「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

10« 2017 / 11 »12
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.

#検察なう (264) 「最終弁論解説 ~ 検察論告に対する反論 (2)」 2/18/2013 

#検察なう (264) 「最終弁論解説 ~ 検察論告に対する反論 (2)」 2/18/2013

(強制捜査から1525日、判決まであと11日)

本日の本論に入る前に、ツイッターのフォロワーの方から寄せられた質問の感想を書きます。その質問は、

「株式報酬の課税率を調べることはなかったのですか?」

なかなか興味深いと思ったのは、まず同じ給与・賞与である株式報酬の課税率が、現金給与・賞与と異なるかもしれないという発想が全くなかったので、「なるほど、そのように考える人もいるのか」と感じたのと同時に、そもそも、給与天引きされている税率をサラリーマンは気にするのだろうかと思いました。

いかなる税率であれ、天引きされるものはされるので、気にしても仕方ないと思うのは私だけでしょうか。

「そういえば、検察の取り調べの際に、所得税の最高税率を問われて、37.5%と答えて怪訝な顔をされたなあ。」と思い出したので調べてみると、今は所得税の最高税率は40%なんですね。しかも過去に37.5%だったことはないし。多分、1999年~2007年の37%を勘違いしていたのだと思います。但し、住民税を12.5%とも思っていたので(正解は13%......でいいんですよね?)、「所得税の最高税率と住民税合わせて50%」というのは、2007年以前であれば合っているので、まあ大差ないということなのではないかと思います。

本日の本論に入ります。

検察論告に対する反論の二点目の論点、「『被告人が、株式報酬が源泉徴収されておらず、自らの申告が過少なものであることを認識していたことを基礎づける各事実』に対する反論」についてです。

田中周紀氏著の『国税記者 実録マルサの世界』をお読みになって、クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件のことを知った方も少なくないと思います(未読の方は是非どうぞ)。

ここをクリック→ Amazon 『国税記者 実録マルサの世界』

初版が上梓された時点では、私の起訴はまだなされていなかったのですが、版を重ねた際、クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件の章の結びが加筆修正されています。

その部分を引用します。

「八田の事情聴取は11月3日から再開され、同月8日に終了した。9月12日にスタートしてから合計17回にものぼった聴取の中で、特捜部は査察部が調べた内容を事実上破棄して、改めて独自に調べた内容を八田に突きつけてきた。これに対して八田は、詳細な事実の裏付けとともに「意図的な仮装・隠蔽はしていない」という主張を展開し、一歩も引かなかった。主張を変えない八田が途中で逮捕されるという事態は、最後まで起こらなかった。(以上、初版と同じ。以下、第二版での加筆修正部分)

だが翌月7日、特捜部は八田を在宅起訴した。決め手となったのは、07年3月に八田が受け取ったストックオプションの権利行使に関する契約書。査察部の聴取の段階では示されておらず、特捜部が独自に見つけ出したものだった。八田が解説する。

「権利行使の際に、契約書に書かれたいくつかの選択肢を選んで署名したのですが、選択肢の中に『会社が源泉徴収している場合に限り、以下のどれかを選べ』というものがあり、私はその設問自体を斜線で消していました。そこに斜線を入れたのは、契約書の書き方についてシンガポールにいる経理部の社員に電話で聞いた際、そうするよう指示されたからです。内容は全く読んでいませんでした。ところが、この部分に目をつけた検察は『<会社が源泉徴収している場合に限り>という条件の設問に斜線を引いているのなら、会社が源泉徴収していないことを知っていたと解釈できる』と判断したのです。検事にこの契約書を見せられた時、私にはその存在すら記憶にありませんでした」

面子をかけた特捜部は、八田と話した社員を日本に呼び寄せて聴取するまでの執念を見せる。社員は「相談を受けたかどうか思い出せない」としながらも「何も理由を言わずにただ斜線を引くよう助言することは絶対にあり得ない。必ずその理由も説明していた」と証言。これに自信を得た特捜部は、八田の起訴に踏み切った。査察部の強制捜査から丸3年。戦いの場は法廷に移され、八田はブログやツイッターを利用して自らの潔白を主張し続ける考えだ。」

公判が始まった時点では、ストック・オプションの行使指示書は、検察の最有力証拠と目されていました。

そのストック・オプションの行使指示書とはこれです。原本は14ページに亘る契約書です。私が、税務調査開始後に、シンガポールのEC部(エグゼブティブ・コンペンセーション部。私は、ずっと経理部と呼んでいたのですが、正しくはそのような名称だそうです)のスタッフから取り寄せたものです。

