「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (194) 「あなたのもやもや解消させて頂きます」 10/4/2012 

#検察なう (194) 「あなたのもやもや解消させて頂きます」 10/4/2012


(強制捜査から1388日)

先日のブログに関し、友人からコメントをもらいました。以下のものです。

「クレディ・スイス証券の給与体系が複雑であったことは、田中周紀著『国税記者・実録マルサの世界』にも簡単に書かれている。(211頁および213頁参照)

八田氏が在籍した当時のクレディ・スイス証券の給与体系が、いかに日本国の納税者にとって面倒くさいものだったかは、八田氏のブログに掲載された松本直久氏の「嘆願書」(32/146)からも分かるはずである。

私の場合、事件の当事者である八田隆氏自身から「ざっくり言って、こうしてこうなってこういう具合の給与プログラムになってたの」と説明してもらったので、その複雑さはよくわかっているつもりである。

それでも、公判を傍聴された方の中には、検察の人の連発する「ほんとですかぁ~?」にひきずられて、何か「モヤッ」とした人もいるかも知れない。

つまり、八田氏は本当に嘘をついているのではないか、クレディスイスの社員だった当時、八田氏は自分のもらう株式数や実際に懐に入る金額を正確に把握していながら申告時に隠していたのではないか、と疑ってしまった方もいるだろうと思われる。

そんな方々は、この記事のリンク先である「ゆるゆるマニラ生活」のブロガーの書かれた記事を、是非お読みいただきたい。

もしも貴方の給料がそんな具合に支給されたとしたら、貴方も、たぶん「それで自分の給料を計算して正確に納税しろっての? 無理だよ!」と叫びたくなるに違いない。…

振り返って現在だから分かることだが、「クレディスイス証券会社集団申告漏れ事件」は、ある意味、起こるべくして起きた事件だったのである。 」

このコメントの中で「記事のリンク先」と示された、先日のブログで紹介の第六回公判傍聴記追記を再掲します。

ここをクリック→ ゆるゆるマニラ生活 「公判の追記 - クレディ・スイス集団申告漏れ事件」

多分、これでも株式報酬がどのようにして支払われていたか分からない人は分からないかと思います。それが分からないこと自体が私のポイントなのですが(分からないから、もらったものがそのまま正しい金額だと思い込んでた)、それでも「なんかなあ。すっきりしないなあ」と思われる方のために、もう少し噛み砕いて説明させてもらいます。

多分、皆さんの常識(普通の日本のサラリーマンの方々が賞与を受け取る状況)と私の状況が著しく異なるため、理解が難しいのだと思います。

皆さんがボーナスを受け取るときは、どのようにして受け取るでしょうか。今どき、手渡しで封筒が立ったとか立たないとかそういうことはないでしょうから、銀行振込だと思います。そして金額は賞与明細のようなものを会社から受け取って知るということになると思います。勿論、賞与明細を受け取らずとも、毎年似たようなものだから、大体の金額の想像はつくということもあると思われます。

そういう状況を前提にすれば、実際の入金が税引前か税引後か、「そりゃ分からんってのはおかしいよな」と思われるのではないでしょうか。

初級者忍者が成長する木を飛び越えていくように(なんじゃそりゃ)、いくつかステップを経てご説明させて頂きます。

まず賞与明細です。そこには税引前と税引後の金額が書かれていませんか。例えば「(税引前)500万円、(税引後)400万円」(税引前と税引後の給与を示す用語が分からないので、ダイレクトに書かせて頂きます)といったようにです。

その明細を受け取りながら、入金が500万円であれば、少なからずの人が「ん?多いな。おかしい」となります。

それでは、賞与明細に「500万円 (但し、会社は源泉徴収するものではない)」と記載されており、500万円の入金があればどのようなリアクションになるでしょうか。

あなたは、ボーナスは必ず源泉徴収され、給与天引きの金額が振り込まれると「思い込んで」います。それがあなたの常識のはずですが、それは誰かがそうだと教えてくれたからですか?サラリーマンを長くやってきて、常にそうだったからという状況でできたあなたの「思い込み」ではないですか?

