「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (258) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (2)」 2/6/2013 

#検察なう (258) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (2)」 2/6/2013

(強制捜査から1513日、判決まであと23日)

最終弁論での無実の論証では、以下の5つの項目を挙げています。

1 「株式報酬も源泉徴収されていると思い込んだことは自然なことである」

2 「株式報酬が源泉徴収されておらず、別途確定申告が必要であると気付かなかったことも自然なことである」

3 「確定申告の時点で、株式報酬が源泉徴収されていないことに気付くきっかけはなかった」

4 「故意犯であれば説明のつかない事実が多数ある」

5 「故意犯であれば必ず存在する事実が存在しない」

今回は、「無実の論証 (2)」として、「株式報酬が源泉徴収されておらず、別途確定申告が必要であると気付かなかったことも自然なことである」という点について述べたいと思います。

この点に関し、弁論では以下の7点が挙げられ、各項目に詳細な論証が加えられています。

(1) 「クレディ・スイス証券は、従業員に対して法令遵守を指導徹底する一方で、こと株式報酬の税務申告については指導していなかった」

(2) 「株式入庫通知メモランダム等は日本語で作成されておらず、注意を喚起する体裁でもなかった」

(3) 「株式報酬セミナーの内容は、出席して説明を聞けば申告漏れが生じない内容であったものの、参加が任意であり、被告人は参加しなかった」

(4) 「税務に関して従業員間での情報交換はなく、税務部門も被告人所属の債券部とは別フロアに置かれていた」

(5) 「注意力、英語力ともにトップレベルであり、かつ税理士を妻に持つコンプライアンス部長ですらも、株式報酬が源泉徴収されていないことに気付くことはなかった」

(6) 「株式報酬受給者300人中100人が無申告であった」

(7) 「クレディ・スイス証券の従業員の中でも、被告人はとりわけ総務関係、株式報酬、税務に関しての関心、注意力が乏しく、株式報酬が源泉徴収されていなことに気付かない可能性の高い部類の者であった」

解説を加えます。

(1) 「クレディ・スイス証券は、従業員に対して法令遵守を指導徹底する一方で、こと株式報酬の税務申告については指導していなかった」

外資系証券社員による株式報酬の申告漏れは、クレディ・スイス証券に限ったことではありませんでした。そのほかの複数の会社でも100人単位で申告漏れが指摘されています。それでは当時、なぜ私だけが告発・起訴されなければならなかったのでしょうか。

そして確信を持って言えることですが、もし私がクレディ・スイス証券の社員でなければ、告発・起訴されることはなかったものです。吊るし首にされるスケープ・ゴートはクレディ・スイス証券からでなければならないというのが、捜査当局の事情です。なぜか?それは「納得感」の問題です。

クレディ・スイス・グループは、全世界的には非常に認知度も高く、優良な金融コングロマリットです。ところが、いかんせん東京マーケットでは、素性が悪いとされています。それは過去の負の遺産があるからです。この件に関しては以前、ブログで書いていますので是非お読み下さい。

ここをクリック→ 経過報告改め #検察なう (74) 「クレディ・スイスへの差別」

捜査権力は、摘発する対象のイメージが悪ければ悪いほど、「正義の味方」というイメージを高めることができます。そうした彼らお得意のイメージ戦略から、外資系証券の中で白羽の矢が立ったのがクレディ・スイス証券であったということがまず初めにあったということです。

中途半端な業界の知識のある方にとってのイメージは、「クレディ・スイス証券の法務・コンプライアンスは杜撰である」ということになるのでしょうが、内情をよく知った者に言わせると、実は全く逆です。とにかく金融庁には頭が上がらないため、業界でもコンプライアンスの厳しさは間違いなく一・二を争います。

それでも100人もの完全無申告、残りの税務調査対象者もほとんどが申告漏れという事態に、会社は相当パニックになったものと思われます。

初期の報道にあった「会社は十分な税務指導をしていた」というのは、会社の正式なコメントではないと理解していますが、それは、取材に対応した社員がその場を取り繕うために誤った情報を伝えたものです。会社のスタンスは、検察側証人法務・コンプライアンス本部長の公判での証言にあったように、「会社は指導していない。なぜならそれは会社の責任ではないから」というものが正しいものです。それは至極真っ当に思えるものです。

(2) 「株式入庫通知メモランダム等は日本語で作成されておらず、注意を喚起する体裁でもなかった」

国税局の取調べで、最も時間が割かれたのが、この株式入庫通知メモランダムと言われる書面を読んだかどうかというものです。会社の総務関係の文書(しかも英文)に全て目を通す人はどれだけいるのでしょうか。

勿論、そうした人もいると思われますが、私は該当しません。「そんな暇があったら仕事するよ」と思っていました。

以前のブログにメモランダムの現物を添付していますので、興味のある方はご覧になって下さい。そしてこの書面が手元に来て、読む気が起こるのか、あるいは読んで株式報酬が源泉徴収されていないということに気付くのかを実感して頂けると幸いです。

