「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (324) 「PC遠隔操作事件 検察事実上の敗北宣言 & 雑誌『週刊金曜日』に私の記事が掲載されました」 8/26/2013 

#検察なう (324) 「PC遠隔操作事件 検察事実上の敗北宣言 & 雑誌『週刊金曜日』に私の記事が掲載されました」 8/26/2013

(強制捜査から1714日、弁護側控訴答弁書提出期限まで11日)

既存メディアではすっかり沈静化したかのようなPC遠隔操作事件ですが、インターネットメディアでは混沌とした捜査の状況を伝えて注目度は更にアップしています。

先日、第4回公判前整理手続が行われ、その後に恒例の弁護団による記者会見が行われました。この模様はYoutubeで見ることができます。会見全体(注1)は1時間に亘りますが、その中で特に問題視されるものが次の部分です。弁護人の佐藤博史氏がジャーナリスト神保哲生氏の質問に答えた2分間の動画をご覧下さい。

ここをクリック→ 第4回公判前整理手続き後記者会見(佐藤博史弁護士)

ここで佐藤博史弁護士が引用した最高裁判例とは、平成22年4月27日の平野母子殺害事件の最高裁判決のことを指しています。

ここをクリック→ Wikipedia 平野母子殺害事件

この事件は一審無期懲役判決、双方控訴の後、二審死刑判決、上告審で最高裁は破棄差戻しをし、差し戻された高裁で無罪判決が出たものです(現在、検察控訴中)。死刑判決を最高裁が差し戻すというケースは異例中の異例です。

刑事司法の大原則として、有罪立証には「合理的な疑いを越える」立証がなされなければならないとされていますが、この判決は、情況証拠しかない場合の犯人性に関する立証において、その抽象概念に具体的内容を盛り込んだものとして非常に重要です。犯人性を裏付ける直接的な証拠がない場合でも、情況証拠から犯人性を立証することは可能ですが、その場合のハードルを上げたものです。

判決文(注2)からその部分を引用します。
「直接証拠がないのであるから、情況証拠によって認められる間接事実中に、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない(あるいは、少なくとも説明が極めて困難である)事実関係がふくまれていることを要するというべきである」

「被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明できない」というのは仮定的否定をさらに否定する二重否定になって、多少の分かりにくさはありますが、それは即ち「他の者が犯人であるとしたならば合理的に説明できない」ということを言っています。要するに、そうした立証があって初めて「犯人は被告人以外にはありえない」、つまり「被告人こそが犯人である」ことが言えるということを意味しています。

PC遠隔操作事件では、殺害や爆破予告メールを送信したとされた4人の誤認逮捕が起きています。彼らのメールのIPアドレスが犯行の証拠とされましたが、彼らのパソコンからマルウェア(「iesys.exeアイシス・エグゼ」というトロイの木馬)が発見されたことから遠隔操作されていたことが逮捕後発覚したものです。

そして彼らのパソコンを遠隔操作した容疑で逮捕された片山祐輔氏ですが、その逮捕の証拠とされているのが、犯行メールに書かれた内容と彼の行動が一致しているという情況証拠と彼の勤務先パソコンからマルウェアが発見されたことです。

もし片山氏も遠隔操作されていたのであれば、彼の行動が犯人に筒抜けであったことは当然です。その犯人が彼の行動を辿るように犯行メールを作成すれば、片山氏の取った行動を、あたかも犯人が取った行動のように見せかけることはいとも簡単にできます。そして4人の誤認逮捕の際には彼らが犯人ではないとされたマルウェアの発見の状況は、片山氏の状況とは何ら変わらないにも関わらず、片や犯人ではない証拠とされ、片や犯人である証拠とされています。

片山氏が遠隔操作されていたという可能性を想定するだけで、容易にほかに犯人がいることの疑いが生じ、それは平野母子殺害事件の判例にある「他の者が犯人であるとしたならば合理的に説明できない」ということには明らかに合致しません。

そして、その「他の者が犯人であるとしたならば合理的に説明できない」ことの挙証責任は検察側にあることは当然です。しかし、検察が、無罪を立証する責任が弁護側にあるかのように言及したことは、検察の敗北宣言に等しいものです。

現時点で最大の問題は、検察が徒手空拳で起訴をしていることが推認できるにも関わらず、片山氏の接見禁止付き勾留が依然続いていることです。片山氏の逮捕以来の起訴後勾留は既に6ヶ月半にも及び、依然家族とも会えない状況です。そしてその責任は検察の勾留請求を安易に認めている裁判所にあり、それを全く批判しないメディアにあります。

彼が有罪であるか無罪であるかの結果は公判を待たなくてはなりませんが、推定無罪原則を蹂躙した明らかな人権侵害がリアルタイムで起こっていることを、我々は認識する必要があります。

