「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (256) 「痴漢冤罪対処法に関する考察」 2/1/2013 

#検察なう (256) 「痴漢冤罪対処法に関する考察」 2/1/2013

(強制捜査から1508日、判決まであと28日)

現在、冤罪で最もポピュラーなものは電車内の痴漢だと思われます。しかしながら、冤罪に対する関心が一般に低いため、この問題もそのダメージに比較すれば軽視されていると言ってもいいと思います。もしその被害にあった場合の影響は、それ程に熾烈です。

痴漢冤罪には、そのほかの冤罪と同じ刑事司法の問題が凝縮していますが、それは一朝一夕に一般市民のレベルでは如何ともし難いため、対症療法ではありますが、痴漢冤罪に対処する方法に一考加えてみたいと思います。

まず、冤罪は誰の身にも降りかかります。痴漢冤罪も同じです。自動車事故と同じように、相手がいることですから、どれだけ本人が注意していようと、電車に乗る限り可能性はゼロにすることは不可能です。それを自覚する必要があります。

示談目的の痴漢被害でっち上げもあります。2008年大阪御堂筋線での甲南大学生による示談目的の痴漢被害でっち上げは、その犯行が発覚したため有名な事件ですが、それは氷山の一角だと思われます。昨年末、NHKアナウンサーが二子玉川駅で痴漢行為で現行犯逮捕された際も、ネット上では「捕まえた男は今年8人捕まえている」と話題になりました。結局、それは2チャンネル発信のデマでしたが、その話を目にした際も、「まさか」とは思いませんでした。

また社会的に抹殺するためにこれほど簡便かつ効果的な方法はほかにないため、離婚やリストラのために痴漢を捏造するアンダーグラウンド・ビジネスもあるようです。反原発の論戦を張っていた東洋経済の編集長が昨年2月に痴漢容疑で逮捕された際も、公安活動による言論抑圧ではないかと憶測されたものです。

まず、全く身に覚えがないのに、「痴漢したでしょ」と女性に言われた場合、過少評価は絶対に避けなければいけません。人生最大の災厄が目の前にあるという認識が必要です。「もしかしたら、これで1年半刑務所に行くことになるかもしれない」と思って下さい。自分が無実である場合、とかくその判断は甘くなりがちです。

当然仕事も失います。円満な家庭も崩壊するかもしれません。子供がいる方は、子供が学校で虐められて、授業中に「パパは痴漢なんかやってない!」と突然泣き出すくらいのイメージを持った方がいいと思います(怖ろしい事に実際の話です)。

「痴漢で刑務所?」と思われた方は、是非、西武池袋線痴漢冤罪小林事件を知って下さい。

ここをクリック→ 冤罪ファイル 「西武池袋線痴漢冤罪小林事件」

「話せば、単純な間違いだと分かってもらえるだろう」という考えは捨てる必要があります。警察・検察は、フェアに判断する思考回路を持ち合わせていません。痴漢冤罪被害者にとってみれば、彼らは単に「犯罪製造マシーン」以外の何物でもありません。

具体的に検討します。

まず一番避けるべきは、逮捕されることです。逮捕というと、警官が来て手錠をかけられるイメージがありますが、痴漢の場合は、「痴漢したでしょ」と女性に問い質されて手をつかまれた時点で、ほぼ逮捕されています。刑事訴訟法第212条及び第213条の「私人による現行犯逮捕」です。

よくあるパターンはその後、駅員に「ここではなんだから」と駅員室に連れて行かれ、通報で駆け付けた警官に、「詳しい話は警察署で」と言われ、警察署に連れられて事情聴取というものです。その際に、「これは任意同行ですか」と聞いて、「そうだ」と警官が言ったとしてもそれは嘘です。逮捕という事実があると、それを撤回するのは手続き上面倒なので、「実際は(私人)逮捕されているが、逮捕されていないことにして、立件できそうであれば、既に逮捕されていたということにする」だけの話です。それが「ほぼ」逮捕されているという意味です。

逮捕となると、後は有罪へのベルトコンベアーに乗ることになりますから、まず逮捕を避けることが必要で、そのためには、その場を立ち去ることが一番であることは確かに正しいと思われます。

「行列のできる法律相談所」でも、「一番良いのは走って逃げること。やましいから逃げるのではなく、人生最大の災厄から逃げるのだ」と説明されていましたが、これはリスクもあるケース・バイ・ケースの対処法だと思います。完全に逃げ切れなかった時のリスクが小さくないからです。「自分は無実だから逃げも隠れもしない」という主張は全く通じないのに、逃げ切れなかった場合「逃げたのはやましいからだ」という判断をされることは覚悟する必要があります。

走って逃げ切れるだけフィジカルにフィットしているか。逃げる後ろから「痴漢です!捕まえて下さい!」と叫ばれれば、退路に行方を阻む屈強な若者はいないかの瞬時の判断力も必要です。「すいません!親が危篤なんです!」と言いながら逃げる演技力も必要かもしれません。

逃げる判断は瞬時にする必要があると思われます。「痴漢したでしょ」と言われて、「いや、していない」と議論する頃には人も集まってきますから、逃げ切れる成功率はどんどん低くなります。

次に、「刑事訴訟法で現行犯逮捕が認められているのは住所不定の場合だけで、名刺を渡して『逃げも隠れもしないから』と言って毅然と立ち去る」という策もよく言われます。法律的にはこれは間違っています。刑事訴訟法第217条のことを言っていますが、その条文は「30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第213条から前条までの規定を適用する」とあります。

