「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

05« 2017 / 06 »07
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

冤罪ファイル その2 「袴田事件」 

冤罪ファイル その2 「袴田事件」

無論、全ての冤罪は一日でも早い解決が望まれますが、その中でも「冤罪ファイル その1」で紹介した名張毒ブドウ酒殺人事件と並んで、袴田事件の再審開始決定は急務です。

1966年8月の逮捕以来、死と背中合わせの長期拘留を強いられた袴田巌氏は、現在拘禁反応で心神喪失の状態にあると言われています。

<事件経緯>

まず、2010年5月に公開された「BOX 袴田事件 命とは」の予告編をご覧下さい。これは袴田事件を基に作られた映画です。この映画の主人公は、袴田巌氏というより、合議審の裁判官の一人、熊本典道氏だと言えます。彼は無罪の心証を持ちながら、結局多数決で袴田巌氏の死刑が決定し、その後苦悩の日々を送る事となります。

ここをクリック→ 「BOX 袴田事件 命とは」予告編

静岡県清水市、1966年6月30日未明、味噌会社の専務宅から出火し、全焼した現場から、刃物による多数の傷を受けた一家4人の死体が発見されました。焼け跡のガソリン臭から、放火であることも明らかでした。

目撃者も犯行時の物音を聞いた人もいませんでしたが、被害者宅にあった多額の現金、預金通帳、有価証券がほぼそのまま残されていたため、怨恨による犯行と考えられました。

袴田巌氏は、事件当時、この味噌会社の従業員として、線路を隔てて現場と反対側にあった味噌製造工場の2階の寮に住み込みで働いていました。

袴田氏は専務にむしろかわいがられており、恨みは何もありませんでしたが、捜査に行き詰った警察は、元プロボクサーであったことなどから袴田氏を疑いを持ちました。更に、袴田氏にアリバイがなかったこと、事件後左手中指などに負傷していたこと(実際には消火活動で負傷)などから犯人と決めつけたものです。

事件発生から4日後の7月4日には、警察は工場や寮内を捜索し、袴田氏の部屋から、見た目には血が付いている事すら分からないパジャマを押収した上、マスコミには「血染めのシャツを発見」と大々的に発表しました。そして8月18日、パジャマに彼の血液型以外の微量の血や放火に使われたものと同じガソリン混合油が付着していたとの理由によって逮捕、長時間の取調べにより袴田氏は犯行を自白します。

検察は、袴田氏を起訴。冒頭陳述では、袴田氏が、子供と一緒に暮らすアパートを借りる金銭を取る目的でパジャマを着て強盗に入ったと主張しました。検察はこの時点では、パジャマの鑑定と、パジャマで犯行を行ったとする自白を中心的な根拠としていました。

第一回公判で袴田氏は起訴事実を全面否認。以後一貫して無実を主張しています。

<裁判経緯>

地裁死刑判決(1968年) → 弁護側控訴 → 高裁控訴棄却(1976年) → 弁護側上告 → 最高裁上告棄却、死刑確定(1980年) → 弁護側、地裁に再審請求 → 地裁再審請求棄却、弁護側即時抗告(1994年) → 高裁即時抗告棄却、弁護側特別抗告(2004年) → 最高裁特別抗告棄却、弁護側第二次再審請求(2008年)

現在、第二次再審請求がなされていますが、証拠となった衣類の新たなDNA鑑定の結果が大きな影響を与えるものと思われています。

<争点>

検察の主張、裁判所の判断はつっこみどころ満載ですが、一番は、証拠となった「犯行時の5点の着衣」です。

事件の経緯で、私が、繰り返しパジャマ、パジャマと書きましたが、これが非常に重要なものです。

映画「BOX 袴田事件 命とは」でも、検察ストーリーに基づく再現ビデオのような映像があります。そこで犯人とされた袴田巌氏が次々と4人を刺していくシーンがあります。一人刺していくごとに大量の返り血を浴びていく状況が非常に印象的です。ところが、実際に発見されたパジャマは、肉眼ではほとんど見分けが付かないくらい「ちょぼ」っと血が付いた程度でした。

自白でもパジャマを着て犯行に及んだとされていましたが、状況からすると、これはむしろ袴田氏の無実の証拠になるものです。すると都合よく、事件から1年2ヶ月後に、味噌樽の中から大量の血が付いた5点の衣類が発見されました。そこで検察は、パジャマが犯行時の着衣である主張を引っ込め、この5点の衣類が犯行時の着衣であると訴因変更しました。

数々の冤罪事件で、警察・検察の捏造疑惑のある物的証拠がありますが、私は個人的に「袴田事件の5点の着衣」、「狭山事件の鴨居の万年筆」、「高知白バイ事件のスリップ痕」は三大捏造証拠だと思っています。