日本語で「源泉徴収するものではない」と書かれていれば、何人かの人は「ん?なんじゃこりゃ。よー分からんから経理部(あるいは同僚、あるいは税理士)に確認しよう」となります。少なくともその状況で、いきなり「へー、賞与は自分で申告して税金を払わないといけないんだあ。会社からの給与の所得税は給与天引きって思いこんでた俺が無知だったんだな」とはならないはずです。また、中には給与に関する所得税は「天引き!」と思い込みが強い人で、全く気付かず、500万円がそのまま自分の手取りだと思ってしまった人もいるはずです。そう思ったあなた、あなたはここで脱落です。過少申告へようこそ。

次のステップです。

日本の会社に勤めていれば、給与明細、賞与明細は日本語で記載されているのが当たり前です。ある時、突然英語の賞与明細が届けばびっくりしますが、ここでは仮に、会社のコスト削減で、日本より労働力の安いタイやインドネシアに給与明細作成をアウトソーシングしたと想像して下さい。つまり英語の賞与明細が来てもびっくりしない状況を想定して下さい。

そして、その状況で「5,000,000 yen (Please note that whilst there are no employer individual tax reporting or withholding requirements, we will in all likelihood be asked by the Japanese tax authorities for details of this payment at some point in the future. In such an event, we provide the information contained in this memorandum to them without further communication to you on this matter.)」と英文で書かれた賞与明細を受け取ったとしたらどうでしょう。

前提を確認です。あなたは賞与の所得税は必ず給与天引きされると「思い込んで」います。金額だけパッと見て、「ふーん、今年のボーナスは500万か。そんなもんなのかな」と思って、あとの英文を「なんじゃ、こりゃしち面倒な。こんなもん読むわけねーじゃん」となったあなた、あなたはここで脱落です。過少申告へようこそ。

この状況は大分、私のものに近いのですが、「ん?これだと読んだ読まない、あるいは読んでも理解した理解しないの水掛け論になるから、あれじゃねーの、推定無罪っていうんだっけ。じゃなくて、毎年400万円なんだから、今年もどーせ400万円で、500万円振り込まれたらおかしいとか、事前に何らかの方法で400万円が手取りって分かってたでしょってストーリーの方が有罪に持ち込みやすいんじゃないの」と思われた方、鋭いです。

そんなことは検察は百も承知です。ところが、「事前に入金額を予測する」ということがほぼ不可能なので、仕方なくこの文書を読んだ読まない、理解した理解しないにこだわっているわけです。

なぜ事前に入金額の予測が不可能であったか、それは株式報酬に関わる給与プログラムが複雑だからです。

「あ、またその複雑とか言って。ど―複雑か、よく分かんないけど、実は複雑じゃなかったりするんじゃないの?」

疑い深いなあ。じゃ説明しますよ。ちゃんと理解して下さいね。

株式報酬の「金額」は、年初の年棒更改の際に、言い渡される報酬金額の内訳に含まれています。

私は、報酬金額の総額が会社の自分に対する評価であり、相当気に掛けていました(当然です)。しかし、その報酬が、いつどのようなタイミングで(その年、あるいは将来のいつかの時点、あるいは退職時)とか、どのような形で(現金なのか株式なのか)は気にしていなかったものです。

しかし仮に、株式の受取金額を何らかの理由で非常に気になったとします。例えば、ある年の年棒の内訳の株式報酬の金額が200万円だったとします。これがその年に払われるのであれば、税率が20%として、160万円が手取りということがこの時点で予測できて、払い込みの時点(これはこの言い渡しから大体半年後)で覚えているということもあるかもしれません(私はこのレベルで脱落ですが)。

「あー、半年前の年棒更改のミーティングで、総額を言われたけれど、そのうちの株式が200万円って言ってたから、160万円の振り込みなんだろうな.......げげっ、200万円振り込まれてるよ、なんじゃこりゃ?!」ということもありうるかもということです。

実際はそんなシンプルではありません。

200万円というのは金額ですが、まずその時点の株価で割って、割り当ての株式数を計算します。例えば1株10万円だとすると、20株ということになるのですが、受渡しはこの20株ということになりますから、株価が変動すれば、当然受渡しの金額も変わります。

なーんか徐々に難しくなってきましたね。ここからが問題です。

その20株はその年にもらえると思ったら大間違い、将来のある時点でもらえます。

「ある時点っていつよ」

「うーん、それに簡単にお答えできればいいんですがね。場合によっては翌年に全株、場合によっては翌年から1/3ずつ3年間に亘って、場合によっては3年後から1/3ずつ3年間に亘ってですかね」

