「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (347) 「控訴審初公判報告~検察官控訴で門前払いの一回結審」 11/18/2013 

#検察なう (347) 「控訴審初公判報告~検察官控訴で門前払いの一回結審」 11/18/2013

(強制捜査から1798日、控訴審判決まで74日)

ご報告します。歴史が動きました。先週金曜日、私の控訴審初公判が行われました。その模様をお伝えします。

第一審では11回の公判のうち、雨に降られたのは多分一度くらいだったのですが、当日はあいにくの雨模様。いつもは内幸町の弁護士事務所から日比谷公園を歩いて裁判所に向かうのですが、今回はタクシーで向かいました。

開廷前に法廷の外で並んでいた傍聴人の方の中には、多くの知り合いの顔がありました。「今回は何人くらいお知り合いの方が傍聴に来られるのですか」といつも小松弁護人に聞かれるのですが、連絡してくる人が少ないので「分かりません」となります。それでも毎回15人以上傍聴に来てくれます。実に勇気づけられます。先日お邪魔した早稲田大学法科大学院の学生も数人傍聴に来てくれました。

ここをクリック→ #検察なう (345) 「早稲田大学大学院法務研究科訪問記」

そして、半分以上は知らない顔で傍聴席はほぼ全席埋まります。この公判が注目されていることの表れだと思います。

控訴審の公判手続きは決まったパターンがないらしく、人定質問もないこともあるそうです(被告人は出廷義務がないためと思われます)。今回は、入廷するなり書記官の方から用紙に住所・氏名を記入するよう指示されました。これは一審ではなかったことです。

最近バンクーバーで引越したため、住所を書き間違えたり、Avenueを「街」ではなくて「町」と書いて訂正を申し出たりとあくせくしました。

そして待つこと数分。傍聴席からも私の緊張が見て取れたようです。終わってから傍聴していた人から「八田さん、いつもになく緊張していましたね」と言われました。そして裁判官3人が入廷して開廷。裁判体は東京高裁の刑事第一部、裁判長は角田正紀裁判官です。

最初に人定質問がありました。ところが裁判長の質問と私の答えが噛み合わない状況に(単に私が裁判長の質問を理解できなかっただけでしたが)傍聴されていた方の何人かは不安なものを感じたようです。

しかし、その緊張感はその後の被告人席に関してのやり取りでほぐれることになります。

映画でアメリカの法廷のシーンを見ると、被告人は弁護人と並んで座っていることがお分かりかと思います。それに対し日本の法廷では、被告人は弁護人席の前のベンチに一人でぽつんと座らされます。それでは初めから犯人であるかのように印象付けるということで、被告人を弁護人席に座らせるべきであるとする運動があります。これを「SBM運動」(SBMは、「Sit By Me」の略です)と言います。これを認めるかどうかは裁判官の裁量です。

一審では野口佳子裁判長(初公判)も佐藤弘規裁判長(第二回~第十一回公判)も、私が最初から弁護人席に着くことを認めてくれていましたが、事前に申請していた今回はそれが認められませんでした。公判が始まり、裁判長が検察による請求(検察は6件の新規の証拠調べと計45分の被告人質問を2回に分けて請求していました)を確認した後、「弁護人、何か請求は?」。小松弁護人が「特にありません」と言ったのに対して、裁判長は「書記官を通じて被告人の席に関して請求がありませんでしたか」と続けました。あれれ、何が起こってるんだ?

