「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

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#検察なう (385) 「犯行着衣が捏造でないことと袴田氏が犯人であることは両立しない」 4/3/2014 

#検察なう (385) 「犯行着衣が捏造でないことと袴田氏が犯人であることは両立しない」 4/3/2014

よもや今更、袴田事件の犯行着衣の矛盾を論じる必要があるとは思っていませんでした。再審開始決定に対し、検察が即時抗告するほど愚かとは思っていなかったからです。

即時抗告の意図するところは警察・検察のメンツ保持以外の何物でもなく、捜査機関による証拠捏造、更には冤罪製造がオフィシャルとなることを回避したいというだけのものです。

私は、自分が刑事告発された時「世の中狂ってる」と思いましたが、その感覚を今思い出しています。検察も袴田氏が無実であることは百も承知です。その無実の人間を48年も獄につなぎ、ようやくその鎖を勇気ある裁判官が解いたにも関わらず、また彼を再び地獄に落とそうとしています。それは「世の中狂ってる」と言う以外、表現しようがありません。

人の命より役所のメンツがそんなに大切なのでしょうか。私には全く理解できません。同じ人間だとも思いたくないくらいです。仕事だから仕方ないとでもいうのでしょうか。ハンナ・アーレントは「凡庸な悪」と表現しましたが、それは戦時下の状況です。平時の今日の日本での、確信犯的な国家権力による殺人には断固として反対します。

ともかく、袴田氏の再審開始決定に検察が即時抗告したことは、この日本の歴史における汚点の一つとして(名張毒ぶどう酒事件の冤罪被害者奥西勝氏を地獄に引き戻したことと並んで)我々の心に刻むべきだと強く思っています。

袴田事件の有罪立証はわずか1通の自白調書と、訴因変更で証拠提出された5点の犯行着衣に依拠しています。その5点の犯行着衣に関し、検察は「DNA型鑑定の信用性を争う」と発表していますが、DNA型鑑定によらずともその証拠は矛盾したものであることは明らかです(それも検察は百も承知です)。

そして犯行着衣が捏造でないことと袴田氏が犯人であることは両立しません。袴田氏が犯人であるとするならば、それは犯行着衣が捏造であることを意味します。検証します。

この写真は控訴審において、犯行着衣とされたズボンの装着実験です。ズボンが小さくて履けなかった理由は長く味噌に浸かっていたため縮んだ、袴田氏が太ったためとされました(「太った」という点に関しては、逮捕以前からのほかのズボンが問題なく履けるため全く不合理なものです)。

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次の写真は、右がズボンに付けられた寸法札、左は2011年に新たに開示された証拠の中にあった同じメーカーからの寸法札の見本の写真です。第二回再審請求に際し、それまでの裁判官より積極的な裁判官が開示勧告をしたため、事件後45年を経て初めて開示されたものです。

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先の装着実験において警察の実況見分調書では、ズボンに付けられた寸法札の「B」の文字は「型」を表すものと記載されました。実際には左にあるように「色」を示すものです。警察は事件当時この見本を押収しており、当然「B」が色を示すことを知りながら、袴田氏が履けない理由をズボンが縮んだということにするため、「型」とでっち上げたものです。実際には、このズボンはJIS規格で、B体よりも細身のY体でした(B>AB>A>Y)。

仮に、このズボンを含む5点の犯行着衣が捏造ではなく、実際に犯人が犯行時に着ていたものとします。そうするとどういうことが言えるか。

犯人は、Y体を着ることができる細身な人間であるということになります。袴田氏は元ボクサーのがっちりした筋肉質です。つまりこの犯行着衣が捏造でなければ、自動的に袴田氏は犯人ではなくなり、逆に、もし袴田氏が犯人であると主張するためには、この犯行着衣が捏造であることになります。犯行着衣が捏造でないことと、袴田氏が犯人であることは論理的に両立しないということです。

