「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (161) 「国選弁護人の弁護報酬について考えること」 7/3/2012 

#検察なう (161) 「国選弁護人の弁護報酬について考えること」 7/3/2012

まず一番先に確認しておくことは、「全ての被疑者・被告人は、常時、弁護人から有効・効果的な弁護を受ける権利を認められている」ことです(憲法第37条第3項及び刑事訴訟法第30条)。それはどんな残虐な犯罪者であっても例外ではありません。

(先日のブログで言及した「虚偽の無罪弁護」の是非に関しては反響が大きかったので、更に議論を深めたいと思っていますが、そこでも私の意見は何びともの弁護を放棄すべきだというものではありません。)

資力に乏しい被疑者・被告人のために備えられた制度が国選弁護人制度です。国が弁護士費用を負担することで、被疑者・被告人の権利を守ろうとするものです。

6月22日発売の週刊金曜日に「刑事弁護人が抱える困難」と題した記事が掲載されていました。そこで挙げられたものの一つに、国選弁護人の弁護報酬の問題がありました。刑事弁護でも重大事件のしかも否認事件ともなれば、弁護士の時間的・経済的負担は大きくなり、時には持ち出しとなるケースも珍しくないようです。こうした弁護士が「手弁当」でも弁護に当たるという制度は、弁護士の使命感や良心に大きく依存するものです。

片や、捜査権力は湯水のように税金を使って彼らの意図する目的を達成しようとします。私が、これは「当事者対等の原則」に反するのではないかとツイッターでツイートしたところ、フォロワーの方から新聞記事のリンクを頂きました。

ここをクリック→ 西日本新聞 「罪と更生」

この記事によれば刑事事件の捜査・裁判には1人当たり2千万円の税金がかかるとされます。私も担当の弁護士に確認したところ、「そうでしょうね。警察・検察の捜査、調書の量を考えれば、それくらいになるのではないでしょうか。八田さんの事案では、億は軽く行ってると思いますよ」とのことでした。

国選弁護人の報酬は起訴後の一回結審で6万円以上、大体7万~8万円というのが相場のようです。

捜査権力の経費と弁護士報酬をダイレクトに比べるわけにはいきませんが、圧倒的な格差です。また、私選弁護人の弁護報酬と比較しても、国選弁護人の報酬は極端に低いような気がします。

弁護士には公益活動義務というものがあります。それは弁護士職務基本規定の第1章第1条及び弁護士法第1条に定められた彼らの使命が、「基本的人権の擁護」と「社会正義の実現」であり、それを現実に達成しようとするものです。

弁護士は、国選弁護をもってこの公益活動とすることができ、国選弁護制度はこうした弁護士の使命感・良心に支えられているものです。しかし、もし彼らが崇高な理念を持っていたとしても、彼らに過重な負担なく維持できる制度は重要です。彼らにプロフェッショナルとしての精一杯のパフォーマンスを期待するためには、彼らに時間的、経済的、そして精神的な余裕を与えることが必要です。

まずこの国選弁護の報酬がどのようにして決められているかを調べて驚きました。

報酬を実際に決めているのは「法テラス(日本司法支援センター)」という公的法人だということで彼らに電話をしてみました。

「すいません。国選弁護人の報酬はどのように決められているのでしょう」

「業務方法書に従って算定されています」

「その業務方法書というのはどこが作成したものでしょうか」

「法務省です」

「法テラスの監督はどこがしているのでしょうか」

「法務省の管轄になります」

検事の出向先のような法務省が国選弁護料を決めているとは、私の常識では全く理解できないものです。これで何も文句が出ないというのは、やはり弁護士というのはいい人たちなんだなと納得した次第です。

先の公益活動義務は年間に10時間以上とされていますが、負担金5万円を払えば公益活動義務に代替できるとされています。私選で十分ビジネスが成り立つ優秀な弁護士の中には、その負担金を払って国選弁護をしない人も当然いると思われます。

それに関しては人それぞれの考え方があると思いますが、私は能力の高い弁護士が私選でこそその能力を発揮できるとすることに異議を唱えるものではありません。それは歯科医の自由診療のようなものだと思っています。

私は仕事をしている頃のストレス発散方法の一つに歯科医通いがありました。私のかかりつけの歯科医は自由診療しかしない方でした。そのテンピュールの枕付きフルリクライニングの診療台に横になり、「キュイーン、チーン、ガガガガ」というドリルの振動が脳に心地よく響くと、短時間でも深い眠りにつけたものです。歯科医も最初は「八田さん、頑張って起きていて下さい」と言っていたのですが、そのうち向こうも分かったもので、私の診療の時は眠っても口が開いたままの状態にできるマウスピースをつけて加療してくれました。

彼との付き合いはかれこれ15年以上になりますが、その彼に「なぜ自由診療しかしないのですか」と尋ねたことがあります。彼の答えは「患者の方々ときちんと時間をとってベストの治療をしたいから」というものでした。私選弁護はまさにそういうものだと思っています。

