「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

06« 2017 / 07 »08
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

ブック・レビュー 『名張毒ブドウ酒殺人事件ー六人目の犠牲者』 江川紹子著 

ブック・レビュー 『名張毒ブドウ酒殺人事件―六人目の犠牲者』 江川紹子著 

名張毒ブドウ酒殺人事件―六人目の犠牲者

江川紹子氏による『名張毒ブドウ酒殺人事件』を再読。この間、映画『約束 名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯』の公開もあり、色々な資料を目にする機会もあって、自分の事件に関する理解も深まっていたはずだが、やはり再読すると新たな発見もあった。

公判の流れを俯瞰すると、裁判官が奥西勝氏を有罪とする判決が依拠しているものには二つあることが改めて理解できた。それは自白と村人たちの供述である。物的証拠はないに等しく、王冠や農薬の科学鑑定はただ単に有罪立証を補強するためだけに用いられている。

自白を重要視し過ぎることが冤罪を生むことは、この事件だけではなく数多くの冤罪事件で明らかにされている。しかも、拷問まがいの取調べが過去の遺物となった現代でも、虚偽自白が取調べにおいて生まれている厳然とした事実は、もはや自白には全く証拠としての証明力がないとしてもいいのではないだろうか。

今回読み返して以前読んだときにはそれ程記憶に残らなかったのだが、奥西氏が最初に自白した理由があまりにも単純で驚いた。彼は、家の配電線に細工をして盗電をすることで電気代をごまかしていたのだが、取調べ翌日あたりと思われた電気会社の検針前にその細工を外したいがため、どうしても家に帰りたかったというのがその理由であった。盗電を隠すために殺人の自白をするというのは、虚偽自白にありがちな実行犯ではないがゆえの現実感の欠如であるが、その後の彼の運命を考えるとあまりにも悲しすぎる。

そしてこの事件の特殊性は、もう一つの有罪の根拠となっている村人たちの供述を巡る事情である。非常にナイーブな事柄だが、やはり「なぜ彼らが事件直後の供述を自ら進んで捜査当局のストーリーに合わせて変遷させたか」ということの解明なくして、この事件の全容は理解されないだろう。江川氏のこの書は、村人たちを指弾することを避ける最大限の配慮が払われながら、この論点の重要性をあぶり出した良書であると感じた。

そして単行本あとがきの末尾の日付を見て改めて暗澹とした。あとがきは1994年1月に書かれていたが、それから20年、司法が奥西氏にしたことは彼を更に絶望の淵に突き落とすだけだった。

文庫本化は2005年4月の再審開始決定を機になされている。そのため最終章は「40年後の再審決定」と題され、再審開始に喜ぶ弁護団の姿が描かれている。映画『約束』でも弁護団長の鈴木泉弁護士が男泣きするシーンである。文庫本本編は次の一文で締めくくられている。

「名古屋城の桜はまだ開花してないけれど、奥西さんと弁護団は春爛漫という気持ちです」

彼らの夢と希望を情け容赦なく打ち砕くことがなぜ許されているのだろうか。

死刑囚にとって法律的には、収監そのものは刑罰ではなく、刑罰は絞首刑のみである。そのため、彼らは刑務所ではなく未決囚と共に拘置所に留め置かれている。奥西氏は、1969年9月の控訴審逆転死刑判決以来、45年もの間、死刑の恐怖に怯えながら塀の中に自由を奪われ、死刑囚であるがゆえに外界との交渉が極端に制限されて閉じ込められている。これが刑罰でなくてなんであろうか。

死刑囚を彼らの命の火が消えるまで恐怖の中に幽閉することは、現代日本において法律的には正しいのかもしれないが、人道的には明らかに間違っている。それを看過することで、我々は人としての道を踏み外していないだろうか。

奥西氏の時間は限られている。そして、もしそのタイムリミットが非情にも訪れたとしても、我々はこの司法の犯罪を忘れるべきではない。

FREE OKUNISHI!!

ここをクリック→ ブクレコ『名張毒ブドウ酒殺人事件―六人目の犠牲者』

















ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 被告人最終陳述

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう フェイスブック・コミュニティ





TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: ブック・レビュー

2014/02/16 Sun. 17:47 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/667-42b09afb
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top