「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (215) 「ストック・オプション行使指示書の日付のミステリー」 11/14/2012 

#検察なう (215) 「ストック・オプション行使指示書の日付のミステリー」 11/14/2012

(強制捜査から1429日)

公判は公開の上、審理されます。しかし、傍聴人への配慮は二の次ですので、なかなか分かりにくい場合もあります。私の公判を傍聴された方もそのように感じられたと思います。特に、書証を証人や被告人に見せながら証言、供述を求める場合、傍聴人はその内容が分からないため、何が争点となっているかぴんとこないのではないでしょうか。

裁判員裁判の場合、書証をプロジェクターで投影したりすることも行われるようですが、一般の裁判の場ではそうしたことも行われません。

私の前々回、前回の公判でも、非常に重要な事項が証拠を元に審理されましたが、その内容は傍聴人の方には分かりにくかったと思います。そこで、実際の公判で公開された、証拠をめぐっての弁護側と検察の攻防の実例を挙げてみたいと思います。

私は、申告漏れとなっていた株式報酬のほとんどを現物株で受け取っていましたが、一部にはストック・オプションもありました。ストック・オプションは株式を受け取る権利ですので、その権利を行使する意思表示を書面でする必要があります。そのストック・オプション権利行使指示書の記載内容は、検察が「証拠」とこだわっていたものです。

記載の中で、設問自体を斜線で消去している部分があり、その消去された部分に「会社が源泉徴収をしている場合」という文言が含まれていました。

だからどう?と普通は見逃しがちな単なる斜線ですが、この斜線で消去していることは非常に重要だというのが検察のストーリーです。

それは、「『会社が源泉徴収をしている場合』を斜線で消去している」->「会社が源泉徴収をしていないことを認識していた」->「故意の脱税」、という亜空間ワープなみの論理の飛躍が彼らのストーリーです。

実際には、私は、その英文10数ページの書面を記入する際、記入の仕方がよく分からなかったので、会社のシンガポールEC(エグゼブティブ・コンペンセーション)部の知人スタッフに電話で指示を仰ぎ、彼女の指示通りに記載しました。斜線も彼女の指示で引いたものです。

検察が、故意を立証するのに一番近いと位置付ける証拠ですら、このようにかなり強烈なこじつけ感があります。このストック・オプションの行使指示書に関しては、国税局査察部の取調べでは全く聞かれていないので、この重箱の隅をつつくような事柄を膨大な資料の中から見つけたことは検察特捜部の「お手柄」ということなのでしょうが、よくぞここまで悪知恵が働くものだと感心すらします。

このような瑣末な事柄を証拠とせざるを得なかったのは、結局のところ、これが決定的証拠というより、全く証拠がない推定有罪では恰好がつかないため、一応体裁を整えるための証拠とするものだと思います。その推定有罪を裁判官が丸飲みするであろう、というのが無理筋を起訴した検察の目論見です。

我々弁護団としては、全ての客観証拠を打ち消して、完膚なきまで検察ストーリーを潰すことを狙っていますので、このストック・オプションの行使指示書の記載も実に取るに足らない証拠ではありますが、それを看過するものではありません。

そこでは、いかに「私が『そのEC部スタッフと話をした上で』記入したか」を証明することが大きなポイントとなります。逆に、検察のストーリーは、「私はEC部スタッフとは話をしていない」「自分一人で記入した以上、斜線で消した部分の内容は理解していたはずだ」というものです。

録音があればいいのですが、そうしたものがあるわけでもなく、「話した」「話していない」の水掛け論になりそうですが、やはり証拠から真実は導き出されるものです。

ちなみに、そのスタッフは検察側の証人としてシンガポールから証人喚問されていましたが、公判でも明らかにされた通り、結局彼女が応じることはありませんでした。そのため、弁護側が一部不同意としていた検面調書が、「証言不能」という理由で証拠採用されています。

それは日本語を読めない彼女(彼女はシンガポール人です)が署名した日本語のみで作成された検面調書です。弁護団は、調書を英訳してその英訳文にも署名をさせることを要求しましたが、検察により拒否されました。その調書では、彼女は、私と「話したかどうかの記憶はないが、説明をしたのであれば該当しない部分には斜線を引かせた」旨述べています。

前々回の弁護側主尋問で、我々弁護団が試みた立証は、行使書に押された受領印であるゴム印の日付(2007年2月27日)に注目したものでした。

原本は社内便あるいは郵送で送られていましたが、その原本に押されたゴム印の日付は、その行使書の私の署名欄の下に私が記入した日付と同じ2月27日でした。弁護団はそれを指摘し、もし指示書が2月27日に作成され、社内便あるいは郵送でシンガポールに送られたのであれば、同日に届くわけはないため、受領印は原本をシンガポールで受け取った日付ではなく、私と電話で話して意志を確認した日付だ、と主張しました。立証趣旨は「電話で話した事実がある」ということです。

