「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (299) 「PC遠隔操作事件における捜査及びメディア報道の問題点」 5/27/2013 

#検察なう (299) 「PC遠隔操作事件における捜査及びメディア報道の問題点」 5/27/2013

(強制捜査から1623日、検察控訴から76日)

「デジタル・ディバイド」という言葉はもう一般的になっているでしょうか。アル・ゴアが米副大統領時代に使ったのが最初と言われていますので、随分以前から使われている言葉です。日本語では「情報格差」と訳されますが、その意味するところは、パソコン及びIT技術、特にインターネットが利用できるかどうかによって生じる格差を指します。そして往々にしてそれは経済的格差につながるというコンテクストで使われるものです。

刑事事件の報道の問題を考えるときにいつも浮かぶ言葉がこの言葉です。そしてPC遠隔操作事件ほど、新聞・テレビといった既存メディアに情報を頼り、無批判にその情報に判断を依存している人と、それ以外の媒体、特にインターネットで情報を得て、自分で考えている人との間で、リアルタイムに理解度の差が出ている事件はかつてなかったのではないでしょうか。そういう意味で、PC遠隔操作事件は、実に現代的な側面をもった事件だと思います。

この事件における捜査やメディア報道の問題点を考える際に重要なことは、「もし片山被告人が無実だったら」という仮定は、全く問題の本質を見誤らせることになります。彼が無実であろうがなかろうが、例え有罪であったとしても、同等に捜査、メディア報道は間違っていると言えるものです。

まず弁護団の佐藤博史弁護士による記者会見の模様の動画(4分)をご覧下さい。

ここをクリック→ PC遠隔操作事件弁護団記者会見 「メディア批判をする佐藤博史弁護士」

メディア報道が、捜査権力のリーク情報のみを報じることの危険性は論を待たないと思います。注意深く記事を読むと、捜査権力側の情報のみで書かれたものと、両方の主張を扱っているものとがあります。しかし、捜査の問題点を指摘している記事はほとんどないに等しいものです。そこには、弓を引くメディアは出入り禁止にする捜査権力と、特オチに怯える記者クラブの関係に問題があるように思えます。

取材される側のセキュリティーの問題や、公権力に対して個人ではどうしても対抗できないためスクラムを組む必要があるという記者クラブのメリットは無視できません。例えば誘拐事件で、情報の漏洩が重大な問題を生じるような場合に、無秩序な取材及び情報の発信が許されないのは至極当然だと思います。しかし、有罪ありきの報道で犯人像がつくられていくことの危険性や、過去の捜査権力の過ちを糾弾するどころか、情報操作に協力するようでは、やはり情報カルテルの弊害は少なくないのではないでしょうか(注1)。

そして、ここで指摘することは、「冤罪の可能性がある」という問題意識とは全く別の次元の話だということです。PC遠隔操作事件の検察の取り調べは明らかにルール違反であり、それを明示的に指摘している既存メディアの報道がないことが問題です。

その検察のルール違反に関して説明します。

PC遠隔操作事件の審理は、公判前整理手続が取られています。公判前整理手続に関しては以前にもブログで書いていますのでご覧下さい。

ここをクリック→ #検察なう (88) 「証拠開示と公判前整理手続」

公判前整理手続においては、検察がまず証明予定事実を明らかにし、証拠を開示しなければなりません。これは刑事訴訟法第316条の13(一部)
「検察官は、事件が公判前整理手続に付されたときは、その証明予定事実を記載した書面を、裁判所に提出し、及び被告人又は弁護人に送付しなければならない」
「検察官は、前項の証明予定事実を証明するために用いる証拠の取調べを請求しなければならない」
及び、刑事訴訟規則第217の19条(一部)
「検察官は、証明予定事実を記載するについては、事件の争点及び証拠の整理に必要な事項を具体的かつ簡潔に明示しなければならない」
と定められています。

PC遠隔操作事件では、トロイ・プログラムを人のPCに送りこみ、そのPCを遠隔操作して襲撃や殺害の犯罪予告を行った一連の事件が起こっています。その一連の事件において、トロイ・プログラムを犯人が送った日時は特定されていて、その日時に片山被告人は、会社に出勤しており、会社の自分のパソコンの前にいた蓋然性が高いものです。つまり、片山被告人が有罪であることを立証するには、トロイ・プログラムがその特定のPCから送り出されたことを立証しなければならないと言えます。

ところが、検察の証明予定事実では、「東京都内または周辺の、インターネットに接続したパソコン」としてしか特定していないため、これは明らかに刑事訴訟規則の「具体的」という要件に違反しています。

これでは、アリバイの立証が極端に困難になり、被告人の防御権を著しく侵害していると弁護人が怒るのも至極もっともなことです。

これが公判前整理手続ではなく、普通の公判であれば「適時提出主義」といって、自分が立証したいことを相手の出方を見ながら、そろそろと後出しすることは許されているのですが、公判前整理手続では、それは完全なルール違反です。

