「蟷螂の斧となろうとも」 by 元外資系証券マン

クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件(http://goo.gl/v0xQYP)において、国税局査察部告発、検察特捜部起訴の事案で史上初の無罪判決。 著書『勝率ゼロへの挑戦 史上初の無罪はいかにして生まれたか』(光文社)。 ツイッター(@thatta0529)で「#検察なう」の情報発信を続けます。

07« 2017 / 08 »09
1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.

#検察なう (400) 「重罪における虚偽自白の問題」 6/5/2014 

#検察なう (400) 「重罪における虚偽自白の問題」 6/5/2014

やってもいない罪を認める虚偽自白は、一般の感覚であれば「なぜ?」と思われるかもしれません。ところが、公判での証言よりも調書の方が重視される日本の司法制度においては、「自白は証拠の女王(“Confessio est regina probationum.”)」とされ、捜査当局が真に罪を犯した者にその罪を認めさせる取調べと、虚偽でもいいからとにかく罪を認めさせる取調べは全く同じ行為となってしまいます。

半ばそれが確信犯的に行われていることは、フィクションであれば、現在放映中のWOWOWドラマ『トクソウ』(注1)にビビッドに描かれ、ノンフィクションであれば、郵便不正事件を扱った村木厚子氏著『私は負けない』(注2)を読んで頂ければ明らかです。

虚偽自白を生む要因として「人質司法」(注3)が挙げられます。罪を認めない限り、拘束を解かれることがない「人質司法」が虚偽自白を生んでいることは間違いありませんが、もし問われている罪が死刑相当のような重罪であり、認めたところで身柄拘束が解かれることがない場合はどうでしょうか。

認めれば死刑にもなりうるような状況で、なぜやってない者が虚偽自白をしうるのか。

雑誌『冤罪File』最新号(リニューアルして大判化しました。以前のように女性グラビアの表紙でなくなったのは実に残念ですが)の記事を読んで「はっ」と思うことがあったので、ここで紹介したいと思います。

冤罪File21

記事は、元判事の森炎弁護士(私の国賠審代理人チームの一員です)と作家今野敏氏の対談です。当該部分を引用します。

(以下引用)
森 日本の刑事司法っていうのは、認めない限りは身柄を拘束するという「人質司法」の仕組みを取っていて、それがひとつの巨大システムとして回ってる面があります。捜査期間として認められる勾留は最大23日間と定められていますが、その期間勾留されて起訴されて裁判になってからも身柄拘束は続きます。起訴後勾留と称して、裁判を受けさせるためという名目で身柄拘束が続き、それは裁判が終わるまで半ば自動的に裁判所によって更新されていきます。保釈金を積んで保釈が認められるだけです。そして、その段階でも、罪を認めるか、検察側証拠に同意しない限りは保釈を認めないという運用をしています。ですから、99.9%有罪というのは、そういうシステムが支えている面があります。執行猶予が付きそうだとか、軽い罪で済みそうだという場合には、長期の身柄拘束に耐えかねて心ならずも罪を認めるということは大いに考えられます。

―― よく代用監獄とか、密室の取調べっていうことで、それが虚偽自白を生み、だからやってなくてもほぼ100%の人がやったって言わされちゃうことがあると聞きます。

森 そうですね。今、話が出た虚偽自白の問題も、すごく妙なからくり、変な仕組みが精密に作られている面があります。たとえば、死刑も考えられるような重大な事件では、さっき言ったようなことは考えにくいかもしれません。そういう重罪では、人質司法であろうとなかろうと、罪を認めたからといって身柄が解放されることはありません。また、一般に、執行猶予が付きそうだとか、軽い罪で済みそうだと思うからこそ、無実の者であっても泣き寝入りしてしまうと思われています。ところが、重罪の場合は、人質司法とはまた違って、99.9%有罪という圧倒的事実の重みが無実の主張を折るという面があります。取調官から、「いつまでも争っているより早く罪を認めて刑を軽くしてもらった方がよい」「日本の刑事司法は、どうせ99.9%有罪だ」と告げられたら、無実であっても被疑者はもうもたないでしょうね。「99.9%有罪になる」と思ってしまったら、死刑の恐怖に耐えて0.1%の確率にかけられるとは思えない。世間一般には「死刑が予想される犯罪事実に関してやってもいないのに自白することは考えがたい」という一般通念があると思いますが、それは、日本の刑事司法に関する限り、成り立たないのです。

今野 実際、日本は司法取引がないといわれているんですけど、そこで取引が行われているんですね。毎日毎日一日何時間も責められたら、まあ自信ないですね、僕も。落ちちゃうかもしれない。やってもいないのに。あらかじめ自白内容が調書に書いてあって、拇印だけすればいいんだよって言われたら、これは押しちゃいますよね。

森 心理学では取り調べの場が特殊であるとか、その「場の力」ということが言われています。また、社会学ではスターリン時代のソ連を考えているんだと思いますけど、一種のアイデンティティの破壊というような虚偽自白の構造も言われています。それにプラスして日本の場合は起訴されたら99.9%有罪ですからね。

今野 極限状態なんで、なんとか少しでも助かりたいっていうのが人情で、先ほどおっしゃったように死ぬよりもまあいいやと、死刑になるよりもいいやと。じゃあ言いますって、なっちゃいますよね。

森 むしろ日本の場合には重罪ほどそういう構造になっている面さえあります。今野さんが言われたように痴漢冤罪だったら、まだ自分の信念を貫けるかもしれないし、実際そういう人たちはいるわけです。だけど0.1%の確率にかけて、自分の真実を通し、死刑になるかどうかにかけられるのか、ものすごく問題は深刻ですよね。それとも、早い段階で認めて減刑を期待するのか。信念を貫きたくとも貫けない状況になります。
(引用以上)

DSCF2022.jpg

あなたも無実の罪で囚われ、「どうあがこうが99.9%有罪。もし罪を認めなければ、死刑は確実。認めれば死刑は免れることができるかもしれない」と言われたら、どう答えるでしょうか。そして認めた結果、それでも死刑とされるということもあるということを考えてみて下さい。

あなたが冤罪の当事者となることはなかなかイメージしにくいかもしれません。その場合、裁判員裁判の裁判員となることをイメージしてみて下さい。冤罪に理解がなければ、無辜の人を死に追いやることもありえるという現実を是非認識して頂ければと思います。

(注1) 
ここをクリック→ WOWOWドラマ『トクソウ』

(注2) 
ここをクリック→ #検察なう (344) 「郵便不正事件の真相は今も隠されたまま~村木厚子氏著『私は負けない「郵便不正事件」はこうして作られた』を読んで」

(注 3) 
ここをクリック→ #検察なう (85) 「人質司法」

6/5/2014









好評発売中!!

ここをクリック→ Amazon カスタマーレビュー

表紙1







ここをクリック→ Wikipedia クレディ・スイス証券集団申告漏れ事件

ここをクリック→ 八田隆ツイッタ―

ここをクリック→ #検察なう 刑事司法の矛盾、冤罪と戦う八田隆と全ての人を支援する会






TwitterやFacebookでの拡散お願いします。

category: 刑事事件一般

2014/06/05 Thu. 00:11 [edit]   TB: 0 | CM: 0

go page top

この記事に対するコメント

go page top

コメントの投稿

Secret

go page top

トラックバック

トラックバックURL
→http://fugathegameplayer.blog51.fc2.com/tb.php/711-13ad9598
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

go page top