「は?それってどうしたら分かるの?」

「はい、これを読んで下さい」 ドサッ (と英文数10ページの給与プログラムを渡される。そしてこの給与プログラムは毎年変更され、異なるタイミングで株式が受け渡されることになる)

これが給与プログラムが複雑という理由です。実は、私は在職時はこうした「複雑である」ことすら知らず、私が知っていたのは「株式は将来のいつかの時点でもらえる」ということだけでした。在職時は、ある受け取りのタイミングでいくらもらえるかを予想する努力を全く放棄していました。もし仮に在職当時、これほど給与プログラムが複雑だということを理解しても、結果は同じだったと思います。

「ちょー、めんどくさ!ま、もらったらもらっただけということでいいや。別に事前に分かったところで何も変わらんし」ということになったはずです。

どうでしょうか。少しすっきりしたでしょうか。

それから、傍聴した方のほかのもやもやに「故意の認定が、当局と弁護側で違うんじゃないのか。実際には見てない、というのが、見た可能性もあるということで押し切られるのではないか。例えば、文書を開封したとか、押印をしたという事実があれば、それだけでその文書を見て理解したということになるのではないか」ということも指摘されました。

ごもっともです。ところが、この事実認定のハードルは、(本来あるべきは)そこまで低くありません。

その事実認定のハードルが民事と刑事では随分違うということはご存じないかもしれません(私は知らなかったので)。

例えば民事において、契約書に押印したという場合は、その契約内容を理解したとされます。ところが、刑事ではそのハードルはぐんと上がって、押印の事実は「見た」「理解した」ということに関わる強い間接事実ですが、イコールではありません。

犯罪の類型によっては故意、過失が問われないものもあります。例えば道路交通法などはいい例です。赤信号を突っ切ってつかまったとして、「いや、無視したんじゃない、脇見して見てなかったんだ。だから故意じゃない」と言っても通用しないということです。

ところが、脱税の場合には故意が要件です。過失の場合には単なる過少申告で、修正申告で済む話です。そしてその故意の認定のハードルは、「開封した」とか「押印した」とかだけでは越えられないものです。

それを越えるのが推定有罪ですが、先ほど括弧書きで(本来あるべき)としたのは、日本の司法の現状を見る限り、推定有罪の可能性が全くないとは言えないからです。

私の被告人質問で、検事が「本当ですか~?」を繰り返すのも、推定有罪を裁判所に追認してもらおうとするパフォーマンスです。もし、本当でないとする根拠があるのであれば、その根拠を示して、私をギャフンと言わせるべきです。

それができないからこそ「本当ですか~?」と言って、聞いている者の「ん?本当じゃないのか?」という気持ちが起こることを期待しているだけです。

ただ私も分からないのが、もしかしたらそれが検察と裁判所の間の符牒であって、現場の人間には私が感じたほど違和感がないのかもしれません。

調書にもそういう符牒があります。

検察が作る検面調書は一般に、検事が被疑者に成り代わって一人称で書かれます。検事が「私は~です。~しました」とあたかも被疑者本人のように書きます。第三者として書くよりも、受け手の印象としてその方が信憑性があるからです。

それ自身客観的ではなく不自然なのですが、更に不自然なのが、ここぞというポイントで突然、調書が問答形式に切り替わります。

検事 「あなたは知っていたのではないのですか」
被疑者 「いいえ、知りませんでした」

という具合にです。これは「裁判官、ここが検察が怪しいと思ってるポイントですよ」という符牒です。

私の検面調書も最初、そのように一人称+問答形式で作成されましたが、執拗に抗議した結果、全てが問答形式になりました(この辺りの経緯については検察取調べ時のブログをご参照下さい)。

こちらが「その怪しいと思っていることを強調するかのように形式を変えるのをやめてくれませんか」という抗議に、「どうして検察が怪しいと思っている部分を裁判官に強調することがいけないんだ」と検事に開き直られた時には、どうしようかと思ったものです。結局、こちらの不退転の抗議に向こうが折れることになりましたが。

こうしたことがあるので、私の常識が通じない世界だということも理解しています。

それでも真実は一つしかありません。頑張っています。引き続き応援お願いします。

10/4/2012







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category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2012/10/04 Thu. 08:56 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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