痴漢行為が、迷惑防止条例違反に留まる場合、かつての罰金は5万円以下でしたが、今は条例改正で50万円以下になっています(そしてかつても30万円以下の後に括弧付きで「当分の間、2万円」という条文がありました)。また、痴漢行為が強制わいせつとなれば、懲役刑のみですから対象外です。

しかし、「法律的には」と言ったのは、実際、この方法も有効かもしれないからです。一般市民は法律に精通していないため、このブラフが通用する可能性はあると思われます。駅員に「とりあえず駅員室に」と言われても、その理由と根拠を尋ねて曖昧な説明であれば、着いて行く必要はないと堂々と主張すべきだと思います。

この「その場を去る」をプランAとすると、それがかなわない場合のプランBを考える必要があります。

なぜ痴漢の無実を証明することが困難なのでしょうか。それは無実を証明する証拠が絶対的に少ないからです。証拠としてあるのが、痴漢被害者の証言とあなたの供述のみとなれば、形勢は絶対的に不利です。裁判官は、「痴漢被害者は被告人を罪に陥れる必要がないため真実を話しているのに対し、被告人は罪を逃れるため嘘をついている」という認定をするからです。

もしあなたが痴漢の犯人でないならば、痴漢被害者があなたを犯人と特定した理由は本来あいまいなはずです。ところが、警察で取り調べを受け、調書を取る段になれば、警察はそうしたあいまいな証言では、犯人とすることができないということを十分承知していますから、有罪を作るために有効な調書とするため、補充すべく誘導してそれらしい調書を作成します。

プランBのポイントは、とにかく「証拠を保全する」に尽きます。

「痴漢したでしょ」と言われたら、「いや、してない。人違いだろ」ではなく、「私はやっていないが、なぜ私だと思ったのか」と聞くべきです。そしてその答えを、できるならスマホの録音機能やICレコーダーで録音しておきたいところです。セルフ可視化です。その答えは、必ず後で、調書と矛盾が生じてくるものと思われます。

次に、どうしてもその場を去れずに、まずい状況になった場合、一気にそれを打破する方法として、私が考えるのは、大声で、但し冷静に主張することです。

「皆さん!たった今、私は痴漢の疑いを持たれています。単なる誤解だと思います。私はやっていませんので、これから釈明するつもりです。もしかすると皆さんのご協力が必要となる場合があるかもしれません。現在時刻は、xx月xx日xx時xx分です。私の名前はxxxxxといいます。痴漢の疑いを掛けられた者がいたということを是非覚えていて下さい。また、車両内で、私のことをご覧になっていた方がいらっしゃったら、是非ご協力下さい。よろしくお願いします!」

人生が懸っています。その覚悟があればできると思います。

また証拠の保全として、科学検査の積極的利用があります。自ら、「私の手指の繊維検査、DNA検査、被害者着衣のDNA検査、指紋検査、それからポリグラフ検査を要求します」と警察官に主張すべきです。それが行われないのであれば、警察署に行くのを拒否するくらいの強い態度で要求すべきだと思います。

警察署に「任意同行」を拒否するのは、一種の賭けです。先ほど述べたように、既に私人逮捕されている状態ですから、警察官は裁判所の逮捕状がなくても逮捕を事実化して連行することができると思われます。そうなると、警察は引くことはないと思いますので、有罪のベルトコンベアー行きが決定します。

「取調べには弁護士の立ち会いがなければ応じない」とするのも同じですが、こちらの方が警察官も「逮捕の事実化」に躊躇するのではないでしょうか。とにかく相手は有罪を作るプロです。彼らとリングで戦うセコンドに、プロが付いてくれるのとそうでないのでは、言うまでもなく大きな違いがあります。

弁護士に知り合いがいない人は、「当番弁護士制度」を知っておくとよいと思います。

ここをクリック→ 日弁連「国選弁護、被疑者弁護援助、当番弁護士に関する取り組み」

真実を見極めるのではなく、あなたを罪人に仕立てあげようとする取り調べは相当過酷です。国税局査察部・検察特捜部の取調べを合計200時間以上受けた私が言うのですから、間違いはありません。しかし真実があれば耐えられます。頑張って下さい。

取調べの時点では、ほぼ有罪へのベルトコンベアーに乗っています。とにかくそうなる前、初動が勝負です。「警察に行って事情を説明しよう」という時点では、もう手遅れくらいの覚悟でいいのではないかと思います。

満員電車に乗る可能性のある男性は常にシュミレーションする必要があります。

周防正行監督の映画「それでもボクはやっていない」は必見です。

ここをクリック→ 「それでもボクはやっていない」予告編

書籍としては、鈴木健夫氏著「ぼくは痴漢じゃない!」がよいと思います。二部構成で、第一部は痴漢冤罪被害者鈴木健夫氏の手記、第二部は弁護を担当した升味佐江子弁護士の解説となっています。手記はライブ感たっぷり、解説は非常に分かり易く、しかも適切な評価が書かれていると思います。

ここをクリック→ Amazon 「ぼくは痴漢じゃない!」

冤罪が少しでもなくなる世の中を願っています。それまでは、自分の身は自分で守るしかありません。

2/1/2013













ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





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category: 刑事事件一般

2013/02/01 Fri. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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