「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (312) 「私の無罪判決を不服とする検察控訴趣意書に関し」 7/15/2013 

#検察なう (312) 「私の無罪判決を不服とする検察控訴趣意書に関し」 7/15/2013

(強制捜査から1672日、弁護側控訴答弁書提出期限まで53日)

7月1日、私の無罪判決を不服とする検察により、控訴趣意書が裁判所に提出されました。控訴趣意書とは、原審の判決を不服とする理由を書いたものです。

検察の文書による主張は、これまで一審の初めに冒頭陳述、一審最後に論告がなされ、今回が3回目となります。検察の主張は、一審の審理でなされた証人尋問の結果や無罪方向の重要証拠、重要事実を完全に無視し、故意であっても過失であっても矛盾しない些末な事実を基に「知っていただろう」「気付いたはずだ」という推認・推論を繰り返して強調するだけのものだということはこれまで繰り返し述べてきたところです。

冒頭陳述要旨が24ページ、論告要旨が44ページであったのに対し、控訴趣意書は81ページにも達しています。国家権力に刃向かう者は絶対許さんとする、憎悪に近い負のエネルギーが増大していることが見て取れます。しかし、今回検察により提出された控訴趣意書は、これまでのものの中でも最も出来が悪いと言わざるを得ない内容でした。今回の控訴趣意書でも、彼らの主張は全く変わり映えなく、ただ無意味な論点が加わって水増しされただけのものだったからです。

刑事裁判における控訴趣意書は、原審判決文の可否を問うもので、「原審判決のここが間違っている」というものが主張の骨子となります。一審で十分な審理がなされているわけですから、本来は一審で審理されることのなかった新証拠を出して、新たな判断材料とすべきものです。

しかし、控訴趣意書においては、事実上新しい証拠は何ら提出されていません。そして、検察の主張する原審判決が間違っているとの理由は、一審無罪判決が論理則・経験則に照らして不合理だというものです。つまり「合理的な疑いを越える立証がされていない」とする一審判決に対し、何ら新証拠を提示することなく「それは誰が聞いてもおかしいだろう」と一般論に寄りかかった反論をしているのみです。

控訴趣意書の中で、一審裁判体の判断は「論理則・経験則違背」であるとか「健全な社会常識に反している」という言葉が連呼されています。そして、検察の主張する「健全な社会常識」とは、「確定申告をする者は、すべからく収入の認識がある。なぜなら確定申告は、収入の認識をした上で、納税額を確定するものだから」という木で鼻をくくったようなものです。

検察は、「給与所得及びそれ以外の全ての収入を意識し、合算した上で、自ら税額を計算するなどして申告する義務を有するのであり、このような高額所得者が、自らの収入に思いを致さないまま申告を行うことなどは、あり得ないと言って差し支えない」と主張し、しかも説明もなく「自ら資料を提供する以上、税理士に申告を依頼した場合でも異ならない」としています。そしてその結論は、「これらのことは公知の事実あるいは社会常識といって差し支えないことである」です。

私は読んでいて思わず「はあ?」でした。

その論理は、「運転免許保持者には安全運転義務がある。だから交通事故はありえ得ない。事故があるとすればそれは故意によるもので、それは公知の事実あるいは社会常識といって差し支えない」と言うことと同じです。

あるいは、全ての確定申告者に収入の認識があるとするならば、世の中の過少申告は自動的に全て脱税となってしまいますが、それこそ論理則・経験則に反していることは明らかです。

また、控訴趣意書においてされた「原審においては、確定申告手続は公知の事実である、として立証しなかったが、原審裁判所が同手続を十分に理解しないままに被告人のほ脱の故意に関する判断をしたことが判明したことから、控訴審において立証するものである」という主張には驚きを隠せませんでした。

一審の裁判体は経済犯を集中的に判ずる部であり、脱税事案を数多く手掛けている裁判体です。その裁判体を素人扱いして、「確定申告手続を十分に理解していない」という暴論を吐くことは、検察がまさに「裸の王様」であることを如実に表しています。必要もなく裁判所の権威を冒涜する検察主張を高裁裁判体がどう受けとめるのか、要注目です。

また新たに付け加えられた論点で目を引くものとして次の2点が挙げられます。

「私が証券外務員の資格を持っており、その資格試験では証券税務も問われることから、税務に精通していた」というものと、「担当税理士は経験も浅く、税務の知識も乏しかったことから私に簡単に騙された」というものです。

水増しの論点として実に出来の悪いものです。

前者は、証券会社に勤務している者であればその荒唐無稽さがよく分かると思われます。20年前に一夜漬けで仕入れた受験の知識をもってして「詳細な知識を取得していた」というのはお笑いです。外資系証券会社の顧客は全てが機関投資家であり、彼らとの21年間の業務で個人税務が話題に上ったことは一度としてありませんでした。ましてや、その証券外務員試験の証券税務で、「一部外資系金融で、会社支給の株式報酬が源泉徴収の対象外」などという会社に個別な特殊税務が問われることはあり得ないことは言うまでもありません。

