「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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経過報告 (49) 「検察取調べ第十一回」 9/29/2011 

経過報告 (49) 「検察取調べ第十一回」 9/29/2011

今日も取調べが検察庁五反田分室でありました。

クレディ・スイスの社員に対する税務調査対象年度は2005-2007年度の3年間ですが、私の告発は2006年度と2007年度の2年における所得税法違反、いわゆる脱税です。

私は、サラリーマンになって数年目に確定申告の必要が生じ、最初は自分でやっていました。その後、当時働いていたソロモンブラザースの経理部にいた人が自分で事務所を開設するということで、それ以来彼に確定申告を依頼していました。毎年確定申告シーズンになると、その税理士に関係書類を送って「先生、今年もお願いします」と電話を一本入れるのが私にとっての確定申告でした。

2005年度の確定申告をお願いする段になり、例年のように書類を送付した後で、彼に電話した時、彼に言われた言葉に私は驚いてしまいました。「八田さん、実はこれまで数年分、書類を頂いておりながら、確定申告をしていませんでした。それに関しては、今年の分と一緒にやりますので、ご心配なさらないで下さい」とのことでした。その税理士も税理士ですが、私もてっきり確定申告はされているものだと思い込んで、毎年書類をせっせと送っていたのですから、相当抜けたものです。その後、苦労して(弁護士を間に入れることになりました)未申告分の書類の一部を取り返すことができ、それをその弁護士の知り合いである税理士に依頼して過年度申告をしました。

完全無申告であったのは2000年度から2005年度の6年間(以前の記憶では8年間だと思っていましたが、正確なところは6年間でした)、書類を取り返して過年度申告ができたのが2002年度から2005年度までの4年間でした。

以上のことは国税局の取調べで触れられたものの、調書には取られませんでした。彼らは、私に有利なものは調書に取らないからです。私の税務処理は、税理士を信頼して関係書類を提出するだけということを裏付けることがらだからです。自分で緻密に税務処理するイメージとは正反対であることは明らかです。

今日の、検察の取調べは3時からでしたが、取調べの内容は上記のことの確認でした。依然、問答形式で調書は作成されていますので、取調べと調書の作成は同時進行です。私もおかしいと最初から気付くべきでしたが、ふーん、そうしたことも一通り確認するんだな、としか思いませんでした。もう一度言います。検察は、私に有利なことを調書に取るつもりは最初からありません。

「八田さん、それではあなたは2000年度から2005年度の6年間もの間、全く確定申告をしていないにも関わらず、確定申告をしていたつもりだったのですか」
「そうです。大野税理士から、それを告げられるまで全く気付かずにいました。気付いていたら、毎年書類を提出していたということはなかったと思います」

普通であれば、それで終わりです。一旦、休憩をはさんでから、検事の猛烈な追い込みが始まりました。

「八田さん、1998年度は大野税理士により、滞りなく確定申告が行われているようですが、あなたはその控えを受け取りましたか」
「はい、受け取りました」
「大野税理士は、その報酬をあなたに請求しましたか」
「はい、請求しました。請求書が控えに同封されていたと思います」
「そしてあなたはその報酬を支払いましたか」
「はい、請求書を受け取ってから、直ちに支払ったはずです」
「八田さん、その翌年の1999年度も大野税理士により、滞りなく確定申告が行われているようですが、あなたはその控えを受け取りましたか」
そしてその後、全く同じ内容の質問が繰り返されました。問題はその後です。

「八田さん、2000年度は無申告でしたが、あなたはその確定申告の控えを受け取りましたか」
「?申告はなされなかったので、控えを受け取ることはありませんでした」
「あなたは2000年度分として報酬を請求されましたか」
「??いえ、報酬を請求されたということはありませんでした」
「あなたは2000年度分として報酬を支払いましたか」
「???いえ、請求されていない以上、報酬を支払うことはありませんでした」
「八田さん、2001年度は無申告でしたが、あなたはその確定申告の控えを受け取りましたか」
その瞬間に相手の意図を察した私は、「しまった」と思いましたが、後の祭りです。

結局、2005年度分まで、同じ問いを繰り返されてしまいました。そしてその後の検事の問いは、私がまさに予想したものでした。
「八田さん、あなたはその6年間、控えも受け取らず、報酬の請求もされず、その支払いをしていないにも関わらず、税理士が確定申告をしていたと思っていたと主張なさるのですか」

