「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

09« 2017 / 10 »11
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

#検察なう (289) 「佐藤真言氏著 『粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白』を読んで」 4/18/2013 

#検察なう (289) 「佐藤真言氏著 『粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白』を読んで」 4/18/2013

(強制捜査から1584日、検察控訴から37日)

佐藤真言氏著『粉飾 特捜に狙われた元銀行員の告白』読了。

佐藤さんが巻き込まれた事件を克明に綴った石塚健司氏著『四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日』を既に読み、当事者の佐藤さんや朝倉さんとお会いして直接話を聞いていた私ですら、あらためて「ひどい」と感じてしまいました。

この書を世に出して佐藤さんが望むことは、そのプロローグに示されています。

「政財界の大物でも、巨悪でもない、どこにでもあるごく普通の生活をしていた私のような一市民であっても、捜査当局が狙いをいったん定めたら、社会や経済の実態を無視し、真実に蓋をし、さらには証拠をねじ曲げて、逮捕、起訴されてしまうという特捜検察の恐ろしさを、本書を通じて世の中に知ってもらいたい。」

事件に関しては、以前にブログで紹介していますので、そちらをご参照下さい。

ここをクリック→ #検察なう (209) 「何が社会正義かを問う 『四〇〇万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日』を読んで」

特捜部の筋書きは「悪徳コンサルタントの佐藤が、中小企業の社長に粉飾決算を指示し、銀行から不正に融資を引き出した」というものです。既に有罪判決を一審・二審で受け、現在上告中ですが、その嫌疑は銀行を被害者とする詐欺罪です。

私は、この筋書きが以下の2点の理由で破綻していると思っています。

まず、佐藤さんのクライアントである中小企業で粉飾決算をしていた会社においては、佐藤さんがコンサルタントをする以前から粉飾決算をしていました。彼はむしろそうした会社に、なんとか赤字経営から脱出すべく、リストラや事務所移転による家賃負担の軽減等、経営の好転を目指して粉飾決算からの「出口戦略」を指導していました。

また、佐藤さんのクライアントには、粉飾決算をしていた会社もあれば、していない会社もあります。そしてそれらクライアントから受け取っていた顧問料には、なんら違いがありませんでした。即ち、粉飾決算を指導していたことによりリベートを受け取っていたということは一切なく、彼自身が不法な利益を得るために粉飾決算をクライアントにさせていたという事実はありません。

法律関係者の方には、この事件を冤罪事件とすることには違和感を覚えると思いますが、私は、冤罪の定義を「公権力の恣意的な行使により作られた犯罪であり、不当に人権が抑圧された形態」だとすれば、佐藤さんや朝倉さんも十分にその被害にあったと言えるものだと思っています。

人によって心に響く箇所は違いがあると思いますが、私が思わず涙した個所は、タクシーの運転手さんとの会話のシーンでした。事件後、音信の途絶えていたある社長と再会し、大いに飲んだその後、帰宅途上でのタクシーで運転手さんに身の上に起こった出来事を話す佐藤さんに、運転手さんは告白します。

「十九歳の時に傷害事件を起こしまして、それ以来、まともな仕事に就けず、やっとタクシーのドライバーになれたんです。この国は、敗者復活を許さない、少年院を出て私に待っていたのは、孤独でした。家族も友人もみんな去ってしまった。噂はすぐに広まり、定職にもつけなくて」

むせびながらの告白に佐藤さんはもらい泣きをするのですが、この孤独感を共有できるのはやはり犯罪者のレッテルを貼られた当事者だけなのではないかと思います。

さらに冒頭で述べた「ひどい」という感想は、検察や司法当局に対してですが、一審・二審の弁護を担当したヤメ検弁護士に対しても同じく強く思ったところです。彼は、高額の弁護料を受け取りながらも、最後は、弁護方針の違いを理由に上告趣意書の締め切り直前に事件を放り出して、弁護人を辞任します。そうしたヤメ検弁護士との事情は、石塚氏の『四〇〇万企業が哭いている ドキュメント検察が会社を踏み潰した日』には書かれていませんでした。佐藤さんは言葉を抑え気味に説明していますが、私が彼の立場であれば、実に悔しかったと思います。

