「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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ブック・レビュー 『ルポ虐待 大阪二児置き去り死事件』 杉山春著 

ブック・レビュー 『ルポ虐待 大阪二児置き去り死事件』 杉山春著

ルポ虐待 大阪二児置き去り死事件

2010年7月に大阪で起こった二児置き去り死事件のルポ。3歳と1歳半の遺体の凄惨な状況と、母親が遺体発見後も男と遊び回っていたことから世間の耳目を集めたショッキングな事件である。

事件の真相は思いのほか複雑である。それは、彼女が最初から子供を疎んじていたわけではないからである。

彼女は、子供の頃から愛情を受けて育ったわけではなかった。小学校時代に、母親の浮気が原因で両親が離婚。父親に引き取られるもその父親からネグレクトされる。中学校時代から非行に走り、集団レイプの被害に会いその晩に自殺未遂。高校一年の時に誘拐窃盗で少年院に入る。知り合いの家に引き取られた後も家出を繰り返すが、高校三年の時に「人間が変わったようにいい子」になる。高校卒業後、地元の割烹店に就職し、アルバイトの大学生と結婚。彼は妻の妊娠を知ると、大学を辞めて働き始めた。二人の子供の父親である。

彼女は、一時的ではあるが普通の幸せな結婚生活を送っていた。布おむつと母乳で育てることにこだわり、近所や家族の評価も「絵に描いたような幸せな若い夫婦」だった。その幸せを彼女はいとも簡単に放り出してしまう。離婚は、まったく理由が分からない彼女の浮気が原因だったようである。

離婚後、子供を引き取るが、元夫や家族からの経済的援助や精神的援助も断たれ、彼女は孤立してしまう。風俗業で働き始め、男と遊び回る生活が、内面の崩壊と子供のネグレクトへとつながっていく。

公判で、彼女は一貫して殺意を否定する。しかし、もし子供を殺すつもりがなかったのであれば、道端に捨てることくらいはできたのではないだろうかと考えてしまう。そうすれば二人の幼い命は失われなかったかもしれない。ネグレクトしながらも、母親であろうとしつづけたのだろうか。

印象的な挿話は、彼女自身のものではなく、筆者が3・11直後に避難所で経験した光景である。その部分を引用する。

3・11の大地震から十日ほどたった頃、首都圏の避難所で、私は一歳半の息子を抱えて原発事故から逃げてきた若い母親から話を聞く機会があった。
大きな体育館に段ボールを敷き詰めた居住部分で、子どもは弱々しく寝てばかりだった。母親は無表情で、ほとんどわが子の相手をしなかった。シャワー担当のボランティアから、母親が子どもに熱湯を掛けたという話が伝わり、支援者たちは顔色を変えた。
母親から少しずつ話を聞いてわかったことは、この二十五歳の女性は、親族がおらず、持ち合わせの金も乏しく、貯金もなく先行きの見えない不安に耐えていた。両親は離婚。母はその後死亡。自分自身は、DVを受けて夫から逃れる身だった。
その後周囲の支援を受け、生活保護の受給と借り上げ住宅が決まり、生活の基盤ができた。
その日、彼女はわが子に頬ずりをして思いがけない優しい顔を向けた。あの彼女にこんなに穏やかな表情ができるのかと心底驚いた。子どもも急に成長を始めた。感情を出し、絵を描き、支援者の間を走り回った。
彼女は後になって「避難当時は子どもさえいなければと思っていた」と教えてくれた。
助け手がいて、安心して暮らせると分かった時、母親の表情はこれほど和らぐのか。その中で、子どもは子どもとしての大切な時間を過ごす。子どもたちが安全に、守られて暮らすためには、どれほど母親の安全と安心が必要か。
(引用以上)

公判では、弁護側は解離性障害を主張し、検察側は未必の故意を主張。最高裁まで争われたが、判決は有期刑の最大限である懲役三十年で確定。

彼女の周囲の人たちの関与や、行政の関与も本の中で触れられているが、誰が責任を取るべきかという結論を求めていない。いかに責任ある者を適切に罰したところで、世の中のネグレクトが減るわけではない。この問題では刑罰に抑止力はない。それは対症療法では根治できない病気に似ている。

ジャーナリズムの責務が司法と異なるのは、視点が将来に向けられていることである。我々の関心事も、この事件において誰が幼い命が失われたことの責任を取るべきかよりも、この事件を通して、いかに将来のネグレクトを減らすことができるかを考えることであるべきである。その問題提起に、この本は十分な役目を果たしているのではないだろうか。

失われた命を取り戻すことはできないが、彼らの死を無駄にしない努力が必要である。幼い二人の冥福を祈る。

ここをクリック→ 文月メイ 『ママ』















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

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category: ブック・レビュー

2013/10/06 Sun. 01:29 [edit]   TB: 0 | CM: 1

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この記事に対するコメント

大阪二児置き去り死事件

はじめまして。
残念ながら、この事件の本質はルポの読者のかたが考えるような

冷酷な社会に圧しつぶされたシングルマザーの悲劇
の構図ではないようです。

他人には必要以上に自分をかっこよくみせたがる(けど内面はすかすか、わが子や孫にも責任感や愛情がない)
度を越してみえっぱりなお父さんと、
情緒不安定で倫理に欠け乱脈な男女関係のはてにいつも対人コミュ破綻するお母さん
から生まれ不幸な資質をうけついだ彼女の、あまりにわかりやすい転落の悲劇を

家族制度破壊→国家崩壊をもくろむ
一部のフェミ系マスゴミが
「母性が絶対ではない」
とかなんとか、自己主張につごうよく利用してるにすぎないんだろうな
と感じました。

なんか、事件の真相と関係ないところでぜんぶ空回りしているようなむなしさ。

そして「類は類をよぶ」とおり、
父母も不良仲間も養子縁組した養親(拘置所仲間で前科もちの犯罪者)もすべからく彼女の同類
(しかも現在までどんどん彼女の周囲にいる人間のたちが悪くなっている、まさに転落人生)、

皮肉にも一部マスゴミが悪者にしたがっている
とおぼしき元夫および義理親が
唯一ましな人たちだったがために
相容れず破綻してしまった、ありがちな悲劇だと思います。

おそらく著者は
彼女と子供を手離した元夫の悪行を盛大にあばいて悲劇の母子をアピールしたかったのでしょうが、
調べれば調べるほど元夫がわにさほどのおちど
がないどころか彼女の非が際立つばかりなので(内緒の借金、夫の勤務先のお金使い込み、無軌道な浮気、夜遊びでネグレクト)
取材も結論も中途半端に(でも善良な読者がかんちがいして同情するていどに)うやむやにしてごまかした
印象があります。

URLご参照ください。
本書が
いかにかたよった主観に読者を誤導させよう
としているか、わかると思いますよ。

大きく騒がれた事件だったので、裁判も長引くかと思っていましたが、最高裁まで持ち込まれながら意外にスピード結審
だったのは私も驚きましたが、
いまとなっては、むしろ
彼女を
きわめてたちの悪い支援者(養父母)の玩弄から
隔離・保護する司法の配慮だったようにすら感じられます
(杉山春さんはじめフェミ系メディアがなぜか全くふれないことです)。

亡くなったお子さんは本当にかわいそうでした。
置き去りにせよ、駅やデパートや公園など
人目につくところに放置する
程度の知恵が彼女にあれば、すばらしい未来が待っていたかもしれませんのに。

ちゃい #GYqQF7ls | URL | 2014/02/12 Wed. 18:42 * edit *

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