「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (257) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (1)」 2/4/2013 

#検察なう (257) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (1)」 2/4/2013

(強制捜査から1511日、判決まであと25日)

昨年末(12月21日)に行われた第十回公判では、弁護人による最終弁論と私の最終陳述が行われました。

ここをクリック→ #検察なう (238) 「第十回公判報告 最終弁論+被告人最終陳述」

ここで、最終弁論の内容を解説したいと思います。最終弁論はプリントアウトすると161ページに達する大作です。

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検察の論告は、推認・推論に基づくまさに「推定有罪」の主張です。それに対し、最終弁論の内容をご理解頂ければ、我々の主張は「有罪の証拠がないから推定無罪」という弱々しいものではなく、積極的な無実の証明であることがお分かり頂けると思います。

最終弁論は、冒頭の「はじめに」と置かれた第一部で、検察論告の基本姿勢を激しく批判したことは、上に添付した第十回公判の報告で述べたところです。

その後、第二部では、証拠から認定される事実を時系列順に幅広く拾っています。そして第三部では無実の論証、第四部では検察論告への反論が行われています。

第三部の無実の論証は、5つの項目に分かれています。

1 「株式報酬も源泉徴収されていると思い込んだことは自然なことである」

2 「株式報酬が源泉徴収されておらず、別途確定申告が必要であると気付かなかったことも自然なことである」

3 「確定申告の時点で、株式報酬が源泉徴収されていないことに気付くきっかけはなかった」

4 「故意犯であれば説明のつかない事実が多数ある」

5 「故意犯であれば必ず存在する事実が存在しない」

今回は、まず「無実の論証 (1)」として「株式報酬も源泉徴収されていると思い込んだことは自然なことである」について述べたいと思います。

この点に関し、弁論では以下の7点が挙げられ、各項目に詳細な論証が加えられています。

(1) 「会社員の給与所得は、全て源泉徴収されているとの認識が、社会の常識的感覚である」

(2) 「外資系証券においても株式報酬は源泉徴収すべきであると考えられており、当時これを源泉徴収している外資系証券が存在し、現在はクレディ・スイス証券でも源泉徴収を行っている」

(3) 「被告人が、ソロモン・ブラザーズ証券時代に受領していた賞与の株式連動型報酬は源泉徴収されていた」

(4) 「株式報酬も源泉徴収されているとの被告人の思い込みの内容は、まさに正しい法解釈であり極めて合理的なものである」

(5) 「株式報酬と現金給与がともに記載された唯一の書面であるコンペンセーション・シートには、株式報酬と現金給与とで源泉徴収の有無、税務に関する取扱いが異なる旨の記載は一切なかった」

(6) 「クレディ・スイス証券では、株式報酬も源泉徴収されているかの如き、積極的誤解を与える書面が従業員に交付されていた」

(7) 「ベア―・スターンズ証券において交付された書面では、株式報酬と現金給与とで源泉徴収の有無、税務に関する取扱いが異ならないことを示唆する記載があった」

解説を加えます。

(1) 「会社員の給与所得は、全て源泉徴収されているとの認識が、社会の常識的感覚である」

多くの説明を要しないかと思います。

そもそも源泉徴収制度は、サラリーマンに「煩わしい税務のことなんか気にしないで、せっせと働け。税金は取りっぱぐれることなく取り立てておくから」というもので、選択の余地はありません。私もサラリーマンになって、何の疑問も感じずにそれを受け入れ、20年以上の間、多額の納税をしてきました。その源泉徴収制度の基本理念を反故にして、サラリーマンの国家システムに対する信頼を踏みにじるような国税局の所作には、彼らの品性を疑うものです。

(2) 「外資系証券においても株式報酬は源泉徴収すべきであると考えられており、当時これを源泉徴収している外資系証券が存在し、現在はクレディ・スイス証券でも源泉徴収を行っている」

この点に関しては、10回に亘る公判の中で、前半のヤマ場であった、検察側証人クレディ・スイス証券法務・コンプライアンス本部長の証人尋問が鍵となります。その彼ですら、入社時に税務担当者から株式報酬が源泉徴収されていないことを聞かされた時には、「やや意外」に感じ、個人的には源泉徴収すべきであると考えていたものです。

また当時から、ゴールドマン・サックス証券においては、株式報酬を源泉徴収しており、必ずしも株式報酬が源泉徴収されていないことが「外資金融の常識」ではないことが明らかにされています。また、現在では、クレディ・スイス証券でも、株式報酬を源泉徴収しています。

(3) 「被告人が、ソロモン・ブラザーズ証券時代に受領していた賞与の株式連動型報酬は源泉徴収されていた」

国税局の取り調べで、「ソロモン・ブラザーズでは株式報酬を受け取っていたか」と聞かれ、私は分かりませんでした。「何かそのようなものをもらっていたような気もするが。はっきりとは分からない」。私にとっては、給与や賞与が現金だろうが株式だろうが、あまり気にしていなかったので、前職での状況を聞かれてもにわかには答えられなかったものです。

その後、ソロモン時代の後輩に聞いたところ、「賞与の一部が、会社の株式に価値が連動する現金報酬でしたよ」とのことでした。経済的には株式と同じですが(例えば、将来、株価が倍になればこの報酬の将来価値も倍になる)、税務処理は現金と同様に源泉徴収されていました。

