「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (118) 「大坪弘道著『勾留百二十日 特捜部長はなぜ逮捕されたか』を読んで」 4/2/2012 

#検察なう (118) 「大坪弘道著『勾留百二十日 特捜部長はなぜ逮捕されたか』を読んで」 4/2/2012

遅ればせながら、郵便不正事件の陣頭指揮を執った元大阪特捜部長大坪弘道著の『勾留百二十日 特捜部長はなぜ逮捕されたか』を読みました。遅ればせながらというのも、この本には1円も払いたくなかったので、図書館の予約待ちで時間がかかったためです。

読後感を一言で言えば「怒りを禁じえない」、本の内容は「厚顔無恥」というものです。

極端な言い方をすれば、この著作は「連続殺人犯が捕まってから、反省することもなく死刑になることを恐れおののいて書いた手記」に通ずるものがあります。検察によって冤罪に陥れられた当事者の立場からすれば、「ふざけるな!」と言いたいところです。自己憐憫・美化に終始する内容に、かなり辟易としてしまいました。

彼は郵便不正事件で村木厚子氏を164日も勾留したいわば張本人であり、事件が完全に検察のストーリーによって作られた虚構のものであったことが認定されているにも関わらず、郵便不正事件に関して反省の弁が全くありません。

「(郵便不正事件は)無罪判決という最悪の結果となった」「私が精魂傾け指揮した事件に無罪の審判が下った。私は戦いに敗れたのである」

当事者からしてこの意識であれば、検察改革が進むわけはありません。

この著作は、彼が逮捕されてから、百二十日間勾留された間の手記です。検察の逮捕勾留は「人質司法」と外部から散々非難されているものですが、建前は「証拠隠滅、逃亡のおそれあり」として裁判所の令状をもって行うものです。彼はそれに関しこう書いています。

「否認する被疑者の保釈を阻み、長く拘置所に閉じ込めておくのは、検察の常套手段である。これを人質司法という。否認を続けると保釈が容易に認められず長く勾留されてしまうのでは......という被疑者の不安・恐怖心理を利用し、自供を迫る。それをほのめかすか、暗黙のうちにやるかは人それぞれだが、これは検察官の大きな武器である。弁護士接見の拡大、被疑者国選弁護人制度の導入など、検察に対して種々の掣肘(せいちゅう)が加えられる中にあって、ある意味で検察に残された唯一のカードがこの人質司法である」

検察内部の人間が開き直ってどうすんねん、という感じです。これを読んでも、裁判所はこれまで通り検察の逮捕勾留請求を許可し続けるのでしょうか。そうであれば、この国の司法は全くどうかしています。

また彼は、何度もこう繰り返します。

「なぜ歴代の検察官のなかで、私だけがこのような運命になったのか?」

検察官はみな同じことをしている、つまり証拠の捏造も辞さない起訴至上主義であるにも関わらず、なぜ自分だけが?という反省のかけらもないものです。

逮捕されるまでの気持ちをこのように述べています。

「今日逮捕もありうるのかと絶望的な気持ちに陥る。なぜ最高検は元特捜部長である私をこのような無理筋の容疑で逮捕しようとするのか?それを無慈悲に実行する組織の冷酷さと怖ろしさを思い知った」

また、勾留されている気持ちはこのように述べています。

「独房での気が狂いそうな拘禁の後遺症が私の心を弱くしてしまい、このような拘束生活に自分は長く耐えられそうにない。事実を曲げてでもこの事件に決着をつけたいと、最高検と正面から戦ったことを悔いた。このままではとうていこの拘禁生活に私の精神がもたないであろう、否認を続けたままでは保釈も許されずこれから続く長期間の勾留に耐えられないだろうと、大きな不安が重く私の心を支配していた」

彼は、検事として、また特捜部長として、これまで何百人もの人間を同じ状況に追いやったにも関わらず、この体たらくです。

またこのようにも述べています。

「今朝また生をいただいて目がさめました。今こうして生かされていることに感謝します。天の神様、ご先祖様どうか今日一日心乱れることなく、平穏にこの一日だけを無事過ごすことができますよう私をお守り下さい」

袴田巌氏が聞いたら何と思うか。袴田氏は死刑の恐怖にさらされ、今日も、これまで46年間獄中につながれています。上記のコメントは勾留わずか17日目のものです。天の神様も随分と迷惑に思ったのではないでしょうか。