PC遠隔操作事件は、警察・検察の威信を賭けた事件だけに、記者クラブに属する新聞・テレビといった既存メディアは申し合わせたように経過の詳細な報告を見送っています。この事件は、インターネットを媒体とした江川紹子氏や神保哲生氏といったフリーのジャーナリストの独断場となった事件として今後長く記憶されるものと思われます。

江川紹子氏 「PC遠隔操作事件 写真はiPhoneで撮られていた!」
ここをクリック→ 「PC遠隔操作事件 写真はiPhoneで撮られていた!」

神保哲生氏 x 宮台真司氏 ビデオニュース・ドットコム 
「遠隔操作ウィルス事件続報 弁護側が無罪性の挙証責任を負わなければならないのか」
ここをクリック→ ビデオニュース・ドットコム 「弁護側が無罪性の挙証責任を負わなければならないのか」 

私の以前のブログ「PC遠隔操作事件における捜査及びメディア報道の問題点」もご参照下さい。
ここをクリック→ #検察なう (299) 「PC遠隔操作事件における捜査及びメディア報道の問題点」

そして別件。

先週金曜日発売、現在書店に並んでいる雑誌『週刊金曜日』(8月23日第956号)に私に関する記事が掲載されています。青木理氏による『検察の無謬の砦に穿たれた貴重な判決』です。是非、ご購入、ご覧下さい。

ここをクリック→ 雑誌『週刊金曜日』(8月23日第956号)目次

(注1)第4回公判前整理手続後記者会見(ビデオニュース・ドットコムより)
ここをクリック→ 第4回公判前整理手続後記者会見(ビデオニュース・ドットコムより)

(注2) 平野母子殺害事件最高裁判決文
ここをクリック→ 平野母子殺害事件最高裁判決文

8/26/2013












法廷画が冊子化されました。正(第2回公判~第7回公判、400円)、続(第8回公判~第11回公判無罪判決、500円)の2冊です。代金(実費)は、無償で法廷画を描いてくれた漫画家にカンパされます。ご希望の方は sienhatta@gmail.com までご連絡下さい(送料9冊まで80円、10冊以上160円)。

#検察なう


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 「20分で分かる『クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件』~日本の司法を正す会ダイジェスト版」(動画)


ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

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category: 刑事事件一般

2013/08/26 Mon. 03:13 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

どうして6ヶ月半も拘留しなければならないのか?裁判で無罪になったらどうするのでしょうか?何でも「証拠隠滅の恐れあり」で拘留を続けて諦めて自白をするのを待っているのでしょうが?保釈も認めない裁判所も
なぜ、検察側の言い分だけを聞いて判断するのでしょうか?最終的には「推認」で有罪と言う判決になるのでしょうか?根本的に日本の司法は
間違った方向へ進んでいるのではないかと「推認」したいです。
こうして数多くの冤罪が生まれてきたのではないかとも思っています。
世の中には冤罪でも声を上げられず静かに生きている方もいると思います。
もっと被告人の言葉に耳を傾けて、その中から真実を引き出して欲しいと願うばかりです。

名無し #- | URL | 2013/08/27 Tue. 16:22 * edit *

メッセージありがとうございます

「世の中には冤罪でも声を上げられず静かに生きている方もいると思います。
もっと被告人の言葉に耳を傾けて、その中から真実を引き出して欲しいと願うばかりです。」
全くその通りだと思います。

捜査権力も(一部のケースを除き)初めから冤罪を作るつもりはないと思います。ところが初動ミスを自ら正すことができず、結論ありきで突き進む結果、多くの冤罪が作られてしまうのだと思います。

陸山会事件に係わる虚偽報告書問題しかり、このPC遠隔操作事件しかり、捜査権力(特に検察、そして特に特捜部)は全く自浄作用がありません。

そしてご指摘の通り、無実の声を上げて世に届く冤罪はまさに氷山の一角だと思います。その重大な原因には、裁判官の検察に対する過大評価があると思います。彼らが被告人の声を真摯に聞くことで世の中は変ると思います。そのためにも、検察も間違いを犯すという共通認識が必要です。メディアに検察批判の荷は重すぎるようなので、我々国民が正しく建設的に批判することが必要だと思います。

引き続きご注目、ご支援の程よろしくお願いします。

八田




> どうして6ヶ月半も拘留しなければならないのか?裁判で無罪になったらどうするのでしょうか?何でも「証拠隠滅の恐れあり」で拘留を続けて諦めて自白をするのを待っているのでしょうが?保釈も認めない裁判所も
> なぜ、検察側の言い分だけを聞いて判断するのでしょうか?最終的には「推認」で有罪と言う判決になるのでしょうか?根本的に日本の司法は
> 間違った方向へ進んでいるのではないかと「推認」したいです。
> こうして数多くの冤罪が生まれてきたのではないかとも思っています。
> 世の中には冤罪でも声を上げられず静かに生きている方もいると思います。
> もっと被告人の言葉に耳を傾けて、その中から真実を引き出して欲しいと願うばかりです。

八田隆 #- | URL | 2013/08/27 Tue. 16:41 * edit *

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