佐藤さんの訴えは、最終章に書かれた「裁判官へ」と「検察官へ」で更に高まります。

「裁判官へ」の一文を引用します。

「裁判官は、自らの下す結論によって目の前の被告人の人生が大きく左右されるということを、十分に肝に銘じてほしい。そして、十分な審議が尽くされたと被告人が実感することができれば、仮に有罪判決が下されたとしても、本当の意味で更生を誓い、人生をやり直すことができる。裁判官に当たり外れがあっては絶対にいけない。被告人は裁判官の裁きによって人生を大きく左右されてしまう。事件によっては人ひとりの命にも関わることなのだ。」

全くもってその通りだと思います。その「裁判官へ」の部分では、私が巻き込まれた事件にも触れられています。

「検察官へ」でも「組織の暴走を止めることができるのは、個々の検察官だけなのだ」と主張します。是非、検察官は組織の論理を隠れ蓑にするのではなく、独任性官庁の気概をもってほしいと思います。

是非、皆さんもこの本を手に取って、日本の捜査権力が何を目指しているのか、それが民意に沿ったものであるのかを検証し、議論してほしいものです。社会正義とは何か、よりよい日本にするためにみんなで考える必要があります。

4/18/2013












ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 佐藤真言氏 『粉飾』

2013/04/18 Thu. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 2

go page top

この記事に対するコメント

裁判員制度はこういう事件には適応されないのでしょうか。
どう考えても一般人の常識を外れた裁判だと思います。
他にも白バイの事故でバスの運転手を犯人に仕立てた警察の裁判
とか、裁判員制度を導入すべき案件はこういう裁判のように思います。

けん #- | URL | 2013/05/13 Mon. 17:56 * edit *

裁判員裁判

ご意見ありがとうございます。

規定上は、裁判員裁判の適用対象事件は、
① 死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪に係る事件
② 法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るものとされ、
一定の重大な犯罪、例えば、殺人罪、強盗致死傷罪、現住建造物等放火罪、身代金目的誘拐罪、危険運転致死罪などとされています。

ですから、佐藤真言さんの事件も片岡晴彦さんの事件もその規定上は対象とはなりません。

裁判員裁判制度には欠陥も多く、批判もあるのですが、私は一定の評価を与えるべきだと思っています。やはり司法に民意を反映させることは、裁く側によい緊張感を与えるものだと思います。

まずは裁判員裁判制度に対する考え方を変えていく必要があると思います。これが国民の義務だと思われている以上、なかなかいい方向へはいかないでしょう。欧米で認識されているように、これは国民の権利だと考える必要があると思います。「お上にお任せ」体質の日本では難しいかもしれませんが。ただ、裁判員に参加した人々からは「参加してよかった」というポジティブなフィードバックがありますので、もっと積極的に情報開示をすべきだと思います。

そうした上で、ベストなのは被告人が裁判員裁判と職業裁判官に寄る裁判を選択できるようにすることだと思います。アメリカの陪審員制度は、基本陪審員による審理ですが、被告人は陪審員による裁判を受ける権利を放棄できます。

あくまで過渡的な制度であり、議論して、よい方向へ持って行く必要があると思います。

またご意見お待ちしています。





> 裁判員制度はこういう事件には適応されないのでしょうか。
> どう考えても一般人の常識を外れた裁判だと思います。
> 他にも白バイの事故でバスの運転手を犯人に仕立てた警察の裁判
> とか、裁判員制度を導入すべき案件はこういう裁判のように思います。

八田隆 #- | URL | 2013/05/13 Mon. 23:38 * edit *

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/533-62ba7bd8
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top