しかし、これは検察の反対尋問で押し戻されます。検事が提示した行使書のコピーには同じ日付のFAXの印字記録がありました。FAXでも指示書がシンガポールに送付されていれば、2月27日の当日にシンガポールで書面を受け取ることができ、私が必ずしもEC部スタッフと会話をしたということにはならないという主張です(といっても、依然、私が彼女と話したこととも矛盾しないものですが)。

その場で、指示書には原本とFAX印字がある二つの証拠があることを見つけた検事はさすがですが、公判という「生」の現場では想定外のことも起こります。検事は、その印字記録を「私が送信した送信先のFAX番号」と誤解したようです。印字される通信記録は、送信「元」のものです。

その前々回の公判後、前回の公判までの間、我々弁護団の中では、このストック・オプション権利行使書の日付に関して、相当ディスカッションしました。

そこで見つかった事実の一つが、原本とFAX印字のある二つの書面は、(ゴム印の位置、かすれ具合から)実は同一のものであるということでした。

普通に考えれば、「2月27日にFAXが届いて、2月27日付の受領印を押したが、後日、社内便ないし郵送でも原本が届き、先の受領印と同じ2月27日付の受領印を押した」ということになりますが、この場合は、FAXに押された受領印と原本に押された受領印は当然異なります。

書面の署名の下には、私自身が「2/27/2007」と記入しています。その体裁自体は、100人が見れば、記入日がそうであると100人ともが思うかのようなものです。しかし、FAXにも原本にも同じ受領印が押されている同一の書面であることから、なぜか原本がシンガポールに2月27日の時点では既に届いていたようです。

なぜ、記入日であるかに見える2月27日の時点で、原本が既にシンガポールに届いていたか。これは大きな謎でした。しかし、私がEC部のスタッフと電話で話しながら記載したことが事実である以上、その事実と矛盾することはないはずです。

その説明として我々弁護団が考えたのは、「2/27/2007」は「記入日」ではなく、「先の日付」であり、それをEC部スタッフの指示で私が記入したというものです。

そしてその推論は、前回公判で検察により提出された新証拠で実証されます。

FAXの印字記録が(送信元の番号ではなく)送信先の番号であるという検事の誤解は、その番号がシンガポールの国際電話番号であったことに起因していると思われます。そのため、検事は、私がシンガポールに送信したその送信先の番号が印字されていると誤解したものです。後から検事はその誤解に気付くと共に、なぜその印字記録のあるコピーが送信元のシンガポールにブーメランのように戻っているかにも疑問をもったようです。

そこで検事がそのEC部スタッフにあらためて指示書の提出経緯を問い合わせたところ、指示書の原本が社内便ないし郵送で、2月27日に届き(即ち、私が指示書に記入した時点はそれより数日前)、PDF化するため、自分にFAXした(ファックス機の機能により、そうすることでPDFファイルがパソコンのメールボックスに届く)とのことでした。

指示書に、私が、誰からの指示もなしに記入日以外の日付を記載することは到底考えられません。皆さんも署名欄の下に「日付」とあれば、誰もが「ん?今日の日付を書けばいいんだよね」と思うでしょうが、誰かから「あ、そこは~月~日と記入して下さい」と言われて、その日付を書いたという状況を想定してもらえば結構です。

また指示書を添付したメールには「FAXで返送せよ」という指示しかないので、やはり誰からの指示もなければ、社内便ないし郵送で原本を送ることも考えつかないはずです。これもEC部スタッフの指示があった(=私が彼女と話した)ということを立証するものです。

事実を時系列順に整理すると以下のようになります。

2月27日の数日前 私がEC部スタッフと電話で会話し、彼女の指示の元(設問に誤記入を防ぐため、斜線で消去することを指示、また署名の下の日付欄に「2月27日」の記載を指示)、ストック・オプション行使指示書に記入。彼女の指示で、原本を社内便ないし郵便でシンガポールに送付。

2月27日 原本がシンガポールに届く。彼女はその原本に受領印のゴム印を押すと共に、記録の保存用にPDF化するため、シンガポール・オフィスのファックス機に送信。

分かってしまえば、実に単純なことです。

このようにして、私がシンガポールEC部スタッフと話をした上で記入したことが立証されたことにより、検察の、私が「EC部スタッフと話をすることなく、自分の理解で記入、当該部分の斜線を引いた」というストーリーは否定されました。検察のストーリーの大きな柱がまた崩れたことになります。

そうした攻防が、公開の公判における前々回公判の主尋問・反対尋問、また前回公判の再主尋問であったものです。傍聴していらっしゃったとしても、分かり難かったであろうと思われる部分を解説させて頂きました。

11/14/2012










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category: クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

2012/11/14 Wed. 07:38 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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