「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (261) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (5)」 2/11/2013 

#検察なう (261) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (5)」 2/11/2013

(強制捜査から1518日、判決まであと18日)

今回は、「故意犯であれば説明のつかない事実が多数ある」という論点の第二弾です。

第一弾はこちら。

ここをクリック→ #検察なう (260) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (4)」

(8) 「税務調査開始後、自身が受領してきた株式報酬の金額、申告漏れとなった税額の認識がなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が不可能である」

(9) 「税務調査開始後、ストック・オプションを付与されていたことを被告人が記憶していなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的な説明が極めて困難である」

(10) 「税務調査開始後、被告人が平成17年から平成19年にかけて5回にわたって株式売却を行ったことを被告人が記憶していなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が極めて困難である」

(11) 「税務調査開始後、株式入庫通知(メモランダム)を受け取っていたことを失念していた事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が極めて困難である」

(12) 「被告人が税務当局との間で納税額をめぐって強い折衝を行っていない事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が困難である」

(13) 「被告人が税務調査開始後、税理士を目指して真剣に勉強を始めた事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が極めて困難である」

(14) 「被告人が納税用の円資金を確保していなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的な説明が困難である」

解説します。

(8) 「税務調査開始後、自身が受領してきた株式報酬の金額、申告漏れとなった税額の認識がなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が不可能である」

株式報酬の申告漏れは税理士からの連絡によって知ることとなりました。ところが当初は、申告漏れの事実を知ったにしても、税理士は当然ですが、私ですら申告漏れの金額の認識がありませんでした。

税務調査は2008年11月6日に始まりましたが、その二日後に友人とやり取りしたメールです。

友人 「考えようによっては、今年入ったら来年入られないからラッキーなのかも。」

私 「多分、数千万円は払わないといけないだろうから、ラッキーとは言えんなあ。」

実際に申告漏れとなったのは、3年間で約3億8千万円(そのうち平成17年度の約3千万円が起訴対象からはずされたことはこれまで説明してきたことです)。脱税をする意図があったのであれば、当然、その申告漏れの金額を知っていることだと思われます。それにも関わらず、「数千万円」の追徴課税額の見込みというのは、故意があったとすればいかにも不自然です。

そして具体的な申告漏れの金額を知るのは11月20日に、税理士からの連絡によって、国税局側の主張として3年間で3億円強の株式報酬の申告漏れがあるとの事実を知らされた時です。

その直後に友人に送ったメールです。

私 「追徴額が億を越えそう。辛すぎる。」

弁論では、以下のように主張します。

「このように、被告人が税務調査開始後も、国税局に指摘されるまで、自身が申告しなかった株式報酬の金額、ほ脱税額の認識がなかったことは、被告人が故意犯であるとすると全く説明ができないものである。」

即ち、税務調査開始後に、申告漏れとなった株式報酬の金額及びほ脱税額の認識がなかったことそのものが無実の証拠です。

(9) 「税務調査開始後、ストック・オプションを付与されていたことを被告人が記憶していなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的な説明が極めて困難である」

税務調査開始の連絡を税理士からもらった後、やり取りをする中で、調査の対象が会社の株式報酬であることを知りました。その時の、税理士に対する返答で私は彼に

「ストックオプションは支給されていませんでした」

と答えています。実際にはストックオプションを一度行使して、それによって現金を受け取っているにも関わらず、そのことをすっかり忘れていたものです。

ストックオプションとは、「株式をあらかじめ決められた価格で買うことができる権利」で、もし現物株の市場価格がその決められた価格よりも値上がりしている場合、価値が生まれるものです。実際のオプション行使においては、「株式を買う」ことはなく、あたかも、その決められた価格で買い、それと同時に市場価格で売却するように差額を受け取るだけです。

現物株は4回(3年間年1回+退職時)受け取っていたため記憶にあったものの、ストックオプションを行使して現金を受け取ったことは税務調査開始時には記憶になく、税理士にはそのように答えました。

そしてその後、会社に確認した結果、一度ストックオプションを行使していたことを知らされました。

税理士にストックオプションをもらっていなかったと虚偽の供述をする必要はありませんし、現物株を受け取っていたとしながら、ストックオプションは受け取っていないということのメリットも全くありません。

弁論では、以下のように主張します。

「故意犯であれば、申告漏れとした報酬の内容は明確に理解しているのが通常であり、申告漏れの対象とした重要な収入を全く失念してしまうことは合理的に説明することは極めて困難である。」

即ち、税務調査開始直後に、ストックオプションを受け取っていたことを失念していた事実そのものが無実の証拠です。

(10) 「税務調査開始後、被告人が平成17年から平成19年にかけて5回にわたって株式売却を行ったことを被告人が記憶していなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が極めて困難である」

私は、現物株を合計4回受給しています(及びストックオプションの行使が1回)。実際には、毎回の現物株受給の都度売却していましたが、税務調査開始直後は、そのことをすっかり忘れており、退職時にまとめて売却していたと勘違いしていました。

