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「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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外資系証券なるもの (12) 「ビジネスに最も重要なもの」 

外資系証券なるもの (12) 「ビジネスに最も重要なもの」

私が外資系証券に勤めていた20数年の間、直属の上司と言われる者は10人以上になります。彼らの立場は、部門長レベル、100~数100の部下を仕切る一国一城の主というポジションです。

今振り返ってみると、私がそのほとんどの期間外国債券のトレーディングという部署にいたおかげで、(ソロモン・スミス・バーニー証券と日興証券の合併直後、円のビジネスに移籍した短期間を除けば)ほぼ全ての上司が日本人ではありませんでした。

やはり上司とののりそりが合う合わないというのは重要です。私は、彼らのほとんどと馬が合い、ビジネスでも貢献でき、彼らからも色々助けられたりしたのですが、やはり合わない上司に仕えるということが2度ありました。今振り返って、自分ではむしろ意外だったのですが、この2度のタイミングで私は転職することになります(ソロモン・ブラザーズ→クレディ・スイス、クレディ・スイス→ベア―・スターンズ)。

人それぞれ、「何のために仕事をするのか」という目的意識には違いがあると思います。それは勿論一つではないでしょう。その中の一つに「上司をハッピーにして、自分も一緒にハッピーになりたい」というのがあり、自分にとっては非常に大きなウェイトを占めていたんだなと、振り返って思います。

外資系証券に20数年勤めて、2回の転職しかないというのはかなり少ない方だと思いますが、それも上司と人と人の付き合いがうまくできたせいだと思っています。

彼らとは多くの思い出があるのですが、その中でも鮮烈に覚えている一人が、ソロモン時代のトム・マヘラス(Thomas Maheras)です。彼は、入社後ジャンク・ボンド・トレーディング・デスクに所属していましたが、めきめき頭角を現わし、そのデスクを取り仕切る頃には、若手のエースとして、相当のポジションまで登りつめると将来を嘱望されていました。後にその予測は当たり、彼はシティ・グループの傘下にソロモンが入った後、証券部門のトップ(共同責任者)にまでなった人物です。

1994年当時、私が所属していたモーゲージ・トレーディング部門の業績不振により、マネージャーの更迭があり、新しくデスクのマネージャーとして着任したのが、トム・マヘラスでした。私は、新しく着任した同年代のボスに会いにNYに飛びました。

NY本社への出張は、私にとっては苦痛以外の何物でもなかったので、いつも「いつ来るんだ」とボスにせかされ、年に2~3回行けばいい方でした。NY本社の多くの人間とコネクションをもつことは、離れたアジアで日常業務を司る者にとってはまさにライフ・ラインですが、やはり現場を離れて一日中ミーティングの連続は、毎度「もー帰りたい!」と思っていたものです。

デスクのマネージャーともなると、毎日が分刻みのスケジュールです。私はマネージャーとのミーティングは、時間を決めるよりは出張でオフィスにいる3-4日の間に、彼らの手が空いた暇を見つけて「今、いい?」と言って、こちらで10分、あちらで15分というミーティングのスタイルを好んでいました。彼らはトレーディング・フロアに面したガラス張りの部屋を持っているのが常です。話の興が乗って「うーん、今からまた別のミーティングだから、4時15分にもう一回来てくれ」とマネージャーに言わせればこちらのものです。

トム・マヘラスとの最初のミーティングは、さすがにそうもいかず、秘書から朝食のミーティングをセットアップされていました。ソロモンではマネージング・ディレクターは会社のダイニング・ルームを自由に使うことができます。このMDダイニング・ルームというのは、会社のカフェテリアとは訳が違います。ニューヨークの摩天楼を眼下に臨み、マホガニーの壁に、歩くと足が沈む絨毯が敷き詰められた一フロアで、本格的な厨房を備えています。レセプションには執事風の老人もいます。彼をファースト・ネームで呼び、「勝手知ったる」で入って行く瞬間に、「俺はウォール街で成功した」という実感に浸れるものだと思います。

勿論、このMDダイニング・ルームは社内用というよりは、世界各国からの投資家が会社を見学に来た際に、朝食やランチでもてなすために贅を尽くした造りになっているものです。

一通り、日常会話的なやり取りの後の、彼とのやり取りを忘れることはありません。

彼はいきなり私に質問しました。「テリー(私のニックネームです)、君はビジネスで一番重要なのは何だと思う?」

普段のマネージャーとのミーティングでは出ることがない類の質問です。やはり彼は着任早々、自分の部下のことを知りたかったのだと思います。

私は即座に答えました。

「Integrity」

日本語にすれば「堅固な正直さ、清廉、職業的規範」といったところです。機関投資家という限られた数の投資家と長期間に亘る関係を築いたり、中国・台湾・韓国・シンガポールといった異なる文化の投資家を顧客とする場合に、一番重要なのは信用を得ることですが、その信用を得るための唯一ともいえる手段が「正直でいる」いうことだと思っています。

その答えを聞いた瞬間に、彼の中で「腑に落ちた」という感じが伝わってきました。それが彼との出会いでした。

彼は、デスクを立て直す「中興の祖」のような役割を果たし、比較的短期間でモーゲージ畑の叩き上げにマネージャーのポジションを譲って、会社の出世街道を突っ走って行きました。

どのようなビジネスのどのような局面でも、愚直とも言えるほどの正直さが実は一番強いカードになるものです。自分に正直であり、相手に正直であれば活路は見出せます。迷った場合には思い出して下さい。

(続く)




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category: 外資系証券なるもの

2012/06/25 Mon. 11:15 [edit]   TB: 1 | CM: 0

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