それは検察も裁判官も法律の専門家ですから、共に分かっています。状況としては、レスラーがパンツの中から栓抜きを出して、相手レスラーを殴っても、レフリーが「いや、見てなかった」と言っている状況に等しいものです。そして血だらけになって「反則だろ!」と抗議しても、レフリーは「困ったなあ」という顔でそれをやり過ごそうとしているものです。反則レスラーを反則負けとするようなこと、PC遠隔操作事件で言えば公訴棄却といったことは絶対に起こらないでしょう。

これがプロレスなら、レフリーや反則レスラーに対して、観客の大きなブーイングが起こって心理的な圧力になりますが、PC遠隔操作事件では、その反則を新聞、テレビが報道しないため、ブーイングが起こらないという構図になっています。

また、PC遠隔操作事件では、6台のパソコンを遠隔操作し(そのうち4人の所有者を逮捕、うち2人が自白、そして1人が有罪=保護観察)、確認されているだけで13件の一連の犯行予告がされています。この複数の事件に関し、容疑者の逮捕、再逮捕、起訴、追起訴を繰り返しているのは、明らかな恫喝です。人質司法を世に喧伝し、「警察・検察に刃向うとこういうことになるんだ」という恐怖の種を蒔いているものです。こうした明らかな人権侵害も、裁判官は無策で放置し、メディアも淡々と事実を報道しているだけです。新聞・テレビは単なる通信社ではない、ジャーナリストであるべきだというのが国民の期待だと思います。

我々、国民も、単に無実なのか有罪なのかという視点で考えるのではなく、捜査・取調べが適正な手続きで行われているのかを監視するだけのリテラシーを持たなければ、批判する権利はないのかもしれません。

そうした啓蒙をするジャーナリストもいる例として、身を挺して(文字通り、点滴を受けながら)取材していた、江川紹子氏のこの件に関する寄稿を添付します。

ここをクリック→ 江川紹子「第1回公判前整理手続きで、弁護人の怒り炸裂」
(注2)

ご関心のある方は、公判前整理手続後の記者会見の模様のほかの部分もご覧下さい(20分)。

ここをクリック→ PC遠隔操作事件弁護団記者会見 「検察批判をする佐藤博史弁護士」

(注1)
捜査権力の犯罪的捜査の隠蔽を狙った情報操作の典型的な例として東電OL殺人事件があります。
ここをクリック→ #検察なう (294) 「犯人血液型当てクイズ」

検察リークに関してはこちらをお読み下さい。
ここをクリック→ #検察なう (219) 「『風を吹かせる』=検察リークの実情」

(注2)
私個人としては、この佐藤博史弁護士の員面調書の黒塗りに対する批判には納得していません。本人調書の一部を証拠調請求せずに黒塗りするというのは、あまりにも目立ち過ぎる行動だからです。

弁護側が証拠開示の命令を申立てれば、ほぼ問題なく認められると思います。それを敢えて黒塗りにするのは、もし私が検事であれば、むしろ目立たせるためピンクのハイライトの代わりに黒く塗ったということを考えます。

但し、私にはなぜそれを目立たせる必要があるのか、そこまで検察の意図は読めません。しかし言えるのは、それが本来片山被告人がC#でプログラムが書けないのに「C#で書ける」という内容であっても、可視化されていない以上「彼が言ったそのままを録取した」と言えばいいだけのことです(弁護側が調書の作文を主張するためには、可視化が必要だという好例です)。また「C#で書けない」という内容であっても、それをほかの証拠で崩せばいいだけのことで、員面調書にそう書かれているからというだけで、それが真実だという主張は残念ながら通用しないと思います。

そもそも「C#でプログラムが書けない」というのは弁護側にとっては決定的な証拠ですが、「C#でプログラムが書ける」ということが、片山被告人が犯人である証明にはなり得ないことは検察も重々理解しているはずです。検察を買いかぶり過ぎなのかもしれませんが、私にとっては実に不気味な行動です。

また証拠の目的外使用については、私もツイッタ―及びブログに関して散々検察に勧告されたことです。私の場合は、「片腹痛い」とまでは言わなかったものの、「それなら告発すればいい、恫喝には屈しない」として継続しました。

検察が私を恫喝したことは、素直にツイッタ―、ブログをやめさせようとしたためだと思いますが、佐藤弁護士のようなベテランを恫喝したところで、釈迦に説法であり、彼のキャラクターから彼がそのようなものに動じるはずはないということは承知のことだと思います。当然、佐藤弁護士は、記者会見で検察のそうした不当な主張を披露しますが、メディアはそれを広く報じることはないと検察は踏んでいます。この恫喝の直接的な相手は、佐藤弁護士ではなく、そのほかの世の中の弁護士に対してなのではないかと思います。やはり懲戒を申し立てられれば、それが弁護士会で認められなかったとしても、聴聞など相当気が重いはずです。メディアに露出するような弁護士は絶対許さんからな、と世の弁護士への牽制を計算しているのではないか、というのも私の買いかぶり過ぎでしょうか。

5/27/2013















法廷画が冊子化されました。正(第2回公判~第7回公判、400円)、続(第8回公判~第11回公判無罪判決、500円)の2冊です。ご希望の方は sienhatta@gmail.com までご連絡下さい(送料9冊まで80円、10冊以上160円)。

#検察なう


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

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category: 刑事事件一般

2013/05/27 Mon. 06:05 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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