「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

05« 2017 / 06 »07
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

#検察なう (209) 「何が社会正義かを問う 『四〇〇万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日』を読んで」 11/6/2012 

#検察なう (209) 「何が社会正義かを問う 『四〇〇万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日』を読んで」 11/6/2012

(強制捜査から1421日)

皆さんにも是非この事件を知って頂き、何が社会正義かを考えてもらいたいと思います。

例え話をします。

あるところに腕利きの名医がいたとします。彼にかかればさまざまな怪我や難病も治るということで、多くの患者が彼を頼っていました。ところが彼は無免許医でした。これで法外な治療費を請求すれば、手塚治虫氏作のブラック・ジャックなのですが、彼は実に良心的な治療費しか請求していませんでした。そして彼がいなくなると、本当に困る人が大勢います。中には命の危険すらある人もいます。多くの患者を犠牲にしても、この医者を処罰することが社会正義なのでしょうか。

『四〇〇万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日』を読んでそんなことを考えました。

この本に登場する佐藤真言(まこと)氏は元銀行員の経営コンサルタント、朝倉亨(とおる)氏はアパレル会社社長です。事件を表面的に捉えれば、「経営コンサルタントが中小企業に粉飾決算をさせて銀行の融資を受けたところが、この会社が借金を返せず倒産してしまった」となります。

しかし、事件の真相に近づけば近づくほど、この事件が検察によって作られたものであることが分かります。

日本の企業数は約400万、そのうち99%以上を中小企業が占め、雇用の7割はこの中小企業が支えています。国税局のデータでは、黒字申告の「利益計上法人」は3割弱、残りの7割強は赤字と申告した「欠損法人」です。現在の金融システムでは、赤字企業は銀行からお金を借りることはほぼできないので、赤字企業の中には生き残りのために粉飾決算(決算を黒字にして銀行から借り入れをする)をする会社も少なくないと言われています。

株式を発行している上場会社と異なり、非上場会社においては、粉飾決算そのものは犯罪ではありません。しかし、粉飾決算によって銀行を騙して借り入れをすれば、それが詐欺罪を構成します。

かなりの数の中小企業が最後の手段として、詐欺罪になることを分かっていながら借り入れをする場合において、彼らの意図するところは、「事業を好転、黒字化しよう。その間、きっちりと利子を払っていこう」とするものだと思います。騙し取った金を横領しようとする者は、むしろ極めて少数のはずです。

銀行を辞めて経営コンサルタントになった佐藤氏は、銀行のやり方では中小企業を助けることには限界があると感じたのだと思います。そして経営者と同じ立場から、彼らの事業をサポートし、彼らを助けることをやりがいとしていたのだと思います。

本に引用された彼の言葉です。

「粉飾決算そのものよりも、銀行に借りたお金を返せなくなることの方が本質的な悪だと私は考えていた。返していけるのであれば、リストラをしながら利益を捻出し、資金調達を続けながら徐々に借入額を減らしていければいい。そうすれば、いずれは粉飾の出口にたどり着ける。」

銀行員としてのノウハウを生かして、伸びしろのある中小企業を再生し、経営を立ち直させるという彼の行動は、今、経済が停滞し、中小企業の多くがあえぐ中で、むしろ求められているものだったと思います。銀行にとっても、彼が関与していることで、企業が経営を軌道に乗せ、返済を続けてくれることは利益であったはずです。彼は経済の血流を促し、貸し倒れの安全弁でもあったのだと思います。

粉飾決算は、そうした大義のための一つの方便であったと言えます。

佐藤氏、それから朝倉氏が捜査権力の網にかかったのも、実に不運な状況でした。それはこういう背景です。

検察のレーダーに捉えられたのは、最初は、別のある銀行員でした。その銀行員は、融資を担当していましたが、担当企業に不正融資をしてリベートを取っていました。その手口は「1千万円しか売り上げのない会社が、あたかも70億円の売り上げがあるように見せかけ、そこに3億円の融資をして、半分の1億5千万円をピンはねする」といった悪どいものでした。融資する会社には、「10年の融資だからその間利子を払ってもらえばいい。そして10年後に計画倒産をすれば、返済する必要もなくなるし、自分のキャリアには傷がつかないから」と持ちかけていました。完全な詐欺です。

そして、この不正融資を受けていた会社のうちの一社のオーナーが所有していた別会社にコンサルティングをしていたのが佐藤氏というつながりで、検察の目に止まったというのがきっかけでした。しかもこの銀行員が働いていた銀行は、佐藤氏がもといた銀行で、佐藤氏が辞めてから同じ支店にこの銀行員が配属になったという「ニアミス」も検察の関心を引いたところとなりました。実際には、佐藤氏とこの銀行員は、銀行員時代の面識は全くありません。