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この犯行着衣の鮮やかなカラー写真も新たな証拠開示で出されたものです。それまでの証拠写真は白黒やカラーでも不自然に色があせたものだけでした。元東京高裁判事・最高裁調査官の木谷明氏は先日出演したラジオ番組の中で、この写真を見てその血液の色の鮮やかさに驚き、「普通の常識があれば、1年2ヵ月経過した血液の色ではないと分かる」と言っていました。

そして5点の犯行着衣は矛盾に満ちています。その矛盾点を列挙します。被害者4人の血液型はみな異なり、A型、B型、O型、AB型でした。袴田氏の血液型はB型です。

矛盾点① 犯行着衣は相当量の返り血を浴びたことを物語っているが、検出された血液型はA型、B型、AB型のみで、一番刺し傷が多いとされる次女のO型の血液が付着していない。

矛盾点② ブリーフからB型の血液が検出されているが、その上に履いていたはずのステテコ及びズボンからはB型の血液は検出されていない。

矛盾点③ ステテコには大量の血がついているが、その上に履いていたはずのズボンの裏地にはそれよりはるかに少ない量の血しかついていない。

矛盾点③ 袴田氏は事件の際の火事の消火時に右腕上部にケガをした。犯行着衣とされる半袖シャツ、長袖スポーツシャツの右腕上部には穴が開いており、半袖シャツの穴の付近には袴田氏と同じB型の血液がついていた。しかし、パジャマの右腕上部にも同じ位置にかぎ裂きの損傷があり、そこにも血がついていた(自白時にはパジャマを着て犯行に及んだとされていたが、訴因変更後は、犯行時に5点の着衣を着ており、それをパジャマに着替えて犯行着衣を味噌樽の中に隠したと検察は主張)。

矛盾点④ 半袖シャツの右腕には穴は2つあるのに、その上に着ていたはずのスポ―スシャツの穴は1つ。上に着ていたものに穴が2つで、下に着ていたものに穴が1つならまだしも、それが逆になっている。

矛盾点⑤ 装着実験では、袴田氏の右腕の傷と、半袖シャツ、スポーツシャツの穴の位置は、右腕の傷が一番下になり、その次がスポーツシャツの穴、一番上が半袖シャツの穴。内側に着ている半袖シャツの方がずれは少ないはずなのに、内側の半袖シャツの方がずれが多くなっている。

矛盾点⑥ 通常、着衣は上にずれ上がるもの。つまり、ずれ上がった状態でついた穴は、普通に装着すると、腕の傷よりも下になるはず。もし仮に、長袖スポーツシャツの袖を引っ張られた状態で傷がついたとしても、内側に着ていた半袖シャツの方がより引っ張られることはありえず、やはり半袖シャツとスポーツシャツの穴の順序が逆転していることになる。

矛盾点⑦ 緑色ブリーフは事件当時、袴田氏は1枚だけ持っており、犯行着衣に含まれる緑色のブリーフがそれとされた。ところが、その後緑色のブリーフは袴田氏の家族が持っていた事が判明し、緑色のブリーフは2枚になった。

矛盾点⑧ 袴田氏はクリーニングに出す衣料には「ハカマタ」と記名していた。この犯行着衣(特にズボン)にはそうした記名は一切ない。

このように数多くの矛盾点から、DNA型鑑定をせずともこの5点の犯行着衣は捏造であることが明らかだと思われます。

また、この5点の犯行着衣は事件から1年2ヵ月も経過して味噌樽の中から発見されていますが、味噌の漬け込み実験では、犯行着衣の色と同じだけ「味噌色」に染まるにはわずか20分しか要せず、1年2ヵ月漬け込んだ着衣は、血液の判別も目で識別不能なほど茶色に染まることが実証されています。

検察は味噌の成分の一部が明らかにされていないため実験は不正確だと主張していますが、わずかの成分の違いがあっても味噌は「味噌色」です。どんな成分を使えば1年2ヵ月漬けても色が付かない味噌ができるのでしょう。「可能性がある」というのは検察の典型的論法ですが、可能性だけで弁護側実験を弾劾できないのは明らかです。そのような世の中に有るかどうか分からない(そして常識ではありえない)味噌の存在の立証責任は検察にあります。

