「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (320) 「『記憶の混同』という嘘」 8/12/2013  

#検察なう (320) 「『記憶の混同』という嘘」 8/12/2013

(強制捜査から1700日、弁護側控訴答弁書提出期限まで25日)

検察審査会の「不起訴不当」を受けながら、検察は田代政弘元検事を再度不起訴処分としました。これにより検察は、自らの非を認めることなく陸山会事件に係る虚偽報告書問題の幕引きを図ろうとしていることは明らかです。

既存メディアの報道の多くは、あくまで処分の結論だけに触れ、その意味するところ、即ち検察特捜部の犯罪行為における組織的隠蔽工作ということの言及はありません。

しかし、一部気を吐くメディアもあります。『田代氏不起訴、国民は納得できるか』と題する8月2日付け東京新聞の社説から引用します。

「検察は自ら起訴し、裁判所の判断を仰ぐべきだった。その方が公正で、国民の納得を得られたはずだ。

検察が検察審を誤導して、小沢氏を強制起訴に持ち込んだ疑いさえ出ていた。田代氏が起訴されれば、特捜部長ら検察幹部の関わりもあぶり出される可能性があった。そうした視点に立つと、今回の判断には組織防衛の意図さえうかがえよう。

検察の暴走をどう止めるか。法務大臣の指揮権発動の在り方や参考人の録音・録画も含め、検察捜査を監視するシステムの再検討が必要である。」

至極真っ当な議論ですが、この社説に関しては惜しいところが一点。

それは「最高検が田代元検事の言い分を鵜呑みにした」という点です。今回の件で「ミステークでいこう」と最高検が言ったかどうかは分かりませんが、『記憶の混同』こそが、組織防衛を図る最高検の苦肉のストーリーであることは明らかです。

この『記憶の混同』という確信犯的な組織防衛のための言い逃れには二重の嘘があります。

まずその一つは、報告書の内容が意図的に書かれたものであるのに、あたかもうっかり間違ってしまったという、故意→過失の嘘です。

その内容が似ても似つかないものであることから、そもそもこの主張が全く根拠のないものであることは、報告書と石川知裕氏の隠し録音の反訳を比較すれば、普通の理性で理解できるものです。

その点に関しては私の以前のブログをご参照下さい。

#検察なう (134) 「郵便不正事件よりも重大な検察の犯罪 田代検事報告書の検証」

ここをクリック→ #検察なう (134) 「郵便不正事件よりも重大な検察の犯罪 田代検事報告書の検証」

そしてもう一つの嘘とは「2日前と3ヶ月前の取調べ内容を取り違えた」という『記憶の混同』の内容に関するものです。

そのヒントは、ブログで紹介させてもらった、先日の私と喜田村先生との対話の中にあります。引用します。

喜田村 「僕がやってた小沢さんの事件で石川さんがテープを取ってたでしょ。検察官の取調べを。身柄拘束中と保釈になってたからの取調べの調書があるんだけど、テープ取ってたやつは保釈になってからのね。検察としてはそれら調書で石川さんが同じことを言っているというものが欲しかったわけ。保釈になってからも同じことを言っていれば、身柄拘束中の調書も任意性と信用性を問われることがないから。でもああいう不適切が取調べがあって、それが分かったのはなぜか。『音』があったからですよ。それがなければ水掛け論になっちゃって、それだと裁判官が認定できない」

#検察なう (313) 「レペタ裁判&刑事司法を喜田村洋一弁護士に聞く」より

ここをクリック→ #検察なう (313) 「レペタ裁判&刑事司法を喜田村洋一弁護士に聞く」

解説します。

私も特捜検事の取調べを受けた経験があるため、確信を持って言えますが、彼らの取調べは実に緻密に準備されています。取調べに際し、証拠を読み込み、事件全体を理解した上で、取調べで聞く内容を前もって用意し、かつそれに対して予想される被疑者の答えも想定した上で取調べに臨みます。被疑者がするであろう弁明を想定し、そこから自分に有利な供述内容に誘導するように幾重もの罠を仕掛けて取調べの問いを考えます。

特捜検事の取調べは、雑談の中から彼らに有利なものを拾い出すなどというものとは全く違い、被疑者を問答の中でからめとろうとする非常に高度な技術が用いられています。

例えば、棋士でも有段者ともなると、対局後、棋譜がなくてもその対局を最初から再現できることはご存知かと思います。それは一手一手が行き当たりばったりではなく、何手も先を読んで対局に臨み、一手ごとに相手の出方を窺いながら、自分の罠にはまれば「よっしゃ!」と思い、その罠にはまらなければその時点で戦局を立て直すべく知恵を凝らしているからです。特捜検事の取調べはまさにそのようなものです。

喜田村先生のコメントにあるように、石川氏の取調べには明確な目標がありました。それは3ヶ月前の取調べの内容と同じ供述を得たいというものです。そうした取調べの報告書で、『記憶の混同』なるものがあろうはずがありません。つまり「3ヶ月前の供述内容」と「(同じことを言ってほしいのに言ってくれなかった)2日前の供述内容」を混同するということは、最高レベルの取調べ技術をもった特捜検事においては起こり得ないものです。

その嘘をさらに嘘で固めようとした最高検松井部長の「2日前のことを全て正確に記憶しているか、私でも自信はない」というコメントは、完全な勇み足です。

ここをクリック→ 産経ニュース 『田代元検事不起訴』

嘘もここまでいくと真っ赤も真っ赤、極彩色級の赤です。なぜここまで検察は意固地に自らの過ちを認めようとしないのか、理解することができません。それは「過ちを認めれば直さざるを得ない、そして直すつもりが全くない」という嘘をつく人の典型例としか考えられません。

