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「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (119) 「第二回公判報告」 4/11/2012 

#検察なう (119) 「第二回公判報告」 4/11/2012

本日、第2回公判が行われました。

10時半からの公判に備えて、9時から弁護士とミーティング。その後、東京地裁に向かうのですが、そこでちょっとしたアクシデント。

公判には毎回大部の資料を持参します。大型旅行トランクに入れて運ぶのですが、弁護士事務所のビルを出たところの段差で、小松弁護人の「おニュー」のTUMIのキャスターが破損。本来は着替えを中心に運ぶ用途の旅行トランクなので、想定外の使用に耐えかねたようです。

東京地裁の待合室では、「真っ直ぐ引けば、だいじょう......」ゴキッ!という状態で、「先生、それドリフみたいで緊張感なしですよ」と笑い転げていました。このトランクに関しては、閉廷後も書記官の方に「大丈夫ですか。裁判所のキャスターお貸しましょうか」と笑われていました。その書記官も和やかな雰囲気で「八田さんが新しいのを買ってくれますよ」とおっしゃっていました(買いません、キリッ)。

前回の初公判と今日の第2回公判の両方の傍聴に来られた方はお分かりでしょうが、初公判とは裁判長が代わっています。野口佳子裁判官に代わり、佐藤弘規裁判官。やはり裁判長が代わると雰囲気も変わります。柔和な物言いにほっとされた方も多かったのではないかと思います。

今回の目玉は2つ。

1つは私の陳述と、もう1つは弁護側の証拠開示命令申立です。

まず私の陳述に関しては、通常の手続外のことですが、裁判官に認めて頂き、機会を得ました。以下がその全文です。

「初公判の検察冒頭陳述において、検察は、国税局査察部、検察特捜部による3年以上の徹底調査の集大成として、その主張を明らかにしました。しかし、その内容は私の故意を立証するには程遠い瑣末な間接事実をつなぎあわせ、牽強付会的な推論を主張するものに過ぎませんでした。

この程度の薄弱な根拠で、国家権力が個人の人権を蹂躙できてしまうということを非常に残念に思い、捜査権力の恣意的な公訴権濫用に国民の一人として大きな危惧を抱いています。

検察の主張の柱は、会社の指導が、従業員の別途申告・納税義務を認識させるに十分であったというものですが、本日採用される検察側の請求する多くの証拠ですら、それと反する事実を示唆しています。

会社の文書に挿入された英文による税務に関する記述は、何ら明示的なものではなく、取るべき行動そのものを説明したものは一切ありません。

なぜならば、それら文言は、会社が従業員の申告漏れを防ぐために『指導』するといった性格のものではなく、会社が税務に関する責任を免れるための注記事項に過ぎないからです。即ち、本来、それら記述は、日本の税務を日本人職員に徹底周知させる目的のものではありません。

それを『指導』と呼んで責任逃れを図る会社と、追徴課税を多額に徴収したい税務当局の利害が一致して、彼らは『会社は十分に指導していたのに、従業員は故意に申告しなかった』とのストーリーを作り上げたものと想像します。

私は、郵便不正事件発生以前に告発されました。そして郵便不正事件発生以降に検察特捜部の取調べが開始しました。

取調べに際し、私は、再三、郵便不正事件の前後にまたがる私の事案こそが検察改革を自ら実証するよい機会であることを主張しましたが、やはり検察の自浄作用は望むらくもなく、旧態然とした検察の『結論ありき』の起訴至上主義は何ら変わらないことが実証されたのみでした。

そしてそれは、検察が自ら標榜する『検察の理念』に書かれた『あたかも常に有罪そのものを目的とし、より重い処分の実現自体を成果とみなすかのごとき姿勢となってはならない』という精神にもとる所作であることは明らかです。

国家権力の弾圧にも負けずに戦う我々弁護団の労苦を無駄にすることなく、この事案を、告発に至る経緯、起訴に至る経緯にまで踏み込んで審理して頂き、是非とも検察改革・司法改革の試金石として頂きたいと思っています。

