「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (304) 「検察審査会制度とその問題点 その1」 6/17/2013 

#検察なう (304) 「検察審査会制度とその問題点 その1」 6/17/2013

(強制捜査から1644日、検察控訴趣意書提出期限まであと14日)

国民の司法参加というと裁判員裁判制度を思い浮かべる人は多いと思います。裁判員裁判は2009年から施行されていますが、同じく国民の司法参加として、もっと古くから行われている制度があります。それが1948年(昭和23年)から行われている検察審査会制度です。

裁判員裁判制度は国民が裁判官となるものですが、検察審査会制度は国民が検察官となるものです。2011年末までに検察審査会では約16万件という審査が行われていますが、その内容は一般に広く知られていないのではないかと思います。それで今回「その1」と題して、検察審査会制度の説明、問題点の指摘をしたいと思います。

検察審査会の目的は、「公訴権の実行に関し、民意を反映させてその適性を図る」(検察審査会法第1条)ものです。

なぜその必要があるかという理解のためのキーワードは2つ。

「検察官による起訴独占主義」と「起訴便宜主義」です。

前者は、刑事訴訟法第247条に定められたところで、「公訴は検察官がこれを行う」とされています。「国家追訴主義」とも言われます。誰でも起訴できるわけではなく、原則として検察だけが起訴できるとしたものです。

後者は、刑事訴訟法第248条に定められたところで、検察官は起訴するに足る犯罪の嫌疑が認められる場合でも、「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により追訴を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」とされています。条文では、公訴をしないことの理由が限定されていますが、不起訴の場合にその理由を開示する義務はないので、ただ単に「公判を維持できないから」という理由で起訴しないことも考えられます。つまり、検察が起訴をしたくないときはしなくてもいいとされているということです。

これらにより、公訴権の運用が官僚的になり、被害者や国民の法感覚から遊離した公訴権の行使がなされる危険も大きくなることから、それを防止するものとして検察審査会があるというわけです。

その歴史的経緯を振り返ってみます。

1947年(昭和22年)秋、GHQにおいて、検察を民主化するために検察官を公選制に改めるべきだとする意見が強く主張されました。歴史的背景などを理由として公選制に反対した日本側に対し、GHQは何らかの形で検事に対する国民のコントロールを考えることが必要となるとして「国民の代表よりなる委員会のごときものを作ること」及び「検事が起訴すべき事件を起訴しなかった時、検事をして起訴せしめる強制力を与えること」を検討するよう促しました。これを受けて、日本側がGHQと協議しながら立案したのが、検察審査会制度です。

日本側とGHQとの協議では、主に次の二点が焦点となりました。

第一点は、検察審査員の選定方法及び検察審査会の意見に法的拘束力を付与することの是非です。GHQは、検察審査員を一般の国民から選ぶこととともに、検察審査会の意見に法的拘束力を付与することを主張しました。日本側は、国民の法律的常識の水準の低さなどを理由に挙げて反対しつつも、検察審査員を一般の国民から選ぶことには同意しましたが、法的拘束力については全く付与しないことを選択しました。

第二点は、検察審査会をどの官庁の所轄とするかです。日本側は検察庁の所轄とすることを提案しましたが、GHQは、いかに形式的であっても検察庁の所轄とすることを認めず、結局、裁判所の所轄とすることに落ち着きました。

検察審査会法案は、1948年(昭和23年)の国会審議を経て同年可決されました。

2004年(平成16年)に起訴議決制度を導入する法改正が行われたことにより、制度創設から半世紀以上を経て、検察審査会の議決に法的拘束力が付与されることとなりました。

起訴議決制度の導入に至った要因としては、検察審査会が起訴相当、不起訴不当の議決をしても、検察官が多くのケースで起訴を行わない運用状況が続いたことが最も大きなものです。また、犯罪被害者の立場がより尊重されるようになってきたことも挙げられます。検察審査会は、被疑者が不起訴となったことを不服とする被害者にとって、救済機関としての意味を持ちます。このため、検察審会の議決に法的拘束力を付与し、その機能を強化することは、犯罪被害者の保護に資するとも言えるものです。

実際の運用を見てみます。

検察審査会は、全国の地方裁判所の所在地と主な地方裁判所支部の所在地に合計165置かれています。各審査会は、選挙権を有する国民の中からくじで選んだ候補者名簿を作成します。候補者名簿は一つの検察審査会で400人からなり、1/4ずつが3ヶ月毎に改選されます。

検察審査員(及び検察審査員が欠けた場合の補充員)は裁判員のように事件ごとに招集されるのではなく、候補者名簿から選ばれた11人(+補充員11人)による6ヶ月の任期制です。

検察審査会議は、毎年3月、6月、9月、12月に開くほか、検察審査会長(任期が改まる度に、検察審査員が互選)が必要ありと認めるときにいつでも招集することができます。東京の検察審査会の場合、原則として隔週で開かれ、状況によっては毎週開かれることもあるようです。

審査を終えた検察審査会議は、次のいずれかの議決をします。原則として過半数で決しますが、起訴相当の議決については8人以上の多数を要するという重要な例外があります。
(1) 起訴相当の議決
(2) 不起訴不当の議決
(3) 不起訴相当の議決

