「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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上申書 (20/60) ジョワ由紀 

上申書 (20/60) ジョワ由紀

裁判所に提出する目的で、私の知人・友人に「あなたが裁判員になったとしたら」という観点で上申書を書いてもらうことを依頼しました。1ヶ月で60通の上申書が集まりました。ところが上申書の裁判所提出は検察の不同意で阻まれ、それはかないませんでした。彼らの正義を希求する声を無駄にしないために、本人の了承を得た上でブログでの実名公開に踏み切ります。

ここをクリック→ #検察なう (183) 「上申書に関して」

「意志あるところに道は通ず "Where there is a will, there is a way."」という言葉は私の信ずるところです。しかし、収入に関しては、全く逆の、私ながらの哲学というかジンクスがあります。それは、「意識した目標には到達することはない」というものです。

例えば、会社同僚で30億円のボーナスをもらったという者がいて、それをうらやましいとか、どうしたら自分もそのレベルに到達できるのだろうと思った時点で、そのレベルには到底辿り着くことがない、ということを私は知っています。「意識する」というのは、「意識的に意識しない」という状態も含むのがポイントです。

今回紹介するのは、私の25年来の友人からの上申書ですが、私が社会人になりたての頃の「1億円トレーダー」の夢ということが書かれています。自分ではこの上申書を読むまで全くそうしたことは忘れていたのですが、忘れていてよかったなと思います。先のジンクスに従えば、もし覚えていれば、それを実現することはなかったかもしれないからです。

それは自分では納得できるものです。もし「1億円トレーダー」の夢にこだわっていたならば、私が最初に就職していたソロモン・ブラザーズ証券に、14年間も在籍していなかったはずだからです。

ソロモン・ブラザーズ証券は外資系証券ですが、東京オフィスの新卒入社組の給与体系は(後述するプロプラエタリー・トレーディング・デスクを除き)年功序列的なところがあり、私がソロモン・ブラザーズ証券に在籍していた時には、年収が1億を越えることはありませんでした。しかし、当時、それを望めば簡単に手に入ることは知っていました。他社に移籍さえすれば、年収は2倍から3倍になることを私は知ってたからです。そして、ソロモン・ブラザーズ証券に在籍していた14年の間には、「1億円トレーダー」の夢を持っていたことさえ忘れていました。

結局、会社が日興証券と合併したことがきっかけで、日本の企業風土になじまないものを感じた私はソロモン・ブラザーズ証券を離れることになりました。クレディ・スイス証券での年収は、入社時の契約こそソロモン・ブラザーズ証券での1.5倍でしたが、実際のパフォーマンスが反映した2年目には既に2倍を越え、最終的には私の年収をソロモン・ブラザーズ証券退職時の4倍以上にしました。

外資系証券の世界は、会社の浮沈も激しく、クレディ・スイス証券移籍以前、ソロモン・ブラザーズ証券在籍時に私に高額の移籍料を提示した会社は、早々と東京市場から撤退していったものです。それゆえ、「1億円トレーダー」の夢を実現できたのも、その夢を忘れていたためなのではないかと思います。

そこまで達観できたことには、実は複雑な事情があります。ここではその話をさせてもらえればと思います。

私のソロモン・ブラザーズ証券、クレディ・スイス証券での職種はトレーダーという、商品(米国モーゲージ証券)の在庫管理と値付けをする仕事でした。

このトレーダーには、2つの種類あります。私は、顧客の注文に対して値付けをする「カスタマー・トレーダー」でしたが、会社の資本を運用・投資して稼ぐ「プロプラエタリ―(自己勘定取引)・トレーダー」もいます。後者の「プロップ・トレーダ―」は、完全出来高制の給与体系で、業界の中でも特に高給取りというのが常識です。同期にもそうしたプロップ・トレーダ―がいて、うらやましいと思うこともありました。

ソロモン・ブラザーズ証券でのプロップ・トレーディング・デスク(ソロモンでは「アービトラージ・デスク」と呼ばれていました)の総ヘッドは、金融の人間なら知らない人はいない、後にヘッジ・ファンドのLTCM(ロング・ターム・キャピタル・マネージメント)を創立したジョン・メリウェザーでした。

