「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (207) 「第七回公判 弁護側主尋問ダイジェスト」 10/30/2012 

#検察なう (207) 「第七回公判 弁護側主尋問ダイジェスト」 10/30/2012

(強制捜査から1414日)

裁判の傍聴に来れなかった方のために、弁護側主尋問のダイジェストをお届けします。

***

弁 「前回、検察官から、査察部による調査が開始した時点で刑事事件になることは分かっていたでしょう、と詰められていましたね。あなたが刑事事件対応を弁護士に依頼したのはいつですか」

私 「告発された後です」

弁 「どうして、告発されるまで弁護士に依頼しなかったのですか」

私 「弁護士を頼みにするという発想は、最初は全くありませんでした。それは、当時、国税局査察部がシロであってもクロにするという行動原理に基づいているということを理解していなかったからです」

***

弁 「もし査察部の調査が入った段階で刑事事件となることが分かっていたらどうしていましたか」

私 「告発されることを待つことなく、ただちに弁護士を雇ったと思いますし、査察部の取調べでも、調書が裁判の証拠になりうることを意識して、彼らの作文には目をつぶることなく、徹底的に修正を求めたと思います」

***

弁 「平成17年、18年、19年の3年間に3億円強の株式報酬の申告漏れがあったわけですが、申告漏れの金額がそのような金額に上るということはいつ認識したのですか」

私 「税理士から連絡をもらい、国税局がそうした主張をしていると聞いた時です」

弁 (11月20日送信メールを示す)「これがその時のメールですか」

私 「はい」

弁 「 要するに、11月5日に税務調査が開始したのに、11月20日になるまで申告漏れの金額が3億円くらいに上るという大雑把な認識すらできていなかったということですか」

私 「はい」

弁 「どうして申告漏れの金額について、概算程度のイメージすら正しくもてなかったのでしょうか」

私 「株式報酬をいついくらもらったということの関心が低く、税理士から伝えられるまでは概算のイメージすらまともに認識していなかったものです」

***

弁 「 査察部による調査は平成20年12月16日の強制調査から平成22年2月19日の告発まで1年2ヶ月に及びましたね」

私 「はい」

***

弁 (2009年4月18日送信メールを示す)「 累計するとこの時点でも約100時間に及ぶ長時間の取調べを受けたことになるようですが、それだけ長時間取調べを行った担当査察官は、あなたが故意で申告漏れをしたのかどうか真実にたどりついていませんでしたか」

私 「はい。私に故意がなかったことは担当の査察官の方々は十分分かっていたと思います。私を担当した査察官はxx査察官とxx査察官のお二方でした。

xx査察官には一度ならず幾度か「こういう場でお会いするのでなければ、もう少しお近づきになれるのに」と言われました。また、xx査察官には、このメールの下から8行目にあるように「「上司が『お前はだまされてるんだ』と納得しないんです」と言われました。その意味するところは、彼は、私に故意がないことを上司に説明してくれたのでしょうが、その上司が納得しないということだと思います。

私は強硬にその上司の方と会わせてほしいと要求し、xx統括官との面談が実現したのはその半年後のことでした」

***

弁 「結局10月21日に国税局に赴いて修正申告しましたね」

私 「はい」

弁 「修正申告の内容については納得していたのですか」

私 「いいえ。税理士は、退職後にもらった株式報酬については退職所得に当たるという見解でしたので、私も納得したわけではありませんでした。しかしその時に査察官に言われたのが「この数字に従うのが八田さんのためです」という言葉で、私は、従わなければ告発するという脅しだと理解しましたので、査察部が提示した数字通りに修正申告に応じさせて頂きました」

弁 「あなたのためになりましたか」

私 「いいえ。結局告発されましたので、その査察官の言葉は、人の弱みにつけ込んで、退職所得であるとの主張ができないように人を騙すためのものであったと今では理解しています」

弁 (2009年10月29日送信メールを示す)「これは、あなたが査察官に申し入れていた上司との面談が実現して、その報告を行ったものですね」

私 「はい」

弁 「6行目に、面談した部門統括官の言葉に関して、「『私たちの仕事は告発することです。』とおっしゃられ、『証拠が出てきていません。それが長引いている理由です。』と、ある意味非常に正直な対応でした。」とありますが、実際に統括官から言われた言葉はどういうものでしたか」

私 「その記載通りの言葉を言われました」

弁 「下から8行目に「私が、『シロをクロにするテクニックがどのようなものか楽しみにしています』と言うと笑っていらっしゃいました。」とありますが、どうしてこのような挑発的な発言をしたのですか」

