「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (337) 「取調べの可視化を巡る再考察 Part2 ~ NHKクローズアップ現代『可視化はどうあるべきか』 」10/14/2013 

#検察なう (337) 「取調べの可視化を巡る再考察 Part2 ~ NHKクローズアップ現代『可視化はどうあるべきか』」 10/14/2013

(強制捜査から1763日、控訴審初公判まで32日)

前回に引き続き取調べ可視化を議論します。前回の内容が応用編なら、今回は基本編です。

ここをクリック→ 応用編

取調べ可視化の現状や問題点をよく捉えた資料として、NHK制作番組、クローズアップ現代『可視化はどうあるべきか~取り調べ改革の課題~』を取り上げます。

9月24日放送のこの番組は、放送された内容のほぼ全てがテキストでご覧頂けます。

ここをクリック→ NHKクロ現『可視化はどうあるべきか~取り調べ改革の課題~』テキスト

動画で見る方がインパクトは強いということもありますが、テキストですとじっくり読めるという利点もあります。

番組は冒頭、村木厚子氏のインタビューで始まります。

「いきなり連れていかれてリングの上に上がってみたら、向こうにプロのボクサーが立っている。レフェリーもいないし、セコンドもいない。そこで逃げられない、ここで戦えと言われる感じ」

取調べの状況を実によく表したコメントです。「つかみはオッケー」で番組は始まります。

番組の目玉は、「可視化が無罪の決め手に」と題した、取調べ可視化によるDVD映像が実際に検面調書の信用性を疑わせる結果となり無罪につながったという取材に基づく部分です。特にこの番組は、NHKの「自主規制」により一旦は番組放送が見送られる経緯があり、相当すったもんだした挙句の放送でしたので、問題となった部分をそのまま放送するのかどうか注目されたものです。

ここをクリック→ #検察なう (300) 「『クローズアップ現代』「取調べ可視化」番組放送延期問題について」

問題の部分をそのまま放送したNHKの英断に「あっぱれ!」です。

番組の中で、私が一番「おーっ!」と思ったのは、「取調べ可視化 効果は」と題した部分での、社会部記者とやり取りする女性アナウンサーの次のコメントです。先の番組内容のテキストは、番組内容をほぼ逐語的に全部分文章に落されていますが、女性アナウンサーのコメントだけは端折られています。

「パソコンの遠隔操作で脅迫メールが送られた事件では、捜査当局によって虚偽の自白に基づいた調書が作られ、村木さんの事件では誤認逮捕された上に証拠が改竄され、検察に対する信頼が失墜していると言っても過言ではないという状況ですけれども、刑事司法の信頼を取り戻す上でも鍵とされるこの可視化の議論がなぜまとまらないんですか?」

天下のNHKが「検察に対する信頼が失墜している」と言ってのけるのは歴史が動き始めている証しだと一人感動していました。さすが(N)日本が(H)誇る(K)公共放送です。

それに対する社会部記者のコメントは取調べの可視化の現状及び問題点をよくまとめています。引用します。

「これまで日本では、捜査ではこの取り調べ、そして裁判では、取り調べの結果に基づいた調書によって判決を出すというやり方が長く続いてきましたので、これを変えるのに時間がかかっているという面はあります。

国の審議会で今、議論をしているわけなんですけれども、弁護士の側は、取り調べの全過程を可視化するべきだと、それを義務づけるべきだと主張しています。一方の捜査機関側は、可視化を導入するということは受け入れているんですけれども、どの部分を録画するかというのは、取調官の裁量に任せてほしいと主張しているわけです。

特に警察は、暴力団、あるいは振り込め詐欺といった犯罪では、組織からの報復を恐れて、録音・録画されていると真実を話せなくなると、捜査に支障が出るということを主張しています。

そして、また海外に比べて、通信傍受が限定されているということですとか、捜査手法が制約されているので、可視化を全面的にされると、これは治安を維持できないと、こういうことを理由にしているわけです。

