「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (368) 「控訴審第二回公判報告~検察控訴を棄却!」 2/3/2014 

#検察なう (368) 「控訴審第二回公判報告~検察控訴を棄却!」 2/3/2014

(強制捜査から1875日、検察上告期限まであと11日)

「判決を言い渡します。主文、控訴を棄却する。」
傍聴席から漏れた「よしっ!」という声は、私の心の中の声でもありました。検察控訴の棄却は、私の一審無罪が維持されたことを意味します。検察の無理筋控訴を一刀両断した歴史的瞬間でした。

その後に、判決理由が続きます。印象的だったのは、角田正紀裁判長の語る判決理由が、終始傍聴人を意識した分かりやすいものだったということでした。「ロザリン、これは株式報酬の担当者ですが」と関係者の名前に言及した後、その者が会社のどのような部署にいたかという我々当事者にとっては自明なことの説明を付け加えたりすることがその顕著な例です。

その判決理由では、まず検察主張が列挙されました。この部分だけ聞くと、それだけで有罪が書けるのではと不安に思った方もいたと思います。しかし、それは検察お得意の「過失であっても矛盾のない証拠」の我田引水的推認でした。そして、続く角田裁判長の言葉はその検察主張を一つ一つ排除していきます。

一審の無罪判決は、弁護側主張の「故意であれば矛盾がある証拠」(これを検察側から見て、有罪の「消極証拠」と言います)を採用せずとも、検察の主張はそれ自体不十分であり、有罪とするには「合理的疑いがある」とする刑事司法の大原則である推定無罪原則に則ったものでした。

勿論、99.9%を越える有罪率の刑事裁判では、裁判官の無罪心証を取るのは容易なことではなく、彼らも十分に消極証拠を検討したことは言うまでもありません。しかし、一審裁判体が敢えてほとんどの消極証拠を採用することなく推定無罪原則を強調した判決文を書いたのは、それが一番控訴審でひっくり返されにくい王道だからです。がちがちの耐震構造より、遊びのある免震構造の方が揺れに強いことと同じ論理です(あれ、違うかな。でも気分、気分)。

控訴審の判決理由は、一審の無罪判決を更に一歩進めて、消極証拠に踏み込んだ「より真っ白」な判決でした。「会社が税務当局に報告すればただちに発覚する状況であった」中で、「仮装・隠蔽工作が全く認められないこと」「会社元同僚の多く、特にコンプライアンス部長が同じく株式報酬が源泉徴収されているという思い込みで申告漏れとなっていたこと」が判決理由で述べられたその消極証拠の主たるものでした。

最高裁判例では、控訴審裁判体の心証がたとえ有罪であったとしても、原判決が論理則・経験則違背でなければそれを覆すことはできないとされています(注1)。角田裁判長の語る判決理由は、ただ単に一審判決が論理則・経験則違背ではないとするだけではなく、控訴審裁判体の心証も無罪なんだよと言っているように感じられました。

検察主張を排除する際も、一審判決では「検察主張を採用するには躊躇する」といった遠慮がちな表現もありましたが、控訴審の判決理由では、「検察主張を採用することはできない」と断定的な言い方に終始していました。

判決理由の中で、あまりに滑稽な検察主張が苦笑を誘う場面もありました。「高額所得者の方が金に細かい場合があることは、日常よく経験する」とする検察主張を、「逆の経験もあって、結局どちらともいえない」と裁判長は一蹴しましたが、傍聴人のリアクションは「おいおい、検察特捜部の、人を有罪に陥れる論理ってそんなにお粗末なの」というものでした。

私の個別の事案の判決でありながら、さすが法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」のメンバーにもなっている角田裁判官を擁する裁判体です。控訴審にあるべき判決の指針のような判決だったと思います。私が注目したのは、間接証拠の積み重ねによる立証に必要とされる要件を明確に示したことです。本件においては私の故意性を裏付ける直接的な証拠は一切ありません(あるはずもないのですが)。そこで検察は間接的な証拠をうず高く積み重ねることになりますが、そのような立証には次のような要件が必要であると示していました。
1) 有罪立証を補強する積極方向の証拠のみだけではなく、消極方向の証拠の評価が必要不可欠である
2) 起訴事実に範囲を限定するのではなく、周辺の事情もその評価の対象としなければならない
1)は既に上で述べたところですが、2)に関して付け加えます。

