「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (325) 「『否認料』という冤罪の要因」 8/29/2013 

#検察なう (325) 「『否認料』という冤罪の要因」 8/29/2013

(強制捜査から1717日、弁護側控訴答弁書提出期限まで8日)

アメリカの司法スラングに「アスホール・エンハンスメント(asshole enhancement)」という言葉があります。権威に従順な日本人と違い、アメリカでは法廷で4レターワードの悪態をつくなど相当態度が悪い被告人がいると思われますが、そうした被告人に対して、通常よりも重い罪を科すことを指す言葉です。

日本でも、同じ意図から加重が斟酌される場合があります。それは「否認料」と呼ばれるものです。

日本の刑事司法では、捜査権力は絶対に間違いを犯さないということが前提になっているため、「否認=嘘をついている=反省をしていない」という図式から、否認する被疑者・被告人には往々にして厳しい処遇や処分が科されます。

例えば私のケースです。クレディ・スイス証券の税務調査では対象者約300人のほとんどが申告漏れ、そしてそのうち約100人が私と同じく株式報酬の無申告でした。その中で、なぜ私だけが国税局から告発されたかを、ある記者が国税局に内々に取材したところ、「彼は悪質だから」との回答だったそうです。その記者は、私に仮装・隠蔽の事実が全くないことから多分申告漏れの金額が一番多いのだろうと解釈し、私もそれを信じて「どうしてあなただけが」という質問にはそのように答えてきました。退職時に未払い分の株式が前倒しに払われたとは言え、私の給与が会社内で一番高いとは思えなかったので、若干の違和感を覚えながらも、多分私より多くの給与を受け取っていた人たちは税務に関心が高く、正しく申告していたのだろうと納得していました。

しかし無罪判決後会社上層部から、私より高額の申告漏れもいたけれど彼らは故意を認めて告発されずに済んでいたということを知らされました。それを聞いた時、国税局の「悪質」という判断基準が否認であることを理解しました。認めれば(重加算税だけで)お咎めなし、認めなければ反省していないとして告発する。まさに「否認料」の実例です。

そして注意して頂きたいのは、故意を認めた人たちも本当に故意であったかは分からないという点です。痴漢の冤罪と同じく(私は、告発後に相談したヤメ検に全く同じ言葉を言われました)、認めた方が賢明だという考え方もあります。国税局査察部、検察特捜部の長期間の取調べや公判を経験し、仕事や少なからずの友人を始め多くのものを失うことが、金で買えるのであれば言うまでもないかもしれません。私にはその発想が全くなかっただけです。

また典型的な「否認料」の例として、「人質司法」があります。

ここをクリック→ #検察なう (85) 「人質司法」

弁護士会や人権団体、挙句の果ては海外までがこの「人質司法」に表れた日本の刑事司法の後進性を批判しています。

ここをクリック→ #検察なう (303) 「国連拷問禁止委員会での日本に対する批判に関し」

ここで認識して頂きたいのは、こうした批判は捜査権力にとって痛くもかゆくもないということです。むしろ彼らにとっては、取り調べ上実に効果的であるがゆえに、世に広く広めてほしいくらいなものです。捜査権力の取調べに際して、「否認すれば損だ」ということがあまねく知られれば、有罪を作ることを至上命題としている彼らにとっては簡単に自白が取れ、これほど便利なことはないと思われます。

こうした事情が冤罪の原因となっていることは論を待たないかと思います。どうして冤罪が生まれるのかといったことを理解するには、「否認をすれば損」といった常識がまかり通ることが原因となるということを知る必要があります。

「否認料」を払うことを嫌って虚偽自白する、あるいは「人質司法」によって自白を強要される、そうしたことに対し捜査権力が是正する姿勢を見せない現状はどのようにすれば打破できるのでしょうか。

最終的にはこれは議員立法によって制度を変えていくしかないと思います。そして彼らを動かすインセンティブは、票が読めるかどうかという一点です。冤罪を減らす努力をしようというスローガンを挙げて票が読める世の中になれば、現時点では冤罪に全く関心を持たない議員族も意識が変わると思います。それまではできる限り健全な議論をして、一人でも多くの人に何が問題かを知ってもらうべく訴え続けるしかないと思います。

日本の将来に少しでも冤罪が少なくなるよう努力したいものです。

P.S.
昨日、非常に残念なニュースがありました。西武池袋線痴漢冤罪小林事件で、冤罪と戦っている小林卓之氏の再審請求が棄却されました。

なぜ司法は現実から目をそむけ続けるのでしょうか。この事件に関しては、是非こちらをお読み下さい。

ここをクリック→ 冤罪ファイル 「西武池袋線痴漢冤罪小林事件」

8/29/2013










ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件





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category: 刑事司法改革への道

2013/08/29 Thu. 00:51 [edit]   TB: 0 | CM: 2

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この記事に対するコメント

否認をすれば保釈を認めず、長い勾留生活が続きます。基本的には裁判での審判が下るまでは「犯罪者」ではないと思うのですが、実態は
犯罪者扱いですね。警察・検察と裁判所が一定の距離を置き、事案ごとに整理をしていけば違った方向になると思うのですが、何か警察・検察・裁判官がイコールになっているように思います。つまり「人質司法」のお陰でその辛さに耐えかね検察側に有利な嘘意の自白をせざる得ない被疑者が多くいるだろう感じています。やはり法改正をして、国民の人権が守られる本当の法治国家にしていかなければ駄目ですね。八田さんのように取り返せない多くの時間を使って我が身の名誉のために戦える人間は少ないと思います。99.9%の有罪率を誇る我が国の司法に敢然と立ち向かっておられる八田さんをいつも応援しています。

名無し #- | URL | 2013/08/31 Sat. 16:02 * edit *

メッセージありがとうございます。

「警察・検察と裁判所が一定の距離を置き、事案ごとに整理をしていけば違った方向になると思うのですが、何か警察・検察・裁判官がイコールになっている」というご指摘は全くその通りだと思います。それは裁判官の責任に帰するところが大きいのですが、裁判官は個人、それに対して検察は組織ですから、検察と「うまくやっていく」方が楽であることは想像できます。それはメディアも同じかもしれません。その楽な方に流れていくことを食い止めるため監視し、間違っていれば正しく批判する、そうしたことが我々に求められていることだと思います。

引き続きご注目頂き、応援よろしくお願いします。

八田


> 否認をすれば保釈を認めず、長い勾留生活が続きます。基本的には裁判での審判が下るまでは「犯罪者」ではないと思うのですが、実態は
> 犯罪者扱いですね。警察・検察と裁判所が一定の距離を置き、事案ごとに整理をしていけば違った方向になると思うのですが、何か警察・検察・裁判官がイコールになっているように思います。つまり「人質司法」のお陰でその辛さに耐えかね検察側に有利な嘘意の自白をせざる得ない被疑者が多くいるだろう感じています。やはり法改正をして、国民の人権が守られる本当の法治国家にしていかなければ駄目ですね。八田さんのように取り返せない多くの時間を使って我が身の名誉のために戦える人間は少ないと思います。99.9%の有罪率を誇る我が国の司法に敢然と立ち向かっておられる八田さんをいつも応援しています。

八田隆 #- | URL | 2013/09/01 Sun. 12:17 * edit *

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