ここをクリック→ ストック・オプション行使指示書

このPart IVの設問を斜線で消していることが、検察の主張する「脱税の決定的証拠」ということです。

あっぱれ!「こじつけ大魔王」の称号を検察に恭しく授けたいと思います。本当にすごいと思います。膨大な会社の資料からこれを見つけ出し、何度説明しようとしても、「『会社が源泉徴収していない場合に限り』、あれ『している場合に限り』かな.....を消去してるから......え、で、どうなるんだっけ?」と困るような証拠を、脱税の故意の証拠として起訴するのですから。是非、原文に当たって、その「こじつけ感」を実感して下さい。

そもそも、私が斜線で消去した部分の意味を理解しているのであれば、「斜線で消去せよ」との指示があるわけでもないので、敢えて誤記入を防ぐために斜線を引くこともないと思います。あるいは、私が脱税をしようとしているのであれば、わざわざ会社が源泉徴収をしていないということを理解していると書面に残すというのも不自然だと思います。

ところが、これは公判の中で「潰れた」証拠となりました。

私が、シンガポールのEC部のスタッフに相談して、この行使指示書を作成したことが裏付けられたからです。

#検察なう (215) 「ストック・オプション行使指示書の日付のミステリー」

ここをクリック→ #検察なう (215) 「ストック・オプション行使指示書の日付のミステリー」

検察論告でも、この論点に関する主張はいきなりトーンダウンしています。

検察論告は、冒頭陳述の主張から一歩も出ず、ボリュームだけが2倍に水増しされたものだということは述べたところです。

冒頭陳述の中でストック・オプションの行使指示書に関する主張は1 2/3ページを費やされているにも関わらず、論告では1 1/2ページに留まっています。本文の分量が、冒頭陳述の24ページに対し、論告が44ページとなっていることと比較対象すると相対的に重要度はかなり後退しています。

そして冒頭陳述での表現は、「自ら前記行使フォーム3通の当該部分にいずれも手書きで斜線を引き、当該部分の適用がないことを明確にした上で行使フォームを作成していた。」と太字で強調されていますが、論告では細字で「このことは、被告人が自ら「株式報酬について会社の源泉徴収が行われていないこと」を認識していたことを強く窺わせる事情といえる。」と、冒頭陳述での断定的な表現が、論告では実に遠慮がちな表現となっています。

検察の往生際の悪さが際立つものですが、この死に体の主張の反論に、弁論ではなんと13ページも費やされています。

「先生~、それは『鶏を割くにいずくんぞ牛刀を用いん』って言うんですよ。」とも思ったのですが、ま、よしとしましょう。

ここでは、その内容を要約しつつ、検察の証拠の作り方の問題点にフォーカスしたいと思います。

まず、先の証言をしたEC部のスタッフは、検察側証人として再三証人喚問されていました。ところが彼女はこれを拒否し続けました。表向きの理由は、「八田あるいはその熱狂的な支持者から報復を受けることに対して、日本政府が予防的措置を取り得ない」ということでした。

私は、これが彼女の真意であるとは全く思っていません。私が、彼女を個人的に知っていることもあるのですが、これは何度出廷を拒否しても執拗に出廷要請を繰り返す検察に対して、彼らへの協力を拒むことの口実だと思っています。実際、彼女は日本に来て検察の取り調べを受けていますが、何度も同じ質問を繰り返す検察の取調べに辟易したようです。

私は税務調査開始直後に、資料を依頼して、彼女と何度もメールのやり取りをしています。彼女も私の過失を疑わなかったと思います。

その後、単なる関係者の事情聴取かと思い、日本に来て状況説明をしたところ、一方的に有罪の証拠を集めようとする検察の姿勢に危惧を感じたのではないでしょうか。

もし万が一、彼女の言葉がそのまま意味するところだとすると、それは彼女の証言が虚偽であることを示唆するものです。私や私の支持者がやくざやマフィアではないことは彼女も重々承知しています。一般市民の我々が報復をするという可能性を彼女に抱かせるのは、彼女が全く事実とは違う、私に不利な証言をしたという場合であると考えられます。そうした論理的な思考を持ち合わせない検察のセンスに疑問を感じてしまいます。

