「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (306) 「検察官控訴は認められるべきか」 6/24/2013 

#検察なう (306) 「検察官控訴は認められるべきか」 6/24/2013

(強制捜査から1651日、検察控訴趣意書提出期限まであと7日)

これから私の控訴審が始まります。7月1日がその控訴審のための検察控訴趣意書の提出期限です。

検察の上訴は英米では「二重の危険」に当たるとして法律上認められていません。この検察上訴に関し、木谷明氏(元東京高裁判事)と周防正行氏(映画監督)が対談を行っていますので、引用させて頂きます。

木谷明氏 x 周防正行氏徹底対談 『日本の刑事裁判はどうなっているのか』
「検察官控訴は認められるべきか」 

[周防]  刑事裁判の原則として、「疑わしきは被告人の利益に」ということがありますよね。だとするなら、少なくとも、一人の職業裁判官が一審で無罪を出したわけですから、「検察官控訴」は新たな証拠とか、一審ではありえなかったようなことがない限り、絶対に認められないと思うんです。

でも高裁では別に新証拠がなくても、一審の判決理由に不合理な点があるとして、簡単にひっくり返ったりもする。逆に被告人からの控訴だと、結局「基本的に、高裁は新たな証拠調べをするところではない。一審の判決文に誤りはない」と簡単に棄却する。そういう傾向があると思うんですよ。僕は「検察官控訴」をなくすだけで日本の裁判はまったく変わると思うのですが、これは過激な考え方なんでしょうか。

[木谷]  いや、おっしゃる意味はよくわかります。最初に言われた、新しい証拠がなくても覆せるかということ。これについては、新証拠とは言わないですけど、事件の核心的な部分について事実調べをしなければ、原判決を破棄して有罪の自判をすることはできないという最高裁の判例があります。だから、ほとんど書面審理やそれに近いような状態で、無罪判決を破棄して有罪判決を言い渡すということはできない。ただ、それは自判の場合であって、差し戻す場合には原判決の論理矛盾や、これはおかしいという点を指摘して「破棄差戻し」はできますね。それは一つの問題としてあります。

次に、検察官の控訴を認めるべきかどうかは、これまた重大問題でして、簡単には結論が出ないんです。ご存知の通り、英米法では「検察官控訴」はできないということになってますね。なぜかと言えば、第一審で「事実審理」にさらされたということ自体が「危険」であると考えられているんです。つまり、無罪判決に検察官の控訴を許すことは、憲法の禁止する「二重の危険」になる。これが英米法の伝統ですね。

ところが、日本の最高裁は第一審から最高裁までの審理全体が一つの危険だという考えなのです。最高裁までいって、一旦無罪になった事件についてはもういっぺん起訴することはできない。だけど、まだそこまでいっていない事件について、検察官の控訴を認めても憲法違反にはならない、というように考えているのです。英米法とは違う論理なんですね。どちらに説得力があるかはこれまた見解が分かれるところなんですが、英米法は「陪審制度」ですからね。「陪審」が無罪としたものをもういっぺんやり直すことはとてもできることではない。日本が今回「陪審制度」を選択したとすれば、そういう方向にいったかもしれないんですが、あくまで「裁判員制度」ですので、そうはならないでしょう。

で、問題の「検察官控訴」ですが、これをまったく認めないとどういうことが起こるかというと、ひとつは、第一審の裁判官が自分の責任の重さに恐れおののいて、萎縮してしまうということが考えられます。平たく言えば、こんな重大な事件について自分が無罪判決を下した場合に、これがもし真犯人であったとしたら世間の非難が自分に集中するぞ、これは大変だ、ということで委縮してしまう。むしろ、簡単には無罪を出さなくなる。

[周防]  逆に有罪率が高くなっちゃうと。

[木谷]  そういう可能性がないとは言えないということですね。それから、仮にですね、非常に杜撰な審理で無罪判決をした場合、世の中の人が誰も納得しないような理由で無罪判決にしてしまった場合にも、これはもう裁判所の判断だから絶対に動かせなくなるということだと、社会一般が納得しないでしょう。こういう二方向からの問題がありそうです。ですから「検察官控訴」を全部やめさせるという周防さんの議論は、やはり過激だと言われると思いますね。けれども、「検察官控訴」が、被告人の控訴以上に、容易に成立するというのも異様なことではあります。