会社に株式受給の状況を問い合わせる際、「退職時に一括売却している」旨伝え、税理士にも「会社在籍時に取引は最後の売却1回のみ。それまではもらえたものはそのままほっておいたという状況です」と伝えています。

売却という行為が記憶に定着しにくかったのは、私にすれば、一般的な感覚で言う「購入」とセットになった「売却」ではなく、あくまで現物支給されたものを「現金化」したという機械的な事務作業に過ぎなかったからです。株式報酬もあくまで給与の一部であり、私にすれば、現金化した時点で、その給与が元々現金であったか株式であったかはどうでもよかったものです。

受給の都度売却していたことは、調べてすぐに分かり、「あー、そうだったな」と思い出しました。

税務調査開始直後に、その売却実績を完全に失念していたことは、株式報酬に関して意識が非常に低かったことを表しています。

弁論では、以下のように主張します。

「被告人は、在籍中、報酬にかかる株式を売却していたものの、当該売却は毎回全株売却による現金化という機械的事務処理的要素の高いものであり、また、被告人は株式報酬にかかる説明会の案内メールを見落とす程に株式という報酬形態への関心は低かったのであり、会社の退職に起因して行った最後の1回の売却以外の売却については、事務処理的な事項として記憶が残っていなくとも全く不合理ではない。」

即ち、税務調査開始直後に、株式の複数回の売却実績を失念していた事実そのものが無実の証拠です。

(11) 「税務調査開始後、株式入庫通知(メモランダム)を受け取っていたことを失念していた事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が極めて困難である」

税務調査開始時は、私はカナダのバンクーバーにいました。そのため、国税局からの質問は、全て文書で税理士を介して私に届けられました。それを私がメールで回答し、彼が国税局に伝えていたものです。

国税局の質問の一つに、会社の株式入庫通知(メモランダム)に関するものがありました。税務調査が始まったばかりの時でもあり、私も何が何やら全く分からない状態だった時です。

「付与または保有している株数、市場価格、円換算額の報告に関するメモランダムを見たことがありますか、又は現在保管されていますか」と尋ねられたことに対する私のメールでの回答は以下の通りです。

「社内webで残高が管理されているのは知っていましたが、文書があったかどうかは記憶にありません。というか、ないのではないかと思いますが。」

その時点では、株式入庫通知(メモランダム)のことを完全に忘れていました。

社内webで残高が管理されているのを知っていると言っている以上、株式入庫通知(メモランダム)を見た記憶がないからといって、そこに記載されている情報を知らなかったという言い訳をしようとしているのではないことは明らかです。また、その後、査察部の取調べが開始し、現物を見せられた際には、「書式に見覚えがあるから、確実に受け取っていたはずだ」と答えています。

これらの状況は、私が、税務調査開始直後は、ハードコピーで配布された株式入庫通知(メモランダム)のことを完全に失念していたことを示すものです。脱税犯とすれば、この株式入庫通知(メモランダム)は最重要書類です。

弁論では、以下のように主張します。

「株式入庫通知(メモランダム)は、実際に受給した株式報酬の確定金額を示す唯一の書類であり、仮に故意犯であれば、会社が株式報酬の存在を税務署に知らせる可能性を吟味等するうえで熟読玩味したはずのものである。株式入庫通知(メモランダム)を受け取っていたことを被告人が失念していた事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明は極めて困難である。」

即ち、税務調査開始直後に、株式入庫通知(メモランダム)のことを完全に失念していた事実そのものが無実の証拠です。

(12) 「被告人が税務当局との間で納税額をめぐって強い折衝を行っていない事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が困難である」

私は、税務調査が始まってから自分の申告漏れの事実を知った当時、国税局と争うつもりは全くありませんでした。過少申告が事実である以上、それは自分の過誤であり、責任を感じて反省していたものです。

私がファイティングポーズを取るのは、強制捜査以降です。それは、強制捜査が、私の申告漏れを故意であるとするものであり、それは事実とは異なるからです。

強制捜査以前の情報収集の中で、同じく税務調査を受けている会社の友人から、「是非八田さんの税理士にも戦うように言って下さい。少なくとも株に関しては退職所得で税率は半分にしてもらいましょう」と言われても、私は関心を払っていませんでした。

これは、退職をきっかけとして受給した株式報酬に関する解釈で、国税局はそれを給与所得として認識していましたが、退職が受給のきっかけであり、自己都合で退社した場合には受給の権利を喪失するものである以上、退職金として税務処理すべきだという主張です。

この当時、私は「あくまで過少申告が自分の過誤である以上、払えというものは黙って払おう」とだけ思っていました。別に、そこで税額を争うことの意義を感じていなかったためです。

私は、友人のそのメールを税理士に転送しながら、こう書いたのみです。

「これが旧同僚のメールです。私はあまり詳しいことは分かりません。自分では違法なことをしていたつもりではないのですが、標識を見落として『知らなかった』では通用しないということもよく理解できます。」

