「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (350) 「SNOWセミナー『検察から見た証拠とは〜元検察官が本音で語る』」 11/28/2013 

#検察なう (350) 「SNOWセミナー『検察から見た証拠とは〜元検察官が本音で語る』」 11/28/2013

(強制捜査から1808日、控訴審判決まで64日)

先日、「なくせ冤罪!市民評議会」主催の第2回SNOWセミナーに参加しました。

「なくせ冤罪!市民評議会」はまだ歴史が浅い組織ですが、代表を「無実のゴビンダさんを支える会」事務局長の客野喜美子氏が務めていることからも、「無実のゴビンダさんを支える会」を母体として、照準を冤罪全般に拡大した市民団体と言えると思います。

ここをクリック→ 「なくせ冤罪!市民評議会」設立表明

評議会のニックネームSNOWは、”Say No! To Wrongful Convictions”Citizens' Councilの頭文字を取ったものですが、冤罪を雪ぐ(すすぐ)意味の「雪冤」と掛けているところがなかなかしゃれています。

日々のアクティビティーとして評議会メンバー間のメールでの冤罪関連情報交換があります。実にディープな内容のメール交換が行われています(私はROMってるだけですが)。ご関心のある方は是非ご入会下さい(年会費一口1000円何口でも)。

ここをクリック→ 「なくせ冤罪!市民評議会」入会のご案内

第2回セミナーは、講師に元検察官の工藤啓介弁護士を招いて、『検察からみた証拠とは~元検察官が本音で語る』という演題で行われました。約30名ほどの参加者の顔ぶれの中には、客野喜美子氏や、雑誌『冤罪File』記者今井恭平氏、布川事件冤罪被害者桜井昌司氏といった私にとってはお馴染みの面々のほか、法制審特別部会のメンバーでもある映画監督周防正行氏の顔も見られました(ピンクのセーターが似合っていました)。

工藤啓介弁護士
写真


証拠開示に関する議論が中心で、現場にいた人間の本音トークはなかなか興味深いものでした。検察官時代に起訴した事案で、被告人の善性格を伺わせる証拠(近隣住民の供述調書で、「横断歩道を渡れなかったおばあちゃんの手を引いて?おぶって?渡っていた」とかそんな話でした)を開示したところ上司に苦言を呈されたとか。

裁判所の「ベスト・エビデンス」という考え方からすると、結論が客観的にみてあまりにも明らかな事案で枝葉を切り払うのは問題ないのですが、主要な証拠(しかも検察に不利な証拠)を隠すくらいであれば、取捨選択なく全て開示するということは当然ありだと思います。

つい先日も超ド級冤罪の袴田事件(袴田巌氏は1966年に逮捕以来、監獄に囚われの身となっています)で検察がアリバイ立証に関わる証拠を47年ぶりに開示したことが報じられていました。開示に応じた静岡地検の担当検事の勇気は評価したいものの、検察組織としてはあまりに遅きに失しているとの誹りは免れないものと思われます。(注)

検察は「ベスト・エビデンス」の意味を取り違えています。それはあくまで公判において真実の追求を効率的にするためにあるもので、真実をねじ曲げるために援用されるものでないことは明らかです。

私が工藤氏にした質問は二つ。

一つは、「検察官は本来彼らが持っている正義感との矛盾を感じた時に、どのように対処するのか。組織を変えようという発想はないのか」。

もう一つは、「冤罪に検察が関与しているとすればそれは『引く勇気の欠如』が要因だと思っているが、それを持てという外からの批判ではなく、彼らがそれを持たなければならないという自らの自覚を促す『(北風と太陽の)太陽作戦』のアイデアはないか」。

工藤氏の最初の質問に対する答えは、「割り切るか辞めるかなんでしょうね」でした。それはあまりにも予想の範囲内だったのですが、それでは検察組織が、悪い因子だけが適者生存していく「アドバース・セレクション」によって成り立つ組織であることを意味しています。そうなると、地検レベルではまともな人もいますが、彼らの中からエリートとして選ばれる特捜部は相当の悪人集団、最高検ともなると超極悪人の集まりという実に恐ろしいイメージができてしまいます。