ここをクリック→ ジョン・メリウェザー Wikipedia

NYのモーゲージ・アービトラージ・デスクの中に、私が苦手としている人間がいました。私が新人の時に、仕事以外のことで他人の面前でけなされるちょっとした出来事があり、それ以来苦手意識を持っていました。冒頭のボーナス30億円の話は単なる例え話ではなく、彼のことを言っています。ある年に、彼のボーナスが当時の日本円で30億円を越える金額ということが報道され、あまり気分がよくなかったことを覚えています。私が入社してまだ4-5年とか、それくらいの頃だったと思います。

それから随分時間が経ち、彼のことなど忘れていたのですが、久しぶりにソロモンの同僚のアメリカ人から彼の名前を聞くことがありました。

「フィッシュ(A. フィッシャーという名前の彼のニックネームです)知ってる?」

「勿論」

「どうなったかは?」

「知らないね」

「彼が運転するクルーザーで事故にあって、自分の息子が死んで、彼は片腕失ったんだよ」

それを聞いた時、本当に震撼しました。確か酔って運転していての事故だったと思いますが、自分の過ちで自分の息子を失う痛み。そして、自分も片腕を失って、その不自由さにより自分の息子を失ったことの記憶から逃れることができない辛さ。想像するだけで怖ろしくなりました。

下卑た言い方をすれば、「人間の幸せって金じゃ買えないんだな」と思ったものです。年間30億円のボーナスをもらおうが、そんなことは何の意味もないということが身に沁みて感じられました。

私の好きな言葉に、チャップリンの「人生には夢と希望と少しのお金があればいい」というものがあります。お金は全くないのは困りものですが、あり過ぎても困るということなのだと思います。「少しの」というところがミソです。そしてこの言葉は、彼が成功してからの言葉であることがなかなか深いなあと思わせるところです。

既に4年もこの問題にかかずらっています。その間に得た内定も告発の報道で取り消され、今後も金融の世界では事実上再就職の道を絶たれたことは、経済的には相当のダメージなのでしょうが、それ以上の「プライスレス」なものを得ているような気がします。嘆願書や上申書はそれを確認させてくれます。ソロモン・ブラザーズ証券を14年間離れることがなかった自分だから納得できることです。

「上申書

私は八田隆氏とは、1986年に彼が就職活動中に採用を通して知り合いました。当時私が企業の採用担当で、彼が大学生として説明会にやってきたのがきっかけです。残念ながら、私が勤めていた企業ではなく、ソロモンブラザースに入社されましたが、その後数年間はスキーに出かけたりおつき合いさせて頂きました。私が日本を離れる事になった1998年頃までは、全く会わない年もありましたが、会えば「よお、元気か?」と昔と変わらない良い友人関係を築いてきました。

その後、私は海外に出て10年ほど全く音信不通でしたが、3年ほど前に久しぶりに連絡を取る事ができ、その時は「査察が入ってね」という話を伺い、私も楽天的な人間なので「高額納税者は大変だね、狙われちゃって」という程度に聞き流していました。たまたま日本に帰国していた時、2010年の2月でしたか私の友人で彼を知る人が「テレビを見たか?(八田氏が)告発されたぞ。しかも実名報道されて」と教えてくれ、本当に驚いたのは今も記憶しています。

告発された事で八田氏もカナダから帰国して、本当に久しぶりの再会の中、査察から告発に至るまでを本人から聞く事になりました。一通り説明をした後、彼に「俺が(脱税を)やったと思うか」と質問されました。

その時は正直に「暫く会ってないし、私には判断できない、わからない」という旨の返事をしました。査察がどういうものなのか、私には映画「マルサの女」程度しか知識がありませんでしたし、国税が査察をして告発という以上、なにか疑惑があるからだろうとも思いましたし、一方で、でもそんな脱税のような手のかかる面倒な事を彼がやるかなあ?というのが本音でした。

その後、自分なりに国税とは検察とは、様々なケースを調べて読んでみました。意識して客観的に八田氏の事も判断するように考えました。脱税とは何か?を曖昧にしか知らなかった私なので、税金をきちんと納めなかった=脱税と考えていたくらいです。今では、それは単なる「過少申告」であり、脱税の要件は「故意である事」であると理解しました。実際、周りの人たちにも話してみると意外に「脱税」についてきちんと知る人は少ないように思います。

脱税が「偽りその他不正な行為により納税を免れる行為」であり、申告漏れは「計算間違いや所得を得ていた事を知らなかったり、所得が申告すべきものであると知らずに放置し」云々とあります。