私としては、長らく外資系証券に勤めて、一貫して同じ税務処理(といっても、源泉徴収票を税理士に渡すだけ)をしていて、何ら問題が起きていなかったのに、突然の脱税嫌疑を受けたということです。

(4) 「株式報酬も源泉徴収されているとの被告人の思い込みの内容は、まさに正しい法解釈であり極めて合理的なものである」

この公判が始まり、クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件のことが世に知れる中で、複数の税務の専門家の方々からこの件に関しメッセージを頂きました。

私の認識は、株式報酬も会社から払われる給与・賞与である以上、何の疑いもなく、ただ単純に「所得税は給与天引き」だと思っていたものです。それが法解釈上正しいとかそういったことは全く考えたことはありませんでした。

しかし、実際には会社は源泉徴収を行っておらず、株式報酬の所得税の申告漏れ(過少申告)となったものです。非常に特殊な税務を、一般社会人が理解していないことをもってして、捜査権力は犯罪と認定しようとしているというのが私の印象です。

ところが、法解釈次第では、株式報酬も会社に源泉徴収義務があるということが判明しました。

所得税法上、源泉徴収義務を負うのは、「国内において給与等の支払いをする者」(所得税法183条)と規定されています。そして、今回の事件では、支払い者がスイスのホールディング・カンパニーであるクレディ・スイス・グループAGなのか、日本法人であるクレディ・スイス証券なのかが争点となります。

株式報酬の支給金額を決定していたのは日本法人のクレディ・スイス証券であり、費用を実質的に負担していたことから、「当該支払いに係る経済的出損の効果の帰属主体」はクレディ・スイス証券と解することができ、そうするとクレディ・スイス証券には源泉徴収義務があったものです。

弁論では、「被告人が、株式報酬も含めて全ての給与は会社に源泉徴収されていると思い込んでいたというのは、何も被告人が荒唐無稽な思い込みをしていたものではなく、法律の正しい解釈によったものであり、極めて合理的なものである」と主張しています。

(5) 「株式報酬と現金給与がともに記載された唯一の書面であるコンペンセーション・シートには、株式報酬と現金給与とで源泉徴収の有無、税務に関する取扱いが異なる旨の記載は一切なかった」

コンペンセーション・シートとは、年一回の年棒更改の際に手渡される書面のことです。この書面には、現金給与・賞与、株式報酬、退職金積立等の数字が記載されています。会社の書類全ての中で、このコンペンセーション・シートが唯一、現金給与と株式報酬を共に記載する書面です。そこには、源泉徴収の有無であるといったような税務に関する記載は一切なく、それらの税務に違いがあると想起されることはありませんでした。

(6) 「クレディ・スイス証券では、株式報酬も源泉徴収されているかの如き、積極的誤解を与える書面が従業員に交付されていた」

私は日々業務に忙殺される中で、会社の総務関係の書類に目を通すなどということは一切ありませんでした。それが普通の会社員の感覚だと思います。

ところが、国税局・検察は、会社の膨大な量の総務関係書類を調べ、重箱の隅を突くように、「ここにも『会社は源泉徴収義務はない』と書いてある」であるとか「ここには『これは税務に関する重要な書類だから保存しておくように』と書いてある、税務とは確定申告のことにほかならないから自己申告義務があると言っていることと同じだ」とか、難癖をつけてきます。

それで弁護団も、会社の総務関係の書類を調べてみると、逆に「会社は源泉徴収をする権利を有する」(「義務はない」「権利を有する」が矛盾しないことは言うまでもありません)であるとか、全世界職員向け(実際には日本の職員には該当しない)に、「税金相当分の株式を売却して控除された金額を支給する」といった文言も見つかりました。

結局、会社は、「株式報酬に関しては、会社は源泉徴収しないから、別途自己申告しなくてはならない」という明示的な申告義務に関しては一言も言っていないということです。

(7) 「ベア―・スターンズ証券において交付された書面では、株式報酬と現金給与とで源泉徴収の有無、税務に関する取扱いが異ならないことを示唆する記載があった」

今回の税務調査対象年の確定申告時には、私は既にベア―・スターンズ社に移籍していましたが、その雇用契約の中で、「現金支給・株式支給の税務は会社ではなく、個人の責任である」と、現金と株式の税務の違いはないかのような文言がありました。

弁論では、「被告人が同雇用契約書の内容を確認していたとは到底思えないものの」としながらも、「このような書類を被告人が目にしたとすれば、無意識に、株式報酬も源泉徴収されるものとの思い込みを強めたとも考えられないわけではない」と主張しています。

事実は、「会社の書類なんて読むわけないでしょ」ですが、検察が「読んだはずだ」とするのであれば、「読んだら、逆に、こんな思い込みを強める記述もある」というのが弁護団の主張です。典型的な、検察の「証拠のつまみ食い」が明らかです。

以下、最終弁論解説は続きます。

本当に単純な話なんですけどね。サラリーマンの給与の所得税は給与天引き、って思うことがそんなに変ですか?

2/4/2013















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part 4

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ここをクリック→ 嘆願書まとめ

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category: 訴訟記録等

2013/02/04 Mon. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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