彼が付け加えた「但し、99.9%の有罪率にあるように、ほとんどの事案が有罪なわけですから、検察官の多くがそうした矛盾を感じているとは言えないかもしれません。そういう人にとっては、『八田さん、何を言っているのですか』と分からないんじゃないですか」という言葉はなかなか興味深かったものです。勿論、日々の実務で黒を白にしたり(起訴猶予)、白を黒にするということはあまりないかもしれませんが、起訴ありき、有罪ありきの捜査方法に全く矛盾を感じていないと聞こえたからです。

例えば、日本人にあなたの信仰する宗教は何ですかと聞くと、多くの人が「無宗教」と答えると思います。元旦には神社参拝をし、結婚式は神前や教会で挙げ、葬式はお寺でやるにもかかわらずです。それらは外人からみれば立派な宗教活動ですが、それらが宗教活動であることを意識しないほど我々の生活に密着しています。それは、宗派ごちゃまぜの「日本教」とでも言うべき独特の宗教であり、ほとんどの日本人はその熱烈な信者です。

検察の外の一般人の感覚からすると異常と思われることが、内部では空気のように何の違和感もなく受け入れられているのではないかと思いました。

また、二つ目の質問に対する工藤氏の答えは「難しい質問ですが、証拠の全面開示は一助になるでしょうね」というものでした。外堀を埋めるということだと思います(それが自覚につながるかどうかは分かりませんが)。

また、そこでも彼が付け加えた「検察に期待し過ぎなんじゃないですかねえ」という言葉も示唆に富んでいると思われました。私個人が検察に期待しても何ら問題はないと思われますが(そして期待しています)、制度上彼らに期待し過ぎるというのはまさに問題だと私も思っているからです。彼らも過ちを犯すという前提で制度を構築する必要があると思っています。

その意味でも、工藤氏がセミナー中何度か繰り返した「犯人(事件解決)を求める風土が検察に無理をさせている遠因になっている」という指摘を我々は考える必要があると思います。

セミナー参加者から、「なぜ検察から内部告発が出ないのか」という鋭い質問もありました。工藤氏の答えは「利益誘導があるから」というものでしたが、少し端折り過ぎではないかと感じました。

利益誘導(具体的には組織内での昇進、退職後の天下り先斡旋、あるいはただ単に組織の中での居心地のよさといったものもあると思われます)は結果的に得られるもので、それがあるから内部告発しないということではないと思います。強大な権力を持つ検察組織に立ち向かったところで、所詮つぶされるということを彼らは身にしみて分かっているからこそ内部告発しないのだと思います。そして、汚れ役を進んでやる者を組織は重用し、結果、そうした者が利益誘導を受けるということだと思います。例えば、あまりに正義感の強い取調べ検事に村木厚子氏の取調べを彼らがさせるというのは、ありえないことだと思います。「私にはできません」と言われ、もしかしたらそれをメディアに流されでもしたら大変です。彼らも人を見て誰に任せるかということを考えたと思います。

検察組織の文化はよく知られていないため、誤解されていることも多いかもしれません。先日のセミナーは、検察文化を垣間見るになかなかいい機会だったと思います。もっと多くのインサイダーの声が聞ければ、国民の理解も得やすいだろうにと思います。

帰りに、やよい軒高田馬場店ですき焼き定食(890円)を食べて帰りました。

写真 (1)


(注)
ここをクリック→ 袴田事件最新報道

確定判決では、袴田巌氏を鎮火近くまで同僚ほかで見た者はいないとされていました。勿論、犯行(一家殺害、放火)から出火発見まで十分な時間があれば、血みどろの着衣を脱ぎ、みそ樽に放り込み、体を洗って何食わぬ顔で寝床に戻るということは理論的には可能ですが、かなり荒唐無稽な推論だと思われます。

袴田事件に関してはこちら。

ここをクリック→ 冤罪ファイル その2 「袴田事件」

11/28/2013



















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう 冤罪と戦う八田隆を支援する会





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category: 刑事司法改革への道

2013/11/28 Thu. 00:47 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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