さらに驚いたのは、大阪から東京に取調べを受けた旅費に関しての記述です。

「『私は参考人の形で上京しているのですから、旅費・日当は最高検が支払ってくれるんですね』とわざと念をおした」「だが結局、最高検からは今回の一泊二日と第二回目調査で上京した二泊三日の旅費・日当が支払われることはなく、逮捕後、帝国ホテルから宿泊代金の支払い請求書が自宅に届いた。私は今でもこの時の清算を最高検に求めたいと思っている」

私はこれまで、国税局・検察の取調べ、それから裁判の度ごとにカナダのバンクーバーから帰国しているのですが、それらの旅費を請求しようなどとは今まで思ったこともありませんでした。

検察がメディアを利用して、被疑者の悪いイメージを刷り込んだ上で、それを取り締まる「正義の味方」を演出することはよく知られたことです。そのメディアに対してはこのように書いています。

「マスコミというのはまことに苛烈な存在で、どんなに親しい記者であっても私情で追及の手を緩めてくれるということはなく、完全に会社組織の一機関になり切って私や家族の生活を監視し、容赦なく私生活にまで侵入してきました。私が逮捕されるまでそれが何十日かかろうとこの状態をずっと続ける構えで自宅を取り囲む彼らの姿を見て、人の心をもたないゾンビか爬虫類が蠢いているような印象をもちました」

「人の心をもたない」というのは検察のことだろう、と思わず突っ込みたくなるところです。

彼の著述の中で、「私は自己の魂を鎮魂させるため、『懺悔』と題する手記を書いた」という部分だけが、この書の中で浮いて違和感があります。その「懺悔」と題された手記は本の中では3ページ程度のもので、このように書かれています。

「司法というものは誠に恐ろしい権力である。人を極限に追い詰める権力である。人の生身を切りきざむ物理的な権力である。
私はこの囚われの身になって初めて、身を拘束される辛さ、地位も名誉も財産も一切をはく奪される苦しさ、家族と別離する淋しさ、そして私をここに追いやった権力に対する言い尽くし難い憤怒というものを知った」

「いつしか私自身が権力の魔力に取り憑かれていたのかも知れない」

「権力の行使によって相手がいかに苦しみ、悲しみ、生活の基盤を奪われ、それに伴い家族までも巻きこみ深刻な苦しみと別離の悲しみを与えることへのおののきと深い配慮を少しずつ薄れさせていったのではないだろうか」

この懺悔の気持ちが本物であれば、自分も含め検察を断罪して、検察改革の糧としたであろうと思います。しかし、そうではなさそうです。彼が取調べ中に、妻の取調べを示唆された際に激昂して、このように言っています。

「何だと!やるならやってみろ。もし妻に指一本でも触ってみろ。ただではおかないぞ!私が知っている全ての秘密をバラして検察をガタガタにしてやる。それによって自分も死ぬことになるが、覚悟の上だ。そのことを上に言っておけ!」

この一言だけでも、先日(3/30)の公判で彼が有罪判決を不服として控訴した、検察 vs 大坪・佐賀の裁判が全て茶番であることが伺えます。

私は、検察 vs 大坪・佐賀の裁判にはこれまでどうも興味がそそられませんでした。それは、大坪・佐賀が、もし「自分は誤ったことをした。有罪もやむなし。しかしそれが検察の行動論理そのものであり、やり方なのだ」と言っていれば、随分と私の感じ方も違ったと思います。しかし大坪・佐賀が自己弁護に走った時点で、結局、「悪者同士の仲間割れ」という印象しか持てなくなったからです。

先日の判決では、大坪・佐賀には執行猶予がつきました。いかにも丸く収めようというかの幕引きが非常に後味の悪いものです。大坪はそれでも不服のようで、記者会見で「最高検の主張に追従した、結論ありきの判決」と述べています。

彼の指揮した郵便不正事件それ自体が、「結論ありき」の捜査であったことは火を見るより明らかです。それは私の起訴も同じです。結局は、それが検察の体質です。結論ありきの起訴至上主義。これを変えなければ検察改革はなしえないものです。

4/2/2012











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category: 刑事事件一般

2012/04/01 Sun. 14:19 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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