私の所得税法違反嫌疑は、平成18年度及び19年度を対象年としていますが、税務調査は平成17年度もその対象年とされていました。そして平成17年度の確定申告においても同様に株式報酬は申告漏れとなっています。検察は、この税務調査対象年でありかつ株式報酬が申告漏れとなっている年を敢えて起訴対象年からはずしています。そしてその理由には一切触れていません。これは私が被告人最終陳述で述べたところですが(注2)、そうした評価を避けて有罪立証足りるとしてはいけないということが判決理由の中で述べられました。

そして最後に、一審佐藤判決で味をしめた傍聴人が皆期待した説諭が角田裁判長から語られました。

「決着しても以前の仕事には戻れないようだが、あなたは能力に恵まれているし、是非再スタートを切って欲しい。裁判所も迅速な審理に努力したが、難しい事件であり、一審で1年3ヶ月、控訴審で9ヶ月かかってしまった。もっと早くと被告人の立場からは思うだろうが、これは裁判所の課題です」

閉廷後の記者会見で、この説諭の前半部分に関し、喜田村弁護人が「裁判所ができることは無罪のものは無罪にするだけだが、それだけで被告人が元の生活に戻れるものではないと裁判所も理解しているというメッセージでしょう」と語りましたが、まさにその通りだと思います。ありがたいお言葉です。

また後半部分に関しては、公判が長期に亘ることが被告人の精神的負担につながるというものですが、それを言うなら強制捜査から起訴まで、国税局と検察は丸3年費やしているわけで、そうした捜査に対する非難でもあると感じました。

閉廷直後、退廷する裁判体に支援者の方が、「(公正な判断)ありがとうございました!」と声を上げると、角田裁判長が振り返り、軽くうなずくかのように見えたのは私の見間違いでしょうか。我々の気持ちが伝わったと思いたいものです。

確定申告直前という国税局にとっては最悪のタイミングゆえ、残念ながらメディアの報道も幾分遠慮がちですが、これまでほぼ全ての公判を傍聴してくれた江川紹子氏の記事は、さすが過不足なくダイレクトに状況を伝えています。
ここをクリック→ Yahoo! ニュース『国税告発・特捜起訴で初の無罪判決は維持された』 江川紹子氏

そして私の公判恒例のトゥギャッタ―。是非、そのライブ感を味わって下さい。
ここをクリック→ 控訴審第二回公判トゥギャッタ―

この控訴棄却を受け、2週間以内に検察は上告の判断をすることになります。「遺憾である」などと風呂の中でこく屁(注3)のようなコメントを出すのであれば、正々堂々と上告して、自らの正義を問うべきだと思います。国家組織として一人の国民を犯罪者にしようとした判断の責任は重いものです。自らの過ちを認められないのであれば、最後までその信念を行動で示すべきです。もし検察特捜部にそれだけの根性があればの話ですが。

(注1)
ここをクリック→ #検察なう (318) 「「チョコレート缶事件」と論理則・経験則違背」

(注2)
ここをクリック→ 被告人最終陳述

(注3)
周りの者に聞いても一般的でないようですが(金沢弁?)、はっきりしない物言いのことです。「卑怯な」「陰険な」というニュアンスもあります。

2/3/2014















法廷画が冊子化されました。正(第2回公判~第7回公判、400円)、続(第8回公判~第11回公判無罪判決、500円)の2冊です。代金(実費)は、無償で法廷画を描いてくれた漫画家にカンパされます。ご希望の方は sienhatta@gmail.com までご連絡下さい(送料9冊まで80円、10冊以上160円)。

#検察なう


ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 経緯説明 「真実は一つである」

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう 冤罪と戦う八田隆を支援する会





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category: 刑事裁判公判報告

2014/02/03 Mon. 01:51 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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