また担当税理士は無能どころか優秀な方で、検察の主張は全く根拠のないものです。公認会計士の資格を持つ彼を理由なく誹謗・中傷した内容です。

何度読み返しても、納得感の薄い控訴趣意書ですが、最初はその納得感のなさの決定的な理由が何か、はっきりとは理解できませんでした。推認・推論での主張であることは確かですが、何か大きなものが欠けているような気がしたからです。

そして、その理由に気付きました。納得感のなさの決定的な理由は、控訴趣意書の中で源泉徴収制度が全く論じられていないことでした。

私は税務調査の開始時から、「株式報酬も会社給与である以上、その所得税は給与天引きされていると思っていた。源泉徴収票に記載されていない会社給与などありうることすら想像しなかった」と主張しています。もし会社給与がそもそも源泉徴収されないのであれば、過少申告にはなりえなかったものです。

検察は、繰り返し確定申告制度の意義やその仕組みを論じていながら、源泉徴収制度の意義やその仕組みを全く無視しています。会社給与は源泉徴収されるものと思い込んでいる者のメンタリティーや、その制度の成り立ちを論ずることなくして、確定申告は全ての収入を申告するものであるという「そもそも論」に依拠して故意を推認するのは全く的外れです。

それが検察主張を全く納得感のないものにしている理由です。

また、社会常識と言いながら、同じ境遇であったそのほか申告漏れ社員の事情に関しては全く言及していません。抽象的な一般論に寄りかかる論理であることは明らかです。

そして、脱税犯だとすれば合理的ではない事実に関しても、「脱税に及ぶ者はその動機、知識、物の考え方等千差万別である」と主張しています。「確定申告をする人間には論理則・経験則があるのに、脱税犯にはそうしたものはない」とする論理が当を得ていないことは言うまでもないと思います。

「原判決の判断がおよそ健全な社会常識に基づく論理則・経験則を無視したことは他言を要しないところである」と主張する検察控訴趣意書が、健全な社会常識に基づく論理則・経験則を無視したことは他言を要しないところです。

素人にもダメ出しされるほどで、ほとんど反論の必要もないとは思われますが、それでも高裁では、一審無罪の7割が破棄されるという刑事司法の異常さから、万全を期すべく弁護団が控訴答弁書を裁判所に提出します。その期限が9月6日と決められました。

是非とも引き続きご注目下さい。

7/15/2013











法廷画が冊子化されました。正(第2回公判~第7回公判、400円)、続(第8回公判~第11回公判無罪判決、500円)の2冊です。代金(実費)は、無償で法廷画を描いてくれた漫画家にカンパされます。ご希望の方は sienhatta@gmail.com までご連絡下さい(送料9冊まで80円、10冊以上160円)。

#検察なう


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category: 訴訟記録等

2013/07/15 Mon. 08:44 [edit]   TB: 0 | CM: 4

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この記事に対するコメント

syuisyo

八田君
東大法学部ともあろう人が、たとえの論理がおかしいのではないだろうか?交通事故のたとえは狭い一車線の一般道で300㎞/hrで走行した時の自己責任ということではないだろうか?歩いている人や自転車と一緒に考えるべきではないです。検察の論理のほうが筋が通っているとおもいます。こんなブログで裁判官に妙な圧力をかけたりせず、目を覚ましてください。

tokumei #mQop/nM. | URL | 2013/07/15 Mon. 14:38 * edit *

文章には書き手としての責任を

これで何度目でしょうか?

自ら正しいと主張する意見を、
全世界に公開されているブログのコメント欄に記載するのなら、
書き手としての最低限の責任を全うされるお気持ちはないのでしょうか?

私は、匿名は大嫌いです。
その時点で読む価値すらありません。

賛同ならまだしも、異論を唱えるのなら。

もし何らかの理由により名前が出せないのなら、
八田氏に直接メールすればよろしいでしょう。


私は法学部には無縁の人間ですが、
法学部を出た方は、
軽微な交通事故も、殺人行為も一緒くたにして、

> 一車線の一般道で300㎞/hrで走行

という荒唐無稽な例を出すのが一般的なのでしょうか?
(業務上過失と危険運転と傷害、殺人未遂を同じにするんですね)

だとすると、今の検察のあり方も、しごくまっとうに見えますね。
こんな人たちが、社会正義を掲げているなんて、
怖くて生きていけません。

宮越 健 #68f1HcXw | URL | 2013/07/15 Mon. 15:44 * edit *

tokumei さん
あなたが検事?だということは判りますよ。
そのようにして、あなたこそ八田さんに圧力をかけているではないですか。名も名乗れないような卑怯者はコメントする価値はないですよ。
せいぜい、2チャンネルで投稿してください。

佐藤克男 #41Gd1xPo | URL | 2013/07/15 Mon. 18:28 * edit *

モバイルでIP抜かれてるの知ってる割にはいい度胸してるよねtokumei君。
まあでも、実に残念な感じ。どうして残念だかわかんないかもしれないけど。
どうすれば残念な人生から抜け出せるのか、すこし一緒に考えてみようか。

川口昌人 #XF3m1Xjs | URL | 2013/07/15 Mon. 22:48 * edit *

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