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#検察なう (352) 「起訴前弁護の重要性」 12/5/2013
(強制捜査から1815日、控訴審判決まで57日)
災害時には"Critical (First) 72 Hours" (生死を分ける72時間)と言われます。被災者救済には初動が非常に重要であり、72時間を過ぎると生存率が著しく低下するという 意味です。災害救済に限らず、初動が大切な局面というのは危機的状況に見られるものです。例えば、火事の初期消火、あるいはガンの早期発見等々。
刑事弁護も同じです。
冤罪事件でよくあるのが「検察取調べで自白、公判で一転して否認」というパターンです。そして日本の刑事司法では、公開の場の供述よりも密室での調書の方が信頼されるという我々の一般的感覚とは真逆のことが原則であるため、検察取調べでの自白調書はまさに致命的です。
捜査当局も調書の重要さを理解し、彼らに有利な調書を取る技術を究めています。PC遠隔操作事件における4人の誤認逮捕でも、実にその5割の2人が虚偽自白させられていることは重視すべき事実です。
もう一度考えてみましょう。誰しも裁判で弁護人をつけずに戦うことは考えないと思います。しかし、5割に満たない起訴率と99.9%の有罪率は、検察取調べが事実上第一審であることを物語っています。その第一審に弁護人をつけないということが、被疑者にとってどれだけ不利であるかを強調してし過ぎることはないと思います。
私は奇跡的に一審無罪判決を得ることができましたが、その勝因の大きな一つが、完全な否認調書を作ることができたことだと思っています。それも起訴前弁護があったからです。
私は、国税局査察部取調べの段階では弁護人をつけていませんでした。話せば分かると思っていたからです。そして彼らの刑事告発によって、捜査当局は無実の者でも彼らが有罪にしたいと思えばそれに追い込むという意図を理解し、弁護人をつけてその対策を講じました。
検察特捜部の取調べが始まる前に、主任弁護人の小松正和弁護士に説明されたのは、調書における符牒でした。通常、調書は一人称で書かれます。第三者の検察官が作成しながら、文章は「私は」で始まる文体になっています。しかし、検察官が「この被疑者は嘘をついているな」と思われる部分は問答形式になります。
一人称の文章の中に突然、
検察官「~ではないのですか」
被疑者「いえ、それは~です」
という問答形式の会話が挿入されます。これが検察官による符牒です。
私はそれを聞いていたため、案の定、検察官がそのような問答形式の文章をはさんで検面調書を作成し始めた時に、徹底的に抵抗しました。
かなりの長時間、検面調書の様式に関し怒鳴り合いが続き、その中では「どうして我々が怪しいと思っていることを裁判官に伝えることがいけないんだ!」という検察官の言葉もありました。
結局、根負けした検察官の選択は、裁判官も見たことがないであろう、全て問答形式の調書でした。小松弁護士の事前の情報インプットがなければ、そうした調書は生まれなかったものです。
また、特捜部取調べは毎回長時間で、19回に及びましたが、小松弁護士はその都度私からの連絡にスタンバっていました。
休憩時間の度に、私はガリガリ君を食べながら、彼の事務所に電話し、「先生、検事がこういう質問をしてきたのですが、彼らの意図はどこにあるんでしょうか」とか、「先生、あまりに取調べがひどいので、今日の調書には署名しないつもりですが、それでいいですか」といった相談をしていました。
毎回の取調べに当たっては逮捕を覚悟して、小松弁護士にいざという時の連絡先リストを渡してあったことも後顧の憂いがなかったものです。検察特捜部の取調べは、毎回「来るなら来い!」と戦地に向かう気分でした。
結局、一旦テイクオフした検察が引き返すことはなく起訴はされましたが、取調べを乗り切り完全な否認調書を作ることができたのは、弁護人のサポートがあったからです。
素人ボクサーがプロのセコンドなしにリングに上がることは、リンチを受ける以外の何物でもありません。それは絶対避けるべきです。
刑事事件においても、初動で大勢が決するがゆえに起訴前弁護が重要であるということはもっと喧伝されるべきことだと思います。
もしホーム・ドクターならぬ、ホーム・ロイヤーがいない場合は、日弁連が駆け込み寺になります。
逮捕された場合は、当番弁護士制度を利用することになります。
ここをクリック→ 日弁連刑事弁護センター 当番弁護士連絡先
逮捕されていない場合には、まずは法律相談センターに問い合わせをすることです。
ここをクリック→ 法律相談センター
調書を作成される前に「弁護士と話したい」ということがあなたを冤罪から救うことになるはずです。是非、肝に銘じておいて下さい。
12/5/2013
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