私 「その面談でもxx統括官は自ら「証拠はない」とおっしゃっていたので、まさかさすがに証拠がないものを告発することはないだろうと思っていたということと、自分が何も悪いことをしていないのに狡猾にへりくだって告発しないで下さいと哀願することが性格的にできなかったことが重なって出た失言です。今では、証拠があろうとなかろうと捜査権力は何でもできると理解していますので、その発言を後悔しています」

弁 「その後、平成22年2月19日に告発されてしまいましたね」

私 「はい」

***

弁 (2010年2月24日送信メールを示す)「最後に、「やはり身柄拘束されるリスクは取れないという前提で、これからの対策を講じる必要があると思いますが、いかがでしょうか。」とありますが、どういう心境でこのような質問をしたのですか」

私 「告発されるまでは、まさか告発されるとは思っておらず、ましてや逮捕される可能性など全く認識していませんでした。そのため私は就職活動を始め、アメリカの証券会社の香港支店で再就職が決まり、2月中には香港に移って、3月から勤務する予定となっていました。

しかし、告発の後、報道関係者やヤメ検の弁護士など検察の実態をよく知る方々から異口同音に、無実であっても否認すれば確実に逮捕され、裁判も長期化し、否認を「反省していない」と取られて刑罰も重くなる、いわゆる「人質司法」ということを聞きました。就職が内定していたことから、逮捕のリスクは取れないと考え、真実には反しても争わないで裁判も短期間で終わらせるべくダメージコントロールした方がいいのではないかと一瞬迷いがありました」

弁 「どうして否認を貫くことにしたのですか」

私 「親しい友人の一人が、否認すれば確実に逮捕される、逮捕されることは子供のために絶対避けた方がいいと、私のことを思って虚偽の自白を勧めてくれました。そのような友人からの真摯な勧めを聞くことで、かえってふっきれ、検察の好き勝手にさせてたまるかという気持ちと、やはりやってもいないものをやったとはいえないということから、否認を貫くことにしました。友人の助言には逆らうようですが、私は逮捕されても真実を貫く方が子供のためになると考えました」

弁 「 逮捕のリスクは覚悟しましたか」

私 「当然覚悟しました。小松先生には、逮捕された時の連絡先リストを渡していましたし、イメージトレーニングとして東京拘置所関係の本も読みました。取調べが始まってからは、すぐに拘置所に連行された場合の準備として、毎回、取調べには母親の縫ってくれた座布団を持って行っておりました」

***

弁 「これは平成23年10月6日にあなたが特捜部に提出した陳情書ですね。どうしてこの書面を提出したのですか」

私 「これは、私がもし故意に脱税を企図していれば必ずしたであろう合理的な行動を書いたものです。そうした情報を提供し、特捜部にその事実の有無の捜査を期待したものです」

弁 「 そこに記載された故意犯であれば行ったはずの行動の有無について取調べてもらえましたか」

私 「残念ながら、そうした無実を明らかにするような事に関しては一切取調べはありませんでした」

弁 「平成23年12月5日付けの検面調書では、あなたが検察官にポリグラフテストを要求していますね」

私 「はい」

弁 「どうしてこのような要求をしたのですか」

私 「取調べの当初は、郵便不正事件を受けて特捜部も変わったかもしれない、私の無実を知って不起訴にするかもしれないとかすかな期待がありましたが、取調べが長期化するにつれ、特捜部も国税局同様、真実を見極めるということはなく、無実の者であっても彼らが起訴をしたければ起訴するということを実感しました。そのため、自己防衛のためにポリグラフテストを要求し、無実の証拠を残そうとしたものです」

弁 「特捜部はポリグラフテストを実施してくれましたか」

私 「いいえ。実施してくれませんでした。検察からの回答は、機械がないというものでした」

***

弁 「これまで節税は全くしていなかったのですか」

私 「医療費控除や保険料控除を受けていましたし、その他に、私には祖母がおりましたが、彼女が脳梗塞で植物人間の完全介護状態となったため、彼女の月約25万円程度の医療費を全額負担しておりましたので、彼女の扶養者控除を受けていました。例えば、不動産業者から、中古マンションを使っての節税スキームのセールスの電話がよくかかってきましたが、節税自体には全く興味がなく、そういうことは全くしておりませんでした」