その5点の着衣の一つのズボンの装着実験の写真は有名です。到底履けないにもかからず、検察は味噌につかっている間に縮んだと主張します。弁護側の実験では、履けなくなるほど縮むことは確認できませんでした。

imagesCAQJIZGO.jpg

この写真を見るといつも思い出すのはO.J.シンプソンの手袋です。”They don’t fit. See? They don’t fit.”と言いながら、犯行時にしていたとされる手袋が小さすぎると主張します。それでも袴田氏のズボンに比べると、手袋は一応手にはまっています。

無題


発見された5点の着衣の中には緑色のブリーフもありました。袴田氏が緑色のブリーフを持っていたことは皆が知っていました。そして彼は緑色のブリーフを1枚しか持っていませんでした。しかし、袴田氏のたった一つしかない緑色のブリーフは、事件後袴田氏の兄が保管していました。裁判所は兄が嘘をついていると決めつけました。

更に、麻袋に入って1年2ヶ月も味噌の中に漬け込まれていたにもかかわらず、シャツやステテコは元の色が白とはっきり分かる程度にうっすらと味噌の色に染まっている程度で、大量についた血痕も見るからに赤みを保っていました。弁護側の味噌漬け実験では、発見された着衣の染色状況はわずか数日のものでした。そして1年2ヶ月も漬け込んだ後には、元の色や血痕の判別が付かない程変色してしまいました。

ほかにもつじつまが合わないことは山ほどあります。

逃走経路とされる裏木戸の疑惑に関してはこちらの動画をご覧下さい。

ここをクリック→ 裏木戸の疑惑

凶器とされるくり小刀(木工用の刃渡り12cmのちゃちな刃物)も人体に40ヶ所以上の深い刺し傷を作るには、丈夫ではなく、傷の深さや刃の幅も合わない傷があることが弁護側により示されています。

<論評>

これまでの状況証拠でも冤罪は明らかだと思われる袴田事件ですが、現在まで再審の扉は開かれていません。

再審開始決定にはこれまで二つのパターンがあります。一つは検察が隠していた手持ちの証拠の開示(布川事件等)で、もう一つはDNA鑑定(東電OL殺人事件です。

後者に関しては、アメリカでのイノセンス・プロジェクトにもあるように、冤罪解決の大きなトレンドです。

ここをクリック→ #検察なう (146) 「イノセンス・プロジェクト & FREE GOVINDA !」

裁判経緯のところでも述べたように、袴田事件においてもDNA鑑定が重要になりそうです。警察の捏造と疑われている5点の着衣の返り血及び、犯行時にけがをしたとされる袴田氏の血液のDNA鑑定が昨年夏に行われています。

そしてその結果が昨年末に発表されています。結果は?

静岡地裁は、弁護団と検察双方に鑑定人の推薦を依頼し、両者推薦の各1名ずつの民間DNA専門家に鑑定を依嘱しました。

結果は、弁護団推薦の鑑定人の鑑定は着衣の血液と被害者の血液のDNAは「同一人由来であるものを認めることは困難である」としました。それに対し、検察推薦の鑑定人は、弁護団推薦の鑑定人が行った高精度の鑑定(STR法)に失敗した上で、精度の低い鑑定(ミトコンドリアDNA法)を行い「一部試料については同一人物に由来する可能性を排除できない」としました。

これだけ明らかな結果が出ていながら、報道では「見解が分かれた」「両鑑定の結論が真っ向から対立」とされました。

第二次再審請求に対しての裁判所の判断が待たれます。

最後に、袴田巌氏の獄中日記から彼の言葉を引用します。

「息子よ、どうか直ぐ清く勇気ある人間に育つように。
 
すべて恐れることはない、そして、お前の友だちからお前のお父さんはどうしているのだと聞かれたら、こう答えるが良い。
 
僕の父は不当な鉄鎖と対決しているのだ。古く野蛮な思惑を押し通そうとする、この時代を象徴する古ぼけた鉄鎖と対決しながら、たくさんの悪魔が死んでいった、その場所で(正義の偉大さを具現しながら)不当の鉄鎖を打ち砕く時まで闘うのだ。
 
息子よ、お前が正しい事に力を注ぎ、苦労の多く冷たい社会を反面教師として生きていれば、遠くない将来にきっとチャンは、懐かしいお前の所に健康な姿で帰っていくであろう。
 
そして必ず証明してあげよう。お前のチャンは決して人を殺していないし、一番それをよく知っているのが警察であって、一番申し訳なく思っているのが裁判官であることを。
 
チャンはこの鉄鎖を断ち切ってお前のいる所に帰っていくよ。」

同じく息子を持つ父として、また同じく冤罪と戦う者として袴田巌氏を応援したいと思います。

FREE HAKAMADA!










ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 冤罪ファイル

2012/08/07 Tue. 06:22 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/358-0719b62f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top