とにかく、好きな事興味のある事には時間もお金も惜しまないで突進する、そのための努力も惜しみません。現在はワインとゴルフがその対象のようですが、ワインに関しても相当の知識があるようですし、ゴルフへの執着にもゴルフを嗜む者として、笑いを抑えられない事があります。

反面「興味のない事」に対する無関心さにも、一般の人には理解しがたいものがあります。長年の知り合いとして、昔話も出ますけれどもすぽんと記憶が抜けている期間や、事柄があり、これも「彼だからそんなものだろう」と理解している私ですら、驚いて言葉に詰まる事もあります。一つの細かな事象を忘れる事は人間よくあることですが、彼の場合は「その対象全て」を忘れる事がままあります。後から考えると「その対象全て」に興味がなかったのだろうと。

例えば、彼は私の亡妹とも何度も面識があるのですが、名前を覚えない。これには妹も呆れて「いい加減名前覚えてよ」と憤慨していました。妹の家族である私の義弟や甥ともスキー旅行をしたり、義弟とは八田氏も二人きりでスキーにも出ているのですが、義弟の事がその後話題に上がっても「名前、なんだったっけ?」。この人は本当に記憶障害があるのでは?と思った事も何度かあります。旅行に出て、何を食べたか、いつ行ったか程度を忘れる事は人間、それぞれありますが「え?(妹の)家族でスキー行ったっけ?」とか、その「事柄そのもの」がすっぽり抜けるというのには、呆れるのを通り越して、とぼけているのでは?と、詳細を思い出させるように話すと、時には「あー、そう言えば…」と思い出すような、それでも大概「いや、忘れた」。

違うのです、八田氏の場合は「忘れた」のではなく、興味のない事柄には最初から「記憶に残す」術がないのだろうと思います。恐らくは彼の脳内でははっきりと「興味のある」部分と「興味のない」部分に別れて、行動一つ一つがその都度、選別されているのではないでしょうか。

ソロモンブラザースに入社直後に「1億円トレーダーになりたい」と言っていた事があります。恐らくは彼の目標がラフに「1億円」であって、超えたその後はその事柄に対する興味がなくなったのではないでしょうか。その頃には、金額よりも仕事そのものが「自分の最大の興味」だったのだろうと推測します。「年収」がその時点で「興味のない」部分に分けられてしまったのでしょう。

6月に第三回目公判を傍聴しました。彼の性格云々を別にしても、あまりに無理のある裁判ではないだろうか、というのが率直な気持ちです。

一つの会社から多くの社員に申告漏れが発覚し、そうなる経緯として会社の指導が十分であったのかという点には大きな疑問があります。私自身が長年外資系の人事に在籍していたため、尚更に、会社に責任はなく、全ては個人の責任であるという主張には納得がいかないものでした。

これまで彼のブログも精読してきましたが、検察は『合理的な疑いを越える』だけの立証をしていないと思われます。前述した通り、私なりに八田氏が告発されてから、脱税についてのケースを調べましたが、脱税を立証するために必要な「故意である」事実が見当たりません。

告発からこれまでの3回の公判を通しても、見えてくるのは「会社で多くの申告漏れが出た」「その中でその年に一番所得の多かった人間が告発された」つまり、これほど多くの社員が申告漏れしている会社で、誰も脱税者としてあげないのは、国税局としてまずいのではないか?そのために、一番所得が多い人間を見せしめとして上げておけば、とりあえず世間には収まりがつくだろう、そんな見方をする私は特別でしょうか?

そうは思いません。恐らく、この事件の詳細をきちんと知った人の、その全ては私と同じ結論に至ると思います。この事件が「裁判員裁判」であったならば、つまり私と同じような一般の常識を持ち、一般の目で見て、一般の頭で考えたら、八田氏の無罪は火を見るより明らかです。

彼は既に「年」単位での時間を無駄にしています。決まりかけた仕事も、告発された後という事で断られたとも聞いています。この公判の間も勿論無職です。一方で彼を応援していると、冤罪と戦う事が、彼にとって「一番の興味事項」になっている事にも気づきます。この「冤罪」は彼自身の件だけではありません。実に様々な冤罪事件を調べ、顔を出し、真摯に他の冤罪事件と戦う方々を応援しています。そう考えると彼の時間は社会的には「無駄」ではないのかもしれません。

それでも、明らかに無罪である人間の一分一秒を大切にしていただきたく、ここに上申書を認めます。

ジョワ由紀」

ここをクリック→ ジョワ由紀上申書












ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





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category: 上申書

2012/09/20 Thu. 07:24 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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