弁 「あなたは二度会社を移籍していますが、その間、失業保険の給付を受けましたか」

私 「いいえ。受け取り方もよく分からなかったので申請もしていません」

***

弁 「クレディ・スイス証券での本件の集団申告漏れの実態について聞きます。マスコミ報道では、株式報酬を受領していた300人中100人が申告漏れだったと報じられましたね」

私 「はい」

弁 「 逆に言うと200人は申告内容が正しかったかどうかは別にして、少なくとも株式報酬についても申告していたようなのですが、あなたの認識はいかがでしたか」

私 「税務調査対象者約300人のうち、100人が申告漏れ、200人が何らかの申告していたというのは国税局のリークでしょうから間違いはないのだと思いますが、当時の私の認識とは異なります。私は査察部による調査が開始された後、元部下や同僚に株式報酬の申告について尋ねました。そうしたところ、彼らの大部分が申告漏れという回答でした」

***

弁 「あなたが所属していた債券部で特に注意力の高い方あるいは特に注意力の高い役職の方はおられましたか」

私 「はい。債券部にはビジネス・マネジャーという職責の者がいました」

弁 「ビジネス・マネジャーとはどういう役職ですか」

私 「債券部所属の者ですが、ほかの債券部の者に、会社の総務関連の事柄、特に法務・コンプライアンス関連の事柄を周知徹底させるということが彼女の仕事でした。現場の人間は、日常の業務とは直接関係のない法務・コンプライアンス関係の事柄にはとかく手薄になりがちなので、そのような仕事の人間を法務・コンプライアンス部だけでなく現場にも置かなければ周知徹底できないという会社の配慮だと思います」

弁 「その債券部のビジネス・マネジャーの方には申告漏れの有無を聞きましたか」

私 「はい。その人間ですら申告漏れでした。私は彼女と直接話すことができたのですが、彼女も私と同様、過失により申告漏れであったとのことでした」

弁 「あなたと同じソロモン・ブラザーズ出身の社員の申告状況は如何でしたか」

私 「私の知る限りソロモン・ブラザーズ出身でクレディ・スイスの従業員は4人おりますが、いずれも例外なく申告漏れと言っていました。ですから、私を含め、ソロモン・ブラザーズ出身者は100%申告漏れでした」

***

弁 「それでは、あなたの経験した事実から推測して、300人中200人の方が株式報酬について確定申告できたのはどうしてだと思いますか」

私 「いろいろなパターンがあると思いますが、一つには、クレディ・スイス入社前に知識を得ていた場合です。クレディ・スイスの社員は、ごく一部の例外を除き皆中途採用でしたので、前職の証券会社で株式報酬は源泉徴収されず、別途申告しなければならないということを指導されていた場合には申告漏れとならないのだと思います。私の部下の一人がその例です。

そして、クレディ・スイスでその知識を得たという場合、一つには、法務・コンプライアンス本部長のように何らかの特別なきっかけである人から教えてもらった方がいると思います。

また、私は、取調べで会社の数多くの資料を示されました。その中で唯一、これを説明されていれば申告漏れにならなかったであろうと思われたものがあります。それはマスターシェアプランの説明会で配布された資料の中の、「個人による確定申告が要求される」という明示的に書かれた文章でした。そして、その説明会に出席して誰かによる解説まで聞いていれば、申告漏れとなることはないのだと思います」

弁 「これは平成18年7月に行われたマスターシェアプランの説明会で配布された資料のようですが、この中のどの記載のことを言っているのですか」

私 「それは、page11の「Individual tax reporting requirement」という記載です。メモランダムに書かれた会社に源泉徴収義務がないといった回りくどい表現ではなく、明示的に、個人の確定申告が要求されると書いています」

弁 「あなたはマスターシェアプランの説明会の存在は知っていましたか」

私 「知りませんでした」

***

弁 「査察部から説明会の資料を示されて、同僚や部下の方にその内容を確認しませんでしたか」

私 「はい。査察部の取調べで税務に関する説明会について聞かれた際、全く記憶になかったので、元同僚や部下に、税務に関する説明会は開かれていたかと尋ねて回りました。しかし、彼らの誰一人としてそうした説明会の存在すら知らなかったとのことだったので、私は不審に思い、私の部下の一人に内々に調査を頼みました。そして彼がコンプライアンス部に確認したところ、かつて税務に関する説明会はなかったとの回答であったので、私は会社が責任を逃れるために説明会自体をねつ造したものだと思い込みました」

