「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (296) 「再審制度の問題点再考」 5/16/2013 

#検察なう (296) 「再審制度の問題点再考」 5/16/2013

(強制捜査から1612日、検察控訴から65日)

私がこれまで「冤罪ファイル」で紹介した3つの事件があります。

名張毒ぶどう酒事件
ここをクリック→ 冤罪ファイル 「名張毒ぶどう酒事件」

大崎事件
ここをクリック→ 冤罪ファイル 「大崎事件」

福井女子中学生殺人事件
ここをクリック→ 冤罪ファイル 「福井女子中学生殺人事件」

この3つの事件に関しては、いずれも再審開始決定が取り消されたことが共通しています。

名張毒ぶどう酒事件 
2005年2月高裁再審開始決定(小出錞一裁判長)
2006年12月高裁再審開始決定取消(門野博裁判長)
弁護側特別抗告→最高裁差戻し
2012年5月高裁再審開始決定取消(下山保男裁判長)

大崎事件      
2002年3月地裁再審開始決定(笹野明義裁判長)
2004年12月高裁再審開始決定取消(岡村稔裁判長)
2013年3月地裁再審請求棄却(中牟田博章裁判長)      

福井女子中学生殺人事件 
2011年11月高裁再審開始決定(伊藤新一郎裁判長)
2013年3月高裁再審開始取消(志田洋裁判長)

再審とは三審(地裁、高裁、最高裁)によって確定した判決をもう一度審理することです。その審理は、原裁決を審理することから、確定判決を出した裁判所でなされます。例えば、上の例で言えば、大崎事件は地裁の有罪判決が確定判決ですから、再審は地裁レベルで行われます。それに対し福井女子中学生殺人事件は、一審無罪の後、高裁で逆転有罪判決が言い渡されているため、再審は高裁レベルで行われます。

刑事裁判における有罪率が99.9%(2012年は99.98%)であることはもう皆さんご存知かと思います。無罪を得ることのハードルが異常に高いのが日本の刑事司法です。

ましてや、再審ともなると、「ラクダを針の穴に通す程難しい」(原典は新約聖書マタイ19章の言い回しです)とまで言われます。例えば1949年に起こった弘前大学教授夫人殺人事件(一審無罪、控訴審で逆転有罪、上告棄却で懲役15年確定)では、1971年になって真犯人が名乗り出て、自分が犯人だと言っているのにもかかわらず、再審が認められなかったということもあります(第二次再審請求が認められ再審開始後、無罪判決、真犯人は公訴時効成立で起訴されず)。

ここに再審の一つの問題点があります。再審請求の手続きが肥大化し、再審が形骸化した結果、再審が実際に開始すると、それは無罪確定と同じ意味を持っているとされています。つまり、審理が行われることがとてつもなく困難で、審理が始まる時点では既に結論が出ているというものです。

また先に挙げた3つの事件に関して言えば、もう一つの更に大きな問題があります。

「一事不再理」という刑事訴訟法の概念があります。これは刑事裁判において、確定した判決がある場合には、その事件について再度審理することは許されないという原則です。欧米では、この原則に基づいて、検察上訴は認められていません。捜査上、圧倒的に有利な国家権力に対して、個人の人権を守るため、一度でも無罪判決がでれば、「疑わしきは被告人の利益に」という推定無罪原則を遵守しているからです。

私の息子はカナダの高校に通っていますが、「法律」の授業があります。彼に、私の無罪判決に対して検察が控訴したことを伝えると「えっ。Double Jeopardyって考え、日本にはないの」と聞かれたので、「ないよ」と答えたところ「ふーん、後進国なんだね、日本って」とばっさり斬られてしまいました。

通常の控訴審、上告審ですら、検察上訴を許すべきでないと思われるのに、再審開始決定に対し、異議申立や抗告が許されているというのは、重大な人権侵害以外の何物でもありません。審理をさせないというのは、基本的人権を棄損する行為です。憲法第32条を引用します。
「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない」

原判決に合理的な疑いが生じる「十分な可能性」があれば、再審を開始して、公開の場において実質的な審理をすべきです。再審開始決定に対する検察の異議申立・抗告は、法律で禁止することを明文化しなければならないと思います。

また、再審の手続が非常に肥大化していることに関しては、やはり裁判官の間でのしがらみや政治的配慮といったもろもろの要因が絡んでいると思います。最高裁まで行って確定した判決に対し、「それは違う」ということに対し、法秩序維持とか、裁判所の権威保護とか、ただ単に先輩裁判官の顔に泥を塗りたくないとかといったことが影響することは容易に想像できます。

人権保護のために、再審に関しては、裁判所ではなく、第三者検証機関が審理をすべきだと考えます。実際にイギリスでは再審のための特別員会が設置されています。

その契機となったのが、1974年イギリス・バーミンガムのパブで起こった「バーミンガム・パブ爆破事件」です。同日に2軒のパブで起こった爆破事件では、21人が死亡、重傷者も180人を越えました。当時IRA(アイルランド共和国軍)による爆破事件が相次いでいたため、アイルランド人6人が逮捕。その6人は容疑を否認、IRAも「6人は組織とは無関係」という声明を出しながらも、彼ら容疑者は16年もの間投獄されることとなりました。1991年に無罪判決が確定し、彼ら「バーミンガム6」は釈放されることとなりました。この冤罪事件は社会的に大きな議論を巻き起こします。それをきっかけに再審審査委員会が設置され、以降、再審の審理はその特別委員会でなされています。

日本でも、足利事件、布川事件、東電OL殺人事件と再審無罪判決が続きながら(しかもいずれの事件でもバーミンガム6どころではない超ド級の冤罪被害者を生み出しています)、再審に関する議論が起こらず、今なおもって奥西勝さん、原口アヤ子さん、前川彰司さんといった冤罪被害者を救済できないというのは大きな社会問題だと思います。是非、皆さんにも考えて頂ければと思います。

5/16/2013













ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


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category: 再審

2013/05/16 Thu. 07:01 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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