「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (301) 「証拠は誰のものか」 6/6/2013 

#検察なう (301) 「証拠は誰のものか」 6/6/2013

(強制捜査から1633日、検察控訴から86日)

冤罪と向き合うと、刑事司法の多くの矛盾を知ることになります。一般人の感覚だと驚くことの連続ですが、その中でも一番大きいものが

「検察は、自分に不利な無罪方向の証拠を公判に提出しないし、そもそもする必要がないと考えている」ということです。

ここをクリック→ #検察なう (111) 「証拠開示 Part 2 『当事者主義』」

無罪方向の証拠を公判に出さないということは、有罪方向の証拠を捏造することと何ら変わるところがないと感じるのは私だけでしょうか。そして悪質な証拠隠しは、布川事件や東電OL殺人事件といった有名な冤罪事件だけに限らず、日常的・恒常的に行われており、それを検察は当然と思っている以上、日本に正しい司法はありえないと言えます。

皆さんは、判決確定後に、裁判記録を誰が保管しているかご存知でしょうか。

一部の判決文は、裁判所HPの「裁判例情報」で検索できます。
ここをクリック→ 裁判所HPの「裁判例情報」

事件番号が分かると早いのですが(例えば、私の事案は特(わ)第2321号です)、普通分からないので、検索も大変です。そしてほとんどの判決はここには入っていません。(注1)

それでは、裁判所HPで検索できない判決文、あるいは公判で証拠調請求され、採用された物証、同意書証はどこに行けば閲覧できるのでしょうか。

常識的には裁判所に行って閲覧すると思いますよね。ところが違います。刑事裁判の証拠記録は検察庁が保管しています。

これは法律で定められているところです(その歴史的経緯は後述します)。その刑事確定訴訟記録法では、「保管検察官は、請求があつたときは、保管記録を閲覧させなければならない」とあるものの、実際の運用では、その閲覧は容易ではないようです。

弁護士が、過去の確定事例での調書を閲覧しようとしても「(プライバシー保護のために個人を確定する部分を墨塗りする必要があり)3ヶ月かかる」と言われます。メディアを含む一般人が閲覧申請をした場合には、更にハードルが高いものと思われます。

刑事裁判記録をなぜ検察庁が保管することになったのかの歴史的経緯を振り返ってみます。

かつて裁判所と検察が一体であった時には、刑事裁判記録は第一審裁判所に附置された刑事局において保管されていました。そして裁判所と検察庁が組織上分離された際、その新司法制度の下における刑事確定訴訟記録の保管機関を誰とするかの議論が起こります。

どうも裁判所は「べき論」で裁判所が保管機関となるべきだと主張していたようですが、検察が一方の当事者であるのに対し、裁判所は利害関係の当事者ではないため、積極的には主張していなかったものと思われます。そのため実際の運用上、なし崩し的に検察庁が保管機関となっていました。そして昭和24年2月23日の最高裁通達(第2067号)で、「刑事確定記録の保管は裁判所でなすべきか、検察庁においてなすべきか」との質問に対し「一応従来通り取り扱われたい」と答えています。

その後、昭和45年11月に法務省刑事局長通達(「検務関係文書等保存事務暫定要領」刑事第42号)により、検察庁保管が追認されます。法務省は(権限官庁でありながら)実質検察の下部組織ですから、彼らの決定が検察の意向に沿うことは驚くことではありません。

そして昭和62年6月2日制定の刑事確定訴訟記録法により法制化されます。その第二条には、
「刑事被告事件に係る訴訟の記録は、訴訟終結後は、当該被告事件について第一審の裁判をした裁判所に対応する検察庁の検察官が保管するものとする」
と定められています。

このように、歴史を振り返ると、実にあいまいな状況から、なし崩し的に検察庁の保管が認められ、既成事実化された様子がよく分かります。そして今では法律にまでなっているという状況です。

そして資料を読むと、その根拠が「裁判の執行のため」となっていますが、それでは執行済みの判決に関わる裁判記録や、執行が伴わない無罪判決に関わる裁判記録を検察庁が保管しているのは正当な理由がないと思われます。また恩赦があることもその「裁判の執行のため」という理由付けの補強となっていますが、実際の運用では恩赦はもうなくなっていることを検察は十分承知しているはずです(日本で最後に恩赦が行われたのはサンフランシスコ講和条約締結時)。(注2)

そしてそれはあくまで刑事事件に関しての場合で、刑事事件以外の裁判記録はすべて裁判所に保管されています。何も裁判所が裁判記録を保管できないという能力的な問題ではなく、刑事事件だけが例外的に検察庁保管となっているものです。(注3)