弁 「 実際には、あなたがクレディ・スイス証券に入社した頃も含めて、毎年、マスターシェアプランの説明会は行っていたようなのですが、入社以来一度も参加したことがなかったのですか」

私 「一度も参加したことはありません」

弁 「それでは、マスターシェアプランの説明会にはどのような従業員が参加していたのですか」

私 「私には分かりませんが、株式報酬の経済的価値に関心の高い従業員は参加したのではないでしょうか」

弁 「それはどうしてですか」

私 「年棒更改の際に手渡されるトータルコンペンセーションシートをみても、株式報酬については、いつ、いくらもらえるのか全く分かりませんし、マスターシェアプランも読んで理解できるようなものではありませんので、株式報酬をいついくらもらえるかといったことに関心がある従業員は出席するのではないかと思います」

***

弁 「あなたは親戚、友人に全146通の嘆願書を作成してもらいましたね」

私 「はい」

弁 「これはどのような趣旨で作成してもらったのですか」

私 「私自身がいくら金の亡者ではないと力説したところで説得力がありません。そこで、特捜部に私の人となりを理解してもらうために、私の知人・友人に、事件の説明をほとんどすることなく、八田隆がどういう人間であるかということを書いてもらったものです」

弁 「それを特捜部に提出したのですね」

私 「はい。特捜部が告発を受けた以上私は起訴され、起訴される以上有罪となることは覚悟していました。しかし、特捜部の検事には、あなたたちが起訴する人間は無実の人間であるということを認識したうえで起訴してもらいたかったものです」

弁 「あなたは嘆願書を作成してもらった方宛てに不定期で経過報告というタイトルでメールを発信していましたね」

私 「はい」

弁 「これはどういう趣旨で行っていたのですか」

私 「嘆願書を書いて下さった方々には、現状報告をする必要・義務があると思いました。そのため始めたのですが、実際始めると、報告することが精神安定剤のようになり、不定期ですが、随分沢山の経過報告を出しました」

弁 「 弁護人から経過報告の発信を止められませんでしたか」

私 「小松先生からは、100人を超える人に一斉送信で送る経過報告は、万が一誰かが検察に渡す可能性も否定できないので、やめてほしいと言われました」

弁 「それでは、どうして続けたのですか」

私 「私は、検察が証拠の全面開示をしないことに非常に大きな嫌悪感を持っています。その私が、逆に、ありのままの事実を伝えて、それがもし私にとって不利になるということがあるのであれば、それはそれで仕方がないと小松先生に説明して、黙認してもらいました」

弁 「その後、あなたは経過報告の内容をブログとしてホームページに掲載しませんでしたか」

私 「はい、掲載しました」

弁 「どうしてそのようなことをしたのですか」

私 「検察の取調べが長期化する中で、私が理解したところは、検察も国税局同様、真実を追求するのではなく、無実の者であっても彼らが起訴したければ起訴をするのがその行動原理であるということです。

冤罪の当事者となるまで、私は冤罪に関する知識も関心もありませんでしたが、冤罪の問題、刑事司法の問題は国民一人一人にとって重要な問題であると認識するようになり、当事者の立場から社会に警鐘を鳴らすことが、私のできる社会貢献だと認識するようになりました。

不当な権力を行使する捜査権力に対しては、蟷螂の斧となろうとも、正々堂々と戦うことが自分の生き方であると思っています」

弁 「被告人質問の最後に言っておきたいことはありますか」

私 「マスターシェアプランの説明会に関してですが、私は今ではマスターシェアプランの説明会に参加していれば、申告漏れにはならなかったはずだと理解しています。その説明会を見落とし、参加しなかったことは私の落ち度だと思いますが、私の責任はもっと大きいものだと感じています。

私の部下の中に、マスターシェアプランの説明会に気付き、参加したいと思った者がいたとしても、仕事を最優先し任意のセミナーに否定的な私のような上司をもったばかりに、参加することができず、株式報酬について申告漏れ・追徴課税されることになった可能性もあると考えています。彼らには管理者としての責任を感じ、申し訳なく思っています」

***

(なお、傍聴して下さったジャーナリストの方から、「告発時の国税局のリークに関しては、『税務調査対象者の約300人のうち、100人が無申告、残りの200人もほぼ全員が修正申告』というものだったので、正確には、「100人が無申告、200人が申告漏れ」と言うべきとご指摘頂きました。)

10/30/2012














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category: 刑事裁判公判報告

2012/10/30 Tue. 06:34 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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