「私は、翌年の確定申告の時には、その前年に控えを受け取っていないであるとか、報酬を請求されていない支払いをしていないということを完全に失念して、確定申告がなされているという思い込みで、毎年その依頼をしていたものです」
「八田さん、あなたは税理士が確定申告をしていないことを知りながら、彼の過怠が理由であるということを言い訳にして、その状態を利用しようとしたのではないのですか」

なんたる邪推、検察恐るべしです。普段であれば、検事が「合理的な疑いが生じる」であろう点を突いてくることを想定して、慎重に答えを選ぶのですが、今回は、完全に無防備なところを攻められました。過去問に全く出題例のない、ヤマの張りようがないところを出題されたようなものです。

私が答えることができたのは、「税理士に確定申告作成を依頼し、書類を提出した以上、彼が過怠で申告をしないなどとは、普通の感覚では想定できず、私の思い込みは不合理だといえないのではないか」「私は、一旦人に任せることを決めた場合には全面的に任せる性格で、それに関して監視や確認を細かくする性格ではない」「私は、確定申告によって還付を受けるものと思っていた。それを放棄してまで無申告の状態を放置するというのは妥当性に欠けるのではないか」「無申告であったことを知った後に、なぜそれまで税務署の指摘がなかったかということを考えた際、税務署にしてみれば、還付を放棄するのはこちらの勝手だろうと判断したのだと思った」「私が真実を述べながら、それを悪意をもって解釈されるのは非常に残念だ」といったことでした。それでも、「6年間も税理士が確定申告をしていないのに、それをしていたと思い込んでいたというのは、常識的にはありえず、意図的に無申告の状態を放置していた。税理士を雇ったという一事をもってして、『正しい申告をしようとした』ということは全くの虚言だ」という検事の論理を完全に打ち崩したとはいえない結果でした。

今日の8時までの取調べの5時間は、この論点だけの調書作成でした。

勿論、2000年度から2004年度までの5年間の無申告に関しては、株式を受け取っていない段階で、ましてや2000年度や2001年度に関しては将来株を受け取るかも分からない状況なのですから、その準備のためにそうした無申告の状態を作ったということはあり得ません。検事が、無申告=株式を受け取った後の仮装・隠蔽の準備ということを言ってくれば、直ちにそうした反論を取ろうと待ち構えていたのですが、さすがに検事もそこには踏み込んできませんでした。彼の目的はあくまで、狡猾に税逃れを企図する犯罪者のイメージ作りだけです。そこでは、嫌疑とされている海外給与の過少申告に故意があったとは全く直接的には関係がないところ議論を仕掛けてきたものです。

今日は、こちらのダメージはさほどでもありませんが、レフリーの見ていないところでローブローを打たれたようなもので、非常に気分が悪いものでした。

相変わらず、検察の白を黒く塗りつぶそうとする努力は続いています。しかし黒く塗りつぶせなかったときには、さすがに国税局とは違って、起訴を諦めるという最低限の正義は持ち合わせていることに希望を持ち続けようと思っています。

次の取調べは一日置いて、明後日の午後1時半からです。

消耗戦ですが、私も必死です。知力のみならず、気力でも絶対負けないつもりです。あとは体力勝負です。引き続き応援お願いします。

9/30/2011

P.S.
今日、取調べの合間の休憩時間に外に出たところ、知り合いの報道関係者の方と出会いました。そして、この6月に、会社からの株式報酬を脱税した容疑で告発されたJPモルガン証券の社員が、本日起訴されたことを知りました。告発から3ヶ月で起訴というのは普通のスピード感です。私は彼とは全く面識がありませんが、正直なところ気の毒に思っています。報道によると、彼は以前に同様の事例で修正申告をさせられており、脱税の嫌疑は、修正申告以降の年度に関するものですので、報道が正しければ彼は再犯ということになります。そして彼は告発当初から嫌疑を認めています。しかし、脱税において、刑事告発となる金額のハードルは、隠語で「テンゴ」と呼ばれる1億5千万円です。彼のほ脱金額はそれに満たない1億4千万円でした。そして彼の告発は、実名のみならず、顔や住んでいるマンションも映像で報道されました。これは、私の思うところは、私の事案で検察が苦労しているのを見て、類似事案で殊更に悪質性を国税局が強調しようとしたものではないかということです。外資系金融の悪いイメージの醸成に犠牲とされたのが、彼ではなかったかと思っています。残念ながら、これが私たちの国の役人の手口なのです。悲しいことです。



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category: 地検特捜部との死闘実況

2011/09/29 Thu. 09:05 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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