[周防]  正確な数字を自分で確認したわけではないんですけど、僕が傍聴している事件で、一審無罪で高裁で逆転有罪になった事件のときに、担当弁護士じゃないある弁護士さんが言ったんですけど、「東京高裁では検察官控訴があった事件の七割はひっくり返る」と。「すごい高い率ですね」と言ったら、要するに「控訴したらひっくり返ると思うから控訴するんだ」ということなんですね。自分たちが集めた証拠をきちんと理解してもらえば絶対有罪になる、だから逆転して当たり前。要するに裁判所の傾向と対策をきちんと検察官は考えているんだと。やっぱり裁判というのは、証拠で判定するしかないものなのだから、本当に心情的に真犯人と思っているかどうかはとは別に、証拠で決定を下さなければいけないと思うんです。でも、それにしてもこれはやたらひっくり返っている。本当に七割ひっくり返るとしたら、東京高裁、恐ろしいなあと。

[木谷]  それは東京だけではないですね(笑)。検察官は、ある程度事件を選んで控訴するということも破棄率が高い原因ですね。被告人の場合は、被告人が不満ならどんどん控訴するのに対して、検察官の場合は、「事件記録」を十分検討してから態度を決めます。それは現場の検察官だけじゃなくて、「地検」全体、さらには高検まで巻き込んで検討します。地検が控訴したいと言っても、高検の決裁がなければ控訴できない。実際、検察官控訴する事件は、高検まであがるんですよ。

[周防]  あがるんですか。

[木谷]  私はかなりたくさんの無罪判決をしたけれども、若い頃の一件を除いては「検察官控訴」がなかった。それというのは現場の検察官としては不満たらたらなんだけども、高検が「こんな事件、恥ずかしくて控訴できるか」と止められた事件が結構あった、ということなんです。「控訴棄却」されるようなら検察は控訴しない。破棄されるような事件だけ選んでいる。だから「起訴便宜主義」と一緒。「控訴便宜主義」ですね(笑)。

だけど、それにしてもちょっと破棄率が高すぎるというのは事実でしょう。結局、これは高裁の意識の問題でもあるんですが、やっぱり検察官はアラを見つけるのがうまいですよ。原判決のアラ、審理のアラ。そういうものを拡大鏡で拡大して見せますから。「こんな杜撰な審理で無罪にしたのか」「こんな杜撰な論理で無罪にしたのか」と、検察官が主張しますと、それはある意味で非常に説得力があるんですよ。最初に「控訴趣意書」を読みますと、「ああこれはひどいもんだ」と思いますし、「この原裁判官は、一体何をやってたんだ」と思う事件はかなりありましたね。

しかし、一方で、弁護人の「答弁書」を参照しながら記録をよくよく読んでみると「やっぱり原判決が言ってるのはもっともだ」ということになって、「公訴棄却」で終わる事件もかなりあるんです。ただ、最初に検察官の「控訴趣意書」に影響されてしまうと、被告人の言い分に十分に耳を傾けないまま破棄という方向にいってしまう可能性はありますね。だから「検察官控訴」の場合には「控訴趣意書」から読むということ自体に問題があるかとも思っています。検察官の「控訴趣意書」の書き方は、やっぱりうまいですよ。もう全庁あげてやってますからね。

[周防]  やっぱり検察の威信をかけて、みんなで考えてるんですかね。

[木谷]  よくよく記録を読んでみると、「引っ掛け」とか「詭弁」もあるとわかるんですが、最初に「控訴趣意書」をさらっと読んだ段階では本当に引き込まれますよ。そういう技術は大したものです(笑)。

[周防]  そうなると、弁護士の能力というのは本当に・・・・・。

[木谷]  大変なことでしょうね。それに対抗するんですから。

[周防]  そうですよね。国家対個人ですよ。弁護人は個人営業ですから。

[木谷]  私はある検察官に、「ともかく、我々は、重要な問題が起こった場合には、担当検事だけでなく、地検全体、場合によっては高検、さらには最高検まで入って検討するんだ。我々はそういう検討を経た上で主張しているんだから、地裁の裁判官が一人や三人で検察官の主張と違うことを言っても、最高裁までいけばそんなもの絶対破られます。変なことはしない方がいいですよ」と言われたことがありますけどね。これは一種の恫喝ですが、検察官全体はそういう意識だと思います。やっぱり組織力はすごいですよ(笑)。

[周防]  うーん。絶望的になるなあ・・・・・。

(2007年1月発行『それでもボクはやってない 日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!』収録)

6/24/2013
















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category: 刑事司法改革への道

2013/06/24 Mon. 00:32 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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