正義、それだけが私の望むものです。」

子供の頃から本の虫で、大学受験も得意科目は現国・古文・漢文だった私ですが、最近は法曹関連の悪文に毒されて、「文章が分かりにくい」と言われることが多いので、反省したいところです。

その後は初公判で行われた検察の証拠調請求に対し、弁護側が留保していた「同意」「不同意」の意見と、それを受けて採用証拠に関する検察の「要旨の告知」が行われました。この「要旨の告知」とは証拠の全文読み上げに代わるものです。

「あまり意味のない儀式のようなもの」と聞いていたので、私の公判と同じ時刻に高裁で判決が下った市橋被告の公判の様子を見に行きたいと思っていたくらいだったのですが(「八田さん、被告の在席は義務ですから、だめです」と釘を刺されました)、思いのほか公判検事の「要旨の告知」はスムーズでした。

そして終了前に、本日2つ目の目玉の証拠開示命令申立。

我々弁護側は、検察が開示をしていない証拠の開示請求をしています。検察は随分なボリュームの証拠を任意で開示したものの、残念ながら肝になる証拠については依然開示請求に応じていません。そして、その中でも特に重要だと思われるものの一つにスポットライトを当てて、本日開示命令申立を行い、裁判所に「この証拠の開示をしなさい」という命令を出してもらうようお願いしたというものです。

その証拠とは、国税局と検察の間で行われた「告発要否勘案協議会」の議事録です。

素人感覚では、国税局は独自で調査、そして彼らが判断し、告発。そして告発を受けた検察は、国税局の資料を参考に、彼らも独自で取調べを行い、その後起訴・不起訴の判断をして起訴、というものだと思っていました。

ところが、実際は、国税局と検察は、告発段階で「告発要否勘案協議会」なるものを両者間で行い、既に起訴を前提として告発を決定するという実態が明らかになっています。そして国税局の告発を受けて検察が起訴をしなかったケースは過去に一つもありません。

検察が取調べをする前から、まさに「結論ありき」の決定がなされるということが実態のようです。また情報筋からは、私の事案では、国税局が「証拠はない」と躊躇するところを、検察が促して告発させたという状況も伝え聞いております。

この検察とは、郵便不正事件前の「超」傍若無人な「俺がルールブックだ」検察です。私や弁護士も、以前の検察はよしとして(よくは全くないのですが)、検察改革に期待して、検察の取調べに臨んだものです。

ところが、検察改革の掛け声も虚しく、結局のところ彼らは「結論ありき」の起訴至上主義の検察のままであったという残念な結果でした。

我々は、この「結論ありき」の起訴至上主義を「公訴権濫用」という主張をして批判しています。その裏付け資料となるものが、本日開示命令申立をした議事録です。

なんとか社会の暗部にメスを入れたいと頑張っています。この開示命令申立を受けて、検察がどう対応するか、裁判所がどう対応するか要注目です。


P.S.
高校の同級生のマンガ家高杉ナツメが法廷画家になってくれました。第2回公判の模様です。

そんな不満げだったかなあwww


ここをクリック→ 第2回公判法廷画

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category: 刑事裁判公判報告

2012/04/11 Wed. 06:23 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

ありがとうございます

私の事案は氷山の一角だと思っています。

日本を変えようなどと大それたことを考えているわけでもないのですが、自分の無罪を主張するだけでは意味がないとも思っています。

散々「有罪は既定路線、逮捕されるだけ無駄」(結局、逮捕はありませんでしたが)と言われました。今まで何人もの方々が同じような状況で、悔しい思いをしてきたかということに背中を押されてここまで来ました。

少しでも検察・国税局に泡を吹かせることができれば、と頑張っています。

今後ともご注目下さい。ご支援ありがとうございます。

八田

八田隆 #- | URL | 2012/04/12 Thu. 07:35 * edit *

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