「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (267) 「刑事司法改革のためにすべきこと」 2/25/2013 

#検察なう (267) 「刑事司法改革のためにすべきこと」 2/25/2013

(強制捜査から1532日、判決まであと4日)

問題山積の刑事司法ですが、何か一つ変えることができるとすれば何をすればいいかと聞かれたら、何と答えるでしょうか。

まず、そもそも適性な取り調べが行われていないことが根本的な問題だと考えて、適性な取り調べを担保するための、三つの改革案のうちの一つを答えるのが無難な答えだと思われます。三つの改革とは、1)取調べを全面可視化する、2)取調べに弁護士同席を認める、3)捜査権力の収集証拠の全面開示をするというものです。

どれも市民感覚からすると、なぜそんなことがいまだに認められていないのか実に不思議に感じられるものです。なぜ捜査権力は、それを意固地に拒む必要があるのでしょうか。

それらは非常に大切だと理解するものの、私が何か現行制度で一つ変えていいとすれば、私が選ぶのは、そのいずれでもありません。私が一番効果的だと思っているのは、検察の上訴権の廃止です。

説明に入る前に、先日友人から尋ねられたことに関して述べます。

友人の質問は「日本の検察制度にはずいぶん問題が多いみたいだけれど、諸外国と比べてどうなの?」でした。

私の答えは以下の通りです。

「諸外国の細かな制度の違いはよく分からないけれど、権力の腐敗の構造なんてどれも似たり寄ったりでしょ。

ただ諸外国の検察と比較して、日本の検察が優れているのは、彼らの正義心だと思うよ。いわゆる「犯罪を憎む気持ち」ってのは、多分、どの国の検察にも負けないと思う。

対して、諸外国の検察と比較して、日本の検察の大きな問題点は、制度がそうした彼らの正義心に依拠しているってことなんだよ。

諸外国では、人間は間違いを犯すという前提で制度が作られているのに対し、日本の検察制度は、彼らは全く間違いを犯さないということが前提になっていて、彼らにフリーハンドの権限を与えてるんだよね。

だから、犯罪者がどんなに悪知恵を使って、犯罪を逃れようとしても、最後は必ず検察が勝つように制度が作られてるんだよ。」

勿論、検察が常に完全無欠であれば、こんなに効率的な制度はありません。ところが、検察の無謬性はもはや国民の誰も信じるところではないでしょう。

であれば、現行制度は彼らの暴挙を抑えることが全くできない、大きな欠陥をもっているということになります。

これに関しては、今までもブログで取り上げたところです。

ここをクリック→ #検察なう (184) 「検察制度の根本的問題 その(1)~証拠の同意・不同意とは」

ここをクリック→ #検察なう (185) 「検察制度の根本的問題 その (2) ~国民の信頼こそが検察制度の基礎」

これを是正するためにはどうすればよいか。国民に不利益なくして、彼らの角を矯めるにはどのような改革が効果的か。

私が考える刑事司法改革のベストと思われるものが、検察上訴権の廃止です。

若干、一足飛びでしたでしょうか。刑事司法が「検察司法」と化していることが、問題点の顕在化したものであると言えば理解の一助となるかもしれません。

日本の刑事裁判の有罪率が異常に高いことはよく知られた事実です。平成23年の確定判決は43万2050件、このうち無罪は77件ですから、有罪率は実に99.98%に達します(平成24年版犯罪白書より)。

同じく異常な数字が、検察の起訴率の低さです。平成23年の検察起訴率は35.0%、自動車による過失致死傷を除く刑法犯のデータを見ても、41.9%という諸外国の水準からすると極端に低い数字です。

この起訴率の低さと有罪率の高さから、検察が既に判決を決めているという実態を捉えて、刑事司法は「検察司法」と言われるものです。

有罪率の高さは、裁判官があたかも有罪のみ判じるとしか思えない数字です。その理由を、裁判官の人事考査で、無罪を書くと出世に響くということに求める人もいます。「ヒラメ判事」という言葉は、体制に寄り添うかのように上ばかり見て、有罪しか書かない裁判官のことを揶揄するものです。

