「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (265) 「最終弁論解説 ~ 検察論告に対する反論 (3)」 2/20/2013 

#検察なう (265) 「最終弁論解説 ~ 検察論告に対する反論 (3)」 2/20/2013

(強制捜査から1527日、判決まであと9日)

「『被告人が、株式報酬が源泉徴収されておらず、自らの申告が過少なものであることを認識していたことを基礎づける各事実』に対する反論」を続けます。

これは、検察論告に対する反論の二点目の論点ですが、一点目が「気付いただろう」ということに対する反論であり、この二点目は「知っていただろう」ということに対する反論です。

各論として次の4つの事項を取り上げます(前回のストック・オプションの行使書に関する論考が各論1です)。

2. 「被告人の株式報酬がいずれも株式数が減ることなくそのまま入庫されるものであったこと」に対する反論

3. 「被告人が、『会社に源泉徴収義務はない』と明記したメモランダムやメール等の送付を多数回にわたり受けていたこと」に対する反論

4. 「被告人が、米国内の利子収入について、W8フォームを提出することにより米国源泉徴収税を免れることを認識するなど税金に関して相当の知識を有していたこと」の適切な評価

5. 「被告人が、自らの保有資産のうち最も多額であるUBS口座について、加賀税理士から交付された『財産と債務の明細書』の記載例に『国外に存する財産と債務についても書いてください』と明記されていたにもかかわらず、同明細書に記載しなかったこと」に対する反論

解説します。

2. 「被告人の株式報酬がいずれも株式数が減ることなくそのまま入庫されるものであったこと」に対する反論

前々回、クレディ・スイス社の複雑な株式報酬プログラムについて言及しました。多くの方が、読んでいる最中に脳死状態になったことと思います。

株式報酬は、その複雑なプログラムに基づいて計算され、「将来、xx株をxx年、xx株をxx年、xx株をxx年に支払われる」と決められます。将来の付与の状況は、会社のイントラネットで確認でき、私も何度か株式入庫のタイミングとは関係なく株式数を確認したこともありました。

私の被告人質問において検察による反対質問で、その付与される株式数と、実際に入庫した株式数が同数であるのはおかしいではないかと、彼らが執拗にこだわった論点です。

株式報酬を心待ちにしている者ならいざ知らず、入庫の通知をもらって「あ、入庫したのね」という認識の者にとっては、受け取り前に株式数を知っていることは、ほぼあり得ないと思われます。

株式入庫前に、入庫されるべき株式数を確認しない一つの理由は、入庫の時期が、直前にならないと分からないこともあります。毎年、決められた時期であれば、入庫のタイミング前に「さて、いくら入ってくるのかな」と身構える人もいるとは思いますが、入庫のタイミングは毎年ばらばらでした。勿論、決められた時期であっても、私は確認しなかったとは思いますが。

特に私は、株式を売却する際、(~株のうち~株というように)その一部を売却することはなく、常に保有していた売却可能株数を「全株売却」の指示をしていたので、株式数を意識したことはありませんでした。

自分で購入したのならいざ知らず、複雑な計算の結果「今年~株付与される」とされたものを、いくらイントラネットを確認したにしても、その株数を覚えているということはまずありえません。確認する必要があったにしても、確認して、書き写した瞬間に、用済みとして記憶から消えていくものだと思います。

弁論では、事細かに反論していますが(「源泉徴収される場合でも、一旦は全株入庫する仕組みになっているため、付与の株式数=入庫の株式数でも矛盾はない」とか)、正直、実に取るに足らない論点だと思いますので、ここでは気持ちよく端折ります。

3. 「被告人が、『会社に源泉徴収義務はない』と明記したメモランダムやメール等の送付を多数回にわたり受けていたこと」に対する反論

弁論を引用します。

「検察官は、被告人が「会社に源泉徴収義務はない」と明記したメモランダムやメール等について、資産運用に執着している被告人にとっては、収入に対する源泉徴収や税金に関する事項は大きな関心事であったと認められるから、これらのメモランダムの内容を把握していたと考えるのが合理的であると主張する。