ここをクリック→ 経過報告 (16) 「高校後輩からのメッセージ&会社の指導=メモランダム」

(3) 「株式報酬セミナーの内容は、出席して説明を聞けば申告漏れが生じない内容であったものの、参加が任意であり、被告人は参加しなかった」

会社では、税務指導と銘打ったものはしていませんでしたが、株式報酬に関するセミナーを毎年開催していたということを検察の取調べ開始後に知りました。

国税局の取調べにおいて、セミナーに関して聞かれた時には、全くそうした記憶がなかったため、その後、会社の元部下や元同僚に聞いてみました。私の周りでは、例外なくセミナーの存在すら知らないという状況です。「あったかどうかは分かりませんが、私の知るところではないです」「そんなのなかったでしょ。あったらこんなに申告漏れの人がでるわけないじゃないですか」というものでした。

会社が開催していたというセミナーは、給与プログラムの一部である株式報酬に関するものですが、別にその仕組みを完全に理解していないからといって、もらえるものがもらえなくなるわけでもなく、なんら不都合はないと思っていました。

もしそのセミナーの存在を知ったにしても、当時は任意参加のセミナーに出るほど暇でもありませんでしたし、給与プログラムに関する興味も皆無でした。しかし、もし私が脱税をしようとするのであれば、必ず出席して内容の理解に努めたと思います。

(4) 「税務に関して従業員間での情報交換はなく、税務部門も被告人所属の債券部とは別フロアに置かれていた」

これに関しては、最近のブログをご参照下さい。

ここをクリック→ #検察なう (247) 「過失でも矛盾のない証拠」

(5) 「注意力、英語力ともにトップレベルであり、かつ税理士を妻に持つコンプライアンス部長ですらも、株式報酬が源泉徴収されていないことに気付くことはなかった」

弁護側の要求により、検察は、法務・コンプライアンス本部長の部下であるコンプライアンス部長の検面調書を開示しました。その調書に記載された、コンプライアンス部長も無申告であり、税理士である彼の妻共々、株式報酬は源泉徴収されていると思っていたという事実は、多くの人を驚かせました。私にとっては当然のことなので、別に驚くことはありませんでしたが。

(6) 「株式報酬受給者300人中100人が無申告であった」

私が国税局の取調べで、この指摘をした時のやり取りは忘れることはありません。査察官はうれしそうに私に言いました。

「八田さん、皆さんおっしゃるんですよ。『みんな脱税してるのに、なんで自分だけが捕まえられなければならないんだ』って」

彼らの頭の中は、「人を見たら脱税犯だと思え」ということなんでしょうか。私はそれに答えました。

「まさか。私はそんな下等な考えは持ち合わせてません。私は、彼らもみんな私と同じく過失で無申告だと思ってます。会社の給与を、1/3の人間が脱税しようというのは、道を歩いている人の3人に1人が万引きをしたことがあるということより、はるかに異常なことなんですよ。それは何らかのシステム的な問題なんじゃないんですか。なぜその背景を理解しようとしないのですか」

査察官が全く聞く耳を持っていなかったことは言うまでもありません。

(7) 「クレディ・スイス証券の従業員の中でも、被告人はとりわけ総務関係、株式報酬、税務に関しての関心、注意力が乏しく、株式報酬が源泉徴収されていなことに気付かない可能性の高い部類の者であった」

私を知る者で、「数億円の申告漏れをうっかりやった」と聞いて、「ははは、彼ならやりそうだね」と言う者はいても、「なぜ?彼が?」と言う者はいないと思います。

私の人となりを理解して頂くには、嘆願書を読んで頂くのが手っ取り早いものです。

ここをクリック→ #検察なう (130) 「嘆願書まとめ」

弁論では、この事項のまとめとして、以下のように主張しています。

「以上のとおり、クレディ・スイス証券では、従業員に対して株式報酬の税務申告について指導をせず、株式報酬の税務申告について日本語や目立つ記載で作成された書面を従業員に配布することもなかった。また、株式報酬に関するセミナーに被告人は出席せず、他の従業員や税務部門の従業員から株式報酬の税務について情報交換する機会もなかった。税理士を妻に持つコンプライアンス部長ですら株式報酬が源泉徴収されていないと気付くことができなかったのである。他の一般的な従業員と比べても総務関係、株式報酬、税務に関して関心、注意力が低かった被告人が、株式報酬は源泉徴収されておらず、別途確定申告しなければならないことに気付かなかったことも全く無理からず、むしろ自然である」

無実の論証は続きます。

2/6/2013















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part 4

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part 3

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part2

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事


ここをクリック→ 嘆願書まとめ

ここをクリック→ 上申書まとめ






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category: 訴訟記録等

2013/02/06 Wed. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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