あくまで事案ごとの事情を勘案した上での判断という前置きがあり、「この事件の性質から言って、被告人が弁護人席に着いてもよいと考えます」。そうして私は弁護人席に移ることが許されました。両弁護人にはさまれて、それはそれは安心したものです。このことにより流れが向いてきたかのように感じましたが、傍聴されていた方の中にもそのように感じた方もいたと思います。また最初に被告人席の前にテーブルが置かれていたのは、裁判所の配慮なのではと思いました(そうした細かい点に当事者は敏感になるものです)。

その後、検察による証拠調べ請求に対しての弁護人の意見となりますが、小松弁護人が付言しました。

「第一審の弁論終結前に取調べを請求することができなかった「やむを得ない事由」はなく、取調べの「必要」もありません。

第一審の無罪判決は、10回を越える公判期日、1年以上の審理期間を経て下されたものであります。第一審では、証人や被告人を直接調べ、その一挙手一投足、証言態度等も踏まえて供述の信用性が判断され、それらを統合して事実認定が行われたものです。

当審において、検察官請求の事実取調べを実施することは、第一審集中主義を軽視する風潮を助長することにもなります。従って、検察官からの事実取調べ請求はいずれも却下されるべきものであります」88888。

そして注目の証拠決定です。書証あるいは人証請求が認められるということは、新たな審理が再開することを意味します。そしてそうなれば、過去のデータは圧倒的に被告人にとって不利な結果です(7割が原判決破棄の有罪)。

裁判長の声が響きます。「6つの検察請求の証拠『は』却下します」(え?それでは被告人質問は?)、「被告人質問が2回に分けて請求されていましたが、最初の請求分『は』却下します」(え?それじゃ追加分は?)、「それから追加の請求分は却下します」。

「よっしゃ!」却下三連チャンです。引っぱったなあ、もう。「いずれも却下」じゃないんだもん。控訴審裁判体は、検察申請の書証、人証(被告人質問)全てを却下し、公判一回で結審しました。

検察官控訴の控訴審において、全ての証拠請求を却下ということがどういう意味を持つのか、あるいはどれだけあり得ないことなのかは分かる人には分かって頂けると思います。そうでない方も「なんかすごいことが起こったみたい」くらいに思って頂けると幸いです。

公判開始前の弁護士ミーティングでも、「今日、結審しなかった場合、どう対処しましょうか」という私に、小松弁護人は「結審する、しないで随分と落差がありますから、しなかった場合はそれから考えましょう」と言っていました。控訴審の経験豊富な喜田村弁護人も、「検察官控訴の場合、一回結審というのは通常考えにくいけれども、今回はどうかなあ」と手応えは感じていたようです。

検察の控訴棄却、検察に二立て食らわせることに「チェック!」です。チェックメイトまであと一歩。次回期日までに新証拠を検察が提出し、弁論再開ということがなければ、天は私と弁護団(注1)と我々を応援してくれている方々に微笑むことになると思われます。

その後の角田裁判長による私への控訴審の意義の説明は、傍聴人に向けてのものでもあり、開かれた裁判を意識したとても好感度の高い訴訟指揮だと感じた方も多かったと思います。

わずか6分の控訴審初公判でしたが、以上のようなドラマがあったわけです。

検察官控訴は、「裁判所は所詮検察の自動販売機」という期待があってのものだったと思います。それを検察官請求を完全にシャットアウトした形で結審というのは、そんなことはありえん!という控訴審裁判体の強いメッセージです。一審無罪だけであれば、地裁の変わり者の裁判官が気紛れで出した無罪判決と検察はうそぶくこともできますが、高裁裁判体が合議で判じたとなれば、これは裁判所の断固とした決意を表していると言っても言い過ぎではないと思います。是非、江川紹子氏の記事を再読して下さい。

ここをクリック→ 江川紹子氏記事「初心を忘れず、初心に返ろう~この無罪判決が意味するもの」

そして一審無罪判決が控訴棄却によりこのまま確定すれば、その影響は少なくないものと思われます。

まず報道が大きく変わる可能性があります。またそうあるべきだと思います。私は告発後、全国紙の記者の取材を受けた際、「申し訳ないけれども八田さんは有罪になると思います。そうでなければ、私たちは怖くて記事が書けないですから」と言われました。つまり、彼らの常識は「告発=起訴=有罪」というものです。彼らが「怖くて記事が書けない」という状況ができるわけです。