しかし、被告人が資産運用に執着していたとの事実はなく、収入に対する源泉徴収や税金に関する事項が大きな関心事であったとする事実もない。」

「税金に関する事項が大きな関心事であったとすれば、前任税理士の懈怠による無申告に6年間も気付かなかった事実は合理的に説明がつかない。」

「そもそも、重要書類には日本語訳が付されていたクレディ・スイス証券において、これらの全文が英文で、例えば「確定申告用書類」といった目立つ記載もないメモランダムを受け取っても、その重要性を認識することはできない。」

「これらのメモランダムはクレディ・スイス証券においてトップレベルの注意力、英語力を有する者、あるいはその職責上メモランダムを確認しておくことが求められる者ですら、その内容を読むような代物ではなかったと評さざるを得ない。」

書いてあるからには(と言っても、明示的ではないんですが)「読んだだろう、理解しただろう」というのが検察の主張です。

「会社からもらった書類を読まないはずないだろう。」「忙しいのに、そんなもの読むわけないでしょ。」というところから始まって、どれだけ堂々巡りの議論をしたことか。

これも推認・推論の域を一歩も出ない取るに足らない論点です。

4. 「被告人が、米国内の利子収入について、W8フォームを提出することにより米国源泉徴収税を免れることを認識するなど税金に関して相当の知識を有していたこと」の適切な評価

W8フォームとはアメリカの口座において、利子所得が発生した場合、米非居住者はこのW8フォームをその口座のある金融機関に提出しておけば、米国内では源泉徴収されないというものです。

私が、クレディ・スイス証券での口座を開設する際、担当者の指示で、このW8フォームを提出していたことをもってして、「税金に関して相当の知識を有している」とするものです。

このW8フォームは検察が相当こだわっていました。多分、海外口座を持っていない人にとってみると、何かよく訳分からない税金に関する書類を金融機関に提出しているというだけで、「税金に関して相当知識がある」という印象であり(というかこじつけ)、ならば「当然、株式報酬が源泉徴収されていない」ということも知っていたのであろうという論理です。

書類に名前を書いて申請することが、その内容に関して「相当の知識を有している」というのも論理の飛躍ならば、税金つながりというだけで、米国内利子の免税申請のW8フォームと、非常に個別性の高い、会社の株式報酬の源泉徴収の有無の理解をつなげるのも論理の飛躍です。

取るに足らない論点です。

5. 「被告人が、自らの保有資産のうち最も多額であるUBS口座について、加賀税理士から交付された『財産と債務の明細書』の記載例に『国外に存する財産と債務についても書いてください』と明記されていたにもかかわらず、同明細書に記載しなかったこと」に対する反論

この財産と債務の明細書に関する論点は、さすがに取るに足らないとは言えないものです。しかし、この論点に関しては、「故意犯であるとすると合理的な説明が極めて困難である」として、既に反証済みです。

ここをクリック→ #検察なう (260) 「最終弁論解説 ~ 無実の論証 (4)」

あまりにも検察論告がつまらない内容なので、それに対する反論も、どうも面白みに欠けます。すみません。

上記2-4の「証拠」に関しては、過失でも矛盾のない「単なる事実」に過ぎません。5に至っては、むしろ故意であれば矛盾が生じる「無実の証拠」です。

考えてもみて下さい。

「もらった株式数が半分になってない」「W-8フォームを提出していた」「会社から文書を受け取っていた」という事実は、株式報酬を受け取っている全ての社員に該当するものです。

つまり、これらの事実は過失と故意を峻別するものでは全くないということです。そうでないと、申告漏れをした者が全て脱税犯となってしまいます。

いわゆるグレーを重ねることでよりクロに近づけようという検察の常套手段ですが、そもそも一つ一つの「グレーな証拠」が相応にクロに近くないと、「こんなものまで証拠としてるのか」と、いくら重ねても、むしろどんどんシロくなることを、検察は学習すべきです。

検察は、もっとこちらが「ぐう」の音も出ないような証拠を出して、横綱相撲をして欲しいですね(ちょっと佐藤博史氏風)。

2/19/2013











ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 過去のお勧めブログ記事 Part 4

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ここをクリック→ 嘆願書まとめ

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category: 訴訟記録等

2013/02/20 Wed. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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