「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (132) 「税務調査のタイミング」 5/14/2012 

#検察なう (132) 「税務調査のタイミング」 5/14/2012

嘆願書を依頼していた際に、会社の元部下から「お気に障るかもしれませんが、八田さんは卑怯だと思います」で始まる長文のメールをもらったことがあります。

嘆願書を書いてくれない人のほとんどはこちらの連絡に対して無言で答えるので、こちらとしてはそうした非難でさえうれしく思えたものです。それは私に弁明のチャンスがあるからです。

彼のメッセージは以下のようなものでした。

「八田さんは長く外資系証券に勤めていましたよね。今回の税務調査の対象年度以前にも、もらっていた株式報酬があるはずです。時効にかかっていようがいまいが、そうした株式報酬に対する所得税を全て払って、なおかつ同様のことをクレディ・スイス証券の申告漏れをした職員全員に訴えて、その上で自分の無実の主張をすべきだと思います」

実に真面目な奴で、彼の主張ももっともだと思いました。

私の返答は以下のようなものでした。

「ごめん。お前の言いたいことはよく分かるけど、俺は20年以上外資系証券に勤めていても、税務申告すべき株式報酬は、税務調査対象期間のまさにその3年しかもらってなかったんだよ。

俺がクレディ・スイス証券に勤める前、14年間働いていたソロモン・ブラザーズ証券では株式報酬を職員に付与する給与プログラムではなかったし、クレディ・スイス証券に在職していた6年のうち、後半3年間で株式を受け取ったんだけど、その3年間がどんぴしゃ税務調査対象期間なんだよ。

だからお前が言うところの時効にかかっているような株式報酬もなければ、時効にかかってないけど調査対象になってない株式報酬もないんだな。

勿論、ほかの職員で税務調査対象期間以前に株式報酬をもらって、その所得税を免れている奴は沢山いるだろうけど、俺が払う必要がないのに、彼らにだけ払えって言っても説得力には欠けるだろうなあ」

残念ながら、それに対する彼からの返信はありませんでした。

国税局は、クレディ・スイス証券やほかの外資系証券会社でも私と同様の大勢の申告漏れの者がいながら、私だけを、ただ単に「クレディ・スイス証券の申告漏れの中で一番過少申告額が多かった」というだけで、一罰百戒を目的として告発しています。しかし何も私が一番給料が高かったわけではありませんし、ましてや一番悪質だということもありません。

金額に関しては、私は、たまたま税務調査対象期間の最後の年に社内政争に敗れて会社を解雇され、未払い分の株式報酬を退職金として受け取ったため、過少申告金額が大きくなったものです。もし税務調査対象期間内に退職していなければ、間違いなく私の過少申告金額は一番多いということにはならず、私が告発、起訴されることはなかったと思います。

そう考えると、税務調査のタイミングは、まさに神が私に対して「お前に、チェックイン!」と言ったかのようなものです。

これは自分の不運を恨むべきでしょうか。私はそうは思っていません。

まず私が外資系証券に勤める長年のキャリアのうちで、税務調査対象期間しか株式報酬をもらってないという恐るべき偶然も、私にはやましいところがないと胸を張って主張できるものです。もし神が私を選んだのであれば、むしろ他の者と比較しても悪質でない私を選んだのだと信じています。

私は会社に働いていた時は、会社の雇用で大きなリスクを取っていると認識していましたので、自分個人の投資に関しては極端に保守的な方針を取っていました。同じ業界にいる者の中には、金融の知識を活用して積極的な投資をする者も少なからずいましたが、私はその例ではありませんでした。私の投資といえば、価格変動性の低い商品を買い持ちしていただけ。つまり値上がり益を狙って購入し、タイミングを見て売却する様な投資を全くしていませんでした。結果、いかにずぼらな税務処理であっても、給与以外の申告すべき譲渡益が極端に少なかったのも結果としてはよかったことです。

国税局は、私が海外口座を持っていることは理解していました。私は、その口座を隠す意図が全くなかったため、日本の銀行からの送金で開設しており、銀行はその海外送金を自動的に税務署に報告しているからです。彼らが税務調査に入った際、私の過去の確定申告から、その海外口座での譲渡益の申告が全くないことから、相当強い懐疑心をもったことは想像に難くありません。

彼らは内偵段階では海外金融機関の捜査権がないため、その口座における取引の裏付けを取ることができず、私には申告すべき譲渡益が全くなかったなどとは想像できなかったに違いありません。

税務調査開始後、私は海外口座での取引履歴を全て提出して、過去に申告すべき譲渡益がなかったことを主張しました。その時点で彼らは当初の見立てと大きく違ったことを理解して、引き返す大きなチャンスだったと思いますが、結論ありきの捜査である以上、引き返すことができなかったものだと思います。

正直なところ、いかに無実であっても否認するということが賢明な選択とは言えないのが悲しい社会の実情です。私は「奇跡的に」逮捕・勾留されることはありませんでしたが、それでもここまで3年半もかかり、まだ公判には時間がかかります。その間の経済的機会損失や精神的苦痛たるや、全く割に合うものではありません。

勿論、捜査権力も私が無実の否認をするなどという「愚かな」決断をするという予想をしていなかったがゆえの無理筋の告発であり、起訴であったと思っています。

それでもここまでこれたのは、多くの人に支えられてきたためであり、それすら私を選んだ天の配剤だと思っています。

自分が冤罪と戦う立場になって、過去多くの人が冤罪と戦ってきた彼らの勇気、そしてそれを支援してきた人の善意・熱意・苦労が初めて分かりました。そして今は、知力、気力、体力、胆力そして経済力において、ほぼ冤罪と戦うべス・ポジにいる自分が選ばれてここにいるのだと思っています。

「何をうぬぼれてるんだ」と思われる人もいらっしゃるかもしれませんが、ここは大目に見て下さい。それ程、国家権力の暴力に個人で立ち向かうのは大変なことなんですよー。

引き続きご支援のほど、よろしくお願いします。

5/14/2012



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category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2012/05/13 Sun. 16:06 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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