべく利益供与する犯罪だということはご存知かと思います。贈賄の相手が公務員でない場合、この犯罪は成り立たず、こうしたものを「身分犯」といいます。内部の倫理規定が厳しく設定されているケースが多く、相手が民間の場合よりも相当厳格なのではと思いがちですが、刑法犯としては、通常の商行為の範囲を逸脱する利益供与に対しての罰則です。

そしてそれは、あくまで個人に対しての犯罪です。例えば、6台255万円のリース契約が正当な取引の場合でも、6台を60台にしようが、255万円を10万円にしようが、個人に対してではなく、市に対してという場合、贈賄とはなりません。

この事件では、リース契約はあくまで市の出資する施設との間に交わされており、パソコンの納入もその施設になされています。それでなぜ贈賄とされるのか、話を聞いただけでは全く理解できませんでした。

最初聞いた時、リース契約の更改延長の見返りとして、パソコン4台を余分に(つまり合計10台を)同料金でリースしたのかと思ったのですが、更改延長後も、契約内容はそれまでの「5台、257万円」から「6台、255万円」と微調整程度で、市職員の横領した4台のパソコンは、その6台のうちの4台です。

リース契約は、更改延長前も後も3年契約だったのですが(平成14~17→平成17~20)、市の条例で、更改延長前は見かけ上単年度契約になっていたそうです。毎年同じ内容の契約を繰り返していたということです。それが更改延長後は、条例の変更で、本来の複数年契約になりました。

警察・検察は、その単年度契約→複数年契約を会社が受ける利益として、その便宜を図ってもらうため、パソコン4台をその市職員個人に送ったと主張しているようです。

市職員は、パソコンの納入は市職員の自宅にされたとの虚偽の主張をしていたものの、実際の納入は施設にされており、市職員がその施設から自宅に送った送り状も証拠として発見されています。捜査当局の無理筋は明らかです。

市職員が虚偽の供述をするメリットは、業務上横領罪(刑法253条)が懲役10年以下であるのに対し、収賄罪(刑法197条)は懲役5年以下というものです。

そして単なる横領よりも、贈収賄を挙げることに捜査当局が色めき立つのは容易に想像できます。

普通のOLの方が、いつもの仕事をしていたところ、いきなり逮捕されて、7ヶ月も拘置所に勾留されるというのは、まさに人質司法の怖さです。

彼女のメールにもこうありました。
「逮捕後、弁護士が来て私たちは否認に転じたのですが、その後地獄のような日々を過ごしたことは、想像に難くないと思います。」

「私自身も年収300万程度の普通のOLだったので、逮捕・起訴された時のショックや家族・友人・会社へ与えた影響など、本当に死にたくなるような思いでした。」

その気持ちは察するに余りあります。

どのようにすればこうした冤罪がなくなるのか、私も答えを持ち合わせていません。そして想像に難くないのは、こうした冤罪は氷山の一角でしかないということです。想像できないくらいの数の事件で、どうせ有罪(刑事裁判の有罪率99.9%)なのだから、逮捕・勾留を避けるために、無実でも罪を認めてしまうということが起こっているのではないかと思います。

しかし、それでは、冤罪が作り出される状況は何も変わりません。ただ単に、捜査権力の暴走を許すだけです。

本来は裁判所が正しく機能すればこのようなことの大部分が避けられるはずなのですが、繰り返し述べているように、無罪は、相当に優秀でやる気がある裁判官でないと書けないのが残念ながら実情のようです。

冤罪を減らすためには、検察の「起訴をして有罪とするのが我々の仕事」という起訴至上主義を変えるしかありません。私はそのことを、検察の取調べに際し、繰り返し直接彼らに訴えました。これからも同じ訴えを続けるものです。

冤罪は国家の犯罪です。

私個人としては諦めることなく、「こうして冤罪は作られる」という情報を発信して、一人でも多くの人にこの問題を考えてほしいと思っています。また、そうすることで、同じような境遇の方々に勇気を与えることができるとすれば、こんなうれしいことはありません。

彼女の公判は、先日最終弁論が終わったところです。#検察なうTシャツを買ってくれたのですが、それをお守りに持って行ってくれたそうです。

判決は4月下旬です。無罪の朗報を待っています。無罪の時には、彼女の名誉回復のためにも、大々的にこのブログで発表させてもらいたいと思っています。

冤罪駆け込み寺となった今回のブログでした。










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category: 冤罪事件に関して

2012/03/24 Sat. 14:28 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

はじめまして
この記事の彼女の友人です。
彼女からメールをもらい拝読させていただきました。
八田さんの活動が彼女の心の支えになったことに私からも感謝申し上げます。
不慮の事故みたいなものだからと謙虚に戦い続ける彼女の姿を見るたびに、「こんなことに巻き込まれる人じゃないのに」と心が痛むとともに、負けずに戦う彼女に人間的な尊敬を感じています。
罪のない方の届かない声が少しでも社会に出るように活動されることは、私には想像できない大変さもあるかと思いますが、ぜひこれからも私たちではわからない真実や大切なことを伝え続けてほしいです。

aya #- | URL | 2012/03/25 Sun. 23:50 * edit *

ありがとうございます

私も冤罪の辛さは身に染みて分かっています。ましてや彼女は7か月も勾留されてたなんて。その間、否認を貫いた勇気に私も支えられる思いです。

小さな一つ一つの努力がいずれは大きな変化をもたらすと信じています。志さえ正しければありえるはずです。

私も多くの人に励まされて、前向きに考え前進しています。彼女にもあなたのような方がいて、どれだけ助かっていることか。同じく冤罪の被害者として感謝します。ありがとうございます。


> はじめまして
> この記事の彼女の友人です。
> 彼女からメールをもらい拝読させていただきました。
> 八田さんの活動が彼女の心の支えになったことに私からも感謝申し上げます。
> 不慮の事故みたいなものだからと謙虚に戦い続ける彼女の姿を見るたびに、「こんなことに巻き込まれる人じゃないのに」と心が痛むとともに、負けずに戦う彼女に人間的な尊敬を感じています。
> 罪のない方の届かない声が少しでも社会に出るように活動されることは、私には想像できない大変さもあるかと思いますが、ぜひこれからも私たちではわからない真実や大切なことを伝え続けてほしいです。

八田隆 #- | URL | 2012/03/26 Mon. 00:58 * edit *

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