脱税犯の動機は、税金を払いたくないということだけです。

弁論では、以下のように主張します。

「このように税務署に申告漏れが発覚した後に、納税額を少なくしようと抵抗せず、かえって過少申告となったことを反省している事実は、故意犯であれば合理的な説明が極めて困難である。」

即ち、税務調査開始後に、納税額を少なくしようする努力を全くしていない事実そのものが無実の証拠です。

(13) 「被告人が税務調査開始後、税理士を目指して真剣に勉強を始めた事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的説明が極めて困難である」

クレディ・スイス証券の税務調査対象者300人のうち、100人が株式報酬の無申告、残り200人も何らかの申告漏れで修正申告をさせられている事実から、外資系金融従事者は一般に税務に疎いことが分かります。それは経費が認められないサラリーマン一般にある傾向ですが、外資系金融従事者には特に顕著です。

その理由は、年功序列的に給与が決まる日本の会社と違い、給与の上方硬直性が極めて低いことによります。費用対効果の問題です。勿論、個人差はありますが、一般的な傾向としては、「そんなことに煩わされるよりは、仕事をした方がリターンが高い」と考えるものです。

私は、転職期間中でもあり、将来手に職をつけるために税理士になることを真剣に考えました。外資系金融従業者のマインドが分かり、彼らの弱点である税務に精通していれば、彼らを顧客として食うに困ることはないと踏んだためです。

TACの渋谷校に入学し、税理士コースを(当初インターネット講座で、カナダのインターネット環境が悪く、ストリーミングがうまくいかないので、後にDVD講座に切り替えて)受講しました。

受験地を故郷の金沢に決め、試験直前の夏には、金沢に帰省して、TAC金沢校で実地受講しようと思っていました。そのために、高校卒業以来、帰省時にしか使っていなかった自分の部屋に親がエアコンをつけてくれまでして、準備を整えていました。

ところが勉強を始めると、まず試験の性格が、知性を問うものではなく、反復学習による記憶を問うものだということが分かりました。仕事の内容もクリエイティブなものではなく、狩猟民族的な発想の私には相容れないものであることが分かってきました。

2008年12月から勉強を始め、翌年4月に受験票を提出する段になり、「このまま受験すれば受かってしまい、後戻りはできない」と考え、受験票に収入印紙を貼った段階で踏み止まりました。

弁論では、以下のように主張します。

「仮に、故意犯であれば、税務調査期間中は自身の脱税に対する処分に戦々恐々としていたはずで、このような前向きな発想をもつとは考えにくく、正しい納税を実現する職業である税理士を目指して真剣に勉強することなど通常考えられない。」

即ち、税務調査開始後に、税理士を目指して真剣に勉強を始めた事実そのものが無実の証拠です。

(14) 「被告人が納税用の円資金を確保していなかった事実は、被告人が故意犯であるとすると合理的な説明が困難である」

私は、資産管理として、資産の通貨分散をしていました。円、ドル、ユーロ、その他通貨を分散保有することで、為替のリスクを少なくしようとしたものです(円を100%保有する場合、円安がリスクとなります)。

検察官の主張は、「結局のところ、あなたは、申告書に添付した源泉徴収票は株式分を含まないことに気付いていながら、過少申告だと指摘されたら納税しよう、気づかれなければそのまま納税を免れようといった気持ちで、殊更株式報酬の除かれた申告書を提出させたのではありませんか。」というものです。

そうであれば、通貨分散において、当然、納税用の円資金を別枠管理していたはずです。

ところが、実際は、納税額がドル円レート約120円で計算されており、納税時は100円を大きく割り込んでいたこともあり、納税用の円資金の手当てができずに奔走することになります。

とにかく金目のものは何でも売って納税資金をかき集めるということになりました。

脱税を意図していたのであれば、当然、発覚した場合のダメージコントロールも考慮したはずであり、納税資金の確保はその最重要項目です。

弁論では、以下のように主張します。

「税務当局に発覚した場合の納税資金の考慮を資産管理上行っていなかったことは被告人が故意犯であると説明が困難である。」

即ち、納税用の円資金確保に奔走せざるをえなかった事実そのものが無実の証拠です。

以上、弁論においては、14項目の「脱税の故意があったとすれば、説明が困難あるいは不可能な事実」を挙げてその評価をしています。これら事実は、弁論で突然主張されたものでなく、10回の公判を通して明らかにされたものです。ところが検察はこうした無罪方向の事実を全く無視して、「過失でも矛盾がない証拠」を有罪方向に曲解して論告を構成しています。

これだけの矛盾がありながらも起訴をするということは、検察が無能であるか、悪意があるか(あるいはその両方か)のいずれかを示すものです。国家権力の中でも並ぶところのない強大な権力を持つ捜査権力がこのような状況であることは、国民全体にとって不幸以外の何物でもありません。

無実の論証はさらに続きます。

2/11/2013















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

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ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

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category: 訴訟記録等

2013/02/11 Mon. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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