皆さんは、逮捕された被疑者が犯人であるかのように、顔も晒され実名報道されているのを目にしたことがあると思います。告発されても(起訴はされましたが)無罪になるのであれば、ましてや告発・起訴以前の逮捕の段階では、当然推定無罪原則が働くべきであり、人権にもっと配慮しなければいけなくなるのではないでしょうか。PC遠隔操作事件での片山祐輔氏を犯人視した報道の在り方が問われる時代が来ると思われます。

国税局に対する影響も小さくないと思われます。被疑者が否認する場合には、仮装・隠蔽の確たる証拠がなければ告発できないということを彼らは肝に銘じるべきです。私の事案では、仮装・隠蔽は一切立証されていません。そうすれば査察部による今回のような力ずくの告発は、今後激減すると思われます。

そして一番大きな影響は検察に対してです。結局、彼らは裁判所が動かなければ、いかに外部の批判が大きくとも、何も変わりません。その彼らが変わる契機になるかもしれません。(注2)

犯人の故意性という非常にあいまいな争点で、これまでは推定有罪がまかり通っていた刑事司法実務でしたが、一審裁判体が認定した推定無罪原則を、控訴審裁判体もきっちり確認したというのがこの一連の公判の重大な意義です。推定有罪がディフォルトのように思われていた刑事司法において、メルクマークな判決になることは間違いありません。また控訴審は、「チョコレート缶事件」判例以降の基本形を示したと言えます。(注3)

私としてはここで勝って、検察には是非上告してもらって最高裁まで行きたいと思っています。推定無罪原則を今日の刑事司法において確固としたものとするため、判例としての重みが違うからです。

この控訴審初公判のリアルタイムの雰囲気をパッケージした恒例の公判トゥギャッタ―を友人がアップしています。是非ご覧頂き、控訴審初公判を追体験して下さい。

ここをクリック→ トゥギャッタ― 「八田隆 11月15日 控訴審 〜クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件」

控訴審判決が下される予定の次回期日は来年1月31日です。大注目です。

(注1)
喜田村洋一弁護人と主任弁護人の小松正和弁護人の2人の弁護団ですが、一騎当千の弁護団です。

(注2)
ここをクリック→ #検察なう (279) 「時代が判決を導き、判決が実務を変える」

(注3)
ここをクリック→ #検察なう (318) 「「チョコレート缶事件」と論理則・経験則違背」

11/18/2013













法廷画が冊子化されました。正(第2回公判~第7回公判、400円)、続(第8回公判~第11回公判無罪判決、500円)の2冊です。代金(実費)は、無償で法廷画を描いてくれた漫画家にカンパされます。ご希望の方は sienhatta@gmail.com までご連絡下さい(送料9冊まで80円、10冊以上160円)。

#検察なう


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―





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category: 刑事裁判公判報告

2013/11/18 Mon. 00:58 [edit]   TB: 0 | CM: 3

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この記事に対するコメント

寸感

貫徹してください

MAX #- | URL | 2013/11/19 Tue. 02:07 * edit *

歴史が動いたのではなく、八田さんが動かしたのだと思います。刑事司法が
本来のあるべき姿に…「疑わしきは罰せず」「疑わしきは被告人の有利に」と
いう原点に立ち返ってもらいたいと願っております。
密室での過酷な取り調べによる嘘意の自白による「検面調書」が優先される
ような裁判ではなく被告人の真実の言葉にも真摯に向かい合う取り調べ
などなど、証拠に基ずく裁判となるように少しでも変わっていくことを
願っております。この八田さんの裁判がその契機になると信じたいです。
また、そうであって欲しいと願っています。声を出せずにひっそり暮らして
いる冤罪の方々も国家権力に立ち向かっている八田さんの勇気に感動を
覚えていることと思います。多くの方々が応援していると思います。
私もそのひとりです。

名無し #- | URL | 2013/11/20 Wed. 00:04 * edit *

コメントありがとうございます

「声なき声」を代弁するのも私の役目だと考えています。引き続きご注目下さい。

八田

八田隆 #- | URL | 2013/11/20 Wed. 08:07 * edit *

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