そして制度上は、弘中惇一郎氏とまではいわなくても、未来の弘中惇一郎氏のような有能な弁護士でなおかつ国選弁護も厭わないやる気のある弁護士が弁護をしてくれる可能性があるものが日本の国選弁護人制度です。しかし、それは先程述べたように、弁護士の使命感や良心に大きく依存しています。

私の弁護人に少々意地悪な質問をしました、「先生は国選と私選両方していますが、国選であまりに労力を取られると、高いフィーを払っている私選のクライアントに不誠実だと思うことはないんですか」。彼女の解答は、「八田さんには悪いのですが、私は全く区別しません」というものでした。模範回答です。

私は資本主義の成長力を信じており、卓越した労働の対価に正当な評価を求めることになんら疑問をはさまないため、正直、なかなかそのような心持ちにはなれないなあ、と感じました。

しかし、例えば保釈の成功報酬を保釈金に対して一律のパーセンテージで徴収する弁護士事務所は論外としても、弁護士も霞を食って生きているわけではないので、もう少し国選弁護にも優秀な方たちが積極的に参加できる枠組みを作ることは国民全体の利益だと思います。

そのためには、7~8万円の報酬が10万になろうが20万になろうが、大した効果はありません。もっと大胆な改革が必要です。

国選弁護を弁護士全員に義務化する方法もありますが、私が弁護士なら、「おいおい、そりゃないだろー」と内心思うと思います。人間は強制されることを好まない動物です。

私が考えた案は、まず否認事件と自白事件を分けて報酬に大きく傾斜をつけます。そして公判で無罪判決が確定した場合には、報奨金を国から与えるというものです。死刑・無期懲役刑の事案では5000万円、それ以外では1000万円くらいが適当な水準ではないでしょうか(それだと何でもかんでも無罪を取りに行くのではないかという批判があるかと思いますが、現実は、真に無実でも有罪となっていることが多いものです。それこそ有罪を無罪にできるマジックをその弁護士がもっているのであれば、その技術には「あっぱれ!」とそれだけのものを払っても惜しくないと思います。刑事弁護はそんなに甘くないと思っています)。

無罪判決というのは、国家の司法の過ちを未然に防ぐ大殊勲です。この栄誉に対して、その金額は少ないということはあれ、決して多過ぎるものではないと思います。

現在、日本での刑事訴訟件数は、年間10~11万件くらいのものですが、その無罪率を0.1%とすると、約100~110件の無罪判決が1年に出ます(ここではそれが全て確定すると仮定)。その中の国選・私選の内訳は分かりませんが、それが大部分国選だとしても、10億円から数10億円と国家負担としては大した金額にはなりません。その原資は議員立法で予算として取ればいいものです。不祥事続きの検察の予算を少し削って賄うのであれば、国民の圧倒的支持は得られると思います。

それが日本がより正しい法治国家になれる対価であるなら、涙が出るほど安いものです。誰か気の利いた議員が、この問題を真剣に考えてくれるといいのにと思っています。肥大化した行政にストップをかけるのは、三権分立の鼎の一つである立法の存在意義であるはずです。

7/3/2012





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category: 刑事司法改革への道

2012/07/02 Mon. 20:35 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

二枚舌

原発訴訟団の弁護士島田宏は、「国民の常識が司法に生かされ国民の安全と基本的人権が守られる時代の到来を期待しています」 と述べたらしいですが、 本当は島田宏は、「虚偽事由で提訴したり侮辱したりすることは正当な弁護士業務」 と福井弁護士会長のときから胸を張って主張している人物です。
しかも、あろうことか 消費者庁消費者教育員の職におり詐欺撲滅をうたい文句にしてるとか。
どうして平然と国民を欺くことを言えるのでしょうか。 
詐欺の件、疑うのであれば以下の件、本人に確認下さい。

弁護士は虚偽事由で提訴する!
実態は以下のとおり酷い。
 虚偽事由で提訴(訴訟詐欺)することは正当な弁護士業務だと主張する黛千恵子(坪田)・坪田康男・八木宏らは、詐欺罪で告発受理(2014~2015)されていたようですが福井弁護士会は、反省も謝罪もせずに知らぬ振りして何らかの処置もしていないようです。
 それどころか、福井弁護士会は、「虚偽事由で提訴することは正当な弁護士業務だ」と議決して擁護(教唆・幇助)し続けているらしいです。
 被害者は、更なる侮辱や訴訟詐欺にあう事を恐れ恐怖の日々を過ごしているみたいです。
 権力を有した組織的な犯罪が放置される中で正義など通用するはずもなく、おそらくは一人ひとりと食い物にされることになるのでしょう。
人権擁護や正義などは眼中に無いようです。

#- | URL | 2016/05/27 Fri. 20:31 * edit *

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