袴田氏が犯人であれば、すぐ見つかるであろう自分の職場の味噌樽の中に犯行着衣を隠すというようなことがあるでしょうか。また彼は、事件のおよそ1ヵ月半後に逮捕されていますが、もし彼が犯人であればその間なぜ味噌樽の中の犯行着衣を処分しようとしなかったのでしょうか。

この犯行着衣が袴田氏のものだとされたのは、この犯行着衣が見つかった後、袴田氏の実家を再捜索し、「たまたま」ズボンの共布を見つけたことによります。警察が逮捕時に散々捜索した実家を再捜索することも不自然なら、偶然のように共布が見つかるのも不自然です(狭山事件の鴨居の万年筆を彷彿とさせます)。

そして極め付けは犯行着衣が見つかった時には味噌樽の中には味噌が80Kgしかなかったという点です。これも新たに開示された証拠の中の捜査報告書に記載されていたものです。味噌樽の大きさは底辺が2m四方。味噌の比重は1.2g/mlですから、味噌の深さをXcmとすると、

80000 = 200 ・ 200 ・ X ・ 1.2

という簡単な数式を解いて、味噌の深さは平均約1.67cmということが分かります。事件から1年2ヵ月も経って、着衣がわずか2cm足らずの味噌の中から発見されたというのはありえないとしか言いようがありません。勿論、事件当時、警察官により味噌樽のあった味噌蔵の捜索は行われています。

これら全ての状況を勘案すると、やはり1年2ヵ月後に捏造された犯行着衣が味噌樽の中に置かれたと考える方が合理的だと思われます。

警察の捏造証拠はこの5点の犯行着衣だけではなく、逃走路とされた裏木戸の再現実験写真も強く捏造が疑われています。興味のある方はネットで検索してみて下さい。

上記の「寸法札見本の写真」「犯行着衣のカラー写真」「犯行着衣発見時の味噌樽の味噌の量の報告書」といった証拠が一審段階で提出されていれば、袴田氏は合理的に考えて無罪であった可能性が高いと思われます。

袴田事件は、このように警察捏造の証拠と検察による悪質な証拠隠しが生んだ超ド級冤罪です。検察の「DNA型鑑定の信用性を問う」というのは、あくまで言い逃れであり、DNA型鑑定の評価次第では自分たちの主張が正しいかのような印象を与えようとする卑劣な戦略です。

我々は、今後の動向を冷静に注視し、いかに捜査権力が人権を非道にも踏みにじるかを検証する必要があります。

FREE HAKAMADA!!

参考資料:
雑誌『冤罪File』 No.14 2011年11月号「「袴田事件」5点の衣類はやはりねつ造か!?」今井恭平
『はけないズボンで死刑判決 検証・袴田事件』 袴田事件弁護団編

4/3/2014

追記(4/5/14)

4/3にNHKクローズアップ現代で、『埋もれた証拠~"袴田事件"当事者たちの告白~』が放送されました。番組を紹介するサイトです(9分42秒のダイジェスト動画及び全文書き起こしあり)。

ここをクリック→ NHKクローズアップ現代『埋もれた証拠~"袴田事件"当事者たちの告白~』

事件当時、味噌樽の中を確認した捜査官の「徹底的に捜索したから、味噌樽の中に何もなかったのは間違いない」という重要な内部告発が含まれています。ダイジェスト版にない本編の部分では、アメリカ・ダラス検察局の誤判究明部CIUを紹介。また、木谷明氏が解説を務め、捜査の問題点を指摘。特に、証拠の全面開示が不可欠であることを強く主張し、裁判所による証拠開示勧告が重要であることを強調していたことが印象的でした。





















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category: 袴田事件

2014/04/03 Thu. 00:39 [edit]   TB: 0 | CM: 0

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