(しかし、村木さんの無罪判決が出てから、すでに3年たっていますよね?)
これは、議論を急ぐべきです。村木さんの事件ですとか、パソコンの遠隔操作の誤認逮捕といったことで分かったのは、取り調べによって真相を解明するというよりも、かえって真相からかけ離れていってしまうと、こういうケースがあるということなんですね。この改革を迫られている捜査機関の側が、どこまで録画するかは裁量に任せてほしいと言っても、それは説得力がないと、こういう批判もあります。一刻も早く議論を進めて、可視化をどうやって導入するのか、形にしていく必要があります」

ここでも取調べの現状が、「真実を解明するというよりも、かえって真相からかけ離れていってしまう」と言い切っているのもNHK番組制作サイドの矜持を示しています。

ここでの内容については、前回のブログで取り上げた部分可視化の動きとその危険性を指摘しています。また取調べ可視化とバーターに捜査当局は通信傍受の拡大(いわゆる「盗聴」(注))を狙おうとしていることにも言及されています。窃盗犯が盗んだものを返す代わりに金を出せと言っているように聞こえるのは私だけでしょうか。「治安の維持が損なわれる」というのが捜査当局のお題目ですが、ただでさえ治安のいいこの国で重大な人権侵害を犯しているのは捜査当局であるという自覚が足りないように感じます。

そして番組が取り扱った内容で、非常に重要なのが「“映像で有罪に”検察の新たな動き」と題する部分です。これまでは既得権を失いたくないと取調べ可視化に抵抗してきた検察ですが、世の中のこの問題に関する認知度上昇から、イメージダウンにつながり得策ではないと考え、それならむしろ可視化を自分たちに利するよう活用しようとする動きを取り上げています。

社会部記者の言う「海外では、取り調べに弁護士が立ち会うという制度がある国も多くあります。日本でも、こういう制度を検討すべきだという主張もあります」というコメントは若干遠慮がちです。先進国の中で取調べに弁護士立ち会いがディフォルトでないのは日本だけで、アマチュアボクサーがプロボクサーとリングで戦うためにはプロのセコンドが絶対に必要だと言うべきです。

前回ブログでも紹介した日弁連パンフレットのp.8を是非ご覧下さい。昨今の日本相撲界で出身力士の活躍が目立つモンゴルですが、取調べの全面可視化は施行されていないものの、弁護人の立会いは認められています。モンゴルには相撲の熱意のほかにも学ぶところはありそうです。

ここをクリック→ 日弁連パンフレット 『取調べの可視化で変えよう、刑事司法』

前回ブログでも繰り返し述べたところですが、取調べ可視化は手段であり、目的ではありません。何を最終的なゴールとすべきか。その先を見て、周りの情勢を敏感にキャッチして柔軟に方向性を修正しつつ、タフに議論を継続する必要があります。

郵便不正事件を契機に、刑事司法改革の議論が盛り上がった時には、我々の子供の時代には今よりよくなっていることを期待しましたが、現状は、我々の子供の時代の方がむしろ悪くなるかのようです。法務検察組織の知力に拮抗するだけの英知を、広く涵養する必要があります。

(注)
Wikipedia 「盗聴」より

刑事訴訟法上の「盗聴」は「公開をのぞまない人の会話をひそかに聴取または録音すること」と定義される。この定義は対象を会話に限定しており、会話そのままの盗聴と有線通信の盗聴に区分される。

盗聴が捜査方法として許容されるか、許容されるとしてもいかなる要件の下でか、ということについては争いがあるが、捜査機関による有線通信の盗聴(傍受)については、日本国内では2000年8月15日に通称通信傍受法(正式名称「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」)が施行され、電話等の盗聴を含めた通信傍受による捜査が一定の要件の下に可能となった。この法律でいう「傍受」とは、「現に行われている他人間の通信について、その内容を知るため、当該通信の当事者のいずれの同意も得ないで、これを受けることをいう(通信傍受法2条2項)」という意義である。この法律に対しては日本国憲法第21条によって保障された通信の秘密が阻害されるとして反対意見がある。

10/14/2013
















法廷画が冊子化されました。正(第2回公判~第7回公判、400円)、続(第8回公判~第11回公判無罪判決、500円)の2冊です。代金(実費)は、無償で法廷画を描いてくれた漫画家にカンパされます。ご希望の方は sienhatta@gmail.com までご連絡下さい(送料9冊まで80円、10冊以上160円)。

#検察なう


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





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category: 刑事司法改革への道

2013/10/14 Mon. 00:41 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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