これまでの議決の割合は以下の通りです。起訴相当1.5%、不起訴不当9.6%、不起訴相当56.7%、その他(審査打ち切り、申立て却下、移送など)32.2%です(2011年12月31日まで)。

このうち起訴相当の議決がなされた場合、検察官は、速やかに、その議決を参考にして、起訴すべきかどうかを再検討した上で、起訴または不起訴の処分をしなければならないとされます。ここで不起訴処分が行われると、検察審査会による第二段階の審査が行われることになります。

第二回目の検察審査会でも11人のうちの8人以上の賛成により起訴が相当であると議決された場合、裁判所が指定した弁護士がその事件について速やかに起訴を行う、いわゆる強制起訴が行われます。

ここまでの流れをイメージ化したものが裁判所のHPに掲載されています。

ここをクリック→ 裁判所HP 「検察審査会起訴議決制度のイメージ」

検察審査会制度の問題点を挙げます。

まず根幹的な問題として、検察審査会が検察当局と異なる基準によって起訴の相当性を判断することへの懸念が挙げられます。

起訴の基準は、法律で明文規定されているものではありません。検察の実務では、「的確な証拠によって有罪判決が得られる高度の見込みのある場合、即ち、法廷において合理的な疑いを越えて立証できると判断した場合」とされます。この「合理的な疑いを越えて立証できる」というハードルは本来非常に高いものです(そのハードルを特定の事案で、特に特捜部案件で、恣意的に下げることが冤罪を生んでいることの指摘はこれまでしてきたところです)。

無罪判決を回避しようとしてあまりに慎重に起訴を行うことには、訴訟の実質が捜査手続に移り、裁判所が「有罪であることを確認するところ」になってしまう、被害者の立場を無視することにつながる、社会的関心事について裁判所の公的判断が示される機会が失われる、捜査における自白重視の傾向が改まらない等の問題があるとして、起訴の基準を緩和することが望ましいとする意見も少なくはありません。

これに対し判例は、裁判で無罪が確定した事件について検察官の起訴の違法性が問われた事案において、起訴は「裁判所に対して犯罪の成否、刑罰権の存否につき審判を求める意思表示」であるから、起訴時における検察官の心証は「各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りる」としています(昭和53年10月20日最高裁第二小法廷判決)。これは起訴の基準の取り得る下限を示したものと言えます。

公訴権の行使が適正であるためには、全国的になるべく統一的に、かつ、公平に行使される必要があることは言うまでもありません。つまり、検察官が起訴をする基準も、検察審査会が起訴をする基準も基本的に同一であることが適正な公訴権の行使と言えるものですが、そうすると、そもそも検察が不起訴としたものを審査対象とする検察審査会の趣旨と自己撞着となる難しさがあります。

現在、検察審査員が起訴の基準について着任時にどのような説明を受けているかは定かではありません(選定された検察審査員等向けの資料として、『検察審査会ハンドブック』最高裁判所2009がありますが、起訴の基準に関する記述は見当たりません)。

次の問題点として、被疑者に自己の権利を主張する機会が十分に与えられていないことが挙げられます。

現在の制度では、被疑者は検察審査会の判断によって証人として呼び出され、尋問を受けることはありますが、必ずその機会が与えられる訳ではありません。また、そうした意見を述べる機会が保障されていないほか、意見書や資料を提出できることを明文で認めた規定もありません。

検察官の不起訴処分の当否を審査するというのが検察審査会制度の構造であるため、そうした被疑者の権利保護に対して考慮されていないものです。起訴の判断をする検察審査員が、被疑者の尋問をしない場合、被疑者と全く会うことなく起訴が決定することもありえます。起訴の判断に際して、被疑者が直接自己弁護の機会を与えられていないというのは、少なからず問題があると思われます。

最後に、審査の不透明性が挙げられます。

検察審査会は、審査を終えて議決をすると、議決書を作成し、議決の要旨を公表します。審査内容に関し公開されているのは、その議決の要旨のみで、そのほかは一切非公開原則となっています。

検察審査会議が非公開で行われる理由としては、被疑者その他の関係者のプライバシー保護、捜査の秘密の保護、公開すると自由な討論が妨げられたり他から不当な影響を受けるおそれがあること等が挙げられています。そして、その趣旨から、検察審査会議の会議録も公開することは許されないと解されています。

現在では、検察審査会議の開催回数も公表されない場合がありますが(各検察審査会の判断に委ねられている)、それでは検察審査員がどの程度証拠に目を通し、議論をしたのかが外部に分からないものです。

審査の透明性を高めるため、少なくとも、検察審査会議における検察官の説明や審査補助員の助言、証拠・証人の標目を公表することは必要であると思われます。また、検察審査委員の平均年齢が発表されていますが、透明性を高めるためには、個人の特定に至らない検察審査員の年齢・職業等の情報の公表は必要だと思われます。

国民の司法参加を目的とする検察審査会において、その活動の模様をなるべく広く国民に伝えることは、制度の本来的な要請であるとも言えるものです。

6/17/2013
















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)






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category: 刑事司法改革への道

2013/06/17 Mon. 05:37 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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