検察があたかも証拠を自分の独占物のように扱うことは既に弊害となって表れています。

ここをクリック→ #検察なう (300) 「『クローズアップ現代』「取調べ可視化」番組放送延期事件について」

また余り語られることではありませんが、検察による証拠の一人占めの弊害は、不起訴事案でより顕著かもしれません。日本においては、起訴便宜主義によって、検察による起訴率は非常に低くなっています。そして不起訴となった事件における検察収集証拠の開示義務はありません。

例えば、交通事故で子供を失った親が、検察の起訴を期待しても、検察が運転手を起訴しなかった場合に、その証拠にアクセスできないことの障壁はとてつもなく大きいものです。検察審査会がそのためにあるはずですが、その実態が全く不透明であり、検察の単なる外郭団体に過ぎないのではないかと思われる事象が相次いでいることは皆さんご存知だと思います。

こうした検察の姿勢は「検察の理念」に謳われた「権限行使の在り方が、独善に陥ることなく、真に国民の利益にかなうものとなっているかを常に内省し行動する、謙虚な姿勢を保つべきである」というものにもとることは明らかです。

6月4日付の読売新聞社説に関連した話題が掲載されていました。全文引用します。

「取材協力者の萎縮を招きかねない。検察の対応は問題である。裁判の証拠として開示された取り調べの録画映像をNHKに提供した弁護士について、大阪地検が大阪弁護士会に懲戒請求した。刑事訴訟法が禁じる証拠の目的外使用にあたるとの理由からだ。

この禁止規定は、2004年の法改正で、検察から弁護側への証拠開示の範囲を広げた際に新設された。証拠流出により、証人への威迫や事件関係者のプライバシー侵害が起きるのを防ぐためだ。公正な司法手続きを担保する上で、必要な規定とは言える。だが、今回のケースにこの規定をあてはめることには疑問がある。
 
映像には、傷害致死罪に問われた元被告が“自供”した供述調書の内容と矛盾するようなやりとりが記録されていた。無罪判決の根拠の一つとなった。弁護士が映像を提供したのは、判決が確定した後だった。映像は公開の法廷で既に再生され、傍聴人も目にすることができた。弁護士は提供にあたり、元被告の承諾を得ていたという。NHKは番組で放映する際、顔をぼかしたり、音声を変えたりするなど、プライバシーに配慮する措置をとっていた。映像の提供と放映によって、裁判への影響や関係者の名誉侵害が生じたとは考えられない。
 
弁護士は「検察の取り調べの実態を社会に伝えたかった」と説明している。捜査の在り方を検証するという提供目的には、十分な公益性があると言えよう。目的外使用の禁止を巡っては、法改正時に、日本弁護士連合会が正当な理由があれば禁止対象から外すよう求めた。日本新聞協会も「取材の制限につながる危惧が大きい」との見解を表明した。国会でも議論となり、違反が疑われる場合にも、「行為の目的や態様、関係者の名誉侵害の有無などを考慮する」との条文が追加された経緯がある。大阪地検はこうした観点からの精査を十分行ったのだろうか。
 
3月には、被害者が写っている実況見分写真などの開示証拠を動画サイトに投稿したとされる男が起訴された。悪質なケースについては厳しく対処すべきだ。しかし、公益目的の情報提供まで検察が殊更に問題視するのであれば、取材・報道の自由を侵害することにつながろう。
 
公権力を使って収集した証拠は検察の独占物ではなく、公共財であることも忘れてはならない。」

(注1)
試しに、裁判所を「最高」として、全文に「カレー」を入れて検索してみて下さい。最高裁判例でカレーが関係してくるのは和歌山毒物カレー事件くらいなものかと思えば、結構出てきました。その中で容疑が「殺人」の二件のうち一件が、和歌山毒物カレー事件の最高裁判決文です。ちなみにもう一件は狭山事件のもので、被害者女子高生の胃内残留物に関わる記述でヒットしたものです。

(注2)
『注釈刑事確定訴訟記録法』
ここをクリック→ 『注釈刑事確定訴訟記録法』

(注3)
最高裁判所事務総局資料「裁判所における文書管理」
ここをクリック→ 最高裁判所事務総局資料「裁判所における文書管理」

6/6/2013


















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 嘆願書まとめ

ここをクリック→ 上申書まとめ






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category: 刑事司法改革への道

2013/06/06 Thu. 04:44 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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