「悪徳銀行員―不正融資を受ける悪徳社長」という別事件の構図が、佐藤氏とそのコンサルティングを受ける朝倉氏にそのままはめ込まれたというのが、検察の描いた筋でした。

佐藤氏と朝倉氏は検察の任意の取調べを受けます。その延々と続く取調べで、粉飾決算による融資を受けたことを事実として認める一方、それは何もお金を騙し取ろうとする意図は全くなく、事業も好転する見込みであることを主張します。

そして、その後検察が取った行動をもって、私は「この事件が検察によって作られたものである」と言うものです。

例えばお金を盗んだとします。そのお金を返したとしても、盗んだという罪が消えるわけではありません。しかし、お金を返した場合とそうでない場合では、その犯罪性に大きな差が出ることは説明を要しないでしょう。

朝倉氏の従事していたアパレル業界は、季節によっての資金の出入が激しい業界です。そして資金の回収のメドがついていたその矢先に朝倉氏は逮捕され、預金口座は全て凍結されてしまいます。逮捕があと数週間遅れていれば、資金も回収され、銀行への返済もできたものです。それを知りながらの逮捕には、検察の大きな作為を感じます。

そしてその貸し倒れの実損といえば、1億数千万でした。水増し決算の金額も数億と、大企業の粉飾決算で取り沙汰される桁が何10億、何100億というものからすると、特捜部が動く事件としては、あまりにみみっちいものです。そこで特捜部が、更に事件性を高めるために使ったストーリーが「震災詐欺」でした。佐藤氏のコンサルティングにより朝倉氏が受けた融資の中には、3.11の震災によって制定された保証付のものがあり、彼らがこれを悪用したというものでした。単なる粉飾決算なら銀行が被害者だが、「震災詐欺」は国民が被害者だとして、検察は正義の味方を装ったものです。その実損を作ったのが自らでありながら。

そしてその実損ゆえに、佐藤氏と朝倉氏に対する判決は執行猶予がつかず、実刑になってしまいました。

佐藤氏はサラリーマンでした。銀行を辞めてから、銀行時代の先輩と立ち上げた会社でしたが、彼はあくまで給与受給者。そしてその給与水準は彼が以前勤めていたメガバンクの職員の一般的な給与水準よりは少ないものだったようです。検察のターゲットは、そのコンサルティング会社社長であったことは想像に難くありません。またクライアントの会社でコンサルティングを受けていて、同じく粉飾決算に基づいた融資を受けていた会社も、朝倉氏の会社だけではありません。

佐藤氏とはメールのやり取りをさせてもらっていますが、私が彼に尋ねたことの一つには以下のものがありました。

私 「佐藤さんがコンサルティングしていた会社で、赤字を黒字に粉飾決算していた会社はその架空の黒字に関して法人税を払っていたのでしょうか」

佐 「法人税を払っていました。税務署提出のものとは異なる決算書には、私は関与したことがないです」

粉飾決算は税金を払わなければならないため、身を切って中小企業が生き残りを賭ける最後の手段です。その法人税を払うことを嫌って、二重会計にして、銀行には黒字決算、税務署には赤字決算を出す企業もあると思われます。彼のこの回答に、私は彼には全く悪意がなかったことを得心しました。

現在の佐藤氏、朝倉氏の窮状は敢えてここでは言及しません。しかし、「一罰百戒」として、実刑判決という苛烈な処罰を受け、生活の目途も経たない程、指弾されるのは到底公平感がありません。

検察は優秀な組織です。彼らも捜査を進めていくうちに自分たちの筋書きとは異なる実態に気付き、佐藤氏・朝倉氏の処罰が正義ではないと思ったのではないかとも想像します。それでも引き返すことができず、更に事件を事件として確定していくというあざとさが、検察の陥っている病理ではないかと私は感じています。

是非、産経新聞記者石塚健司氏著『「四〇〇万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日』をお読み下さい。そして何が正義で、何が不正義かを一緒に考えて下さい。

ここをクリック→ Amazon 『四〇〇万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日』

明日、11/7の午後3時から朝倉氏の控訴審の判決があります。偶然、明日は私の第8回公判(続々被告人質問=裁判官による補充尋問追加)が午前中11-12時にありますので、その後傍聴に行こうと思っています。

私は、佐藤氏と朝倉氏を応援します。

ここをクリック→ 佐藤真音さんを応援する会HP

ここをクリック→ 朝倉亨さんを支援する会HP

11/6/2012







ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 佐藤真言氏 『粉飾』

2012/11/06 Tue. 07:37 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/433-a04e2e0d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top