私は、それは全く馬鹿げた考えだと思います。

私が想像するに、裁判官は無罪を書くことが怖いのではなく、彼らが怖れているのは「誤判とされること」だと思います。「誤判をする」ではなくて「される」というのが一つのポイントですが、もう少し説明を続けます。

医者が患者のためにベストエフォートを尽くし、医療過誤を一番怖れるように、裁判官も公正であることに最大限の努力を払い、誤判を怖れるものです。

しかし、刑事裁判における異常な有罪率の高さは彼らの足枷になると想像されます。

私が、確定判決のうち有罪率99.9%以上という数字より、それ以上に常軌を逸していると思うのが、控訴審で無罪から有罪とされる率の高さです。それは平成23年では、80.0%に達します(法曹時報第64巻第11号より)。

一審で裁判官が無罪を言い渡しながら、これだけ高い割合で二審の裁判官がそれを覆して有罪とするという状況こそが、日本の司法に「推定無罪」原則が働いていないことの証左だといえるものです。

こうした事情が一審の判決に影響を及ぼさないわけがありません。

英米では、無罪の判決は実に簡単です。「Not guilty(有罪ではない)」と言えば足ります。判決理由も結局のところ、検察の立証が「合理的な疑いを越えるものではない」と言えば済むものです(乱暴な言い方ですが)。

ところが、日本では、無罪を書く場合には、誤判とされないように、相当苦労を強いられるものです。有罪の判決文は、検察論告のコピペで済むのとは(これも乱暴な言い方ですが)全く対照的です。

裁判官が無罪を書くと出世に不利ということは全く信じないものの、彼らの人事考査の非常に大きなファクターが訴訟の処理件数であり、無罪を書くためには相当やる気も能力も必要とされるというのは、十分信憑性があると思っています。

例えば、私が裁判官だとして、裁判に当たり、「うーむ、これは無罪の可能性があるな。でも弁護人の弁護は不十分で、これだと到底無罪にはできないなあ。」と感じた場合と、逆に、「これは有罪の可能性が高いけれど、検察の立証はいかにも甘いな」と感じた場合はどういうことになるでしょうか。

勿論、論証が足りない弁護人、検察に十分な審理を尽くすよう指揮をして、あるべき結論に至るよう努力はするものの、前者のケースよりは、後者により積極的になるのではないかと想像します。

「おいおい、そんなんじゃ有罪にすることはできないけれど、高裁に行ったらひっくり返されるのは確実だぞ」と感じた場合に、より積極的な訴訟指揮をすることがありえます。ごくまれに、検察も主張していない論点を持ち出して有罪とする判決が見られますが、その背景となっているのが、以上のような事情だと思います。

これらは全て、上級審で「誤判とされる」ことを怖れるところから出ています。つまり英米のように、検察に上訴権を認めず、一審の無罪判決はその時点で確定とすれば、もっと一審裁判官も勇気をもって大胆に無罪を書けるものと思われます。

そもそも私は検察上訴権は憲法違反だと思っています。

ここをクリック→ #検察なう (87) 「司法改革 (2) 『二重の危険』」

もし検察上訴権が認められていなければ、名張毒ぶどう酒事件も、東電OL殺人事件も起こらなかったことを忘れないで下さい。

そして、判決で無罪が増えることによって、検察も現状のように刑事司法を一身に背負ったような気負いがなくなり、無理をしなくなると期待します。そもそも彼らの正義心は人一倍あるはずです。それを最大限発揮できるような制度作りが必要なのだと思います。

また彼らが「俺たちがルールブックだ」と思い上がっているとすれば、やはり裁判制度が今以上に効率的に機能することで、それは是正されるものです。

遠回りのように思えますが、おしまいから変えて、全体がよくなるようにするアイデアです。是非、皆さんも考えてみて下さい。

2/25/2013









ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





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category: 刑事司法改革への道

2013/02/25 Mon. 08:18 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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