彼女の検察取調べの検面調書は、大部分証拠採用されています。

この検面調書は日本語で書かれています。彼女は中国系シンガポール人で、日本語は読めません。つまり、この調書作成過程は、検事が日本語で質問→通訳が英語に翻訳→彼女が英語で回答→通訳が日本語に翻訳→検事が聞き取り調書作成→検事による日本語調書の読み聞かせ→通訳が英語に翻訳して読み聞かせ→彼女は日本語の文章そのものを理解しないまま日本語の調書に署名という、多重の伝聞を経たものです。

弁護人は、日本語の調書に日本語を理解しない彼女が署名していることの信用性を問い、この調書を英訳して、彼女の同意を求めることを文書で申し入れましたが、検察に拒否されています。

また、この取調べの録音は存在しません。これだけ伝聞過程を経ていれば、弁護人から信用性を問われることは当然であることを想定していながら、敢えて録音を残していないのは(あるいはあるのかもしれませんが「不見当」)、調書の内容が、彼女の言葉からかけ離れているため、「残せなかった」ということだと思われます。調書を英語で作成していない、弁護人要求の調書の英訳を拒否したことも全く同じ理由です。

そして本文17ページに亘る調書は、一ヶ所も訂正がなされていません。しかも彼女は、署名はしたものの、押印の代わりである指印を拒否しています。

それでこの調書が信用に足るものだとするのは、常識的にかなり無理があるのではないでしょうか。

そして、この調書の内容は、実に検察の狡猾さを伺わせるものです。うまく作られているとも言えますが、少しやり過ぎ感があり、読み手にある程度以上の理解力があれば、論理に破綻があることが明らかです。

まず調書では、彼女はストック・オプションの行使指示書作成の際に「相談を受けたかについては、どうしても思い出すことはできません」としています。検察とすれば、彼らが欲しい事実は「私は彼女に相談しておらず、私が一人で行使指示書を作成した」というものです。彼女に、「相談されたことはないのではないか」と言わせることができればよかったのでしょうが、そこまで誘導し切れなかったものだと思います。

そして検察は二段構えの手段を講じます。「私が彼女に相談をしていないのではないか」と懐疑心を裁判官に持たせようとすると同時に、もし相談を受けたのであれば、彼女が「何も理由を言わずにただ斜線を引くようアドバイスすることは、絶対にあり得ません」、もし私が彼女に相談して設問を斜線で消していたのであれば、彼女から「ストック・オプションの権利行使において会社に源泉徴収義務はないこと」を聞いたはずだと調書に書いています。

話した記憶すらない者が「絶対に」説明したとするところがやり過ぎ感の表れであり、もう少し検察も作文能力を磨くべきです。そしてそのやり過ぎが彼らの墓穴を掘ります。

理由を述べることなく、彼女は「絶対に」説明をしたと調書に書かれていますが、「絶対に」説明をするからには理由が必要です。その理由とは、「日本の社員の多くは、会社が源泉徴収していないことを理解してはいない」というものであるはずです。もし逆に社員の多くが、会社は源泉徴収していないということを知っているのであれば説明の必要がないからです。彼女が税務調査開始前に、「日本の社員の多くは、会社が源泉徴収していないことを理解してはいない」と思っていた可能性はあるでしょうか。私はないと思います。多数の申告漏れの実態に本当に驚いたことと思います。

つまり英文であれば、「surely」や「absolutely」であろう「絶対に」という副詞は検事の「作文」であることが明らかです。

この一事をもってしても調書の信用性は著しく損なわれます。

いつも瑣末な事の揚げ足を取って、全体の信用性を落とすという常套手段(例の「ホントですか~」作戦です)を使う検察としては、全くお粗末な証拠の作り込みです。

裁判官ともなれば、これ程稚拙な証拠の作り込みには当然気付くことと思います。結局、「推定有罪」という検察の厳しい「中田パス」を裁判官がゴールするかどうかということだと思われます。

日本の刑事司法に正義はあるのか。注目の判決は3月1日です。私は楽しみにしています。皆さんも是非楽しみにして下さい。

2/18/2013












ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part 4

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part 3

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part2

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事


ここをクリック→ 嘆願書まとめ

ここをクリック→ 上申書まとめ






TwitterやFacebookでの拡散お願いします
↓ 

category: 訴訟記録等

2013/02/18 Mon. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/502-4cbd5d2b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top