「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

07« 2017 / 08 »09
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

外資系証券なるもの (10) 「フロント・オフィスとバック・オフィス」 

外資系証券なるもの (10) 「フロント・オフィスとバック・オフィス」

外資系証券では、総合職は「フロント・オフィス」、一般職は「バック・オフィス」(それを営業事務職に限定して、総務職を特に「アドミニストレーション」と区別する場合もあります)と呼ばれます。

日本の会社でも、総合職と一般職の間の雇用体系、給与体系の格差はある程度と存在すると思いますが、外資系証券においては「フロント・オフィス」「バック・オフィス」間の格差は著しいものがあります。

それは外資系証券では、直接、収益を生む部署を「プロフィット・センター」、それ以外の収益を生まない部署を「コスト・センター」と呼ぶことで、収益を生むスタッフを優遇するカルチャーがあるからです。「フロント・オフィス」「バック・オフィス」と「「プロフィット・センター」「コスト・センター」は一対一対応するものではありませんが(例えばリサーチは「フロント・オフィス」でありながら「コスト・センター」と看做されています)、フロント・オフィスの人間の中には、「バック・オフィスの人間の給与は俺たちが稼いでいる」と勘違いしている者も少なからずいます。

嘆願書を書いてくれた会社の先輩、同僚、後輩にはフロント・オフィスの者も、バック・オフィスの者もいますが、公開させてもらった嘆願書には、私がここで書いた外資系証券におけるカルチャーの一側面が書かれています。

五十嵐雅祥嘆願書

ここをクリック→五十嵐雅祥嘆願書

倉永良通嘆願書

ここをクリック→倉永良通嘆願書

この業界にいなければ当たり前のことが、この業界では当たり前でないということがお分かりになるかと思います。

そして、なぜ私がこの業界にいながら、そしてフロント・オフィスの人間でいながら、当たり前のことが分かっていたか。私が「人間的にできていたから」と言いたいのは山々ですが、実はそうではありません。自分では、人を差別する感覚は全く持ち合わせていないと思っていますが、人の心の機微が分かるほど繊細な人間でもないと思っています。彼らと普通に接することができたのは、新入社員の本当の駆け出しの頃、つまり「フロント・オフィス」「バック・オフィス」といった違いさえ分からない頃に、バック・オフィスの友人に助けられたからです。

同期は私を含め12人でしたが、この12人にはバック・オフィスのスタッフの数はカウントされていません。同期入社であっても、会社の中では本来、彼らと交流することはないはずだったからです。

会社に入りたての頃の「しごき」「いじめ」に関してはこれまで書いたところです。学生気分が抜けない、基本チャラ男の私を、実社会の「現実」は容赦なく痛めつけてきます。意気揚々と出帆したものの、外洋に出た途端に暴風雨に見舞われ座礁しかかった船のようなものでした。

同期12人の中でも浮いた(沈んだ?)存在だった私ですが、そうした時に、同期入社のバック・オフィスのスタッフであったペッペッペーや直、会社では数年先輩でしたがタメ歳だったあっこちゃんといったバック・オフィスの彼らと何かのきっかけで仲良くなり、弱っている時、随分励ましてもらったものです。

お互い仕事が遅くなった時に一緒に食事したり、時には遊びに出たこともあります。シャンデリアが落ちて閉鎖になったディスコのトゥーリアに一緒に行ったことも覚えています。

彼らと話をしているうちに、バック・オフィスの仕事も随分と気苦労が多いことが分かりました。彼らの仕事は、まさに縁の下の力持ち的なものですが、アップサイドやカタルシスがあまりない、かつ失敗が許されない仕事でした。

例えば受渡し金額がわずか数ドルでもずれていた場合、NYの人間の感覚からすると「誤差のうち」。それを彼らに指摘しても”So what?”の世界です。ところが日本の投資家は、事務面でのトラブルに特にシビアで、相当文句を言われます。その神経質さたるや、なかなか説明してもご理解頂けないくらい厳しいものです。そして、顧客から文句を直接言われるのが、フロント・オフィスの営業です。

英語に”Shit flows downhill.”という言葉があります。直訳すれば「くそは川上から川下へ流れる」。いやな理不尽なことは力のある者からない者へ押しつけられる状況を言ったものです。

顧客から事務のミスできゃんきゃん怒鳴られた営業が、「お前らのミスで俺が客に文句言われたんだ」と責め立てるのは、普通にあることだと彼らバック・オフィスの友人たちから聞きました。

お互いの愚痴を聞いて、なぐさめ合った(こちらが助けられた方が全然大きかったんですけど)感じでした。そうした経験がなければ、私のような鈍感な者は気付くことなく、仕事のプレッシャーを彼ら立場の弱い者に押し付けて逃れようとすることになったかもしれません。

NYから帰って、前線で仕事をするようになっても、バック・オフィスのスタッフにはいつも助けられてばかりでした。感謝、感謝です。

(続く)


ぽちぽちっと、クリックお願いします




category: 外資系証券なるもの

2012/05/07 Mon. 05:43 [edit]   TB: 1 | CM: 1

go page top

この記事に対するコメント

フォント

いつも読んで頂きありがとうございます。

うーん、フォントの大きさはタイトルが大、本文が中です。小のフォントは「ここをクリック→」で使っていますが、本文を小のフォントで書くと文字が小さ過ぎて読みづらくなる方が多いと思われます。申し訳ありませんが、フォントの大きさの変更はちょっと難しいです。すいません。



> いつも楽しみに拝見しています。可能でしたらもう少しフォントを小さくできませんか?よろしくお願いいたします。

八田隆 #- | URL | 2012/05/09 Wed. 07:57 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/273-0b023797
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

まとめtyaiました【外資系証券なるもの (10) 「フロント・オフィスとバック・オフィス」】

外資系証券なるもの (10) 「フロント・オフィスとバック・オフィス」外資系証券では、総合職は「フロント・オフィス」、一般職は「バック・オフィス」(それを営業事務職に限定して、総務職を特に「アドミニストレーション」と区別する場合もあります)と呼ばれます。日本...

まとめwoネタ速neo | 2012/05/08 17:40

go page top