サラリーマンが職責でもない税務で「会社給与は天引きされていると思い込んでいた」と言えば「そんなことはありえない」と過失を故意として人を刑事被告人にする起訴をしていながら、検察官の職責である取調べで大嘘をついても故意を過失として起訴をしない組織の二枚舌には怒りを通り越してあきれてしまいます。人を裁く者は、より自らに厳しくあるべきです。検察組織はそうした裁く者の最重要事項である基本的倫理観すら失ってしまったというのが、彼らの現実です。

こうした組織が日本の正義の番人であるかと思うと、国民の一人として残念でなりません。依然多数派であろう高い理念の検察官が、こうした検察上層部の低俗な論理に毒されることなく検察の将来を背負っていけるような誇り高い組織であることを切に望みます。

最後に、この問題を読み解く最重要記事である前田恒彦元特捜検事による『マスコミが報じない陸山会・虚偽報告書事件』(連載中)をシェアします。

『事件の背景とは』(7月7日掲載)

ここをクリック→ 『マスコミが報じない陸山会・虚偽報告書事件の背景とは』

『事件に対する隠ぺい捜査の実態とは』(8月10日掲載)

ここをクリック→ 『マスコミが報じない陸山会・虚偽報告書事件に対する隠ぺい捜査の実態とは』

P.S.
田代元検事ほかを告発した市民団体「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(代表:八木啓代氏)が追撃の告発をします。その具体的な内容に関し今日、記者会見を行うようです。注目したいと思います。

ここをクリック→ 産経ニュース 『陸山会事件めぐり元特捜検事らを新たに告発へ』

8/12/2013












法廷画が冊子化されました。正(第2回公判~第7回公判、400円)、続(第8回公判~第11回公判無罪判決、500円)の2冊です。代金(実費)は、無償で法廷画を描いてくれた漫画家にカンパされます。ご希望の方は sienhatta@gmail.com までご連絡下さい(送料9冊まで80円、10冊以上160円)。

#検察なう


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

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category: 刑事司法改革への道

2013/08/12 Mon. 07:00 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

何故、これほどまでに田代元検事を検察が守るかは答えが出ています。起訴すると当然、上司の責任問題が出てくるからです。大阪特捜検察のように前田元検事が逮捕後、少しして大坪元特捜部長・佐賀元特捜次席が逮捕されたように田代元検事を逮捕すると同じく上層部も逮捕しなければならなくなるからです。正に「記憶の混同」などという言葉がどこから出てくるのでしょうか?それも検察の威信をかけた小沢裁判の重要な容疑者の取り調べでの発言ですよ・・・威信と組織防衛のためなら何でも有りですか?録音がなければ「記憶の混同はあり得ない」になっていたでしょう。冤罪を叫ばれる方々の記事を見つけてはいつも思うのですが
同じような脅し・恫喝・誘導などで自白を強要し、何がなんでも犯罪者に仕立てあげることが正義の法の番人のすることでしょうか?真実の前に見立てたストーリーありきで調書を取っていく・・・遠隔操作事件の学生さんなどは良い例ではありませんか・・・それでも誰も責任は取らない?
検察の言う威信とはいったい何なのでしょうか?このままでは国民の思いとは乖離した組織として国民の信頼は得られないと思うのですが・・・八田さん、多くの冤罪者は取り調べの中で不条理を感じながらも否認すれば「人質司法」などによる長期勾留などの辛さに耐えかねて真実をまげて裁判で罪を認めたりします。あなたの折れない強い強靭な心に敬意を表します。最後まで頑張ってくださいね・・・完全勝利で終わることを心より願っております。

#- | URL | 2013/08/16 Fri. 16:59 * edit *

ありがとうございます 

正直、大きな闇に引き込まれる恐怖に打ちひしがれたこともありました。しかし、その場から逃げることが解決になるとは思えず、ぎりぎり踏み止まったものです。今は、多くの方々のご支援を得て、また無罪判決もその方々のご恩返しであると思っています。「無理を通せば道理が引っ込む」といった検察の成功体験を作らないためにも、控訴審では判決にこだわって必勝の構えです。引き続きご注目頂き、ご支援のほどよろしくお願いします。

八田



> 何故、これほどまでに田代元検事を検察が守るかは答えが出ています。起訴すると当然、上司の責任問題が出てくるからです。大阪特捜検察のように前田元検事が逮捕後、少しして大坪元特捜部長・佐賀元特捜次席が逮捕されたように田代元検事を逮捕すると同じく上層部も逮捕しなければならなくなるからです。正に「記憶の混同」などという言葉がどこから出てくるのでしょうか?それも検察の威信をかけた小沢裁判の重要な容疑者の取り調べでの発言ですよ・・・威信と組織防衛のためなら何でも有りですか?録音がなければ「記憶の混同はあり得ない」になっていたでしょう。冤罪を叫ばれる方々の記事を見つけてはいつも思うのですが
> 同じような脅し・恫喝・誘導などで自白を強要し、何がなんでも犯罪者に仕立てあげることが正義の法の番人のすることでしょうか?真実の前に見立てたストーリーありきで調書を取っていく・・・遠隔操作事件の学生さんなどは良い例ではありませんか・・・それでも誰も責任は取らない?
> 検察の言う威信とはいったい何なのでしょうか?このままでは国民の思いとは乖離した組織として国民の信頼は得られないと思うのですが・・・八田さん、多くの冤罪者は取り調べの中で不条理を感じながらも否認すれば「人質司法」などによる長期勾留などの辛さに耐えかねて真実をまげて裁判で罪を認めたりします。あなたの折れない強い強靭な心に敬意を表します。最後まで頑張ってくださいね・・・完全勝利で終わることを心より願っております。

八田隆 #- | URL | 2013/08/16 Fri. 17:22 * edit *

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